第1回定例会 一般質問と答弁 2020.2.20 田中みち子

田中みち子 議員

 

質問通告に従って順次質問してまいります

まず初めに、児童相談所における子どもの意見表明権の保障についてです。

いよいよ四月から、特別区初となる区立の児童相談所が開設をされます。一時保護所での、目を合わせることや私語さえ許されない環境や社会的養護のもとで育った子どもの自立困難などの課題を解消し、子育て家庭支援や子どもを見守るネットワークをより一層充実させ、子どもの最善の利益が保障される体制づくりに必要な子どもの心の声を受けとめる児童相談所になることを希望します。

改めて、二十三区で先陣を切って区立の児童相談所の開設に臨む区長の意気込みと決意を伺います。

東京都には、親の病気や虐待など、さまざまな理由から自宅で生活できない子どもの約四千人が、里親や施設など社会的養護のもとで生活しています。身体的、精神的虐待を受けて、生きることに対して希望を見出せない困難な状況に置かれている場合も多くあり、やっと措置された養護下であっても、すぐに素直な気持ちを言葉にして、みずからの権利を主張することが難しいと聞きます。深く心が傷ついた子どもに寄り添い、その声をしっかりと拾い上げる体制が求められます。

区は、子どもの意見表明権の支援について、一時保護所における意見箱の設置や第三者委員の設置、また、せたホッとの活用など取り組みを示していますが、子どもが苦情を申し立てることで始まる支援ばかりです。苦情を申し立てることに抵抗がある子どもがいることは容易に想定できます。

そこで、心を解きほぐしながら意見を引き出すアウトリーチ型の意見表明支援が必要と考えます。具体的には、同じ経験をした代替養育出身者などが研修を受けて、一時保護された子どもや養護施設や里親のもとで育つ子どもの声の代弁者となって、悩みなどの相談を受け、共有し、改善に向け子どもに寄り添い、ともに考え、行動する子どもアドボカシーの手法も有効と考えます。区の見解を伺います。

また、一対一の愛着形成を築く大切な時期に虐待され育つ子どもは、愛着障害を抱えている場合が多く、社会に出た後の人間関係にも問題が生ずるなど、その後の人生に大きな影響を及ぼします。自分の意見も言えず、否定され続けて育った子どもが人を信頼し、一時保護や代替養育の期間中に自分の意見を言えるかというと、それも非常に困難です。意見表明支援を考える上では、こうした愛着障害の問題とどう向き合うのか、表裏一体の問題であり、意見表明の支援の仕組みをつくるだけでなく、愛着障害を持つ子どもへの支援も同時に進めることが必要です。

愛着障害に悩む子どもと養育者の支援として、烏山にある社会福祉法人子どもの虐待防止センターでは、児童養護施設や里親家庭、養子縁組家庭における子どもを対象とした愛着形成のための心理療法プログラムを行っており、都の児童相談所の援助活動でも活用されてきたと聞いています。愛着障害を持つ子ども支援と、ひいては子どもの意見表明支援の推進につながるよう、この心理療法プログラムを、さらに積極的に子どもと養育者の支援活動に取り入れるべきです。見解を伺います。

脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて伺います。

昨年相次いだ台風は、気候変動に起因した危機的状況であることを誰もが感じた出来事だったではないでしょうか。気候危機への対策として、脱炭素へ向けた取り組みを一層強化する必要があります。

二〇一二年の電力小売全面自由化を機に、自治体においても新電力からの電力調達がふえています。世田谷区は、電力調達における再生可能エネルギーを推進するために、世田谷区再生可能エネルギーの電力の購入契約に関する環境配慮項目評価基準を設け、入札資格制限を行うことで、今年度から本庁舎の電力を再生可能エネルギー一〇〇%の電力に切りかえました。

しかし、価格を優先した一般競争入札であるため電力構成における再生可能エネルギーの利用率、割合が低い電力会社による落札の取り戻しも考えられます。今後は現在の入札資格制限方式から、再生可能エネルギーの割合が高い事業者を高く評価できる総合評価方式へと変えていくことを視野に、検討を進めることも必要です。

二〇二〇年度からは、出張所やまちづくりセンターなど低圧電力の施設へも再エネ電力を一般競争入札で導入し、その電力には、昨年十一月から固定価格買取制度の期間満了を迎えた、いわゆる卒FIT電力を活用すると聞いています。区内エネルギーの地産地消を推進するために、今後、卒FITを迎える区民へどのようなPRをして、小売電気事業者などと連携を深めていくのでしょうか。

また現在、区立小中学校二十七校において、清掃工場の廃熱利用による電力を使用していますが、世界的にはサーマルリサイクルはリサイクルとは認められていません。脱炭素への取り組みの一つとして、ごみ削減に向けた世界的潮流の中、清掃工場の廃熱利用自体も見直す時期に来ていると考えます。こうした課題を明らかにし、再生可能エネルギー電力利用の拡大にどう取り組むのか、見解を伺います。

さらに、脱炭素社会の実現に向け、住宅に関する断熱性能を推進するため、環境リノベーション補助事業の拡充や先駆的に進める長野県の制度の提案などを行ってきました。気候変動における非常事態宣言をした鎌倉市では、新築の建物を対象にネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを補助しています。世田谷区としても、新築住宅に対するゼロエネルギーへの対策を進めるべきです。見解を伺います。

最後に、区職員のセクハラ問題についてです。

二〇一八年に起きた財務事務次官のセクハラ辞任騒動を機に、日本でも、ようやくMeToo運動に火がつきました。女性たちの足元で起こるセクハラなど性暴力の実態がマスコミでも取り上げられましたが、被害を訴えた後に起こる二次被害が明らかとなるなど、声を上げることに対して高いハードルがあると考えます。

世田谷区役所内でも決して対岸の火事ではなく、昨年は女性に対し性的暴行を加えたとの理由から、区職員が懲戒免職処分されました。ことしに入り、また、セクシュアルハラスメントという性暴力により、区職員を減給処分したとの発表です。

これまでの職員相談の状況を確認しますと、セクシュアルハラスメントを含めた相談件数は、二十八年度は五十一件、二十九年度は四十五件、三十年度は四十五件と、毎年約五十件前後あります。しかし、外部の第三者でない区の職員が相談担当窓口となれば、声を上げることを諦める方もいると考えます。より厳正な調査、対応が必要と認められているハラスメントの苦情、相談件数は、三十年度は前年度から倍増してしまっており八件です。

世田谷区は、職場におけるハラスメント対策として、平成十年にセクシュアルハラスメントに関する基本方針を、平成二十八年にはパワーハラスメントに関する基本方針を定めるなど、ハラスメント対策に向けて取り組んでいたにもかかわらず、十分に機能していなかったということです。

これを機に、これまでの対応や問題発生後の実態調査、職員以外の外部の方による相談、救済の仕組み、職員一人一人の意識改革など、再発防止に向けた取り組みを求めます。見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

区長

 

田中議員にお答えをいたします。

 

まず、児童相談所開設に当たっての意気込み、そして、課題意識についてであります。

世田谷区では、子どもの権利条約でうたう、子どもの権利が保障されるまちづくりを掲げた子ども条例を、平易な子どもも理解できる文言で平成十三年十二月に制定をしました。この子ども条例を基本としながら、例えばいじめ、暴力などから子どもを守るせたホッとの設立など、さまざまな子ども・子育て支援の充実に取り組んできたところであります。

今回スタートする区の児童相談所では、子どもの人権に最大限配慮をした一時保護所の整備や意見表明支援の体制整備なども行っていき、今後も里親や児童養護施設における第三者委員の設置など、検討にも取り組んでいきたいと思っております。御指摘があった、過去に社会的養護のもとで育った若者、あるいは大人の視点も生かしたアウトリーチ型の支援ということも、御提案を受けとめさせていただきたいと思います。

こうした区の取り組みに対し、他の自治体の職員や施設、里親などの関係者、また、一時保護や社会的養護のもとで生活をした経験者から、たくさんの期待の声をいただいており、区の子どもたちのみならず、全国の子どもたちの将来に対する期待と責任を負うものである、これは日本における児童福祉の水準を引き上げるために、職員ともども大きな一歩を踏み出すという決意を新たにしているところでございます。

まずは、子どもと家庭を支援する立場にある大人たちが、子どもの意見を聞くことを大切にすべきと考えています。そのためのアドボカシーの役割を果たすことも大変重要であり、欠かすことのできない取り組みであると感じておりますので、しっかり機能するように準備していきたいと思っております。

 

児童相談所開設準備担当部長

 

私からは、児童相談所における子どもアドボカシー、意見表明権の保障について二点御答弁申し上げます。

 

まずは、代替養育を経験した当事者による意見表明支援についてお答えいたします。

子どもの状態は、一時保護された直後から児童養護施設や里親に措置されたとき、また、進学や周囲の環境などにより常に変化してまいります。こうした中、継続して客観的な心理状態や発達の状況を観察し、必要に応じて心理的なアプローチを加えるなどをしながら、いずれ地域社会の中で自立していけるように支援していくこととなります。この一連の流れの中で、議員御提案のように、児童養護施設や里親の代替養育の経験者が支援者となり、子どもとかかわりながら、その意見を引き出すという手法を取り入れるには、子どもがどのような状態のときに、どのようなトレーニングを受けた経験者が支援に入るのかなど手法が確立されておらず、今後も研究の必要があるものと考えております。

このような状況でございますが、より子どもが意見を言いやすくする環境づくりについて、今後もたゆまず工夫を重ねていく必要があると考えており、国や民間機関によるこの分野の調査研究を注視し、区としても、その有効性などについて検討を行ってまいります。

次に、子どもの意見表明支援と愛着障害を持つ子どもの支援についてお答えいたします。

区は、児童養護施設や里親家庭、養子縁組家庭において、親子のコミュニケーションがうまくとれないなど、愛着障害のあるお子さんの養育に御苦労されている実態があることを認識しております。こうした面からも、子どもの意見表明支援と同時に、愛着障害を持つ子どもの一層の支援の充実が必要であると考えており、議員御紹介のありました子どもの虐待防止センターで行われている愛着形成のための心理療法プログラムを区の児童相談所においても、相談援助活動の中で積極的に活用してまいりたいと考えております。

しかしながら、現状といたしましては、児童相談所の援助活動として十分に活用できるだけの利用枠がなく、愛着障害に悩む施設や里親が直接利用を申し込むケースで利用枠がほとんど埋まってしまうとのことでございます。こうしたことから、現在このプログラムの利用枠の拡充について同法人と意見交換を行っておりますが、人材確保などの課題があるとのことであり、こうした課題を踏まえ、プログラムの積極的な活用ができるよう、さまざまな方策について引き続き検討を進めてまいります。

以上でございます。

 

環境政策部長

 

私からは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みについて三点の御質問に御答弁いたします。

まず、区内の卒FIT電力の活用でございます。

 

区は、脱炭素社会に向けた取り組みを進めるため、区民、事業者、区の三者が連携して、区全体で再生可能エネルギーを利用拡大していく、せたがや版RE一〇〇を構築しました。再エネの区施設への導入につきましては、今年度から本庁舎に再エネ一〇〇%電力を導入するとともに、令和二年度以降、区内の卒FIT電力も視野に入れた三カ年の導入計画として、出張所やまちづくりセンター、地区会館など七十一施設に加え、総合支所にも広げる予定としております。また、このほか区立の保育園、児童館等、一部の区立小中学校にも電力供給を受けている状況でございます。

区内の卒FIT電力の活用に当たりましては、地産地消の観点から、せたがや版RE一〇〇の広報の中で、区民には卒FIT電力で生み出される余剰電力の区施設を初めとした区内消費への理解を求めてまいります。また、小売電気事業者に対しましては、区内の卒FIT電力を調達してくるとともに、区施設だけでなく、区民及び区内事業者へも供給できるよう協力を依頼してまいります。

次に、区立小中学校における清掃工場の廃熱利用による電力についてでございます。

区施設における再エネ率は、今年度の本庁舎、来年度からの出張所等への導入を合わせまして、令和四年度には二〇%を見込んでいるところですが、さらなる向上に当たりましては、区立小中学校等にも導入拡大していく必要があると考えております。既に導入されている区立小中学校へは、清掃工場の廃熱利用による電力が安定的に供給されている状況ですが、ごみの排出抑制や資源の有効利用の取り組みもあり、区民一人一日当たりのごみ排出量は減少傾向にあります。

今後、区立小中学校への供給に当たりましては、こうした状況も踏まえ、再エネの電源構成や価格面などに注視しながら検討してまいります。

次に、ZEHを促進するための補助の導入についてでございます。

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、ZEHは住宅の低炭素化を進め、温室効果ガスの削減に寄与するだけでなく、光熱費の低減や快適性の確保、ヒートショックのリスクを低減するなど、さまざまなメリットがあります。区は、これまで区民を対象に、このようなZEHのよさや省エネ住宅、断熱の大切さなどをテーマにしたセミナーを開催し、あわせて住宅相談連絡協議会や建築士事務所協会の協力を得て、省エネ改修相談会を通して、省エネ住宅の整備促進に向けた啓発に取り組んでまいりました。

今後、ZEHを初めとする省エネ、創エネ住宅の普及拡大に当たり、区民や事業者に対して、国や東京都の補助制度や導入のメリットなど、さまざまな機会を通じて紹介するとともに、お話にございました補助制度につきましては、他都市のさまざまな事例を参考にしながら検討してまいります。

以上でございます。

 

総務部長

 

私からは、区職員のセクハラについての区の対応、救済の仕組み、再発防止等について御答弁いたします。

 

区では、職員のセクハラを初めとしたハラスメント等の相談窓口を設置しており、相談者へのヒアリングや関係者への事実関係の確認を経て、セクハラの事実が確認された場合は、セクハラ行為を行った職員を懲戒処分の対象とするなど厳正に対処しております。また、ハラスメントについて職員がどのように感じているかにつきましては、毎年実施しております職員のストレスチェックにおきまして、国の定めた項目のほか、セクハラやパワハラされていると感じたかどうかの設問を区独自に加えて、その傾向の把握に努めているところでございます。

区では、労働施策総合推進法等の改正を踏まえ、新たに職場におけるハラスメントの防止に関する基本方針を策定し、四月から運用を開始する予定でございます。この中では、ハラスメントの具体的例示や第三者の外部機関での相談窓口の設置、法律の専門家や女性管理職等によるハラスメント対策委員会の審議の仕組みを盛り込むなど、ハラスメントの防止策を強化した内容となっております。

ハラスメントは、たとえ自覚がなくても相手を傷つけたり、職場全体に悪影響を及ぼす行為であり、絶対に行ってはならないということを職員一人一人に浸透させる必要がございます。新たな基本方針に基づき、研修や庁内広報など、工夫を凝らしてハラスメントゼロを目指してまいります。

以上でございます。

 

田中みち子議員

 

今回、区の職員のセクハラ問題を取り上げたんですけれども、やはり、このセクハラというのを軽く見てほしくないなと思います。セクハラは性暴力の一つで、重大な人権侵害であるんだということを、改めて皆さんに認識していただきたいと、そういう思いからです。そして、このハラスメントというのも、今回の五十件相談した中で厳罰なものは八件あったということで、やっぱりこれはもしかしたら、もっとその後ろに相談できないという方がいらっしゃるんじゃないかという思いもあります。やっぱり、職場全体でこういった環境を改善していくには、行政である区長に、本当にハラスメントをゼロにするために、どういった覚悟を持って取り組むのかということを改めて答弁いただきたいと思います。

 

区長

 

田中議員の再質問にお答えをします。

 

セクハラ問題について、私の決意ということでございます。

今回、セクハラ等による職員の懲戒処分につきましては、決してあってはならないことであり、繰り返してはならないことで、大変重く受けとめさせていただいています。常に相手がどのように感じるか、その立場に立って、みずからの言動によって相手を傷つけていないかどうかを常に振り返る必要があると感じています。

先ほど部長からの答弁がありましたが、四月から運用を始める職場におけるハラスメントの防止に関する基本方針の策定に当たっては、私からは、日ごろの言動の中に潜んでいるハラスメントについて、より具体的な例示、これをしっかり挙げて、職員に意識をさせる、自覚をさせるというふうにしてほしいと指示をしているところでございます。セクハラを含めた職場のハラスメントは、職場全体に悪い影響が及ぶ点からも絶対起きてはならない、起こしてはならない、認めてはならないということで注意喚起を行い、ハラスメントゼロに向けて全力で取り組んでまいります。