区議会 第1回定例会 予算特別委員会 関口江利子が文教委員会所管の質疑を行いました。質問全文をご覧いただけます。

議会の様子は↓こちらからご覧いただけます。

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2024年予算特別委員会(関口江利子)

 文教領域  3/18(月)10:16〜10:32

①世田谷区のインクルーシブ教育について

①-1.生活者ネットワークの文教領域の質問を始めます。総括質疑では、子どもの権利について取り上げ、すべての子どもが権利を知り行使することについて、区長と教育長から「地域の大人・教員も巻き込んで子どもの権利を浸透させていく」とご答弁いただきました。今日の質問では、多様性の中でも障がいのある「特別な教育的ニーズのある子ども」への権利について取り上げます。

障がい施策推進計画であるせたがやインクルージョンプランには「共に学び、共に育つ」という言葉が何度もでてきます。わたしの解釈では、学校における「共に学ぶ」とは、同じ教室で同じ教育を受け、クラスメイトと給食や掃除当番など何気ない活動を一緒に行うことが、障がいのあるなしに関係なく知的欲求を刺激し、お互いを尊重しあえることに通じると理解しています。また、「共に育つ」は、住んでいる地域の学校に通うことが重要で、放課後の公園や夏祭りなどの地元のイベントで何となくでも知った顔がいるだけでつながりをつくるチャンスは広がり、ご近所の大人も巻き込んで住み慣れた地域で暮らし続けるための土壌を育むことなると感じます。

わたしは、インクルーシブ先進自治体といわれる芦屋市で4年間子どもを育てました。芦屋市では、取り組みを始めて30年以上が経過し、当時インクルーシブ教育の中で育った子どもたちが親になって、その子どもが地元の学校へ通っています。インクルーシブ教育の政策効果だけではないと思いますが、障がいへの包容力が高く、風土として根付いていると感じました。それでも課題はまだまだあると聞きます。障がいのある子どもが、世田谷で安心して安全に歳を重ねていくための長期的なビジョンに立った区立小中学校におけるインクルーシブ教育について区の見解をうかがいます。

答弁

1.区では、障害理解の促進と地域共生社会の実現を目指す条例やせたがやインクルージョンプラン等に基づいて、全ての区民が共に自分らしく暮らし続けることのできるインクルーシブな地域共生社会の実現を目指しています。

2.そのため子どもの頃から一人一人の個性が尊重され、多様性を認め合い、互いに理解しながら共に学び、共に育つ教育を行うことが重要です。

3.教育委員会では、教育振興基本計画に多様性を受け入れ自分らしく生きることを基本方針に位置付けてそれぞれの状況に配慮しながら、全ての子どもが安心して自分らしさを発揮し、自分らしい学びで共に学び、自分のしたいことを叶えられる学校の実現を目指しています。 

②特別支援学級・教室の整備について

②−1.今、「全ての子どもが安心して自分らしさを発揮し、自分らしい学びで共に学び、自分のしたいことを叶えられる学校の実現」とお答えいただきました。入学・進学に不安を抱える子どもの相談を受ける就学相談については、二段階に渡る保護者の面談と子どもの発達検査を経て就学支援委員会で検討を行い、子どもにとって望ましい就学先を保護者へ伝える流れになっていると承知しております。しかし、この「子どもにとって望ましい就学先」は、理想と現実のせめぎ合いの末に、不本意だけれど受け入れざるを得ない結果になる子どももいると伝え聞きます。世田谷区の特別支援学級の現況を教えてください。

答弁

1現在、知的障害、自閉症・情緒障害、肢体不自由のいずれかの特別支援学級もしくは複数の特別支援学級を設置している小・中学校は、全体の約3分の1となっております。

2世田谷区特別支援学級等整備計画や希望者数の状況に基づき、新規の開設や学級増を進めておりますが、通学が負担になっているお子さんがいることや、教室の狭隘が生じていることは認識しております。

②−2.先日、知的障害と肢体不自由の2つの特別支援学級を設置している区立松沢小学校を視察させていただきました。普通学級の1年生の教室に知的特性の子どもたちが全員移動して、6年生との交流に備えた準備を一緒に行っていました。その他、体を動かす授業や算数の授業など、子どもの特性に合わせて行き来しながら両方の学級で学んでいるとのことでした。その時の教室の様子も障がいのある子とない子の区別がわからないくらい、和気あいあいと学びを共有していました。

3分の2の学校には特別支援学級がないということは、いくら面談や検査をしても選択肢は限られ、同じ教室で学ぶ機会も同じ地域に通う機会も奪ってしまいます。すべての学校において、学ぶ環境を揃えていくことが理想だと考えますがいかがでしょうか。

答弁

3 各学校に特別支援学級があることで、特別支援学級を希望するお子さんが地域の学校で学び、地域の子ども同士の豊かな友人関係の形成ができるとともに、教員の連携により通常の学級に在籍する障害のある子どもへのより良い支援につながることが期待できます。

4 来年度の世田谷区特別支援学級等整備計画の改定においては、これらの課題を意識して、特別支援学級未設置校や特別支援教室巡回校の学校環境の現況や、改築計画等を踏まえて、今後の特別支援学級の整備の方向性を検討してまいります。

特別支援学級の整備を進めることは必要ですが、根本的に必要なことは、すべての子どもたちを普通学級で受け入れるために学校をアップデートしていくことです。その上で、“現地点で”普通学級では対応できないと判断した子どもは特別支援学級に在籍して支援員をつけ、一人一人の特性に合わせて普通学級と特別支援学級の両方で学ぶことが次の段階だと思います。学校が人的環境を整えることに苦慮している実態も承知しておりますが、特別な教育的ニーズのある子どもにできるだけ支援員を配置し、学校生活サポーターの協力も得られるよう支援していただくことを要望します。

②−3.次に、特別支援教室「すまいるルーム」についてお聞きします。知的発達に遅れがない発達障害等の児童生徒が、普通学級に籍を置きながら月1時間から週8時間ほど通ってサポートを受ける仕組みです。「すまいるルーム」は、全学校に配置されていますが、先ほどからお話の通り、発達について不安を抱える子どもが増えています。就学に関する相談の現況を教えてください。

答弁

1 就学相談は、障害や発達上の特性があるお子さんの小学校就学や中学校進学などについて、保護者の方と教育委員会が共に考えるものです。今年度、小学校の就学については4月15日から10月末まで受付を行い、504件の申込みがありました。
2 小学校就学の就学相談において、特別支援教室を利用されることになった場合には、小学校入学後、保護者と特別支援教室教員との面談を経て、速やかに利用していただいております。

②−4.新一年生の児童は入学と同時に「すまいるルーム」を利用できるとのことですが、すでに学校生活を送っている児童が途中で「すまいるルーム」の利用を申請した場合、およそ半年間も待たなければならないと聞きました。現況と対応を教えてください。

答弁

1 特別支援教室の利用にあたっては、保護者の方からの申込み後に、教育相談員による発達検査、面談を行いますが、同じく発達検査、面談を行う就学相談の件数や、教育相談員が行う教育相談の件数も多いことから、利用希望の多い小学生については入室までにお待ちいただいている状況です。

2 来年度は教育相談員2名を増員しますが、教育相談員が担う教育相談、就学相談や特別支援教室における発達検査の件数が増加しており、引き続きお待ちいただく状況であることが見込まれます。

②−5.2名増やしても半年待ちが変わらないとのことですので、今後、教育相談員のさらなる増員の必要を感じますがいかがですか。

答弁

3 特別支援教室の利用希望や就学相談が増加し続けていることを踏まえ、速やかに発達検査や面談を行い、子どもや保護者のニーズに応えていけるように、発達検査を専門に行う職員の増員による体制の強化や事務改善を検討し、入級待機の解消に取り組んでまいります。

②−6.では、現状で半年間待っている児童への支援はどのようになっているのでしょうか。

答弁

1 特別支援教室の利用を申し込まれるお子さんは、既に学級担任が中心となり、学校生活サポーターの協力を得て、お子さんにあわせた支援を行っていることが多い状況です。

2 特別支援教室の利用の申込みの有無や進捗等に関わらず、支援が必要なお子さんに対しては継続的な支援に取り組んでおります。

支援の切れ目がないよう配慮されていることは評価いたしますが、就学途中から希望する子どもが、本人に適した学びを得るため少しでも早く「すまいるルーム」に通えるよう、要望します。

③すべての子どもが共に学び、共に育つために

最後に、子どもが社会で自立するための学びの場である学校が、すべての子どもたちを受容するための具体的な方向性のようなものを問いたいと思います。

椅子にじっと座って授業を受けるより、立つ・寝転ぶ・体を揺らす方が集中できる子どもがいます。また、文字が書けなくてもキーボードなら打てる、うまく話せなくても文字なら伝えられる、そんな子どももいます。遊ぶ時も、教室の端っこでみんなの動きをじっと見ているだけで満足な子、言葉は発せられないけれどそんな自分に話しかけてくれるみんなが大好きだと支援員の手を使って書いてくれる子(これは障がい特性でクレーン現象と言います)そんな子もいます。この子に関しては、言葉が出てこないせいで、ずっと知的レベルが低いとされていましたが、それでも普通学級でみんなと共に学ぶことで文字を習う機会が平等に与えられた結果、意見表明の方法を見つけられた好事例であり、芦屋での娘の親友です。

普通学級でも特別支援学級でも子ども一人一人の教育ニーズに対応し、すべての子どもたちが「共に学び・共に育つ」ことを実践していけることを強く要望します。区の見解をお聞きします。

答弁

1.全ての子どもが共に学び、共に育つためには、学校の授業を含め学校生活全体について、子どもたち一人一人の状況に応じた配慮が行われる必要があると捉えており、各学校では、障害の状況や教育的ニーズ等に応じて合理的配慮を行っています。

2.合理的配慮は学校と本人・保護者により発達の段階を考慮しつつ決定されるものであり、具体的にはワークシートやテストへのルビ振り、集中しやすい姿勢での学習、ICTを活用した筆記量の調整など、多岐にわたります。

3.また、子どもが好きな方法を選んで授業のまとめをしたり、タブレットへの文字入力をやりやすい方法で行ったり、一人一人に合った方法で学ぶことができるよう、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた授業改善を進めています。

4.今後さらに、全ての子どもが共に学び、能力を最大限発揮できるよう、学校の柔軟な対応や支援を推進してまいります。 

インクルーシブ教育の推進は、先生の講義を椅子に座って静かに聞くこれまでの日本の授業スタイルに一石を投じるチャンスだと思います。例えば今は「発達障害相談・療育センターげんき」にしか常勤していない作業療法士の配置も子どもの環境に大きな変容をもたらします。新しく始まった作業療法「社会作業療法」は、障害ありVS障害なしの二元論ではなく、ほとんどの人はグレー部分にいることを理解し、すべての人間を個別性で捉えることを基本としています。岐阜県飛騨市では、全小学校で作業療法士による取り組みが始まっています。

芦屋市から世田谷区に戻って6年が過ぎ、その間、学校で障がいのある児童を見かけたことはありません。自閉症の親友がいた娘は、すっかり「普通の人」になりました。環境が人をつくります。学校を卒業しても子どもの人生は続きます。障がいがあってもなくても、共に地域で育っていける世田谷区を進めていくために、学校教育の役割と責任は非常に大きいと感じています。今後も取り上げてまいります。

④化学物質過敏症の啓発について

④-1.時間が少しあるので香害について触れておきます。昨年の決算特別委員会では、化学物質過敏症の当事者中学生が描いたポスターを区立小中学校で活用していただけるよう求めました。その際、香害を含めた化学物質過敏症に関する基本情報とアンケートを添付し、興味深い事例も多く回答頂けているようですが、調査結果をどのように共有していくかお答えください。

答弁

1.調査結果については、今後学校に周知するとともに、例えば、区HPに香害に関する新たなページを設け、学校での取り組み状況を紹介する際に活用するなど、有効活用に努めてまいります。

今回の調査活動で、見える化が進んできたと思います。ありがとうございました。結果をこれからどのように生かしていくかについては、引き続きの課題としたいと思います。以上で質問を終わります。