令和 6年 6月 定例会06月12日
おのみずき 議員 生活者ネットワーク世田谷区議団は、議員提出議案第二号「地方自治の自主性・自立性が守られることを求める意見書」について、賛成の立場から意見を申し上げます。
本意見書は、現在参議院で審議されている地方自治法改正案において特例として盛り込まれた、いわゆる国の補充的指示権の運用に関わる対応を求めるものです。閣議決定で指示を出した後で、国会への事後報告を規定した衆議院の修正案並びに指示は必要最小限とし、指示権行使に当たっては自治体と事前に十分に調整を行うことと規定した総務委員会附帯決議をもって、本意見書での要望事項全てが満たされたのか、あるいは依然全然不足しているのか、意見は分かれると思います。
私たち生活者ネットワークとしては、国会での議論を見ている限り、依然懸念は払拭されません。
第一に、今次改正案では、感染症の蔓延や大規模な災害など、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合に、個別法に規定がなくても国が自治体に必要な指示ができるとしているわけですが、指示の発動要件は何度聞いても曖昧なままです。国は個別法で想定できないことを想定するといった主張をしていますが、私たちはこのロジックこそ問題ではないかと考えます。
曖昧で婉曲的な言語表現が繰り返され、それによって議論や思考が抽象化されることで、地上の現実から視点が切り離されていってしまう。そこに生きる人ではなくて、例えば公共の安全、抑止力、あるいは兵器それ自体といった別の対象に焦点がすり替わっていく。こうした一連のプロセスは、観察可能な現実ではない考えられないことを考えるために動く防衛専門家の言語文化的なシステムにあまりに酷似しています。地方自治の現場で起こる現実を排除し、人々の暮らしが視点から抜け落ちた指示は、生活に混乱を招き、住民福祉を後退させかねません。
第二に、指示を出す主体として想定されている国の意思決定層の構成に現状大きな偏りがある。すなわち、健常者でシスヘテロの高齢男性が大多数を占める中で、本当に全ての人にとって最適な指示が出せるのかという懸念です。
一面しか見ない誤った決定が行われたとして、被害を被るのは多くの場合、女性や子どもなど社会的に脆弱な立場に置かれた人々です。実際、新型コロナ感染拡大に伴い二〇二〇年二月末に政府が出した学校一斉休校要請では、子どもを持つ働く女性たち、その多くは非正規雇用だったわけですが、彼らへの配慮が全く欠如した結果、視点が欠如した結果、多くの女性たちが失業に追い込まれ、女性不況とも言われる事態を招き、その後の社会経済に深刻な影響をもたらしました。
現在進行形でジェノサイドが進行するガザの悲惨な現状を見ても、多様な主体が政治や政策判断に関与できないまま事態が推移した結果、重い代償を支払わされることになるのは誰か、一目瞭然です。
そもそも、二〇〇〇年の地方分権改革以降、国と地方は平等、協力の関係となり、国の関係は個別法に規定される範囲で必要最小限とすることなどが原則にはなりましたが、この平等ルールがどこまで実態を伴うものだったのでしょうか。
さきのコロナ禍での学校一斉休校や臨時給付金への数々の対応は、例えば一律十万円給付の事務は法定受託事務ではなく自治事務でしたが、実質的には廃止されたはずの機関委任事務の様相を呈していました。あるいは、国や都の各種補助に乗っかり、根拠が疑問の事業を実施するなど、地方自治の実態は掲げられた理念とは乖離しているようにも感じます。
私たちが守るべき地方自治の姿とはどのようなものなのか、今次改正案の議論を契機に、地方自治の象徴でもある自治体議会の私たち自身が改めて考える必要があるのではないかと思います。
以上をもちまして議員提出議案第二号に対する意見とします。(拍手)