第4回定例会 一般質問と答弁 2019.11.27 田中みち子

田中みち子 議員 質問通告に従って順次質問をしてまいります。

 

ことしの台風十九号は、これまで培ってきた区の災害対策に大きな課題を残しました。温暖化による異常気象は想定外の連続で、甚大な被害は防ぎ切れないところまで来ており、昨日の区長招集挨拶における災害対策では不十分と言わざるを得ず、区民の不安は払拭されません。災害対策と同時にさらに進めなくてはならないのは、異常気象の原因である地球温暖化への積極的な対策ではないでしょうか。多摩川の氾濫により甚大な被害が出た今、区民としても大きな変化を受け入れる意識も高まっていると考えます。

昨年発表された国連の気候変動に関する政府間パネル、IPCCの一・五度特別報告書によれば、地球の平均気温は産業革命以前から既に一度上昇しており、このままのペースで温暖化が進めば、二〇三〇年から二〇五二年の間に地球の平均気温は一・五度を超える可能性が高く、取り返しのつかないことになることが示され、気温上昇を一・五度までに抑えるべきだと科学者たちが警告をしています。二〇一六年のパリ協定で定められた産業革命以前に比べて二度より低い状態に保ち、一・五度未満に抑える努力をすることを目標としたこの一・五度は、もはや努力ではなく死守しなければならないということです。そして、気温上昇を一・五度に抑えるためには、二酸化炭素の排出量を二〇三〇年までに二〇一〇年度比の四五%削減した上で、さらに二〇五〇年ごろまでに実質ゼロにする必要があると示されています。

一方、気候変動の危機を訴える若者の代弁者、環境活動家のグレタ・トゥンベルさんの国連でのスピーチは、世界中に衝撃を与え、たった一人で始めた抗議行動は世界へ、日本へと広がりました。それと、呼応するように千百以上の世界中の国や自治体が気候非常事態宣言を行っています。この宣言は、気候変動による人類の危機について認めた上で、市民や事業者などの関心を高め、積極的な政策を打ち出すもので、日本では九月に長崎県壱岐市、十月には神奈川県鎌倉市が続きました。

世田谷区では、地域レベルで温暖化対策に取り組むため、昨年、地球温暖化対策地域推進計画を策定しましたが、一年で目標値の見直しが必要なほど、地球温暖化は私たちにとって危機的状態であることを区民に伝え、ともに脱炭素への取り組みを強化していく必要があります。基礎自治体である世田谷区としても、気候非常事態宣言を行って気候変動を緩和させる政策を推進することを求めます。見解を伺います。

市民への関心を高めるという観点では、一年前、命にまで危険が及ぶ猛暑とゲリラ豪雨で甚大な被害が出た平成三十年九月の一般質問や決算特別委員会では、異常気象による被害を少なくするため、環境に負荷をかけないライフスタイルの転換を求め、ゼロエネルギー住宅、ZEHやエシカル消費の普及啓発などを提案してきました。

住宅の断熱性能を高めることは、温室効果ガスを削減するだけでなく、熱中症やヒートショック対策にもつながることからも、新築住宅に対して断熱性能などの省エネルギー化を先駆的に進める長野県の環境エネルギー性能検討制度及び自然エネルギー導入検討制度を提案しましたが、その後の取り組み状況を伺います。また、既存住宅に対して、断熱性能を高めるために窓や屋根などの改修を補助する制度、環境配慮型住宅リノベーション推進事業――これは区の事業――がありますが、断熱性能を高める効果的な商品なども開発されていますので、補助の対象を拡充することも検討すべきと考えます。見解を伺います。

エシカル消費については、十一月十六日、区内初、エシカル消費展が開かれ、私も参りましたが、産業部門との連携がいま一つ見えてきませんでした。消費と経済は表裏一体であることからも、産業経済部が一体的に取り組む工夫が必要です。今後の展望を伺いたいと思います。

そして、事業者の関心を高めるという観点では、まず、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの機運を醸成することが必要です。事業者のみならず、個人、団体などへも持続可能な地球環境に貢献する取り組みを後押しするため、SDGs賞などの表彰制度を設けることも有効と考えます。見解を伺います。

次に、たばこルールと電子たばこの健康への影響について伺います。

世田谷区の道路や公園での喫煙を禁止とするたばこルールがスタートし約一年が経過していますが、いまだルールを知らない方やルールを守らない方が多く、ポイ捨てたばこもなかなかなくなりません。美化指導員による巡回指導の強化や、ポスターや看板を目につくところへ掲示するなど工夫が必要です。

また、望まない受動喫煙を防止するため、屋外指定喫煙場所は計画を上回る数が整備され、今年度でも三十一カ所となる予定ですが、残念なことに、設置された場所に対する苦情も多く寄せられています。昨年度が十四件、今年度には十月末までに二十一件と増加し、喫煙場所から漏れてくるたばこの煙が問題となっています。昨年十一月に厚労省より屋外喫煙場所の設置に関する技術的留意事項が示されていますが、区の指定喫煙場所はこの基準に照らしてどのようになっているのでしょうか。現状を確認します。

苦情の一例として、総合運動場に設置された喫煙場所があります。ここから漏れる煙は、健康増進のためスポーツを楽しむテニスコートにまで及びます。さらに、通学路上でもあり、受動喫煙による健康への影響を受けやすい子どもたちへの配慮さえありません。また、病院周辺に整備された指定喫煙所の問題は言うまでもありません。明らかに改善が必要な箇所にある喫煙場所は、このまま放置せず早急に対策を講じることを求めます。見解を伺います。

アメリカの疾病対策センター、CDCの十月一日現在の報告によれば、電子たばこ関連の肺障害が千八十人、集団発生による死者は十八人に上っています。日本では、ニコチンを含むリキッドを使用する電子たばこは原則販売されていませんが、インターネットなどで個人が容易に入手できてしまうことや、電子たばこと加熱式たばことの違いなどもわかりにくく、知らない間に問題のある電子たばこを手にしてしまう可能性もあります。安全性に問題がある電子たばこについて、その害に関する知識の普及啓発も必要です。見解を伺います。

最後に、リプロダクティブ・ヘルス・ライツの普及についての質問です。

さきの予算特別委員会において、十代の人工妊娠中絶件数が減少傾向にあるが、最年少は十三歳だったことを取り上げ、リプロの観点での性教育の推進を求めました。タイムオーバーで答弁が途中となってしまったこの間、新たな性教育の手引が改定され、初めての産婦人科による東京都のモデル授業が中学校で行われました。教育委員会ではどのように評価したのでしょうか。生徒や保護者、傍聴した教師などの受けとめと今後の展望についてもあわせて伺います。

また、十代の性感染症の検査数は増加しているばかりか、陽性率も高く、対策がおくれています。保健所に対してモデル事業の参観を求めていますが、保健所としての授業の受けとめもあわせて伺うとともに、今後の授業でリプロダクティブ・ヘルス・ライツに関する取り組みが進むよう、教育委員会や人権関係所管と連携し、産婦人科医や助産師などの専門家の意見も取り入れたリーフレットの作成など、具体的な取り組みを求めます。見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。

 

区長 田中議員にお答えをいたします。

気候非常事態宣言についてであります。

近年の地球温暖化の加速により、これまでにない気象異変が地球規模で発生しており、自然災害が多発しております。最近の台風十九号も、各地に甚大な被害をもたらし、区においても多摩川沿いで大規模な浸水被害が生じております。百年に一回と言われる頻度で起きるとされていた極端な激甚災害が数年に一回起きることも予想しなければならない状況になってきております。

このような気候異変の危機的な状況に対して、区では、平成三十年三月に地球温暖化対策地域推進計画に気候変動への適応策の推進を重点プロジェクトとして位置づけ、今現在改定中の環境基本計画後期計画の重視すべき視点において、脱炭素社会の実現に向けた取り組みや再生可能エネルギーの一層の普及促進を掲げ、地球温暖化対策に取り組むこととしております。

一方で、この気象異変が恐るべき勢いで拡大しているという中にあって、世界で各都市に広がっている気候非常事態宣言をするべきではないかという問題意識は理解するところでございます。この区民の参加と討論、議論によりこの宣言の扱いを深めていきたいと考えますし、また、行政機関の首長名で、区長名で宣言するのがよいのか、あるいは世田谷区、こういった宣言がいいのか、あるいは区議会で御議論いただいた上での決議とあわせて宣言していくのがよいのか、区議会各会派の御意見にも耳を傾けていきたいというふうに考えます。

 

経済産業部長 私からは、エシカル消費などについて答弁いたします。

地球環境問題への対応は、消費者と経済活動を行う事業者双方が意識を持ち進めることが重要と考えております。お話しのせたがやエシカル消費展は、区で初めての取り組みとして、十一月十六日に三軒茶屋で開催しました。地球環境に負荷が小さく、人や社会に配慮した消費生活を考えるイベントで、エシカル協会代表者の講演や、区内の高校、大学、フェアトレード商品を扱う事業者による展示やワークショップなどを行い、エシカル消費の考え方を普及する上で着実な一歩が踏み出せたと捉えています。今後、エシカル消費も含めた環境配慮の考え方は、産業振興基本条例見直し検討に当たっても課題の一つとしてまいります。

御提案をいただいた事業者などへの表彰についてです。区では、事業者などを対象として、産業表彰を実施しております。今後、区内事業所の取り組みの情報収集に努め、SDGsの取り組みやフェアトレードなどに先進的に取り組む事業者などについても表彰対象とできるよう検討してまいります。

私からは以上です。

 

都市整備政策部長 私からは、住宅リノベーション事業について御答弁を申し上げます。

世田谷区環境配慮型住宅リノベーション推進事業は、区民が所有する住宅の機能及び価値の維持向上並びにCO2排出削減を図るため、区内施工者が行うことを条件に、改修工事及び省エネルギー機器の設置工事等の費用の一部を補助することにより、良好な住宅の普及を促進し、施工者の技術向上及び振興を図ることを目的として実施してございます。CO2排出量の多い家庭部門において、住宅の断熱性向上や省エネルギー化を進めることは重要であり、議員お話しの補助対象工事の拡充につきましては、住宅の外壁や屋根、窓などの断熱改修工事内容の普及状況等を検証しながら、断熱に関する新たな技術や製品などの開発状況、また、他自治体の取り組みを踏まえまして研究、検討を行ってまいります。

以上でございます。

 

環境政策部長 私からは、二点御答弁いたします。

まず、建築物の脱炭素に向けた取り組みでございます。

新築住宅の省エネルギー化を図るため、お話にございました長野県では、平成二十六年四月より、建築主に対して建物の高断熱化など、環境エネルギー性能検討制度及び太陽光利用設備の設置などの自然エネルギーの導入検討制度を導入しており、現在は対象延べ床面積を引き下げ、三百平方メートル未満の小規模の建物も対象としております。また、東京都におきましても、同様の制度といたしまして建築物環境計画書制度を実施しており、来年度の改定に向けて、延べ床面積を五千平方メートルから二千平方メートルに引き下げることによる対象の拡大や、エネルギーの使用状況の評価基準の見直し、さらにはエネルギーをつくり出す創エネルギーや再エネ電力導入の検討シートの追加などを検討していると伺っております。

区といたしましても、こうした都制度の検討状況を注視しつつ、区内建築物を対象に脱炭素に向けた省エネ性能向上を図る取り組みを推奨してまいります。

次に、指定喫煙場所の整備についてでございます。

指定喫煙場所に対する苦情は、昨年度が十四件、今年度は十月末までに二十一件寄せられており、苦情の主な内容といたしましては、喫煙場所から漏れてくるたばこの煙に関するものとなっております。国の屋外分煙施設の技術的留意事項では、屋外分煙施設を設置する際の配慮事項といたしまして、人通りの多い方向に対し、たばこの煙が容易に漏れ出ないようにすることとしております。例えばコンテナ型であれば排気口や吸気口の位置、パーテーション型であれば壁の高さや出入り口の構造など、具体的に例示されており、分煙設備の周辺での望まない受動喫煙を防ぐための適切な措置を講じることが求められております。

昨年十一月にこの留意事項が示された後に区が新たに整備した指定喫煙場所は現段階ではございませんが、基準ができる以前に整備された指定喫煙場所の中には、改善が必要と思われる箇所もあると認識しております。今後、技術的留意事項の具体例を参考に、既存のものについては可能な限り周辺、周囲にたばこの煙が漏れにくいよう改修を進めるとともに、新設の際にはこの基準に沿って整備を進めてまいりたいと存じます。

以上でございます。

 

世田谷保健所長 私からは二点、まず電子たばこの健康影響についてお答えいたします。

お話しの米国内での電子たばこ使用が原因と見られる呼吸器疾患の患者の増加や死者の発生、さらに米国政府の対応状況につきましては、区でも各種報道を通じて把握をしております。また、加熱式たばこがたばこの葉を使用するのとは異なり、電子たばこではたばこの葉は使用せず、各メーカーが販売する香りづけされた専用の液体、いわゆるリキッドを装置内や専用カートリッジで電子加熱させ、発生する蒸気を吸引します。

日本ではニコチンが医薬品成分に指定されているため、原則、国内ではニコチンを含むリキッドは販売されておりません。一方、国外ではニコチンを含むリキッドを販売する例もあり、話しのとおり輸入業者を介し一定量を個人で入手可能なことから、国民生活センターでは、購入、使用、譲渡や未成年者が安易に使用しないことなどを消費者に注意喚起をしております。国民生活センターと同様に区も、電子たばこの安全性の根拠が不十分であることや、国内外でニコチンを含む電子たばこ用リキッドの取り扱いが異なっていること、また、未成年者が安易に使用しないことなどをホームページで注意喚起を図ったところです。今後も、電子たばこの健康影響の周知啓発のさらなる充実を図り、区民の健康保持増進に取り組んでまいります。

次に、性教育のモデル授業についてです。

お話しのモデル授業につきましては、健康せたがやプラン(第二次)に掲げる思春期の健康づくり、女性の健康づくりなどの施策の充実を図る観点から、世田谷保健所職員も視察し、授業後の教職員関係者による振り返りにも参加をしております。授業では、講師である産婦人科の医師の経験も踏まえ、人工妊娠中絶、エイズやその他の性感染症、避妊法等について講義があり、健康づくりの面からは、子どもたちが思春期の健康づくりについて基本的な知識を習得する機会となったと受けとめております。

一方で、授業後に行われた関係者での振り返りでは、通常は高校で学習する内容を中学校で実施することにより、必要となる配慮や生徒の身体的、精神的発達や性的成熟の個人差を踏まえた個人指導の必要性も指摘されており、若い世代に適切に健康情報を伝えるに当たっての課題を改めて認識もいたしました。

次世代の健康づくりには、若者が正しい健康知識を身につけることが重要です。保健所は今後、人権所管や教育委員会等へも働きかけ、思春期世代へのアンケートの結果等の分析に基づき、リーフレットの必要性も含め、以前に実施した思春期へのアンケート結果等の分析に基づき、リーフレットの必要性も含め、思春期の健康づくりの充実に向けた検討を進め、若者世代への健康情報の効果的な周知啓発に取り組んでまいります。

以上です。

 

教育政策部長 私からも性教育について御答弁いたします。

十月に実施いたしました性教育モデル授業では、学習指導要領に示されている内容だけでなく、高等学校において学習する避妊や人工妊娠中絶等について取り扱い、互いの命や健康を守るという狙いを持った授業を行わせていただきました。当日は小中学校の教員や保護者を含め約四十名の参観がございまして、授業の進め方や配慮等について共有することができたものと考えております。教員からは、避妊などについて具体的な話が聞けてよかった、性感染症の予防方法を学ぶことは大事だと思ったなどの声があり、各学校で今後具体的に取り組む際の参考となるものと考えております。また、生徒からは、自分の将来にかかわることだと思う、悩んだときにこの話が解決に役立つと思うなど、自分自身と関連づけて考えていることがうかがわれました。

教育委員会といたしましては、今後、東京都教育委員会が取りまとめる予定の性教育の実施状況の報告等を踏まえ、医師会等とも連携し、学校における性教育のあり方を検討し、性教育が適切に行われるよう取り組んでまいります。

以上でございます。

 

田中みち子 議員 再質問をさせていただきたいと思うんですが、今、この性教育のモデル授業に私も参らせていただいたんですが、やはりこの副教材的なものがあったらいいなということを感じて今回質問させていただいています。保健所の方からは、学校へのリプロダクティブ・ヘルス・ライツの普及に向けて関係所管に働きかけるということの答弁、前向きな答弁がありました。ぜひ一緒にこの協議の場に教育の方も入っていただきたいと思うんですれども、改めて一緒に協議を進めていただくということでよろしいのか、教育委員会のほうに再答弁いただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

 

教育政策部長 教育委員会といたしましては、世田谷保健所と意見交換をさせていただきまして、必要な協力をさせていただきたいと考えております。

以上でございます。

 

以上で質問を終わります。