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2024年第3回定例区議会
9月19日 おのみずき 一般質問
はじめに、区のハラスメント対策をめぐる課題について三点伺います。
今年度に入り、区が運営する新BOP学童クラブで派遣の指導員として働く方より、職場でのハラスメントに関するご相談をいただきました。新BOPにおける労働者派遣事業は、区採用の会計年度任用職員の指導員が十分に確保できない状況が続いたことを受け、昨年8月より導入されました。9月現在、32箇所の新BOPに43名が配置されています。
相談された方は、有資格者でまだ若く、同僚の指導員の方々からも、短期間で仕事を覚え大変優秀だったと聞いていますが、業務開始から1か月程経った頃から直接の指揮命令を受ける新BOP事務局長の言動に悩まされるようになりました。派遣会社を通じて区へ何度も被害を訴えたものの、有効な策は講じられず、相談者の方は体調悪化もあり、採用から半年経たずに退職されました。現在、当該新BOPでは依然欠員が出ている状況です。
類似の事例で退職された方は他にも複数名いると聞いています。各所で連日のように人手不足が叫ばれる中、改めてハラスメントが区政運営に与える影響について区の認識を伺います。
また、今回の一件を受けて区の「職場におけるハラスメントの防止に関する基本方針」や関連要綱を確認し、職員厚生課に照会したところ、派遣労働者へのハラスメント防止規定の適用について、これまで庁内で議論がされていなかったことが分かりました。厚生労働省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」に加え、労働者派遣法第47条は、各種ハラスメントの防止に関して、雇用管理上及び指揮命令上必要な措置を講じる義務を明記しています。
区では、10月からの区立保育園における保育士の人材派遣をはじめ、今後本格的な労働者派遣事業の導入に向けた検討が進められていると聞いています。更なる雇用の不安定化を危惧する一方、雇用形態によってハラスメント相談窓口へのアクセスが制限されることがないよう、区の職場で働く派遣労働者の方もハラスメント防止規定に位置づけ、被害に遭った場合は苦情・相談窓口に相談できる旨を周知すべきと考えますが、見解を伺います。
区の方針によると、既存の相談チャネルで解決しない等より厳正な調査・対応が必要な場合、ハラスメント対策委員会を設置できます。その目的は、職員からの苦情を調査・審議し公正な対策を図ること、ハラスメントと断定できない場合も、原因や問題点を明らかにし、再発防止や職場環境の改善に向けた対策について意見を申し出ることです。
しかし、この対策委員会は、基本方針が策定された2020年以降、開催実績は1回のみです。直近1年間で確認したパワハラ・セクハラによる懲戒処分案件2件も、対策委員会は設置されていません。ハラスメント相談窓口に来た相談のほとんどは人事課の直接対応によって処理されているのが実態です。
とじられたハラスメント対応を続けていても、組織全体のアップデートにはつながりません。従来の対策的な発想ではなく、ハラスメントは重大な権利侵害であるという基本的理解を共有した上で、第三者も交えた公正な判断の機会を担保し、組織として対応の知見を蓄積すべく定期的に扱った事案の総括を行う等、再発防止の取組みに活かすことが重要です。かかる視点も踏まえ、ハラスメント対策委員会の在り方を見直し、組織全体での再発防止と人権侵害を容認しない職場環境づくりにつなげるべきと考えますが、区の見解を伺います。
次に、新BOP運営の在り方について二点伺います。
2005年より全区立小学校で区が実施する新BOP事業について、特にこの数年、共働き世帯が当たり前となる中で増加し続ける学童保育ニーズに対し、大規模化・狭隘化、指導員不足等、課題は依然山積しています。わたしも先月いくつかの新BOPを見学し、職員の方々は本当に大変なご苦労の中で日々子どもたちに向き合っていただいていることが分かりました。
様々な制約がある中で、区の「放課後児童健全育成事業の運営方針」に掲げられた理念との乖離や、子どもの権利を十分に保障できていない実態も伺っています。こうした中特に心配なのは、障害がある子どもや配慮が必要な子どもへの対応です。要配慮児童数は、配慮を要する高学年児童の受け入れが始まった2010年度には168名だったのが、今年度は452名と約2.7倍に増加しています。特別支援学級の全校設置も控え、今後さらなる要配慮児の学童保育ニーズが見込まれます。
全国学童保育連絡協議会によると、子どもたちが学童保育で過ごす時間は年間約1,680時間に及びます。学童クラブは単なる放課後の時間を過ごす場ではなく、子どもたち一人ひとりの自立と成育を支える大変重要な場です。今後さらに増加する要配慮児への対応について、区としてどのように強化していくのか伺います。
また、放課後児童健全育成事業である新BOPでは療育を行わないとされていますが、実際、現場では日々療育的対応を求められています。しかし、対応にあたるパートタイムの指導員DSTやプレイングパートナーに資格要件はなく、研修機会も与えられていないのが現状です。
今後予定されている新BOP指導員の配置基準改定に伴い、指導員DSTも基準定数に含めていくなら、この方々に対しても希望者には研修機会を提供すること、定期巡回の強化に加え、巡回が来ない場合も適時専門職に相談できる体制とすること等、区として然るべきサポート体制の強化が必要ではないでしょうか。見解を伺います。
次に、条例に基づく子どもの権利の主流化と推進計画に関連して三点伺います。
第一に、条例の運用にかかる評価・検証システムについてです。現在、区では2001年制定の「子ども条例」を時代に合わせて大幅改正し、「子どもの権利条例」とすべく検討が進められています。先般示された改正条例素案の中で、条例の評価・検証を担う第三者機関「(仮称)子どもの権利委員会」を新たに設置する旨を打ち出した点は評価します。
また、区は改正条例により「子どもの権利が保障されるまちを文化として築いていく」ことを目標に掲げています。これは、昨年7月に出された国連事務総長ガイダンス・ノートが示す「子どもの権利の主流化」と通じる理念であり、従来は子どもの権利とはあまり関係がないと思われてきた分野や事業を含め、子どもの権利の視点を入れて捉え直すことで、社会変革につながることを期待します。
これに先立ち、今夏、大阪府泉南市へ視察に行きました。同市は、2012年制定の「子どもの権利に関する条例」の下で、子どもの権利条例委員会や市民モニター制度を設け、条例の運用状況を定期的に検証しており、すでに10年以上の実績があります。しかし、条例制定10年の節目に中学生の自死事件が発覚し、評価検証システムの実効性が問われる事態となっています。条例委員の方は、評価対象事業が限定的かつその選定基準が不透明であること、評価に市民的感覚が反映されないこと等を課題として指摘されていました。
こうした先行自治体の事例は良い面だけでなく課題も含めてぜひ参考とし、当区ではさらに良い制度を構築してください。例えば、今提示されている評価・検証をめぐる体制図を見ると、子ども・若者部の所管事業と教育所管の一部事業以外の子ども・若者関連事業がどのように課題共有会議に報告されるのか見えてきません。議論の俎上に載らなければ、条例に規定される子どもの権利に照らした調査・評価・検証の対象とならない可能性があります。改正条例に基づく「子どもの権利の主流化」の推進に向け、第三者機関による評価・検証システムをどのように活かしていくのか、区の見解を伺います。
また、改正条例を“つくっただけで終わらせない”ためには、積極的に権利擁護を推進すべきわたしたち大人側の抜本的な意識改革と覚悟が求められます。その一環として、「(仮称)子どもの権利委員会」から出された政策提言は、単に区長へ報告して終わりではなく、区の施策に活かす旨を条例や計画等に明記すべきと考えますが、見解を伺います。
第二に、条例の推進計画である「子ども・若者総合計画(素案)」についてです。前提として、子ども・若者は均質的な存在ではない点を強調したいです。つまり、ジェンダー、性的指向、民族、市民権、障害等に基づく様々な交差的差別事由によって、より取り残されやすい子ども・若者がいるということです。
しかし素案を見る限り、こうした多様性・交差性が十分に考慮されているとは言い難いです。障害の有無や家庭の経済状況に関しては、関係所管の連携を含め、具体的な施策に言及がある一方、その他に関しては「悩みや困難、生きづらさを抱える子ども・若者への支援」にまとめられ、施策展開の方針も一気に解像度が下がります。本計画に包含される子ども・若者・子育て支援をめぐる諸課題への施策を考える際、この社会のジェンダー不平等やあらゆる不公正を無視はできないはずですが、そこに対する具体的なアプローチにほとんど言及がありません。
特に、この間区から『ジェンダー平等の実現及びジェンダー主流化は、区政の骨格となる重要な視点』とご答弁をいただいてきた経緯を踏まえ、本計画においても、ジェンダー主流化の観点から、多様な女の子や若年女性が置かれた状況、抱える特有のニーズや困難にももっと目を向けた内容とすべきと考えますが、区の見解を伺います。
最後に、区の少子化対策についてです。3月の予算特別委員会で取り上げましたが、本計画素案でも子ども・若者政策と少子化対策はリンクされ、“多様な価値観を尊重”“それぞれの人生のあり方を応援”と言いつつ、出会いの機会の充実や若者へのライフプラン教育を含め、結婚・妊娠・出産に介入する施策が書かれています。
しかし、区がどれだけキレイゴトを並べても、性をめぐる選択と自己決定には依然多くの課題があります。選択的夫婦別姓や同性婚も未だに認められず、子どもたちへの包括的性教育は不十分、避妊や安全な中絶へのアクセスは限られたままです。障害女性等マイノリティ女性のリプロは依然として容易に否定される現実もあります。思春期世代へのリプロ周知啓発は大事な一歩ですが、それだけでは全然足りていないのです。
国連人口基金も警告するように、問われるべきは人口政策・経済政策の観点からの人口減や出生率ではなく、こうした社会にある不平等や不公正であり、SRHR(性と生殖の関する健康と権利)という基本的人権をすべての人が行使できているかどうか、であると考えますが、区の見解を伺います。
以上で、壇上からの質問を終わります。