第3回定例会 決算特別委員会 2019.10.1  田中みち子

田中みち子 委員 それでは、生活者ネットワークの総括質疑を始めます。

まず、財政についての質問です。

ふるさと納税の影響額は年々増加をし続けて、平成三十年度で四十一億円、今年度が五十四億円、そして来年度は七十億円に達する見込みです。さらに、国の税制改正による地方法人課税の見直し、地方消費税の配分見直しなど、ふえ続けるふるさと納税に加えて、区の財政に追い打ちとなっているのではないでしょうか。

現在、来年度の予算編成に取り組んでいるところだと思いますが、ふるさと納税を初め、これら税制改正による区の影響額はどれくらいになるのか、来年度予算においてどう見込んでいるのか確認をします。

 

財政制度担当参事 令和二年度当初予算編成におけるフレーム額につきまして、まず、特別区民税につきましては、ふるさと納税によるマイナスの影響を七十億円と見込んでおりますが、納税者数の増による増収を一定額見込みまして、今年度比で一・四億円の増と見込んでおります。

また、特別区交付金につきましては、地方法人課税の見直しによる影響をマイナス四十七億円と見込んでおりますが、来年度開設予定の児童相談所の運営等に係る基準財政需要額の増など、一定額を見込みまして、今年度比で八億円の減と見込んでいるところでございます。

また、地方消費税交付金につきましては、配分方法の見直しの影響を来年度はマイナス三十八億円と見込んでおりますが、消費税率引き上げによる増収を一定額見込みまして、今年度比で四十四億円の増と見込んでいるところでございます。

 

田中みち子 委員 特別区税について、今の答弁にもありましたけれども、平成三十年度に続いて、今年度の当初予算における財政見通しでは、特別区税についてこう書かれています。ふるさと納税の影響による減少を見込みつつも、人口増に伴う納税者数の増加を踏まえ、一定の増加を見込んだと、これはいわば人口増に支えられた財政運営ということです。

しかし、区の将来人口推計によれば、総人口は引き続き増加を見込みつつも、二〇三〇年には六十五歳以上の高齢者人口は二一%を超え、その二年後の二〇三二年には生産年齢人口が減少に転じるとなっており、高齢化の進展による社会保障費の増加に納税額が追いついていないことがわかります。さらに、本庁舎や小中学校の耐震補強工事や公共施設の老朽化による修繕経費の増加など、区財政を圧迫するようなことが考えられます。

こうした中で、財政の持続可能性についてどのようにしていくのか伺います。

 

財政制度担当参事 区では、保育待機児対策、区立児童相談所の設置など、子ども・子育て支援、また高齢者人口の増加等に伴う社会保障費の増のほか、お話のありましたような本庁舎整備、また老朽化した公共施設の更新需要など、今後、多くの財政負担を伴う行政課題が控えております。

現時点では、人口増や好調な企業収益等によりまして、歳入におきましては、ふるさと納税による減収を見込みつつも、一定の増収を見込んでおりますが、景気の変動を受けやすい特別区といたしましては、景気の後退期では単年度において急激な税収減も見込まれるなど、予断を許さない状況にあると認識しているところでございます。

こうした予期せぬ景気変動などにも十分耐え得るよう、財政調整基金の残高を予算規模の約一割とするなど、基金残高の確保に努めるとともに、行政手法の転換など、引き続き効果的な行政経営改革を進める必要があると考えております。

また、今後とも、国や都の補助を初め、あらゆる財源の確保に努めるとともに、施策の優先順位を見きわめ、さらに基金や起債の計画的な活用などによりまして、持続可能で強固な財政基盤の確立に努めてまいります。

 

田中みち子 委員 今議会に提出された決算資料からは、経常収支比率を初め、見た目には健全な財政運営を維持しているようですが、今後の状況を考えれば不安要因が大きいです。また、財政の効率化、健全化に向けた努力は重要なことですが、一人当たりコストなどの効率追求にそぐわない事業もあります。子どもや女性、介護などの安心はいろいろな施策の積み重ねで得られるものであり、事業成果は単純なコスト計算でははかれないこともあることを認識した上で、今まで以上に持続可能な財政運営の取り組みを強化することを求めます。

次に、子どもの権利が守られた持続可能な社会の実現についての質問です。

地球温暖化の防止を目指す国連気候行動サミットが先月二十三日に開かれました。登壇した約六十カ国の代表が温暖化対策を宣言、日本は登壇する機会もない中で、各国政府の代表をにらみつけ、時には涙を浮かべ、大人への怒りをあらわに訴えていたのは、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん、十六歳です。この少女の活動や発言は世界中が反響しました。

グレタさんは、子どもの権利条約ができて三十年、世界のリーダーたちは私たちの権利を守るという約束を破り続けてきた。気候危機は子どもたちの権利の危機だとして、彼女を含めた八歳から十七歳までの十二カ国の少年少女十六人が、国連の子どもの権利委員会への救済の申し立てを行っています。

生態系が破壊され、多くの種の絶滅が始まっているのに、経済ばかりを優先し続ける大人への怒りと、地球が壊滅的な結果をもたらす危機にさらされている子どもたちから突きつけられた、私たちを見捨てているという絶望の言葉が胸に突き刺さります。環境に配慮した持続可能な社会への転換が進まず、科学が危機感を伝えているにもかかわらず、政策を進める権力者は見て見ぬふりを続けていくことに対する怒りと批判は当然のことです。

世田谷区は、子どもの権利条約をいち早くつくり、子ども・子育て応援都市宣言も行っています。次世代を担う子どもたちへ、持続可能な環境をどう守り、その責任を果たしていこうとするのでしょうか。保坂区長の見解を伺います。

 

区長 お話があったように、国連におけるグレタ・トゥーンベリさんの激しい、また非常に直接的な訴え、本当に一人の少女が、たった一人で座り込んだ、これがスタートだったと思いますが、それがだんだん輪を広げて、この日は世界中で、国によっては十万人、そしてニューヨーク市でも、中学生、高校生がストライキということで町へ出たと聞いています。ニューヨーク市長は、君たちの、若い世代の勇気を称賛するというようなメッセージを出していたと思います。

トゥーンベリさんの言葉は、やはり私たち大人がこのような気象異変の社会をつくってしまったことに対する痛烈な若者・子ども世代の怒りだったとともに、そのことを認識しながら、表層的な対策で、結局、気象異変は激しく進行していることに対する行動を促す問題提起だったと思っております。

これまでもSDGs、パリ協定、持続可能な社会を議論されてきましたし、世田谷区でも世田谷版RE一〇〇や、あるいは再生可能エネルギーの自治体間連携等をやっております。しかしながら、まだまだそれでは足りない。一人一人の区民、そして世田谷区の子どもたちがこの気象異変やグレタさんの言葉をどう受けとめたのかということも含めて、同世代ですから、恐らく強く揺さぶられた子どもたちも多かったのではないかなと思います。

この次世代の訴えをしっかり受けとめて、環境政策に力を入れて、具体的な気候変動に抑止をかけるような方策を、九十一万都市として我が区で実現するとともに、日本という国が、少なくともこういうサミットで演説できる国に変わるように、改革を促したいと思います。

 

田中みち子 委員 区民の方で、世田谷って世界を耕すという言葉にも通じるよねなんて話してくださった方がいて、まさに足元で私たちのこの基礎自治体の動きというのは世界に発信できる。区長がさらにこれを脱炭素への取り組みというのをしっかり推進していただくことでかなうものだと期待していますので、ぜひしっかり進めていただきたいと思います。

しかしながら、一方で、持続可能な社会の実現に反すると考えられているのが、ゲノム編集食品や除草剤、電磁波などの影響について、安全か安全でないかはっきりわからない中で不安に思う区民の声を受けとめて、予防原則に基づいた対応を求めてきました。特にグリホサートを主成分とする除草剤については、私も含め三人の議員が先日の一般質問で取り上げましたけれども、それだけ不安視する声が高まっていることのあらわれです。

除草剤については、平成三十年二月の質問で取り上げましたけれども、このときの道路用予定地で散布された除草剤は、発がん性など人体へも、持続可能な生態系へも悪影響を及ぼすと指摘される化学薬品グリホサートを主成分とする除草剤だったことから、この散布を禁止して、予防原則に基づいた対応を求めました。残念なことに、今年度は経堂地区会館や梅丘図書館などで使用されており、何ら対策を行ってこなかったことは問題です。

また、先日の他会派の答弁では、環境基本計画後期の改定に当たって、農薬の適正使用について、区民、事業者の環境行動計画指針や区の取り組みに盛り込むことを検討するということでした。けれども、この農薬の適正使用にとどまっていては、予防原則に基づいた安心安全な対策とは言えません。

将来的に二世代、三世代後に影響を与える可能性が否定できない中で、人体と生態系へも悪影響を及ぼすと指摘される化学薬品が主成分の除草剤は使用禁止とすべきです。公共施設関連施設では、ぜひとも徹底していただきたいと思いますが、見解を伺います。

 

環境政策部長 除草剤を含む農薬の使用につきましては、国の通知で住宅地等における適正な農薬使用についてと、こうした通知の中で、各自治体から土地、施設等の管理者、あるいは農薬使用者等に対しまして、周辺住民、子ども等に健康被害を及ぼさないような指導がございまして、農薬散布を行う可能性のある区の施設管理者に対して周知してまいったところでございます。

今回の緊急的に公共施設を対象としました調査を実施しましたところ、平成二十九年度から今年度までの三カ年に八施設で、当該化学物質を含んだ除草剤を使用した例がございましたが、いずれも適正かつ近隣に配慮した使用だったことを確認しております。

区といたしましては、区民の安全安心の観点から、区施設におきましては、当該化学物質を含有する除草剤は使用しない方向で検討しております。

 

田中みち子 委員 今、適正な農薬使用というのをこれまでやっていたと、やはりこの農薬使用が適正でまいていればいいだろうということでまかれてきてしまったことが問題だったということでこれまでしてきたわけで、そういった意味では、今回除草剤は使用しないという方向で検討してくださるということで、ありがとうございます。ぜひ早急にしっかり進めていただきたいと思います。

そして、先ほども申し上げましたとおり、環境基本計画後期計画には、農薬の適正使用についても盛り込まれることが検討されますが、こちらについても、今の答弁を必ず生かしていただきたいと要望します。

今の区長答弁で、この環境基本計画の見直しは、誰一人取り残さないSDGsの取り組みをしっかりしていくんだと、持続可能な社会の実現をしていくんだということでもありました。やはりこの人体と生態系に悪影響を及ぼす、こういうふうに既に指摘されている化学薬品を使用した農薬系の薬剤の使用、こういったものは、今の区長答弁とは相反するものだと認識します。ぜひ子どもの権利が守られて、そして持続可能な環境、こういった社会を実現する、こういった意味でしっかりと実効性のある環境基本計画を策定することを改めて要望したいと思います。

次に、安全で災害に強いまちづくりについてです。

先ほど来、他会派からもさまざまに質問がありました。台風十五号における千葉県などの被害は甚大であり、昨今の温暖化により、激甚化する災害への対策を根本から見直すことが求められます。

今回の台風では、住宅被害の九割が一部損壊だったため、修理費を特例として国費で支援するとの発表がありました。激甚災害が常態化する中で、実態を踏まえた緊急対策を講じることができるように、日ごろから災害対応の検証を行って、課題を次に生かした対策が求められます。見解を伺います。

 

危機管理室長 台風第十五号によります被害につきましては、千葉県を中心に大規模で、長期間にわたる停電、断水、屋根の飛散などの被害が広範囲で発生し、区内でも死亡者が一名発生するなど、甚大な被害がございました。これらを踏まえまして、区では、区長を中心に関係部を招集しまして、避難所となる小中学校などの被災時に活用する資源などのリストアップをし、大規模停電に対する対策を検討しているところでございます。

区としましては、このような点検や検討に基づき、今回の台風被害の教訓とそれに伴う取り組みなどを早期に実行できるよう対応するとともに、来年度の修正を予定しております地域防災計画に反映してまいります。

 

田中みち子 委員 今回の大規模停電で、放送も受信できない中で、携帯電話の充電にも苦労した地元被災者たちからの情報で、大規模停電や断水などの実態が明らかになるにつれてライフラインの重要性を改めて認識させられました。

そこで、世田谷区内の水、非常用電源の確保はどのようになっているのか確認します。

 

危機管理室長 災害時の水の確保につきましては、区内及び近隣区に十二カ所あります給水拠点において給水することになっております。各避難所では、アルファ米と粉ミルク用の水は備蓄しておりますが、あわせてスタンドパイプを活用した応急給水資機材等を配備し、給水する計画となっております。

電源確保につきましては、区役所本庁舎、総合支所、まちづくりセンターは、非常用発電機やガソリン式、ガスボンベ式の各発電機と一部電気自動車などさまざまな資源を活用し、三日間の電源を確保しております。また、避難所の非常用電源につきましては、従来、ガソリンを燃料とする発電機のみの備蓄でしたが、法令による危険物貯蔵の量制限があるため、この間ガスボンベ式発電機を全避難所に二台ずつ配備したり、ソーラーパネル一体型蓄電池の導入を開始し、使用する電気機器を絞って、おおむね三日間の電源を確保しております。

 

田中みち子 委員 避難所でおおむね三日間ということで、ちょっと不安です。あらゆる災害により停電というのは起こってくるわけです。千葉県各地の自治体では、行政無線がバッテリー切れなど、使用不能な事態になっていたことからも、できるだけ多くの公共施設に自立電源を確保すべきです。

気候変動対応が迫られる中、RE一〇〇に向けた取り組みを加速する上でも、太陽光パネルと蓄電池を導入し、バックアップ体制を進めるべきと考えますが、見解を伺います。

 

危機管理室長 世田谷区地域防災計画における被害想定では、停電率が一九・四%とされております。また、昨年の台風第二十一号の被害がございました大阪府では、停電が最大で九十七万件に達しております。

このような想定と過去の災害事例等を踏まえますと、全ての公共施設に自立した電源確保は財政的にも困難であると考えておりました。しかしながら、千葉県の大規模停電の被害状況を考慮しまして、特に避難所につきましては、ガソリン式発電機、ガスボンベ式発電機の配備のほか、御指摘の太陽光パネルと蓄電池等を一部配備している避難所もございます。一定の電源確保をしておりますが、区長の指示のもと、他自治体の避難所の電源に電気自動車を活用するなども参考に、新たな電源確保を検討しております。

今後も区としましては、業務継続計画において非常時優先業務を災対各部ごとに整理し、業務の執務環境の確保のための庁舎や電気等についてまとめておりますので、この計画に基づいた適切な対応に努めてまいります。

 

田中みち子 委員 新たな電源を確保することを検討するということでしたが、先ほど、午後一番の質問でもお話がありましたけれども、品川では公共施設全てに蓄電池が導入されていますよというお話があったかと思うんですが、そういった先駆的な自治体の事例など、ぜひ参考にしていただいて、何とか積極的に早急に対策を進めていただきたいと思います。

また、被災しますと、誰もが大きなストレスを抱える生活を強いられることになります。乳児を抱える母親は母乳の出が悪くなったり、また断水すればミルクの調乳も困難となります。これまでも災害時に有効な液体ミルクの導入について取り上げてきましたが、その後の検討状況を伺います。

 

危機管理室長 液体ミルクにつきましては、昨年八月、厚生労働省が液体ミルクを調整液状乳として製造、販売を可能にする規格基準を定めた省令を施行し、現在、国内メーカー二社により商品化されております。

この間の他自治体の動向を見ますと、残念でございますが、数自治体にとどまっており、備蓄につきましても二百個、六百個と少量となっております。また、既にスーパーやドラッグストアなどの取り扱いがふえつつあり、近々、大手コンビニエンスストア二社でも、子育て世代や来日外国人客の関心が高く、需要増が見込めることとし、販売を開始するとの報道がございました。

区としましては、液体ミルクは価格面や賞味期限、保存方法、別容器に移しかえる必要があるなど課題が挙げられておりますので、基本的には区民による自助による備蓄を推奨し、都の協定先から調達等により対応してまいります。

 

田中みち子 委員 今その課題ということで、価格面とか賞味期限、保存方法とか御指摘がありましたけれども、このあたりはぜひ回転備蓄というようなところも何とか工夫をいただいて、せめて指定されている母子避難所だけでも何とか備蓄できるように対策を進めていただきたいと要望いたします。

また、女性の防災リーダーの育成などをこれまで求めてきたわけですけれども、この間の進行状況、現状と課題などがございましたら、お願いいたします。

 

危機管理室長 多様性に配慮した女性ならではの視点で地域の防災活動等において活躍していただくことを目的に、昨年十一月から女性防災コーディネーター養成研修を実施しております。研修は、全八回で町会・自治会、また青少年委員の方を中心に約四十名の受講者に参加いただいて、今月二十三日が最終回を迎えます。出席率も高く、受講の姿勢も熱心で、ほとんどの方が研修修了となる予定でございます。

研修では、防災知識や多様性に配慮した視点の習得はもちろん、研修修了後に地域でリーダーとして活躍できるよう、コミュニケーション能力やワークショップ等におけるファシリテート技術などを学ぶ講座も実施しております。

今後は、研修修了生が講師となって、地域の防災事業等のさまざまな場において、多様性に配慮した女性の視点からの防災についての啓発を推進していただくことを期待しており、区としましてもそのフォローに努めてまいります。

 

田中みち子 委員 ありがとうございます。今、四十人ぐらい受けられて、ほとんどの方が修了できたということで、たくさんの方がリーダーとなるんだということで心強いです。ただ、そのリーダーになったということで、顔の見える関係性がない自治体なんかに入っていくと、上から目線なんじゃないかとか、ちょっとありがちなことも考えられますので、ぜひそのあたりは区のほうでフォローいただいて、顔の見える関係性というのを事前につくっていただきたいということを要望いたしまして、総括の質疑を終わります。