区議会 第1回定例会 おのみずきが一般質問を行いました。質問全文をご覧いただけます。

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2024年第2回定例区議会 

6月11日 おのみずき 一般質問

通告に基づき順次質問します。まず、今年4月に施行となった「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」の下で、新たな女性支援を実施していくにあたり、区には現状どのような課題があるのかという観点から伺ってまいります。

前提として、本法律の意義を改めて確認します。様々ありますが、私は大きく3つあると考えています。

第一に、公的な女性支援の目的が「売春防止」から「女性福祉」へと大きく転換したことです。従来の公的機関による女性への直接的支援は、1956年成立の売春防止法第4章「保護更生」に規定された婦人保護事業を通じて行われてきました。相談支援の実態は福祉サービスであったにもかかわらず、法的根拠が刑事法だったこともあり、女性たちを支えるこの分野だけが、2022年まで「福祉」として位置付けられてこなかったのです。

第二に、女性支援施策の基本理念に「当事者の意思の尊重」が掲げられたことです。一人ひとりの意思が尊重されながら、女性たちの福祉が増進されるよう、多様な支援を包括的に提供する体制を整備することが求められています。こうした中、市区町村にも初めて女性支援の責務が課された点も重要です。

第三に、新法は女性たちが直面する困難は個人の自己責任ではなく、社会の構造的な問題であることを明記したことです。第1条では『女性が日常生活又は社会生活を営むに当たり女性であることにより様々な困難な問題に直面することが多い』、つまり困難を生み出す根本にこの社会の性差別構造があることを述べています。支援に関わるすべての庁内関係所管においても、ジェンダーに関する深い理解が必須となります。

さて、この女性支援新法を単なる理念で終わらせず、“生きた法律”とするためには、まずは福祉サービスの実施主体である自治体での取組みが極めて重要です。社会福祉は徐々に制度が洗練化されていくに伴い、児童福祉、障がい者福祉、高齢者福祉等の独立した部署ができ、庁内体制も整備されていったように、新たな領域である「女性福祉」の構築に際しても、支援にかかる体制の強化・見直しは避けて通れない課題です。

かかる問題意識の下で、4点質問します。

第一に、女性福祉の現場を担う女性相談支援員についてです。従来の婦人相談員から名称を変え、新法第11条で「地方公共団体において、困難な問題を抱える女性の発見に努め、その立場に立って相談に応じ、及び専門的技術に基づいて必要な援助を行う職員」とされています。支援の軸となる重要な職ですが、昨年都が実施した実態調査によると、都内に配置されている女性相談支援員の約4割が非常勤で働き、また約8割がひとり親家庭への資金貸付等を担う「母子・父子自立支援員」と兼務、さらに在職年数が3年未満の職員が最も多い実態が明らかとなりました。

新法の下での支援体制構築に向けて、女性相談支援員の支援力・相談機能の強化が課題として共有される中、区の現状はどうでしょうか。区内5支所の保健福祉センター子ども家庭支援課に配置された女性相談支援員からは、『担当業務が多く、支援に集中したくてもできない』との声も聴かれます。女性相談支援員の配置や業務状況に関する現状の課題について、区の見解を伺います。

第二に、女性支援事業の専管組織の在り方についてです。現在、困難な問題を抱える女性への支援事業は、生活文化政策部人権・男女共同参画課が担当所管として、基本方針策定に向けた庁内検討を主導しています。しかし、従来の婦人保護事業の下での福祉サービスは、そのほとんどが女性相談支援員によって提供されており、DV防止法の下で追加的に整備された「配偶者暴力相談支援センター」の機能を協働で担うことを除き、両者は基本的に連携していません。過去の会議録を見ると、福祉サービスに関わる事業を、福祉領域ではなく区民生活領域の部署が主管するという組織体制のねじれに関しては、2018年の配暴センター機能整備の際にも、議会で指摘されていました。

国は新法制定を受け、厚生労働省社会・援護局総務課に女性支援室という専門部署を新設しました。また、江東区は、福祉事務所の女性相談と、男女共同参画支援センターの配暴センター機能を生活支援部生活応援課へ移管する組織改正を行ったそうです。区においても、困難を抱える女性たちに最適な支援を届けるには、女性支援事業の専管組織を庁内のどこに位置づけるのが適当か検討すべきです。新法の目的に掲げられる「女性福祉の増進」にかかる取組みを進めるにあたり、本庁と支所の連携等、組織的な観点からどのような課題があると考えているのか、区の見解を伺います。

 第三に、女性支援事業を庁内横断的に進めるための体制構築についてです。新法の基本理念にある通り、女性支援事業は人権擁護やジェンダー平等を目指す取組みと切り離しては進められません。

 先日、国立市を訪問し、「女性パーソナルサポート事業」をはじめ、同市の先進的な女性支援施策についてお話を伺いました。同市では、女性の人権を擁護する観点から、2017年4月の組織改正で女性支援を政策経営部市長室に移管し、人権・ジェンダー平等と一体的に取り組める体制としたそうです。なお、同じ部署には専任の女性相談支援員が4名配置されており、相談から支援まで一貫して関わっています。

 人権やジェンダー平等に関する所管について、都内他自治体を見ると、人権施策の所管は23区の約9割が、ジェンダー関連施策の所管は約8割が総務部又は企画部に配置されており、当区のように区民生活領域に配置している区はごく少数です。そもそも、なぜ女性関連事業が区民生活領域にあるのか、歴史的な経緯を調べますと、区では区民部(後の生活文化部)に女性政策室が新設された1991~1996年当時、女性の問題=夫婦関係や子育て・介護等、家庭生活における問題と捉えられ、女性の“家庭性”を重視した組織編制だったことが分かりました。

 さて、区は「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」第7条で性差別を禁止し、人権の尊重とジェンダー平等社会の実現を謳っており、4月からスタートした基本計画にも「ジェンダー主流化」を明記しています。かかる背景を踏まえ、「人権」や「ジェンダー」といった区政運営の骨格となるべき視点とともに、女性支援事業を庁内横断的に推進可能な体制を構築すべきと考えますが、区の見解を伺います。

 第四に、新法の理念に沿った女性支援の実施には、庁内理解の促進が極めて重要です。なぜ今女性支援が必要なのかという点を含め、ジェンダーと既存の社会構造への理解は必須です。これが無いと、支援につながった女性が抱える困難の背景を十分に理解できず、結果その人個人の責任に帰してしまうこともあり得ます。新法の基本理念の中核に据えられた「当事者の意思の尊重」を支援のあらゆる場面で徹底すべく、少なくとも福祉所管に配属となる新任職員に対して、女性支援に関する研修カリキュラムを提供し、理解促進を図るべきです。見解を伺います。

 次に、女性支援新法に関する区民へのアプローチについて2問質問します。第一に、当事者の声を反映した基本方針策定についてです。困難を抱える女性への支援のあり方を検討する際には、DV被害者や性被害に遭った方等、すでに行政内部でも「支援が必要な人」との認識が浸透している対象者“ではない”人たちのニーズにも、目を向ける必要があります。

 都の基本計画策定時には、一時保護利用者や婦人保護施設入所者等、支援の緊急度や重度が比較的重い方への調査が行われましたが、他方で少しの専門的助言や同行支援等によって、自分で道を切り拓ける“比較的深刻度の低い相談者”の声は聴かれていません。

 「多様な支援を包括的に提供する体制」を整備するためには、従来見えていなかった、公的支援から切り捨てられてきた女性たちのニーズこそ丁寧に拾っていくべきです。国に先立ち、政令指定都市として初めて若年女性支援事業「LiNK」を実施した札幌市では、アンケート調査とヒアリング調査の実施により、初めて困難を抱える若年女性の実態が明らかになりました。区も基本方針の検討にあたり、実態調査等を通じて、新法の対象となりうる当事者の声を方針策定過程に反映させるべきと考えますが、見解を伺います。

 第二に、区民への周知啓発についてです。どんなに素晴らしい法律ができても、裨益者となる女性たちに情報が伝わっていなければ全く意味がありません。国の基本方針では、相談窓口や活用できる施策の積極的な周知に加え、自己がかけがえのない個人であること、困難に直面した場合は支援を受けることができること等の意識の醸成、すなわち女性のエンパワーメントを目的とした教育・啓発等に努めることを、地方公共団体にも求めています。

 「今の状況を招いたのは自分のせい」「自分には誰かに助けを求める資格がない」と思っている女性たちにとって、公的支援はとてもハードルが高く、遠いものです。言語や障がい等が障壁となり相談窓口にすらつながれていない人もいます。周知啓発は待ったなしの課題です。まずは、区のHPで発信する情報を区民にも分かりやすく整理・拡充するとともに、既存の区民向け講座の一部に女性支援施策に関する情報を含める等、新法に関する区民の周知啓発を積極的に進めるべきです。区の見解を伺います。

 最後に、地方自治に対する区の考え方について伺います。今年度、新規事業としていよいよ「世田谷版気候市民会議」が実施される予定です。所管の環境政策部がこの間、様々検討を重ねて会議実施に向けた準備を進めていますが、ここで改めて、いま世田谷区で気候市民会議を実施することの意義について、特に地方自治の実践という観点から、区長の見解と区民に向けたメッセージを伺いたいと思います。

 以上で壇上からの質問を終わります。

(再質問)

女性支援新法の下で「女性福祉」を構築するには、行政の福祉所管と人権・ジェンダー所管の緊密な連携が不可欠です。先月24日の区民生活常任委員会では、新法施行に伴う区の対応方針について報告を受けましたが、主題はあくまで女性“福祉”の話であり、あり方検討会の構成も約8割を福祉所管の部署が占めているにもかかわらず、福祉保健常任委員会や子ども・若者施策推進特別委員会には報告がされていません。議会への報告のあり方について再検討を求めるとともに、女性福祉の体制構築に向けて、福祉所管を統括する中村副区長の見解を伺います。