令和6年3月定例会03月01日
おのみずき 議員 生活者ネットワーク世田谷区議団は、議案第六号「令和五年度世田谷区一般会計補正予算(第六次)」について賛成の立場から意見と要望を申し上げます。
今次補正では、保育所や学童クラブ等の区内子ども関連施設における性被害防止対策として、パーティション、簡易扉、簡易更衣室、カメラ、人感センサーライト等の設備に対する補助経費千五百三十五万円が計上されています。これは、昨今子どもに対する性加害、性的虐待の事案が後を絶たない事態に対し、性被害に遭っても自ら訴えることが難しい子どもたちを守るための緊急対策として政府が進める事業の一環です。
長年、子どもの性被害防止対策の強化を訴えてきた当会派としても、環境面の工夫によって性被害防止を図ることは必要であると考える一方、導入先の現場の運用次第では、想定した効果が得られない、あるいは、最悪の場合は性被害の発生を助長したり、子どもの権利侵害につながったりする事態にならないかという懸念もあります。
例えば、本補助事業では子どものプライバシー保護がうたわれていますが、簡易更衣室等を設置することは、同時に施設内に死角をつくることにもなり得ます。防犯カメラを同時に設置したとしても、文科省は撮影に当たって、着替えは除くとしていることや、プライバシー保護の観点から児童養護施設等の居室等の生活空間にはカメラを設置しないなど、死角を完全になくすことは難しいと考えられます。
着替えに介助が必要な子どもの場合は、大人が簡易更衣室の中に一緒に入ることもあるでしょう。もしその中で性加害が行われたとしてもカメラの記録には残らず、むしろプライバシー保護の名の下に犯罪行為の助長につながる可能性も否定できません。
乳幼児期からプライベートパーツをはじめ、自分と相手の体を大切にする習慣を育むことは大変重要ですが、施設運営に関わる大人たちの性に関する知識が十分でない場合、導入設備の運用に当たっては特に十分な検討と対策が必要です。
また、カメラを設置した場合、撮影された映像の取扱いも課題です。こども家庭庁発出の通知では、保育所等における性被害防止対策に係る設備等支援事業実施要綱があるんですが、これを見ると、留意事項に、カメラの設置については、必要に応じて、関係者等に事前に周知することとし、カメラの設置趣旨、目的等について十分に説明するほか、映像の保管・管理体制の整備を行うことが望ましいというふうに記載されています。本人の同意の有無にかかわらず、撮影対象となる子どもの権利を守り、大人も含めて個人情報保護を徹底するためにも各施設での適切な対応が求められます。
以上を踏まえ、本補助事業の実施に当たっては、対象設備の導入に際して現場の声を聞きながら区も共に効果的な性被害防止対策の在り方を考える、カメラで撮影された映像の保管、管理に係るルールを詳細に検討するなど、子どもの権利を守るという観点から、保護者の理解も得ながら設備導入後の適切な運用を徹底いただくよう求めます。
また、パーティション、簡易扉、簡易更衣室、カメラ等の設備を導入したからといって性被害防止対策が十分に講じられたとは到底言えません。区は、今後も引き続き、子どもへの性被害防止に有効な対策の研究、検討を継続的に行い、補助事業を実施する国に対しても積極的に要望を伝えていただく努力をしていただくよう、併せて要望します。
以上、議案第六号「令和五年度世田谷区一般会計補正予算(第六次)」に対する意見とします。