区議会 第3回定例会 決算特別委員会 おのみずきが総括質疑を行いました。質問全文をご覧いただけます。

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2023年10月3日

おのみずき

令和5年第3回定例会 決算特別委員会 総括 生活者ネットワーク

 それでは、生活者ネットワークの総括質疑を始めます。今回は、気候変動対策、人材不足問題、一人の“人間”として外国籍住民を受け入れる体制、の3点に関して質問したいと思います。
 まず、気候変動対策についてです。令和4年度には、気候危機対策基金が新設され、区における気候変動対策取組みの一層の推進が期待されています。令和4年度予算審議において、当会派は、寄附の募集とともに基金活用に関するアイデアも区民から広く募っていくことを提案し、区民に開かれた基金とすることを要望しました。基金活用にあたり、実際に区民の意見やアイデアがどのように活かされたのか、お聞きします。
 
(環境政策部)今年度に実施している子ども気候会議や、来年度以降に予定している気候市民会議は、区民とともに気候危機対策、脱炭素の施策を考える場だ。この中で区民自身の行動を考えていただくとともに、基金の使途を含めた区民や事業者の行動を後押しする効果的な施策を議論してもらい、区の新たな脱炭素政策につなげていく。

 令和4年度区政モニターアンケートによると、この新しい基金で寄附を募っていることを知っている区民の割合はたった6%です。さらに、区が令和2年10月に行った気候非常事態宣言と、2050年のCO2排出量実質ゼロの目標を表明したことについて、6割近くの人が「どちらも知らない」と回答しています。周知が不十分であることは明白です。また、決算書を見ると、気候危機対策基金に積み立てられた約4億2,600万円中、活用されたのは930万円、約2%でした。新設の初年度とはいえ、基金活用が進んでいない現状は、気候変動対策が進んでいないとも言えると思います。基金や区の施策に関する周知強化と併せて、よりダイナミックな活用をすべきではないでしょうか。お答えください。

(環境政策部)気候危機対策を着実に進めるため、昨年度に地球温暖化対策地域推進計画を策定した。計画で掲げた目標達成のためには、現在実施している施策では全く足りていない。住宅をはじめとした建物の脱炭素化、脱炭素地域づくりなどの施策の拡充が必要である。
 気候危機対策基金は積み立てる基金ではなく、2030年度に向けて脱炭素の取組みを加速するための財源である。区民主体の自発的な気候危機に対してのライフスタイルの転換、行動変容を促す取組みについて、積極的な働きかけや呼びかけを広げ、来年度よりを基金を最大限活用し、目標達成に努めていく。

 先の区政モニター結果から、地球温暖化に伴う気候危機に対して、「極めて不安に思う」人が55.5%、「少し不安に思う」人が35.7%、計91.2%の人が不安に感じていることが分かります。 
 ここ数年、気候変動の影響に脆弱な国・地域に住んでいるかどうかに関わらず、若い世代を中心に「気候不安/エコ不安」と呼ばれる心理的な現象が、国内外の調査によって確認されています。「気候不安」とは、地球環境の危機的状況に対する慢性的な強い恐怖心のことで、不安感や喪失感、無力感、怒りや悲しみ、絶望感などの心理的ストレスが、特に若者のメンタルヘルスやウェルビーイングに重要な影響を及ぼす可能性があると言われます。実際、私自身も仕事で気候変動対策の前線に関わることを通して、大きな絶望を感じ、とてもこんな世界で子どもを産むことなんてできないと思いました。
 気候変動対策を進めるにあたり、一面的に捉えた若者に対してアクションを求めるだけではなく、こうした若者が抱える複雑な感情や置かれた状況に丁寧に寄り添い、子ども・若者部、保健所、教育委員会等の関係所管と連携しながら、各種施策に反映すべきと考えますが、現状の考えをお聞かせください。

(環境政策部)気候危機による地球の持続性に関してIPCCをはじめ様々な機関が情報を発信しており、近年は気温の上昇を実感するだけでなく水害のリスクも目の当たりにするようになっている。
 区民の、特に若い世代は先の人生も長く、気候危機の先行きが不透明であることに不安を覚え、人によっては将来に希望を持ちにくい心理になることも考えられる。
 若い世代が気候危機をどのように捉えているのか、将来に対してどのような希望や不安を持っているのか、まずは率直に聞く機会を設け、関係所管との共有や連携をしながら、気候危機対策に活かしていく。

 次に、人手不足問題についてです。医療・介護・福祉、教育、保育、清掃等、エッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちが働く業種、また区内最大の事業者である世田谷区においても、人手不足は喫緊かつ極めて深刻な課題の一つです。この問題、各領域で絆創膏的な処置を続けていては、遠くない未来に必ず立ち行かなくなります。
 区では「(仮称)新たな行政経営への移行実現プラン」骨子案において、具体的施策の中で、“一事業多目的による事業の再編”について言及していますが、これは具体的にどのような施策をお考えか、お伺いします。

(政策経営部)人材を含め、限られた資源で、現状そして新たな行政需要に応え、区民福祉の向上を図っていくためには、時代に即した新たな事業の仕組みの再構築や新規事業の立ち上げをしていく必要がある。その際の考え方として、「1事業多目的」を事業再編や新規事業立ち上げの際のキーワードとして挙げたところである。
 事業自体の経緯や主目的は異なるものの、見方を変えれば、一つの手段として兼ねられるようなものを想定している。一つの事例で言えば、福祉施設等送迎バスいわゆる「ふれんどバス」は、当初は障害者施策として開始したものであるが、「公共施設の利用が困難な障害者及び高齢者の施設利用及び社会参加を促進すること」と目的を広く捉えることにより、「障害者施策」と「高齢者施策」を兼ねて事業に再編しているものである。
 このような連携を行っていくために、各事業所管同士の情報を共有化し、 所管の垣根を取り払い、複数所管による共同事業の可能性を検討するなど、 事務の効率化を進め、経営資源の最適化を図っていく。

 「一事業多目的」という考え方を活かし、行政の縦割りを乗り越える事は重要です。限られたリソースをフル活用しながら、領域をまたいで相互補完的に事業を実施する具体事例が今後もっと増えていくように、私たちも引き続き提案していきたいと思います。
 他方で、所管業務以外の行政サービスにも広く対応するためには、既存人材の確実な育成とともに、同質性の高い集団から脱却し、多様な人材の積極的な受け入れが肝要です。ここで、最後の質問に移りたいと思います。

 2019年4月より、新しい在留資格「特定技能1号/2号」が開始されたことに伴い、本区でも特に人手不足が著しい介護の現場にもっと外国人材を!という議論がされてきました。しかし、ちょっと待ってください。この国はこれまで、外国人を“労働力”や“観光客”としてしか見てこなかった。でも、介護従事者やコンビニの留学生アルバイトだってみんな一人の人間です。大前提として、“労働力”ではなく一人の“人間”として受け入れる体制を早急に整備すべきです。
 例えば、外国籍住民の生活保護は、生活保護法を準用する取扱いとなっていますが、令和4年度の区内被保護外国人世帯の実績を教えてください。

(保健福祉政策部)令和4年7月31日時点での実績では161世帯で、この時点での区全体の保護世帯数が8,908世帯なので全体の約1.8%となります。

 外国人世帯でも受給実績があることはわかりましたが、在留資格別の区内外国人人口を見ると、外国籍住民の2人に1人(約53%)は、生活に困窮しても、生活保護の準用対象にならない、つまりセーフティーネットが何も無い事が分かります。このような人たちの生活保障についても、今後ぜひ検討いただくよう、要望いたします。
 一方で、外国籍住民の方は生活保護が受けられなくても、単発の給付金は対象になることがあります。令和4年度に実施した、コロナ臨時特別給付金や価格高騰緊急支援給付金は外国人の方も対象で、支給にかかる迅速な対応がなされた点は評価します。両給付金の外国籍住民への支給実績について、お伺いします。
 
(保健福祉政策部)令和4年2月から9月にかけて実施した住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金では、確認書を約148,000世帯に送付し、うち外国籍世帯主は約8,600世帯でした。支給されたのは約96,000世帯、うち外国籍世帯主は約4,700世帯でした。支給率は約65%、うち外国籍世帯主の支給率は約55%でした。
 令和4年11月より実施した電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金では、プッシュ型支給のおしらせ及び確認書を約97,000世帯に送付し、うち外国籍世帯主は約6,100世帯でした。支給されたのは約84,000世帯、うち外国籍世帯主は約4,800世帯でした。支給率は約87%、うち外国籍世帯主の支給率は約79%でした。

 今の実績を聞くと、日本人世帯と外国籍世帯で支給率に8~10%程の差があることがわかります。給付金を必要とする外国籍住民の方に確実に届けられるよう、広報・申請受付・支給までの一連のプロセスを改善すべきではないですか。お答えください。

(保健福祉政策部)令和5年度の住民税非課税世帯などへの価格高騰重点支援給付金では、対象となる外国籍の方への対応として、申請書の英語翻訳版の区ホームページへの掲載、コールセンターの英・中・韓など14か国語対応、せたがや国際交流センターの外国籍の方向け広報紙への掲載などを行っております。
 今後、国の新たな経済対策による給付金事業が示された場合には、申請書の英語以外の多言語翻訳を検討するなど、外国籍の方へよりわかりやすいお知らせに努めてまいります。

 どれだけ困窮しても、給付金すら支給対象になっていない人がいます。被仮放免者の方々です。一般質問でも取り上げた通り、この問題に正面から取り組む所管課が無い状況は大変問題だと思います。区長は過去に入管問題に取り組んでおり、UNHCRのグローバルキャンペーン「難民を支える自治体ネットワーク」に、世田谷区も昨年7月に署名していますよね。ウクライナ避難民受け入れの際には、全庁をあげて特別プロジェクトチームを組み、申請主義ではないサポート対応を実施した実績があると聞いています。この経験を活かし、区は被仮放免者への対応にも取り組むべきではないでしょうか。世田谷でともに生きる被仮放免者が社会から排除されている現状に対する、区長の見解を伺います。

(区長)「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」において、年齢、性別、国籍、障害の有無等にかかわらず、全ての人が多様性を認め合い、人権が尊重され、尊厳を持って生きることができることを基本理念としております。
 これまでも、昨年2月のロシア侵攻後に、ウクライナ避難民に対する、多面的な支援を行っていることやUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の難民を支える自治体ネットワークに賛同し署名を行うなど、人権に重きを置いた取組みを進めております。また、私は国会議員当時、入管の難民認定の審査について、調査、質問、改善を求め、収容中の外国人の仮放免をめぐり、入管局とのやりとりを重ねてきた経験があります。
 被仮放免者も含め、在留外国人の方が、在留資格の有無にかかわらず提供の対象となっている行政サービスについては、国から示されております。こうしたサービスが受けられないことのないよう、庁内に対し定期的に周知するなど、連携した取組みを強めていきます。
 今後も、命と人権を守る観点から、被仮放免者の方に限らず、困っている外国人の方に対し、関係する所管が人権保障の観点から一体となって対応していくよう、改めて指示してまいります。

 言葉のギャップを乗り越えて、「誰一人取り残さない世田谷」をつくるために、一日でも早く旗振り役を定めていただき、ぜひ一層の取組みを進めていただくよう要望します。以上で質問を終わります。