田中みち子 議員 生活者ネットワーク世田谷区議団を代表し、世田谷区令和三年度一般会計外四件全てに賛成する立場から意見を申し述べます。
三月二十五日には、東京オリンピックの聖火リレーが始まりました。そもそも復興五輪の理念の下、招致されたはずですが、今もなお多くの被災者が生活再建もままならず、復興は途上です。最大の電力消費地である東京都の責任として、原発に頼らないエネルギー政策を推進することは当然のことと考えます。
東京都二十三区で最も早くに気候非常事態宣言を行った世田谷区としては、脱原発、脱炭素のエネルギーシフトの実例を示すことで、他の自治体へと波及させることが期待されます。
令和三年度は、未来を担う子どもや若者をはじめとする多くの区民や事業者の参加の下、脱原発で実効性のある地球温暖化対策地域推進計画をつくり、その実現を図ることを要望するとともに、子どもたちへのSDGs教育の充実を求めます。
国や東京都は、脱炭素社会への方針を転換し、プラスチック製品や焼却量の削減に向けての数値目標を示しています。プラスチックの海洋汚染問題は世界中でも大きな環境問題となっています。世田谷区も脱炭素社会に向けた数値目標とロードマップを区民に示し、プラスチックごみについても、ごみゼロ宣言を出すなど、リデュース最優先で持続可能な社会に向け全庁挙げて取り組むことを求めます。
生活者ネットワークは一九八三年、約四十年前に世田谷区に初めて議員を送り出した当初から、公共施設での石けんの使用を求めてきました。消毒剤入りや除菌効果をうたった合成洗剤でなく、石けんで丁寧に洗うことの効果を何度も訴え続けていますが、いまだ公共施設への石けんの使用が実現しないことは残念です。
先週の三月二十二日の新聞では、子どもに風邪などを引き起こすライノウイルスには、新型コロナウイルスの流行下で頻繁に使われているアルコール消毒の効きにくいタイプがあり、子どもからこのウイルスが検出される割合が上がったと報じられ、石けんと流水での手洗いが推奨されています。手洗いがこれほどまでに注目され、推奨されている今こそ、環境へも人体へも影響のない石けんの利用を徹底することを改めて要望します。
私たちは、これまでもジェンダー平等な社会の実現に向けて、全ての政策や行政計画などにジェンダーの視点を反映するジェンダー主流化の促進を求めてきました。指導的なポストに就く女性が少ない日本のジェンダーギャップ指数は、世界各国の中でも百二十一位とその順位を下げ続けています。残念ながら、世田谷区でも昨年度の管理職昇進選考合格者がゼロ、女性委員がゼロの審議会が四つもあります。政策決定の場への女性の参画は、多様な意見を反映する上でも重要です。クオータ制を導入するなど、戦略的な施策による女性の積極的な登用を要望するとともに、ワークライフバランスの実現やハラスメント対策の充実を求めます。
ジェンダー、人権教育を幼児期から生涯にわたり行うことも重要です。特に子どもたちに対するリプロダクティブ・ヘルス・ライツの観点での性教育を進めることを求めます。
この間、生理に対する無理解と経済的困難から来る生理の貧困がクローズアップされました。民間企業からの寄附や東京都からの動きで、コロナ禍に対応した応急的な配布は可能となりましたが、生理用品がトイレットペーパーと同じように配備される体制づくりを要望します。
また、子ども関連では、特別支援教室で指導を受ける子どもの数は千六百人と十年前から四倍以上増えています。真のインクルーシブ教育を実現するには、困難や特性などのでこぼこがあっても丸ごと受け止められる通常学級の運営体制が必要です。そのためには、日頃から人間関係も含めた子どもの周辺環境を調整する役目を担うプロフェッショナル、作業療法士の活用が求められます。特別支援教室の職員向け研修などでこの作業療法士の活用を進めていますが、子どもの能力を最大限発揮するために、作業療法士が通常学級に入り、チームとなって進める体制づくりに向けた検討を要望します。
障害者福祉に関しては、ノーマライゼーションプラン改定に基づき、世田谷区障害者差別解消条例制定が動き出します。特に手話の言語としての位置づけに配慮した条例となるよう要望します。また、高齢者福祉に関しては、第八期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画が始まります。介護サービスの質と量の確保を確実に行うことを求めます。
新型コロナウイルス感染拡大による影響は、非正規雇用の七割を占める女性の減収や失業、若い女性の自殺増となって現れています。また、シングルマザーをはじめ、子育て家庭の経済にも大きな影響を与えています。きめ細やかな就労支援や住宅セーフティーネット制度活用をさらに進め、住まいの安定を図ること、必要に応じて、就学支援や住宅確保給付金、生活保護などの支援が確実に届く体制づくりを進めることを要望します。
さらに、コロナ禍では、外出自粛によるDV、性暴力や面前DVの増加など、これまで家庭内の問題として押し込められてきた実態も浮き彫りにしています。民間シェルターや救済団体への支援を行い、被害者の地域生活をサポートする体制の充実が必要です。中でも性暴力被害については、来年度から始まる犯罪被害者支援の中で、他の犯罪被害とは分けて検討する必要があることをこれまで訴えてまいりました。なぜなら、性犯罪と認知される件数は氷山の一角であり、多くの性暴力被害者が泣き寝入りさせられている現状があるからです。相談につながっても、なお、複合的被害に苦しむことがないよう、性暴力被害者も含めた犯罪被害者の生活全般を支える体制となることを改めて求めます。
最後に、新型コロナウイルス感染症対策については、ワクチンとPCR検査を同時進行で進め、社会的検査を有効活用することにより、安全な接種環境を整えていかなければなりません。ワクチン接種のできない方を守るために、PCR検査継続は非常に大切です。ワクチン接種については、安全を第一に実施することはもちろんですが、副反応などへの相談窓口についても広く周知することが必要です。やむを得ず、無症状や軽症で在宅療養になる陽性者に対しては、隔離状態の確認も含めた定期的な連絡など確実な支援を続けることを要望し、以上で生活者ネットワーク世田谷区議団の意見といたします。(拍手)