高岡じゅん子 議員
初めに、学校生活での実践を基盤としたSDGs教育について質問します。
生活者ネットワークは、今の小学生が社会の中心を担う二〇五〇年代に向け、人類がこの地球上で平和に幸福に生存し続けるための今日的な諸課題について指摘し続けてきました。パリ協定の目標である気温上昇一・五度未満の達成、脱原発のエネルギーシフト、国際理解や多様性を含む人権尊重、シチズンシップに基づく社会参加の推進、ネットリテラシーとICTスキル、化学物質や電磁波対策など、現代社会は多岐にわたる、今までにない課題に直面しています。
世田谷区の第二次教育ビジョンにおいても、これからの社会を生き抜く力の育成を掲げ、これらの課題に対し、主体的に感じ、考え、表現する力を育むことを目標としています。SDGsは、地球人類が二十二世紀も生き延びるために設定された、有機的なつながりを持つ具体的な行動目標のリストです。このSDGsを、これからの社会を生き抜く力の育成に向けた教育カリキュラムの横串として活用し、自分たちの未来をよりよいものにするための主体的学習活動に生かすべきです。
大切なのは、知識だけではなく、SDGsを生活の一つ一つに結びつけ、よりよい方法はないか、子ども自身が考え、発言し、行動していくことです。子どもは親や大人を本当によく見ています。言っていることとやっていることが違っていたら、どんなによさそうなことを言っても、子どもの身にはつきません。真のSDGs教育は、学校生活での実践が基礎にあって初めてまことの力になるのだと考え、以下質問してまいります。
世田谷区の学校給食において、遺伝子組み換え食品を使わない、放射性物質の一食丸ごと検査を定期的に行うなど、SDGsの三番、健康に配慮した取り組みを続けているほか、リユース容器である瓶入り牛乳での牛乳の提供や、せたがやそだちの野菜を使った給食メニューの実践など、SDGsの十二番、つくる責任、使う責任、九番の産業基盤、十五番の陸の自然などにもひもづけることのできる取り組みを続けてきました。給食を食育として捉えた場合、このような取り組みは非常に意義のあるものだと評価しています。
しかし、残念ながら、ことしの四月以降、ごみ削減として有用なリユース――生き瓶を給食の牛乳提供に使えなくなります。生活者ネットワークは、拡大生産者責任の徹底により、ごみをつくらない食品包装容器である生き瓶を社会のシステムとして残すという活動を続けています。子どもたちが生活の中で目にすることのできる、本当に貴重な生き瓶である瓶牛乳の提供がなくなってしまうということは、リサイクルよりもリユースのほうがより優先度の高い資源活用であるということに逆行しており、非常に遺憾です。つくる責任、使う責任を踏まえた上での瓶牛乳の提供終了に関する教育委員会の見解を伺います。
給食を通じたSDGsの実践は、食材選択にも応用できます。農産物をつくる人も食べる人も、ともに健康に幸せに生き続けられる道を探すため、韓国では、国産有機農産物を学校給食に使うことが急速に普及しつつあります。国内では、今治市で地産地消を進め、給食に地元産で化学肥料や農薬を慣行栽培の半分以下に抑えた特別栽培米を使用し始めています。
昨年、世田谷区は、区の管理する施設でのグリホサートなど、健康に害のある農薬の散布をしないことを決定しました。これらの農薬は、食品の中にも微量ですが残留し、蓄積により、さまざまな健康影響を引き起こすと言われています。大人として、子どもたちの未来と健康を真剣に考えていることを示すためにも、世田谷区教育委員会も、今より一層、地産地消や有機農法による食材など、質の高い食材の活用に取り組んでいくべきではないかと考えます。見解を伺います。
世田谷区立小中学校は、十年以上前から全校が学校エコライフ活動に取り組んでいます。長年取り組んできた結果、活動の目的や意義が子どもたち自身のものにならず、惰性で取り組んでいるような例もあるのではないでしょうか。SDGsの目標ときちんとひもづけるなどして、もう一度、意義のある活動として再構築することを求めます。
SDGsを意識した実践活動の教育的な意義を高めるには、地域との連携が有用です。ごみ削減を例にとれば、地域のごみ減量・リサイクル推進委員や資源再利用活動団体、区内の環境学習や消費者教育についてのNPOや団体など、たくさんの地域の大人たちが子どもたちの学習活動を喜んで手伝いたいと思っています。先日、世田谷法人会でも、持続可能な世田谷に向けた新しいソーシャルビジネスの展開についてという講演会を開催していました。大人も子どもも一緒にSDGsを実践していく機運が世田谷区内に高まっていると感じます。SDGsは、どれか一つの目標を達成すればよいというのではなく、全ての目標を、誰一人取り残さず、大勢の参加と協働で一歩一歩実現していくものです。
令和二年度の世田谷区におけるSDGs教育の取り組みについての見解を伺います。
次に、誰もが希望を持って働ける世田谷の実現に向けて質問します。
法定雇用率の引き上げに対応した障害者雇用の促進が日本社会全体で少しずつ進んでいます。世田谷区内でも、特別支援学校卒業生の就職率は、丁寧な進路指導の効果もあり、着実に伸びています。その一方で、学齢期を過ぎての発症が多いという特徴のある精神障害、自分自身でも生きづらさの原因がわからないまま大人になってしまったという情緒障害を抱える成人の方など、一目で理解しづらい障害を抱える方の就職や、就労継続が難しいという現状はなかなか改善されていません。
従来から、世田谷区こそ率先して、さまざまな困難を抱える方を就労から社会参加に結びつける取り組みを強めるべきと主張してまいりました。ことし四月から始まる、せたJOB応援プロジェクトに期待しています。特に先ほど取り上げた、目に見えにくい障害を抱えた方の中には、就労直後に張り切り過ぎ、揺り戻しで疲れて継続が難しくなるということを繰り返し、自信を失い、引きこもるという悪循環に陥っているという事例も見受けられます。このような困難事例にも対処でき、何回でも再スタートができる丁寧なマッチングとフォローの体制をこのプロジェクトで実現していただきたいと考えます。区の見解を伺います。
就労先の開拓についても、地域と連携し、より積極的な取り組みを期待します。障害者就労で成功している全国の事例を見ますと、障害特性に合わせ、仕事を丁寧に割り振ることや、作業の習熟などを通じ、むしろ人手不足解消や製品の品質向上にまで戦力化している例が見られます。仕事や勤務形態の多様化や、地域と連携した就労先の開拓に向けての取り組みについて伺います。
一般就労への入り口として、三年間、区役所で働きながら経験を積めるチャレンジ雇用という制度があります。一般就労への準備活動と位置づけられてきましたが、民間の障害者雇用が進む中、区には新たな役割が求められていると感じます。世田谷区でのチャレンジ雇用を応用した、さらなる雇用の入り口づくりの取り組みについて伺います。
世田谷区役所の二〇一九年の障害者雇用率は、残念ながら、一・九九%でした。二〇二一年度末までの法定雇用率の達成、さらには、十年以内の特別区目標になっている三%の早期達成に向け、着実な努力を求めます。
障害者にとって、世田谷区役所に就職できるということは、住みなれた世田谷で安定した職場を持ち、暮らし続けられる確かな希望となります。例えばチャレンジ雇用から試験を受けての会計年度任用職員へのステップアップの可能性などはあるのでしょうか。安定的に受け入れを拡大していくためには、職場全体にわたる理解促進に向けた計画的な研修なども必要になると考えます。障害者雇用率先行動について、世田谷区の現在の取り組み状況と今後の展開について伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
教育次長
私からは二件御答弁申し上げます。
まず、学校給食の瓶牛乳の供給終了に関しての教育委員会の考えはということにつきましてです。
世田谷区立小中学校の給食用牛乳につきましては、現在、年間を通じて、安全で品質の高い牛乳を安定的に供給が受けられるよう、東京学乳協議会を構成する牛乳供給事業者から供給を受けており、容器はガラス瓶となっています。
ガラス瓶での牛乳供給のため、納入事業者が空き瓶を回収し、繰り返し使用するリユース方式により、ごみの減量などの環境配慮につながっていることは、教育委員会といたしましても、意義のあることと認識しております。しかしながら、令和二年度以降は、ガラス瓶による牛乳供給が可能な事業者が存在しないため、区の学校給食用牛乳は紙パックでの供給となります。
また、東京都より、令和二年度から納入事業者による空き紙パックの回収処理は行わないとの通知がありました。あわせて、空き紙パックの処理につきましては、リサイクルを推進するよう通知がございました。そのため、空き紙パックの処理につきましては、各小中学校で行う必要があることから、教育委員会といたしましては、リサイクルに取り組むことを基本としており、環境教育への契機となればと考えております。
続きまして、学校給食での地産地消や有機農法による食材など、質の高い食材の活用について取り組むべきということにつきましてです。
学校給食は、児童生徒の健康の保持増進を図るとともに、食に関する正しい理解を深める上でも、生きた教材として活用されており、大変重要な役割を担っております。
給食用食材を発注する際は、価格だけではなく、献立に適した規格、品質などを考慮しております。また、今年度につきましても、世田谷ゆかりの大蔵大根を活用したせたがやそだち給食を実施するなど、食育や郷土愛、地産地消の観点から、地域の協力を得ながら、世田谷産農産物を利用した給食活動や給食提供などを行っております。
学校給食における有機無農薬食材の使用につきましても、各学校が必要量や価格などを考慮して、可能であれば使用しております。教育委員会といたしましても、今後とも安全安心でおいしい給食の提供に努めてまいります。
以上です。
教育政策部長
二点御答弁申し上げます。
まず、学校エコライフ活動についてでございます。
教育委員会では、平成十九年度より、環境に配慮し、自主的、主体的に行動することのできる児童生徒の育成を目指して、せたがや学校エコライフ活動を推進しており、多くの学校では、ペットボトルキャップや古紙のリサイクル活動や、標準服や上履きなどのリユース活動に取り組んでおります。また、各学校では、環境や貧困、人権などの地球規模の課題に対する世界共通の行動指針として国連が示しているSDGsについて、みずから課題として学ぶ取り組みも進めており、今年度の中学校の生徒会サミットにおいては、マイクロプラスチックの問題などをテーマとして、実践的な活動へとつなげた事例も報告されております。
教育委員会といたしましては、これまで取り組んできた学校エコライフ活動を、世界共通の課題であるSDGsへの取り組みと関連づけることにより、児童生徒がより意欲的にリサイクルの実践などに取り組むことができるよう、工夫してまいりたいと考えております。
次に、SDGs教育の推進についてでございます。
教育委員会では、学校と地域との連携をさらに進めてまいりたいと考えており、キャリア教育という視点からも、地域の中でさまざまな活動に取り組む企業や事業者から子どもたちが多様な学びを得る機会を提供していきたいと考えております。
地域との連携の切り口の一つとして、世界共通の目標であるSDGsは、子どもたちも理解しやすいテーマであり、海洋プラスチック問題に関連づけて、多摩川河川敷のごみの調査に取り組んだ小学校もございます。また、地域の中には、障害のある方が働く事業所や、男女を問わない形で育児支援を行う企業、難民支援や貧困問題に取り組む方など、SDGsに関連する取り組みをされている企業や個人も多いと考えており、子どもたちが学び、自分の人生や生き方に生かすことへとつなげていければと考えております。
二〇二〇年は、キャリア教育が全校で行われる取り組みを進めるとともに、地域との連携の実践例の紹介などを通じて、地域とつながる形でSDGs教育が展開していけるよう、各学校の取り組みを支援してまいります。
以上でございます。
障害福祉部長
私からは、誰もが希望を持って働ける世田谷の実現について、三点お答えいたします。
初めに、せたJOB応援プロジェクトについてです。
現在、障害者雇用では、体調の波があるため、法定雇用率に算定される週二十時間以上の求人では働けなかったり、公共交通機関の利用が難しいため、自宅から離れた企業に通勤することができない方などの支援が課題となっております。そこで、区では来年度より、働きたくても働くことが難しい障害者に対して、短時間雇用や自宅でのテレワークなど、多様な働き方を創出し、支援する、せたJOB応援プロジェクトを開始いたします。
この取り組みで開拓された業務と、就労を希望する障害者をコーディネート、マッチングするのは、これまでも離職後のフォローや再就職支援を行ってきた三つの障害者就労支援センターとなります。区としましては、障害者就労支援センターのこれまでの経験の積み重ねを生かすとともに、必要な人員を確保し、これまで以上にお一人お一人の御希望や特性を捉え、障害のある方の多様な再スタートを応援してまいりたいと考えております。
次に、地域と連携した就労先の開拓についてです。
区では以前より、世田谷区障害者雇用促進協議会の活動を通して、区内産業団体と共同で障害者雇用を進めてまいりました。既に今年度の活動の中で、企業向けにテレワークのセミナーを実施し、参加企業から、大変役に立った、個別に相談したいという声をいただいており、区内企業で実際に短時間雇用を試行実施するなど、好評を得ております。
区内企業は総じて人手不足の状況にあることから、せたJOB応援プロジェクトでは、法定雇用率達成だけでなく、企業の困り事の解決に向け、例えば店舗開店前の短時間の準備業務や、ウエブデザインのテレワークなど、多様な業務開拓を進めてまいります。さらに、本プロジェクト実施を契機に、ぷらっとホーム世田谷など、他の就労支援機関と開拓した業務情報を共有するなど、連携強化を図ることで、障害を含め、さまざまな理由で働きたくても働きづらい方々の就労促進を目指す取り組みの推進を進めてまいります。
最後に、チャレンジ雇用の仕組みを活用した雇用の取り組みについてです。
チャレンジ雇用は、国や自治体が障害者を一定期間雇用し、その業務経験をもとに一般就労を促進する制度で、区では平成二十二年度より実施しておりますが、障害特性により、定められた勤務時間、日数では働けないなどの理由から、最近は申込数が低下しております。
そこで、就労支援施設に利用者の現状を確認した上で、昨年十一月より、雇用に先立ち、短期間の就労体験を提供するチャレンジ実施を導入したところ、既に六人の利用がございました。さらに来年度からは、従来より勤務時間、日数の短いチャレンジ雇用の職を新たに数種類設定し、それぞれの特性に応じた就労経験が積めるよう取り組んでまいります。
この取り組みを通じ、チャレンジ雇用職員のそれぞれの目標を見きわめ、障害のある方を対象とした区会計年度任用職員への挑戦や、せたJOB応援プロジェクトで開拓した短時間就労への丁寧なつなぎを行うとともに、区の障害者優先調達を推し進め、共同受注作業などの多様な就労へと結びつけてまいります。
以上でございます。
総務部長
私からは区の障害者雇用率先行動について御答弁申し上げます。
区では、平成三十年度に障害者雇用率の誤算定が判明した以降、早期の法定雇用率の充足を喫緊の課題として、鋭意取り組んでまいりました。今年度は、区のチャレンジ雇用から就労に結びついた方を含め、十七人の障害のある職員を採用しました。現在、障害のある職員が安定的に勤務できるよう、人事部門に設けた担当チームが、職員との定期的な面談や、就労支援機関と連携した本人や配属職場への支援に取り組んでおります。
また、昨年六月、障害者雇用促進法の改正により、自治体に障害のある職員の活躍推進計画の策定が義務づけられたことから、区では、令和三年度の法定雇用率の充足や、職員の職場定着、障害者雇用に対する理解促進を目標とした世田谷区障害者活躍推進計画の策定を進めているところです。
今後は、本計画に基づき、障害者雇用を計画的に拡大するとともに、雇用の質を確保するための取り組みを着実に進め、障害のある職員が安心して安定的に働き、活躍できる環境づくりに全庁を挙げて取り組んでまいります。
以上でございます。
高岡じゅん子議員
障害者雇用に関しては、着実に進めていくことを要望いたします。
SDGsに関して、リサイクルをしたら、それでよいというふうになってしまうのはやはり少しおかしいと思いますので、そこをぜひ留意して進めていただきたいと子どもたちに声がけしてください。
二〇二〇年の取り組みとして、キャリア教育と関連づけたSDGsの展開という御答弁をいただきました。教育長、このキャリア教育は大変関心を、特に力を入れている分野と存じますので、教育長のSDGsに関する御見解をお願いいたします。
教育長
再質問にお答えします。
二〇一五年九月に国連より発表された十七の目標と百六十九のターゲットから成る国際的な開発目標には、各学校でもそれぞれに取り組みを始めていますが、断片的に行うのではなく、各教科を横断的に考えた学習、例えば、二番、飢餓をなくそうでは、社会科の学習で世界の様子を思い浮かべ、また、そのための食について、家庭科でリサイクル等について学び、または毎日の給食などで考えることができます。さらに、十一番、住み続けられるまちづくりでは、社会や理科の学習とともに、子どもたち一人一人の将来に結びつけたキャリア教育として、地域や企業とも結びついた学習になります。
このように、日々の生活とともに、さらにエコライフ活動、児童会・生徒会活動など、日々の生活や学習の中でもSDGsの考え方を取り入れ、教育の基盤にしていきたいと考えております。
以上でございます。