令和6年6月 定例会06月11日
関口江利子 議員 まず初めに、区民とともに地域から進める脱炭素社会について質問します。
二〇二三年、IPCC、気候変動政府間パネルは、人の活動によって排出される温室効果ガスが気候変動を引き起こしていると断定しました。その活動要素の一つに、大量生産、大量消費、大量廃棄が挙げられます。中でも生分解に非常に時間がかかるプラスチック製品は、原材料の石油の採掘、輸送、精製、生産の過程や再処理プロセスにおいて二酸化炭素が排出されています。私たちの身近な暮らしにあふれるプラスチックの利用削減、資源化は喫緊の課題です。現在、東京二十三区でプラスチックの分別収集を実施しているのは十九区、令和七年度中までに始める予定にしているのは三区、まだ計画すらない、取り残された最後の一区が世田谷区です。
分別収集という区民を巻き込んだ行動変容、脱炭素社会の実現へ向けてどのようなロードマップを描くのか、区の見解をお聞きします。
気候変動の影響は、猛暑という形で私たちの命を脅かしています。猛暑による熱中症対策の一環として、世田谷区では、毎年六月から九月の期間、区内各所で休憩場所と飲料の提供を行うお休み処を開設しています。昨年九月の私の質問では、お休み処の在り方について、環境問題の周知、理解促進を進めるツールとしても活用するよう要望いたしました。
改めて、涼風マップやホームページ等で、マイボトルの推奨と提供されるペットボトル飲料の削減を求めます。また、環境所管と連携し、リサイクルに関する展示やワークショップ、クイズ、シール投票など参加的要素も盛り込んだ区民の行動変容を促す工夫を区施設を中心に展開することを求めます。
次に、学校での香りの配慮についてお聞きします。
昨年末、区立小中学校へ香りの配慮についての取組アンケートを実施しました。児童や教職員、保護者への周知や給食白衣への配慮を行っている学校が多く見られました。また、香りで体調不良になる児童が在籍する学校があることも分かりました。
各学校の取組を学校間で共有し、また、外向けにも周知すべきと考えますが、区の見解をお聞きします。
世田谷区においても、保健所と消費生活センターには、毎年合わせて二十件前後の香りに関する相談が寄せられています。当事者の方から伺う相談で切実なのは、医療機関や公共施設での芳香剤の使用です。都立病院においては、職員、窓口業務等の委託業者に対して香りへの配慮を指導しているほか、入院患者用のリネン類の洗濯には香料不使用の洗剤を使用しています。
ここで、新庁舎での配慮についてお聞きします。窓口業務に携わる職員については香りのマナーが周知されていると聞いておりますが、このたびの新しい庁舎では、各トイレごとに消臭芳香剤を自動で噴霧する装置が設置されています。新築で機密性が高いためか、当事者ではない私でもそれなりに匂いを感じています。東棟の改善は可能でしょうか。また、二期、三期棟での香りの配慮をより一層求めますが、見解を伺います。
現在、開会中の第二百十三回通常国会にて、香害への政府の認識と、取るべき対策について取り上げられました。関係五省庁の大臣が答弁に立ち、発症メカニズムの解明には至っていないが、実際に香料など化学物質で体調不良を訴える人の存在は認識していると、五人全員が答弁されました。実態への一定の理解がある一方で、香害や化学物質過敏症は、頭痛、腹痛、せき、倦怠感、皮膚刺激など様々な症状が引き起こされ、一度発症すると治療は困難を極めるため、ふだんからできるだけ原因物質を取り込まないことが重要で、因果関係の解明を待っていられないのが現状です。
世田谷区では、令和元年に、いいにおいで具合が悪くなる(小学生向け)チラシを独自で作成しています。作ってから六年がたっていることから、情報の更新とともに、受け取った子どもの理解が進むような内容に見直しを行うことを求めます。また、いつ、どこの学校に配布し、保護者へすぐーるで配信したのか等、把握ができていない状況だと聞きました。関係所管で連携をして、スムーズに情報提供ができるように求めます。
次に、区民とつくる平和の芸術文化的アプローチについて質問します。
来年、二〇二五年は終戦八十年、世田谷区平和都市宣言四十年、世田谷区立平和資料館開館十周年と節目の年になります。先日、中学生の私の子どもが社会科の授業で太平洋戦争を学び、戦時下の記録映像を見て、ショックを受けて帰ってきました。大きな被害や残酷さを伝えることは大切な一方で、どこか遠くで起きた昔のことにならないために、住み慣れた地域の平和から主体的に考える取組も非常に重要です。
その拠点の一つとして、世田谷公園にある世田谷区立平和資料館は大きな役割を担っていると言えます。しかし、開館から九年を迎えるにもかかわらず、二〇二三年の認知度調査では、回答者千八百三十二人のうち、全ての世代、地域で八割強が知らないと答えています。平和資料館には、せたがや未来の平和館というすてきな愛称がありますが、世田谷公園園内マップ、施設サイン、のぼり旗やパンフレット等で、正式名称と愛称の表記に関して統一性が明確になっていないように感じます。確認したところ、浸透させたいのは愛称とのことですので、せたがや未来の平和館の表記を徹底し、戦略的に周知していくことを求めます。
現在、開催中の企画展「皆で探ろう世田谷の戦跡と戦争体験」は、戦争下の区民の体験、暮らしを地図上で見える化しており、子どもたちが足元から平和を捉えるための地域情報アーカイブとなるとてもよい展示でした。これからさらに地域の情報を積み重ねてほしいと思います。一方で、常設展示は非常に情報量が多く、せたがや未来の平和館開館十周年を契機に、区民とともに平和をつくる文化施設として、参加型要素も盛り込んだ見やすい展示にカスタマイズすることを求めます。また、子ども参加で巨大オブジェを制作するなど、芸術的な遊び心を取り入れたワークショップやシンポジウムなど、多くの区民が親しみやすい特別企画を実施することも求めます。
最後の質問です。これまで女子にのみ実施されてきたHPVワクチンの接種費用の助成が本年十月より男子を対象に始まる予定です。女子への接種は定期接種なのに対して、男子は任意接種となっています。現時点で男性へ承認されているガーダシルの男性への効能効果は、肛門がんと尖圭コンジローマとなっています。
厚労省の報告によると、これまで接種による女性の副反応率は、男性の肛門がんの罹患率に比べ数倍高くなっています。また、HPVワクチンの副反応に対応する協力医療機関は、婦人科系か、ペインクリニックが主となっており、男性に副反応が起きた場合の支援が十分とは言えません。
世田谷区においては、今年四月に予防接種コールセンターが開設し、予防接種への疑問や不安の解消に努めているとのことです。今後、さらに本人と保護者が自身で判断し、納得した選択をするために、ワクチンの有効性と副反応のリスクについて区が責任を持って情報提供する必要があると考えますが、区の見解をお聞きします。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
◎世田谷保健所副所長 私からは、三点について御答弁いたします。
初めに、熱中症予防、お休み処について、ペットボトルの削減とマイボトルの推進及び連携した環境問題の啓発についてです。
区では、六月十七日より二百六十三か所でお休み処の開設を予定しておりますが、熱中症と感染症予防対策と同時に、気候変動や環境への配慮に取り組むことの重要性も十分に認識しております。外出時におけるマイボトルの携行は、必要に応じて随時、水分補給でき、環境負荷軽減の観点でも効果的です。今後、環境政策部との連携の下、せたがや涼風マップパンフレットの中で、気候変動や環境への配慮に関する啓発内容の追記を検討してまいります。
お休み処では、一部の施設を除き、ペットボトル飲料の提供を予定しております。衛生面や感染症の拡大予防、また、施設運営上の負担や経費負担が少なく、広く協力事業所を確保するといった点で用いているものでございます。
引き続き、厳しい暑さから区民の生命、安全を守る取組と環境負荷低減の両立に向け、飲料製品市場の動向や調達の困難性なども見据えつつ、より環境負荷の低い形で飲料を提供できる方法について検討、研究を重ねてまいります。
次に、香りの配慮について、情報の更新についてです。
世田谷保健所では、化学物質に頼り過ぎない生活を送るための情報を区民に周知するため、区立小学校、区内保育施設、図書館、まちづくりセンター等でのチラシの配布、区の広報板での掲示、区役所での展示、動画配信、区ホームページやエックス等を活用し、情報発信してまいりました。
チラシ、いいにおいで具合が悪くなるは、小学生でも理解しやすい工夫をし、令和元年より配布、令和四年度には啓発動画の二次元コードを添付し、理解促進に努めているところです。
香りによる体調不良について、国は症状と原因との因果関係が科学的に解明されていないとしており、保健所が現時点で啓発が可能な内容は、香りつきの日用品など化学物質に頼り過ぎない生活を送るための情報を区民に周知していくことと認識しております。
御指摘のチラシの内容は、国が新たな知見を得た際等を機に見直すとともに、配布方法等につきましては、各関係所管と連携し、啓発に努めてまいります。
最後に、HPVワクチン、男性接種についてです。
男子のHPVワクチンは、肛門がんや尖圭コンジローマの予防に効果がありますが、頻度が高くない病気であり、現時点は任意接種となっています。接種後に健康被害が発生した場合、予防接種法上の救済制度ではなく、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による救済制度が適用されるなど、定期接種とは違いがあるため、有効性と副反応のリスク双方を十分に理解した上で、主体的に御本人及び保護者の方が接種するかどうかの判断をしていただくことが必要です。
対象となる方と保護者が適切に判断できるよう、区ホームページにワクチン接種の効果及び副反応の頻度を含め、正しい情報を分かりやすく掲載するとともに、ワクチン接種に対する理解を一層深めていただくためのリーフレットを区で作成し、区内指定医療機関に設置いたします。なお、ワクチン接種への不安から接種を迷う保護者等の相談については、医療機関において丁寧に対応いただくよう地区医師会を通じて依頼してまいりますが、区の予防接種コールセンターにおいても、常駐している看護師とともに区職員が連携して相談に対応する体制を整えてまいります。
私からは以上です。
◎清掃・リサイクル部長 私からは、プラスチックの分別収集について御答弁いたします。
プラスチックを廃棄することなく資源として循環させ、持続可能な社会を形成していくことは国際社会全体としての急務であり、区の清掃・リサイクル審議会においても、分別収集の実施が有効であるとの答申を頂いております。一方、分別収集には多大な経費を要するため、審議会からは、まず発生抑制の徹底が重要であることや、より効果的で区民理解を得られる再商品化や収集、運搬の手法を検討すべきとの御指摘もいただいているところでございます。
区では、審議会の御意見を踏まえ、まずはプラスチックごみの発生抑制を推進するため、普及啓発のさらなる強化に取り組みつつ、再商品化事業者の確保や中間処理施設整備などの課題に対し、精力的に検討を進めております。
持続可能な資源循環型社会の実現に向けては、区民一人一人の日常生活やビジネススタイルの行動変容と主体的な取組が重要であり、引き続き、区議会の御意見も伺いながら、多くの区民の皆さんに御理解、御協力いただけるよう、合理的、効果的な事業手法について積極的に検討してまいります。
以上でございます。
◎環境政策部長 私からは、お休み処での気候危機の啓発について御答弁いたします。
区では、地球温暖化に起因する気候危機の状況を区民、事業者と区が共有し、共に行動していくため、令和二年に世田谷区気候非常事態宣言を行い、二〇五〇年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとすることを表明いたしました。この間、地球温暖化はさらに進行しており、夏の猛暑日の増加や災害の激甚化も引き続いています。このような危機感を区民と共有していくことがさらに重要となっています。
お休み処は、厳しい暑さから区民の生命を守るため、気候変動に対する適応策として実施している事業ですが、併せて気候変動や地球温暖化の緩和策の啓発に取り組むことで危機感の共有につながるものと考えております。今後は環境所管としても世田谷保健所と連携し、地球温暖化の適応策と緩和策の推進を図るため、委員の御提案も参考に、お休み処のスペースも利用した啓発やホームページにおける連携など、効果的な取組を実施してまいります。
以上でございます。
◎教育政策・生涯学習部長 私からは、香りの配慮について、小中全校アンケートの結果活用について御答弁を申し上げます。
教育委員会では、化学物質過敏症の啓発のため、令和五年十二月に新たな啓発用ポスターを小中学校に対して配付するとともに、配付したポスターの活用状況や教職員間での情報共有、各校での香りへの配慮や理解促進に関する取組などについてアンケートを実施いたしました。
アンケートの結果、全ての学校で啓発用ポスターの活用や化学物質過敏症に関する教職員間での情報共有がなされていることを確認するとともに、香りへの配慮に関する各校での様々な取組を把握することができました。令和六年四月には、アンケート結果や各校での取組について理解・取組促進の参考となるように学校に対し周知を行ったほか、区ホームページに専用の啓発ページを設け、学校での取組について掲載いたしました。
今後、アンケート結果のさらなる活用に向けて、作成したホームページについて保護者に対しすぐーるで紹介するなど、化学物質過敏症や香りへの配慮について、より効果的な啓発に努めてまいります。
以上でございます。
◎庁舎整備担当部長 私からは、新庁舎のトイレに設置された芳香剤について御答弁申し上げます。
区では、新庁舎の竣工後、庁舎内の維持管理を目的として、トイレ内を衛生的で快適な環境に保つため、東棟と西棟のトイレ内に消臭芳香装置を設置しております。この装置は北海道産トドマツから抽出した成分を香料に調合した消臭芳香剤が一定時間ごとに自動で噴霧される仕組みとなっており、商業施設やオフィスビルなどで広く設置されているとのことです。区では、同じ装置を旧第三庁舎でも設置しており、新旧の庁舎含めて、当該消臭芳香装置を要因とする体調不良の訴えはございませんでした。
しかしながら、区として香害の存在は認識しており、お話しの事例について事業者に情報を伝え、二期棟、三期棟を含め、取り得る対応策を確認し、安全かつ快適に利用できる環境を整えてまいります。
以上でございます。
◎生活文化政策部長 私からは、平和資料館について二点御答弁申し上げます。
初めに、愛称であるせたがや未来の平和館の活用についてです。
区は、四十回目の終戦の日に当たる昭和六十年八月十五日に平和都市宣言を行い、宣言から三十周年には玉川小学校の平和資料室を平和資料館として、また、愛称をせたがや未来の平和館として開設いたしました。この間、来館者につきましては、コロナ禍の令和二年度に前年を下回りましたが、令和三年度から昨年度まで毎年増えている状況で、令和五年度は約一万三千人の来館者がありました。しかしながら、議員の御指摘にもありましたように、平和資料館につきましては、区民に身近な施設として、さらにその知名度を上げていく必要があると考えてございます。
今後は、御提案のありましたように、愛称であるせたがや未来の平和館を前面に出したPRとともに、区の広報紙のほか、定期的に発行している平和資料館だよりやエックス、メールマガジンなどについても施設名を工夫して発信するなど、愛称の積極的活用を図ってまいりたいと考えております。また、公園内のマップ等の案内につきましても、公園管理を担当している所管と調整を図ってまいります。
次に、せたがや未来の平和館十周年を契機とした取組についてでございます。
せたがや未来の平和館では、常設展示のほか、企画展示、平和映画祭をはじめ、戦争体験者のお話会や平和に関するワークショップなどのイベントを定期的に行ってございます。また、より多くの方に来館していただくため、クイズラリー、スタンプラリーの実施や区民の方との町歩き、近隣図書館との連携による絵本の読み聞かせなどを行っているところでございます。
令和七年度には、開館十周年を迎えます。これを機にこれまでの展示を振り返り、この間、使用した資料や写真を多用するなどした記念誌の発行のほか、現在の展示スペースの大幅なリニューアルやパネル等の多言語化も図り、ハード、ソフトの両面から分かりやすい展示の工夫を検討してまいります。また、せたがや未来の平和館により多くの区民の方が親しみを持って参加いただけるよう、区民参加型のイベントなどの企画につきましても、これまでとは違った観点での検討を進めてまいります。
以上でございます。
関口江利子 議員 プラスチックの発生抑制を推進するとの答弁がありました。お休み処で提供するペットボトルに入った飲料の削減については昨年も取り上げ、二〇二二年に提供したペットボトルの数は二百五十二か所のお休み処で六万七千二百二十四本と紹介しました。昨年はお休み処が二十六か所増え、ペットボトルも約一万五千本増えて八万一千六百本、今年はお休み処が十七か所減ったにもかかわらず、さらに五千本増えて八万六千四百本です。昨年の提供数が急増した理由は、公共施設から追加提供の依頼があったためと聞いていますが、配付方法の聞き取りや需要調査もせずに、言われるままに提供を拡大することには疑問を呈したいと思います。
民間企業では、アルミ缶や紙パックなどプラスチック素材以外の開発も進んでいます。新たな官民連携事業の可能性も探るなど、お休み処で提供するペットボトルの削減に尽力していただくことを要望します。
飲料の容器素材は、ガラス瓶から缶へ、今はペットボトルが当たり前です。当たり前を変えるには、小さなことから少しずつ理解を得ることが非常に大切です。プラスチックの発生抑制を進めようとしている区が率先して規範となり、気候変動の当事者となる子ども、若者へ負の遺産を残さないよう重ねて要望して、質問を終わります。