第3回定例会 決算特別委員会 2019.10.9 田中みち子

田中みち子 委員 総括に引き続きまして、台風十五号の被害について、都市整備所管で関連する質問をいたします。

今回の台風十五号は、千葉市で瞬間最大風速五十七・五メートルと、観測史上一位の記録を更新しており、大規模停電からの復旧がおくれた要因の一つとして倒木の問題がありました。山間部の被害実態が明らかになるにつれ、幹の途中で折れた倒木など、予想を超える深刻な被害状況だったことがわかります。

そこでまず、世田谷区内の街路樹の被害がどの程度だったのか確認します。

 

公園緑地課長 暴風雨をもたらした台風十五号は、区内で瞬間最大風速三十五・二メートルを記録し、倒木などの多くの被害をもたらしました。区立公園や区道の街路樹については七十三件が倒木しており、幹折れ等も四件ございました。また、等々力渓谷公園内では多くの倒木などがあったため、一時園内通行どめなどの対応をとりました。また、つい最近発見された倒木などもありますが、現在ほぼ復旧は完了しつつあり、公園の一般利用に支障のない樹林地内などでの処理作業などを進めているところでございます。

 

田中みち子 委員 区内のみどり率も約二五%と道半ばです。みどり33の目標の実現に向けても、豊かな環境を守るためにも樹木の管理は重要です。現在の街路樹の管理はどのように行われているのでしょうか、伺います。

 

公園緑地課長 都市部の樹木は、日常のヒートアイランド現象の緩和や大気浄化機能のほか、災害時などの火災からの緩和機能、建物などの倒壊防止機能など、さまざまな効果がございます。これらの効果を有効に発揮するとともに、倒木を未然に防ぐためには、樹木が健全であることが重要になります。

区が管理する公園の樹木や街路樹の安全対策として、職員による目視点検のほか、特に台風のシーズンの前には、樹木の健全度を初め、枯れ枝やキノコなどの腐朽菌の有無、支柱の設置状況などの確認を含めた定期点検を実施してきております。特に街路樹につきましては、平成二十七年度より樹木医による巡回点検を継続的に実施するなど、管理体制を強化しております。これらの点検で発見された異常の疑いのある樹木につきましては、樹木医による専門診断を行っており、この結果を踏まえ、過去五年間で二百四十四本の植えかえなどを実施してきております。

また、樹木の若返りを目的とした剪定方法なども研究しながら、樹木被害を未然に防ぐ取り組みに努めております。

 

田中みち子 委員 倒木の原因としては、根元の幹や根っこに異常がある場合が多いと聞きます。根などに対する点検も実施すべきではないでしょうか。また、倒木させないように根の発育を促進することも必要です。見解を伺います。

 

公園緑地課長 委員お話しのとおり、葉が生い茂り、花もきれいに咲くなど、地上部の活力が旺盛であるにもかかわらず、根元の付近の腐朽が原因で倒木する事例は多くなってきております。これまで、樹木医による打音調査などの外観診断の結果に基づき、根元付近のどの高さで専用の機器を用いた精密診断を実施するかを検討することで、最も幹や根元の空洞が大きいと推定される箇所を測定し、倒木の危険度を判定してきております。

根株を対象とした専門診断方法については、東京都が作成しました街路樹診断マニュアルなどにも示されておりますが、根の形状が特定できない条件下での診断はまだ正確性について課題もあると考えております。

今後につきましては、診断機種もふえ、技術も発展してきておりますので、樹木医とも意見交換などをしながら、さまざまな診断事例なども注視しつつ、引き続き適正な樹木診断に努めてまいります。また、これまで余り実施してこなかった根株付近に肥料を施すなど、根の発育を促す取り組みにつきましても、その有効性について検討してまいります。

 

田中みち子 委員 街路樹を見ますと、結構痩せた木なんかも目につきますので、しっかりと対策をお願いします。そして、今週末も大型台風が近づいているという報道もありますので、ぜひ最大限の対策をお願いしたいと思います。

次に、農福連携についての質問です。

東京都二十三区の中でも、練馬区に次いで農地が多いのが世田谷区です。農地は、新鮮な農作物の供給とともに、緑の保全やヒートアイランド現象の緩和、災害時の防災拠点など、多様な機能を発揮する貴重なスペースです。残念ながら、相続税や固定資産税、後継者の問題などにより貴重な農地はどんどん減少していますが、その減少を抑制するため、世田谷区は平成二十一年度に農地保全方針を策定しています。その中の取り組みの一つに農業公園があります。面積一ヘクタール以上など一定の面積がある農地で、将来、農家が営農できなくなったときに区が取得し整備を行うもので、先般、等々力地域でも新たな農業公園の都市計画決定がされました。

私は、平成二十九年六月の定例会において農福連携について取り上げ、農業公園での福祉的活用を進める対策も求めました。そのときの答弁では、福祉的活用についての窓口はそれぞれの所管課ということで、農地保全方針に掲げる農業公園の福祉的活用は進んでいませんでした。農地を保全するには、農業振興策と合わせる必要があるとの観点から、旗振り役は都市農業課がある経済産業部が行うことを求めていました。この四月から、農業公園の運営所管が当時の都市農業課からみどり33推進担当部公園緑地課になりましたので、現状はどのようになっているのか伺います。

 

公園緑地課長 今年度より、さらなる利用の促進や維持管理作業の効率化を図るため、喜多見農業公園など区民参加型農園の管理運営業務を都市農業課から公園緑地課に移しております。農業公園の福祉的な活用につきましては、平成二十一年度に策定した世田谷区農地保全方針において教育・福祉農園を位置づけ、子どもの食育や環境教育、障害者などの自立支援を目的とした活動プログラムを実践する農園を整備するとしております。今年度から供用しております次大夫堀公園内の里山農園では、その教育・福祉農園の位置づけがあり、地域の人たち、障害者、就労支援を受けている方などにも参加いただいており、手づくりで農福連携を目指した農園づくりに取り組み始めたところでございます。

 

田中みち子 委員 今年度から次大夫堀公園里山農園ができて、新たな福祉的活用がスタートしたということですね。障害のある方でも一般の方と分け隔てなく利用できるよう施設整備はされているのでしょうか。確認させてください。

 

公園緑地課長 里山農園の開園以降、運営にかかわる世田谷トラストまちづくりのボランティアネットワークを生かすほか、社会福祉協議会などの協力も得て、高齢者施設や障害者施設、就労支援団体などへ広く情報提供を行うことで、土を耕す農園づくりプログラムや草刈りなどの定例作業に車椅子利用者や就労支援を受けている方などが参加していただいております。

開園からまだ半年で手探りの運営のため、畑の土のぬかるみでの車椅子の通行など、課題も出てきております。これらにつきましては、現在、通路の改善のほか、車椅子利用者が作業しやすいレイズドベッドの設置や、車椅子に乗りながら種まきをする種だんごの作成など、工夫を検討しているところでございます。

今後につきましては、関係所管などと連携を深めながら、農園作業の参加者とともに、福祉的な農作業プログラムや支援の方法のあり方を改善、検討してまいります。また、教育・福祉農園の位置づけのないほかの農業公園における管理運営や今後の整備につきましても、ノウハウを活用するよう努めてまいります。

 

田中みち子 委員 車椅子の方も利用ができるよう整備された砧クラインガルテンも閉園となって、多くの方から残念がるお声も届きました。早急に整備していただくよう要望します。

また、全国的にも八〇五〇問題として長期化するひきこもりがクローズアップされる中、厚労省は、ひきこもりの新たな就労支援策を検討中で、就労から長時間離れている人に短期間の農業体験をしてもらい、本格的な就労への準備を促すモデル事業を二〇二〇年から全国五カ所で実施するとの報道がありました。二十八地区で展開する地域包括ケアにおける福祉の相談窓口対応では、精神障害、メンタルヘルスに関する相談が全体の半数以上を占めるなど、顕在化しています。農業公園の目的にも、若年者、高齢者、障害者などの自立支援とあります。農業公園での取り組みを将来的には就労につなげていくことが必要と考えますが、見解を伺います。

 

公園緑地課長 教育・福祉農園は、先ほど答弁しましたとおり、自立支援を目的とした活動プログラムを実践する場所でございます。しかしながら、七月の作業開始以降、二回のプログラムと三回の定例作業しかいまだ行っておらず、まだ具体的な支援までには至っていない段階でございます。

現在、教育・福祉農園が目指す姿として、さまざまな方が農業に関心を持ってもらう、農作業体験を通じて社会とのつながりを持つスタート地点であり、技術などを学ぶ訓練の前段階だというふうに考えております。まずは就労支援を受けている人が定期的なプログラムに参加し、就労への意欲や自信につながるように取り組んでまいります。そして、就労への意欲が出た際には、都市農業課所管の農業サポーター登録制度などを御紹介するなど、就労へつなげていけるように努めてまいります。

 

田中みち子 委員 農作業というのは、セラピー効果やリハビリ効果、また、身体能力を高めたり心に安らぎをもたらすといった医療的効果の研究なども進んでいます。スタート地点に立った方々が、その後の意欲や自信につながったならば、その後しっかりとそれぞれの方に寄り添って支援を引き続き行っていただきたいと要望いたします。

次に、携帯電話等基地局の設置などに関するルールづくりについて質問します。

砧地域では、既存のマンションの屋上に携帯電話基地局の電波塔ができた直後から、原因不明の頭痛、目まい、耳の閉塞感や背中のぴりぴり感などの症状を訴える方とその近隣の方々が主体となり、電磁波に関する勉強会が立ち上がっています。現在、撤去に向けた要請行動に進展していることをさきの一般質問でも取り上げて、知らない間に携帯電話基地局ができる現状の改善と紛争を予防するため、世田谷区としても事業者に対し事前の説明を行うことを義務づけるルールづくりに取り組むことを求めました。

携帯電話等基地局の設置に関しては、これに特化した条例で有名な神奈川県鎌倉市や国立市など幾つかの自治体があります。これら自治体は、事業者に対して条例や要綱で、携帯電話等基地局などの計画届や工事に着手する前の説明会の開催、または個別説明の手法などで紛争が生じないよう説明を義務化し、紛争の防止に取り組んでいます。国立市では、開発行為等指導要綱で対応しており、都市計画課が策定をしています。きょうは都市整備所管です。まず、国立市と同様の担当所管として、こうした先行事例を持つ自治体の取り組みについての見解を伺います。

 

建築調整課長 携帯電話の基地局の設置により、周辺の方々から健康被害への影響を心配される声があったことなどの理由から、事業者に対し、条例等で基地局の設置の際、周辺への説明を実施させている自治体があることにつきましては認識しております。一方、国は、こうした基地局における電波につきまして、国際ガイドラインの基準値よりも人体への影響を含め安全性を考慮した電波防護指針を定め、その基準の範囲内において事業者が設置を行うこととしております。

電波による健康への影響については、さまざまな機関で研究が行われており、人体に影響を与えない基準値以下に電波の出力を抑えるように規制が設けられてございます。区では関係所管において、電波環境の保全として、お問い合わせの区民に対し、電波防護指針などを踏まえて、総務省の行政相談窓口につなげていくなどの適切な対応に努めているところでございます。

 

田中みち子 委員 不安に思う声が高まっている中で、既にできてしまったものに対して、行政の窓口につながれても問題は解決しません。近隣の住民が知らない間に設置されてしまうことが紛争の原因となる場合が多く、こうした問題を未然に防止するために、基地局ができる前の説明を義務化することこそ重要です。既にある中高層建築物等の条例の中で、携帯電話基地局設置についても対象とすることはできないでしょうか、伺います。

 

建築調整課長 携帯電話の基地局には、主に郊外で建築される鉄塔タイプ、世田谷区など主に市街地でビルやマンションなどの屋上に設置されるタイプ、そのほか、電柱や地下鉄駅などに設置されるタイプがございます。委員お話しの中高層建築物等の条例では、建物の建築時を捉え、指導を進めているため、後づけで設置されるタイプなどは対象とすることができません。

また、中高層建築物等の条例は、建築物が建築されることに伴い、周辺に与える影響により生ずる紛争を予防する条例でございまして、事業者は近隣の方々に対し、建築物の高さや配置を工夫することで、その建築物自体が近隣に与える影響、圧迫感の軽減やプライバシーの確保、日影の影響など、可能な範囲で要望に即した配慮を提案し、調整を行っております。

しかし、工作物となる携帯電話の基地局は、人体の健康への影響の観点から、電波の送受信源である基地局の設置自体を決める話し合いとなると考えられ、建築物が建つことにより紛争を予防していく中高層建築物等の条例になじまないものと考えております。

 

田中みち子 委員 今の答弁で、中高層建築物等の条例になじまないということですけれども、このままでは何ら対策が進まないんです。知らない間に設置される事態はやっぱり避けるべきと考えます。こうならないために世田谷区ができることを再考すべきでないでしょうか。

先日、電磁波問題市民研究会の事務局長の大久保貞利先生を講師に迎えて砧地域で開催された住民主体の勉強会に参加してまいりました。第五世代携帯電話システム5Gとなると、基地局数も電磁波量も著しく増加し、生態系にも悪影響を与えることや、人の健康と環境に脅威となることを世界三十五カ国の科学者、医師百八十人以上が警告していること、さらに、電磁波の規制値において、予防原則にのっとり対応する欧州では厳しい基準値となっており、パリ市は日本の基準値の約千分の一であることなどを伺いました。

これまでも申し上げてきましたが、5Gのサービス開始とともに利便性は向上しますが、そのアンテナから発せられる電磁波に関する長期的な健康への影響はないとの科学的根拠がない限り、安心安全な生活はできないという不安の声は高まります。事業者へ設置計画や事前説明を義務づける条例の制定が難しいというならば、せめて区として事業者へ説明責任を果たすよう働きかけるなど、すぐに取り組める対策は考えられないでしょうか。見解を伺います。

 

建築調整課長 携帯電話の基地局の設置につきましては、事業者は国の電波防護指針に基づき、安全基準の範囲内で設置を行っております。しかしながら、近年の社会経済活動及び情報化の著しい進展に伴い、電波利用分野における需要の高まりにより、次世代の移動通信システムである5Gへの移行が進む中、国は、電波利用の普及、高度化により電波が人体に与える影響に対する懸念が増加していることを認識しており、WHOでは、電波が与える健康への影響に関する研究については、継続的に実施していく予定でございます。

区といたしましても、こうしたことから御不安を感じている方々に対し、携帯電話の基地局の設置の際、事業者から国の安全基準の範囲内であることを丁寧に説明することにつきましては非常に大切であると感じておりまして、関係所管と協力連携し、区のホームページなどで携帯電話の基地局の設置に関する安全性についての御紹介や周知、また、周辺住民への丁寧な説明を行うことにつきまして、事業者へ説明責任をしっかり果たすよう、書面等により要請するなど、現時点で可能な限り対応を検討してまいります。

 

田中みち子 委員 ありがとうございます。書面で事業者へ要請する、一歩前進と考えます。ただ、これでは紛争の未然防止にはつながりませんので、携帯電話基地局の設置などに関するルールづくりに向けて引き続き検討してください。あと、また、こういった勉強会では地域の方々の本当に不安に思う声が直接聞けますので、関連の所管の方々、ぜひ出向いていただいて、現状を知っていただきたいと思います。

次に、交通不便地域への取り組みについてです。

世田谷区では、小田急線や京王線など東西の交通は発達していますが、南北の交通手段となるバス路線の密度が低い地域が多くあります。こうした最寄りのバス停留所から二百メートル以上、または鉄道から五百メートル以上離れたエリアは公共交通不便地域と定義され、区内の一九・七%を占めています。

この間も、交通不便地域を解消するため、コミュニティバスの導入については、道路の拡幅や採算性などの課題があり、なかなか進んでいませんでした。そこで、利便性だけとせず、経済性という意味でも今後外すことができない持続可能な開発目標、SDGsにも合致した視点をいち早く取り入れて、サポーター制度やラッピングなどで工夫を凝らして無料で走らせていることを実現して、また、採算性の問題も解決した自由が丘のサンクスネイチャーバスの手法などを取り入れてはどうかと、平成三十年三月の予算特別委員会でも提案してまいりました。

ところが、勉強会や協議会など地元の声を拾い上げた運行概要がまとまったにもかかわらず、本年度、予算化されませんでした。皆さん期待していましたので、どうなってしまったのかと不安の声が後を絶ちません。進んでいない課題は何なんでしょうか。この間の取り組みも含め答弁いただきたいと思います。

 

交通政策課長 公共交通不便地域対策につきましては、平成二十九年度に砧地区をモデル地区に選定し、地域の多くの方々の御協力を得ながら調査検討を進めてきたところでございます。平成三十年度には協議会も設立され、早期の実証運行を目指しておりましたが、運行ルート上の安全対策と事業収支計画に課題があることから、今年度はその課題解決に向けて取り組んでいくことにいたしました。

昨今の路線バスによる事故などにより、公共交通に対してより一層の安全対策が交通管理者より求められており、運行に関する再検討も必要となっています。また、狭隘な道路を通行できるワゴン車タイプの車両を想定しておりますが、運賃収入だけで経費を賄うことは難しく、運行収支面での課題は引き続き検討が必要な状況でございます。

 

田中みち子 委員 今の答弁で、想定していた以上の安全対策ということですけれども、具体的な解決策はあるんでしょうか。

 

交通政策課長 具体的に、例えば注意喚起の看板設置等のハード面での対策や、ルート上の注意点等を踏まえた交通安全マニュアルを作成し運行事業者に徹底を図るといったソフト面での対策に加えまして、見守り活動や運行時間帯の調整等による対策が考えられます。

 

田中みち子 委員 九月の特別委員会で交通まちづくり基本計画素案が報告されたんですけれども、それをよく見ますと、今後の人口特性や地理条件などの視点から重点的に検討するべき地域を精査していくと記載されていて、この精査ということがどういう意味なのか、簡単にわかりやすく御答弁ください。

 

交通政策課長 具体的には、高齢者人口等の人口特性ですとか、土地の勾配や施設配置等の地理条件を踏まえたエリアの精査を行っております。

 

田中みち子 委員 砧の実証実験に向けて、皆さん期待しております。ぜひしっかりと検討いただきたいと要望いたしまして、質問を終わります。