第4回定例会 一般質問と答弁 2019.11.27 高岡じゅん子

高岡じゅん子 議員 通告に従い、順次質問します。

 

最初に、森林環境譲与税を活用した豊かな森づくりについて質問します。

世田谷区では、樹木や緑地の持つ環境機能、特に雨水をコントロールする防災機能に着目し、グリーンインフラをまちづくりに生かす取り組みを進めています。国土の六七%が森林と言われる日本全土においても、ことしの台風十五号による倒木の多発などでも話題になったように、グリーンインフラとしての森林保全は喫緊の課題となっています。こういった森林の維持管理、健全育成のため、二〇二四年度から森林環境税が、森林から離れた都市部も含め、全個人住民税対象者一人当たり年間千円を徴収されることが平成三十年度末、法制化されました。

森林環境税の課税開始に先立ち、パリ協定の枠組みのもと、温室効果ガス削減の目標達成、災害防止等を図るため、森林整備等に必要な地方財源の安定的確保に向け、森林環境譲与税がことしから施行され、世田谷区にも今年度、三千四百万円の譲与税が入ります。この譲与税は一般財源として歳入に入りますが、使い道に関して広く公開することが定められています。

世田谷区が川場村と取り組んできた交流事業の一つである友好の森づくりや、健康村里山自然学校を通じた都会住民の森林や里山への理解や関心を高める事業は、この税の趣旨に合った取り組み事例として林野庁からも注目されていると聞きます。川場村の森林は、針葉樹の単層林だけではなく、多様な樹種の混合林もあり、建材以外にもさまざま木工や家具への利用など、豊かな生態系と可能性を秘めています。

川場村との連携を生かし、健康村里山自然学校など、森林の価値や維持管理への理解を進め、川場村産材の利用促進を図る事業を森林環境譲与税を活用し拡充していくことができるのではないかと考えます。区の見解を伺います。

森林環境譲与税の設立趣旨の中にも、パリ協定に基づき、温暖化ガス削減に資することが明記されています。中央区では、東京都檜原村と協定を結び、村有林の三十ヘクタール以上を中央区の森として確保し、その森によるCO2削減をカーボンオフセットとして利用するという計画を発表しています。世田谷区も川場村との友好の森の連携をさらに進め、森林環境譲与税を活用したカーボンオフセットを視野に入れた森林整備事業への取り組みを始めるべきではないかと考えます。区の見解を伺います。

都市住民が毎日の生活の中で、森林の持つ多様な機能を実感する機会は多くありません。それでも、世田谷区には国分寺崖線にかつての里山の樹林が残っています。この貴重な緑を生かし、二〇二四年からの森林環境税負担開始前に、森林や里山の価値や管理の重要性への区民の理解をより深めていくことが必要です。国分寺崖線の保全とそれを生かした森林の価値についての啓発活動をさらに進めるべきです。区の見解を伺います。

さらに、ことしの台風十五号にも見られるような温暖化による台風の強大化で、倒木や枝の落下などを防ぐため、今まで以上に樹木の管理が必要になってきています。特に国分寺崖線周辺の民有地に残る巨樹については、崖の崩落を抑える機能も含め、健全な維持管理がより重要です。保存樹指定などさまざまな制度により世田谷区内の民有地樹林の維持管理の支援が行われていますが、このような状況下で、高木の剪定などに対する補助が保存樹についてのみ三年に一回では、安全確保のためには不十分ではないでしょうか。区内民有地の保存樹等の維持管理支援を手厚くする必要があると考えます。区の見解を伺います。

続いて、働きがいの見える福祉現場づくりと支え手の確保について質問します。

福祉現場の支え手の不足は、保育士、福祉施設職員、訪問型の介護や介助、看護師など全ての分野にわたり深刻なものがあります。世田谷区は九十一万区民のさまざまなニーズに応えるため、保育施設や高齢者施設、障害者施設などの計画的増設を進めてきました。限りある区内の貴重な公有地を使い、都や国などからの補助金の有効活用も含め、貴重な税金も投入し、増大する区民のニーズに応え続けてきたわけです。

今年度までのところ、保育園の開園において配置人員の確保ができないために施設定員を大きく制限しなければならないという事例は聞いていません。一方、高齢者施設等においては、十分な人員の確保ができないため、当初予定した機能が果たせていない例が起きていると聞いています。区内福祉施設における支え手不足の現状について、区の見解を伺います。

福祉の支え手不足の中でも、団塊世代の後期高齢者入りなどにより利用者の急増が見込まれる介護サービスの支え手について、特に危機感を覚えます。世田谷区は在宅介護を中心、ひとり暮らしになっても自宅で一日でも長く尊厳を持って暮らせる地域福祉の充実を目指していると理解しています。区では現在、第八期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定に向け準備を進めています。介護施設については、定員に対しての配置人員など、開設目標に合わせ、支え手確保の目標数も明確になりますが、訪問系と呼ばれるサービスについてはどうでしょうか。

現在、訪問介護を支えているのは、利用者宅に直行直帰するパートタイム型労働の登録ヘルパーが主力です。介護保険発足当時からの支え手である介護ヘルパーは高齢化し、国のデータでも全ヘルパーの約二〇%が六十五歳以上とのことです。十年後、二十年後、在宅介護の中核を担う福祉の支え手を確保するためには、目標値を持った育成が必要です。若い世代の介護職への参入を促すためには、専門職として誇りを持って働き続けられる職場環境、賃金の保障や雇用形態などの課題もあると考えます。次期計画策定に向け、在宅生活を支える担い手の必要人員に関して、将来見込みを示し、計画的な確保、育成を図っていく必要があると考えます。区の見解を伺います。

福祉の現場、特に高齢者介護に若い力が入ってこない理由の一つに、3K、きつい、危険、汚いというイメージの問題があります。特にヘルパーが訪問先でセクハラやパワハラに遭うなどの実態が明らかになる中、そんなブラックな職場は論外と思う人が出るのは当然です。世田谷区は昨年度、介護事業所におけるハラスメントの実態調査を行い、改善に向けた取り組みを始めていると聞いています。世田谷区がパワハラやセクハラなどから現場の働き手をきちんと守ろうとする姿勢をより積極的に示し、福祉の現場を安心なものにしていくことで、どの自治体で職場を探すかと考えた人が世田谷区を選ぶ決め手の一つにもなり得ると考えます。パワハラ・セクハラ対策の進捗状況を伺います。

東京都の介護職の有効求人倍率は、今年度当初でも七倍以上と報じられています。どの自治体も高齢化率の上昇や介護需要の増大に直面している中、来年度以降も続く新たな施設の開設などに向けた支え手の確保を確実にするためにも、世田谷区を職場として選んでもらうインセンティブ、例えば保育士確保で行っている人件費補助のような、さらに踏み込んだ施策が必要な状況ではないでしょうか。他自治体に先駆けた区独自の補助の開始を提案します。何らかの金銭インセンティブをつけることで、世田谷区は保育の人材をこれほど必要とし、大切にしようとしているということをアピールし、世田谷区が福祉の現場で働こうとしている人たちに選ばれる自治体となる必要があります。区の見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。

 

生活文化部長 私からは、川場村との連携による森づくりについてお答えをいたします。

世田谷区と川場村では、平成四年の縁組協定十周年を記念して、区民健康村なかのビレジ周辺の山林を友好の森と名づけ、区民と村民が協力して、杉やヒノキだけでなく、里山に見られる多種多様な樹木が茂る豊かな森をつくり、守り、育てる交流事業に取り組むことといたしました。具体的には、平成七年に「森林(やま)づくり塾」を開講し、区民が地元の方とともに、下草刈りなどの森林管理作業を行うなど、これまで延べ四千五百人の区民が参加する大きな活動となっております。さらに、平成十八年には、健康村里山自然学校に名称を変え、その活動の範囲を広げ、森林の保全活動に加え、親子での森林の散策など、自然を楽しみながら里山の大切さを学ぶ環境学習の取り組みも開始しております。現在、区と川場村との間では、令和三年度からの世田谷区民健康村第五期事業計画の検討を進めておりますが、森林環境の保全、育成は、川場村と世田谷区共通のテーマと捉えております。引き続き、川場村や村民、区民の皆さんとの意見交換を進めながら、里山保全活動の拡充に取り組んでまいります。

以上でございます。

 

環境政策部長 私からは、川場村での里山づくりに当たってのカーボンオフセットについて御答弁をいたします。

お話しのカーボンオフセットは、自分たちが排出した温室効果ガスについて、削減努力をしても削減し切れない排出量を、他の場所での二酸化炭素を吸収する森林整備やクリーンエネルギーの導入などの排出削減活動を行って埋め合わせをする取り組みでございます。区は、地球温暖化対策地域推進計画の中で、温室効果ガス排出量を二〇五〇年度までに二〇一三年度比で八〇%削減する長期目標を掲げており、区内で削減し切れない排出量について、カーボンオフセットを行うことは排出削減に寄与するとともに、こうした率先行動を広く発信できるというメリットもあると存じます。

群馬県では、苗木の植林や除伐、間伐などの森林整備活動を二酸化炭素吸収量として認証しております。友好の森で行っている森林保全活動において認証が得られるかどうか、経費負担の規模も含め、検討を進めてまいりたいと存じます。

以上でございます。

 

33推進担当部長 私からは、緑の保全について二点御答弁させていただきます。

まず、国分寺崖線の保全による森林機能の啓発についてです。

国分寺崖線は、まとまった樹林地や湧水、河川などの豊かな環境が一体となった世田谷を代表する貴重な緑を育んでおります。このような緑は、地域に潤いを与えるだけではなく、土砂崩れなどの災害を緩和する機能があり、適切に整備保全を行うことにより、多面的な機能が発揮され、安全安心で豊かな暮らしが確保されると考えております。

これまで区は、都市計画緑地の整備、民有地を活用した市民緑地や特別緑地保全地区、保存樹木、保存樹林地の指定などにより、区民と協働で崖線の緑の保全に努めてまいりました。また、区民ボランティアとの連携による草刈り、清掃、調査などの保全・管理作業や公開日を設定して区民に崖線内の自然環境を紹介するなど、さまざまな取り組みを進めてきております。今後、より一層国分寺崖線保全の活動や啓発事業を広げ、緑の多様な機能について区民に幅広く伝えることにより、森林の機能の理解につなげてまいります。

続きまして、民有樹林地の維持管理支援についてでございます。

区では、民有地の緑を保全する取り組みの一つとして、一定規模以上の樹木、樹林地を所有者の同意を得て保存樹木、保存樹林地に指定し、三年に一度程度の剪定や手入れに関する相談、所有者を除く対人・対物被害を補償する保険加入など、維持管理の一部を支援してきております。さらに、三百平方メートル以上の樹林地の保全につきましては、都市緑地法に基づく市民緑地制度の適用を促進しており、緑地保全緑化推進法人である世田谷トラストまちづくりと契約を結ぶことで、所有者は固定資産税などの税優遇や、日常管理の支援を受けることができます。また、平成二十七年度から、活動団体との協働事業として行っている落ち葉拾いリレーは、街路樹や公園に加え、平成二十九年度からは保存樹木のある寺社や民有地の緑も対象としていくなど、所有者の負担軽減につながる取り組みの拡大を行っております。今後も、さまざまな機会を捉え、所有者支援のための制度活用を図ることで、世田谷みどり33の実現に向けて、民有地の緑の保全に取り組んでまいります。

以上でございます。

 

高齢福祉部長 働きがいの見える福祉の現場づくりと支え手の確保について、四点お答えいたします。

まず、高齢者施設の介護人材不足の現状についてです。

区は、団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年に向けて介護基盤の整備を進めており、現在、二十六カ所の特別養護老人ホームを開設しておりますが、九月のハローワーク渋谷管内の介護サービスの職業に対する有効求人倍率は十六・一倍と大変厳しい状況でございます。昨年と一昨年に開設しました二カ所の特養ホームでは、人材確保が厳しい中、求職者や離職者もあり、十月末の入所率は七五%程度となっております。また、他の施設も派遣職員に頼らざるを得ない状況にあるなど、厳しい状況にあるところでございます。また、今年度新たに開設する四カ所の特養ホームのうち、三施設の入所者の受け入れも始まっております。区といたしましては、運営法人との連携を密にとりながら、必要とする介護人材が確保できるよう支援してまいります。

次に、パワハラやセクハラ等のない職場づくりについてお答えいたします。

昨年度、介護事業所におけるハラスメントに関する実態調査を実施したところ、協力いただいた三百二十一事業所のうち二五・九%に当たる八十三事業所から、従業者が利用者・家族からハラスメント行為を受けたとの回答がありました。区といたしましては、この調査結果を受けまして、ことし八月に実施した区内の地域密着型サービス事業所を対象とした集団指導において、渋谷労働基準監督署の監督官から、労働関係法令の遵守に関する講話のほか、ハラスメントの防止や相談体制の整備、被害を受けた従業者へのケア等が事業主の義務となることなどについてお話しいただいたところです。また、訪問介護サービスを利用する区民向けの啓発用リーフレットについて、来年一月の発行に向けて現在準備を進めているところでございます。区といたしまして、引き続き介護従事者が安心して働き続けられる職場環境の構築に取り組み、職場のイメージ向上に努めてまいります。

次に、在宅生活を支える人材の確保、育成についてです。お話しのホームヘルパーなど、在宅サービスを支える人材につきましては、施設サービスとは異なり、定員の考え方がないことから、必要な従事者数を事業所数のみで推計することは困難でございます。

区では、第七期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定に向け、平成二十八年度に実施しました実態調査の中で人材確保の状況を聞いておりますが、訪問介護、訪問入浴介護のサービス種別では、八割強の事業所が不足している、やや不足していると回答しております。この八割強の事業所が人材不足のためサービスの提供に支障を来しているのか、あるいは事業規模を拡大するため人材が必要なのかといったことのさらなる分析が必要と考えております。高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の次期計画策定に向けました実態調査の中で、在宅サービスの事業者の状況を確認し、次期計画に向けて人材確保、育成の取り組みをまとめてまいります。

最後に、介護人材確保に向けた区独自の金銭的インセンティブについてでございます。

介護職員の給与等は介護報酬を基本とすることから、区では、介護事業者におけるキャリアパスの構築や職場環境改善を促進し、処遇改善加算が取得できるよう支援しております。具体的には、区独自の制度といたしまして、福祉人材育成・研修センターを設置し、さまざまな研修を実施しているほか、介護職員初任者研修課程等の受講料の助成や実務者研修受講料の助成、介護福祉士資格取得費用助成などを行っております。また、特養ホームや認知症グループホームなどに対し、職員の研修費等に係る助成金を交付しております。

介護人材の確保に向けて、区単独の金銭的インセンティブを付与することは、財源や持続可能性等の観点から、厳しい状況でございます。区といたしましては、介護事業者等を構成員とする検討会での御意見も踏まえながら、さらなる支援策の検討を進めてまいります。

以上です。

 

高岡じゅん子 議員 御答弁をいただきました。

まず、区民が森林の価値や維持管理の必要性について理解し、二〇二四年以降、この森林環境税を負担していく価値というのがわかるように、ぜひこの譲与税を利用した有効な取り組みを期待します。国分寺崖線で起こる啓発事業は、この譲与税が使えないというふうに林野庁はおっしゃっているそうなんですが、やはり啓発はすごく必要だと思うので、それについても国に対して、使えるものなら使わせてもらえるように働きかけていただきたいと思います。あと、巨樹の維持管理について、保険が使えることなどもぜひ保存林にする方に伝えていくと保存林がふえるのではないかと思いますので、ぜひ周知をお願いいたします。

福祉の支え手の確保については、もう本当にできる限りのことはしているというのは存じていますが、やはり二十年後、私自身が八十になるわけなんですけれども、そのときに支え手があって、そしてその支え手が世田谷を選んで来てくれるという、そういう自治体になることが大事だと思っています。そのためにも、今から中核的な人材を確保するということで、ぜひ何か新しい方法を考えてください。

以上で終わります。