令和5年第2回区議会定例会・一般質問
2023年6月16日(金)10:40〜 おのみずき
生活者ネットワークのおのみずきです。初質問です。よろしくお願いします。

はじめに、世田谷区におけるジェンダー平等施策の推進についてです。ジェンダーギャップ指数116位の日本において、世田谷区を含むこの社会には未だに根深い性差別が存在し、構造的に生み出される暴力・貧困・疾病が今なお女性たちを追いつめ、彼女たちの生存を左右しています。区には「多様性」というヴェールに覆い隠すことでこの事実から目をそらさず、正面から向き合っていただきたいと思います。これに関連して、以下二点質問いたします。
第一に、区職員の管理職における女性比率の向上についてです。私は、今回初めて議会に入りましたが、本会議や委員会の場で理事者側にほぼ男性しかいない光景を目にして、本当に驚愕しました。ジェンダーギャップ解消を目指す上で重要な管理職に占める女性比率向上について、区は過去にどのような取組みを実施し、効果はどの程度あったのか、お伺いします。また、役所の場合、制度は充実していることが多い一方で、それらを使いたくても使えない職場の風土が課題として挙げられます。制度を使いやすい職場環境づくりのために今後どのような取組みを実施していく考えか、ご答弁ください。
第二に、SRHR(セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)の先進自治体となるための、性教育の推進と実践のための環境づくりについてお聞きします。
今年5月に開催されたG7では、SRHRがジェンダー平等並びに女性・女児のエンパワーメントに不可欠であること、全ての人の包括的なSRHR達成に向けたコミットメントが再確認されました。かかる国際的な動向を踏まえ、SRHR推進の基盤を担う区でも一層取組みを強化していく必要があります。SRHRの基本的な指針は「セクシュアリティや妊娠・出産に関することを自分で決められる」ことですが、これには適切な教育と環境づくりを両輪で進めることが重要です。
まず、教育についてです。今年度より、文部科学省が主導する「生命の安全教育」が全国の学校を対象に始まりました。「生命の安全教育」は性暴力被害及び加害の防止に焦点を当てたものですが、文科省はこれを性教育とは位置付けていない上に、教材を見ても具体的な性の知識は扱われず、時間数や内容も現場に委ねられているため、実効性に疑問の声も上がっています。区では、実効性担保のためにどのような対策を講じているのか伺います。
また、現在行われている性教育は、性交や避妊、中絶等について取り扱わず、性暴力や性感染症、望まない妊娠の防止等、子どもたちに“避けるべきもの”ばかりを教えることで、性をタブー視する意識や誤った認識を強化しかねません。SRHRに関する教育機会の剥奪は、望まない妊娠やよりハイレベルのジェンダーベイストバイオレンスに繋がることが分かっています。すでに始まっている「生命の安全教育」や現行の性教育カリキュラムの限界に鑑み、包括的性教育の観点に照らした内容の補完が必要ではないでしょうか。区で現在作成中のリプロダクティブ・ヘルス&ライツのリーフレットを活用しながら、子どもたちが自らの性や身体をポジティブに捉え、他者との健康的な人間関係を構築できるような教育を進めるべきと考えます。見解を伺います。
教育・啓発に加えて、性や身体のことを相談できる体制・環境づくりも重要です。都では、昨年10月に都内の中学生以上の10代を対象とした相談窓口「とうきょう若者ヘルスサポート(わかさぽ)」を開設し、半年程度で対面・電話・メールで計400件程度の相談がありました。中には、性行為や性器に関する相談等もあったそうです。こうした思春期ならではの性や身体の悩みを、世田谷区内でも身近な場所で安心して相談できるようにすべきです。
特に、相談内容に性暴力被害が含まれる場合、事態はより深刻です。内閣府が昨年6月に実施した「若年層の性暴力被害の実態に関するオンラインアンケート及びヒアリング結果」によると、約4人に1人が何らかの性暴力被害にあったことがあると回答し、その半数以上が性暴力被害をどこにも相談をしていません。かかる現状に鑑み、区でも若年層向け相談窓口を新設するとともに、必要な場合は確実に相談支援にアクセスできるように、行政・学校・産婦人科・助産師・薬局・ワンストップセンター等の連携を強化するべきと考えます。見解を伺います。
次に、実家がセーフティーネットにならない困難を抱えた若者への生活保障制度に関連して、三点質問いたします。
はじめに、大学生世代の若者への支援について区長に伺います。なお、質問を通して申し上げたいことはただ一つです。困難に直面してもセーフティーネットが何も用意されていない若者を、区で支援いただきたいのです。
私の元には今まさに困っている大学生からの声が寄せられています。共通しているのは、社会的擁護を経験していないこと、そして過去の親からの虐待経験や家庭内の問題により、親を頼れない(頼りたくない)という点です。実家の経済状況は関係ありません。奨学金を借りながら大学へ通っている人もいます。
こうした実家がセーフティーネットにならない学生は、どんなに生活が困窮しても生活保護の対象外のため、バイト収入だけで生活費と学費を工面しなければなりません。特に住居費は、世田谷区の家賃相場はワンルームでも8.56万円と極めて負担が大きいです。大学を休学すれば奨学金は休止となり、これではせっかく区内大学に進学することができても、一度生活が困窮状態・不安定な状態に陥れば、ここに住み続けることは実質困難です。八方塞がりの中、大学を中退せざるを得ない学生も少なくないと聞いています。これはその後の生涯所得に大きな影響を及ぼす要因となりえます。
現在検討中の次期基本計画では、区政が目指す方向性として『あらゆる世代が安心して住み続けられる世田谷をともにつくる』ことを掲げています。この「あらゆる世代」には、今申し上げたような人達は想定されているでしょうか?
若者と一言でいっても、18歳~20代前半のこの世代には特有の困難を抱えた人達がいることを受け止め、区として対策を講じてください。まずは早急に、区内に住んでいる若者がどういう問題に直面し、どういう支援ニーズを抱えているのか、実態調査をしていただきたい。その先に彼らが希望を捨てずに生きられるように、区として行動をお願いします。区長の見解を伺います。
また、こうした背景を踏まえた若者への具体的な支援の在り方について、区独自の奨学金制度の拡充、居住支援の二つの観点から質問いたします。
第一に、区独自の給付型奨学金の拡充です。区では、基金を活用した「せたがや若者フェアスタート事業」は制度の拡充が着実に進む一方、社会的擁護を経験していない子ども・若者が利用できる給付型奨学金制度は未だありません。この間、国の方でも少子化対策の一環として、JASSO給付型奨学金制度の対象拡大方針が示されました。ぜひ区も検討を進め、必要な人が確実に使える制度を作ってください。生活保護世帯やひとり親世帯などの従来のカテゴリーで安易に線引きをせず、社会的擁護の経験はないものの、親や親族を頼ることができないゆえに困窮する若者が広く対象となるようにお願いします。見解を伺います。
第二に、居住支援についてです。多くの若者は、国土交通省の住宅セーフティーネット制度、東京都「賃貸住宅供給促進計画」ともに、住宅確保要配慮者に規定されておらず、居住支援が必要な層として想定されていません。しかし、困窮する若者にとって、住まいの確保は自立のために最も重要で支援が必要な分野です。
そこで提案します。世田谷区は約5万戸の空き家を抱えています。例えば、豊島区では従前の空き家利活用事業を改定し、空き家オーナーとシェアハウス運営者のマッチング機能を追加することで、ひとり親の居住支援を実施しています。区でも、若者向けシェアハウス事業を展開する団体等を対象に「せたがや空き家活用ナビ」によるマッチング支援ができないでしょうか。あるいは、今後急速に増加が見込まれる孤独や生活補助ニーズを抱えた高齢単身世帯と、住まいニーズを抱えた若者との多世代型シェアハウス事業を区が支援する案はいかがでしょうか。
住まいは人権です。こうした空き家の利活用やシェアハウス事業への支援を通じて、社会的擁護を経験していなくても、虐待経験者など、親や親族を頼ることができない事情を抱える若者を対象とした居住支援制度を早急に検討、整備いただきたいです。見解を伺います。
最後に、野心的目標の達成に向けた気候変動対策の更なる推進に向けて、質問いたします。
4月に策定された区の「地球温暖化対策地域推進計画」では脱炭素社会の構築に向けた長期目標として、2050年までにGHG排出量の実質ゼロを掲げています。区全体のGHG排出量の4割以上は家庭部門起源であることから、目標達成には区民一人ひとりの気候アクションが極めて重要です。
ぜひ世田谷区でも、全世代を対象とし、また一人でも多くの区民を巻き込む形での「気候市民会議」を早期に実施いただきたいです。なお、会議実施にあたっては、予算、専門家、ファシリテーター、参加者をどう確保するかが重要な検討事項となります。設計の際は、地域の環境人材や知見、ネットワーク等を活用しつつ、無作為抽出によるミニパブリックスを構成することで、参加者が環境に興味を持っている人たちだけに偏らないよう留意ください。また、今年度実施予定の「せたがや子ども気候会議」を含め、アウトプットをしっかり区の政策に反映し、アクションに繋げていただくよう求めます。見解を伺います。
以上で、壇上からの質問を終わります。