第2回定例会 一般質問と答弁 2020.6.12 田中みち子 

田中みち子議員 皆様、おはようございます。それでは、質問通告に従って順次質問いたします。

まず初めに、障害者に寄り添った新しい生活様式の構築についてです。

五月二十五日、新型コロナウイルス緊急事態宣言が全面解除されました。収束が不透明な中、ウイルスの感染拡大防止に向け取組を進めることは重要です。国は、新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえて、マスクの着用やソーシャルディスタンスなど、日常生活の中で取り入れるための実践例を新しい生活様式として示しています。

しかし、視覚や聴覚に障害のある方々には問題があります。例えば、マスクの着用は聴覚に障害のある方のコミュニケーションに大きな影響を及ぼしますし、商品を触ることなどを控えることは、視覚に障害がある方の日常生活に支障が出ます。感染防止のために必要だとされている新しい生活様式が、障害のある人たちにとっては重要な情報を得られないことにつながります。

先般、障害者支援団体からは、新しい生活様式に障害当事者の視点を取り入れるよう七つの提案が示されました。視覚や聴覚に障害のある方への配慮として、町なかでの声かけや手話、字幕、音声アプリの導入などが挙げられています。手話については、心のバリアフリーを進める上でも有効な手段の一つとして、全小学校への実施をこれまでも提案していましたが、この間、障害福祉部と教育部局が連携し、学校への手話講師の派遣事業がスタートしたことを評価します。

今後も、コロナをきっかけとして、行政も区民も企業も、新しい生活様式の中に障害者への合理的配慮の視点をより一層取り入れていく必要があります。見解を伺います。

また、新しい生活様式を進める上では、あらゆる障害当事者の声を生かせる仕組み作りが欠かせません。コロナ禍ではテレワークが進み、多くの企業が会社と家をつないで会議が行われています。

区としても、これまで参加を諦めていた障害当事者に対して、リモート会議などICTの活用とその支援を進めることや、シンポジウムなどにもリモート参加が可能となるよう体制を整えることで、いつでも、どこでも、誰でも参加できる仕組みを構築すべきです。見解を伺います。

この間、視覚に障害のある方の支援については、厚労省の日常生活を支援する電話リレーサービスのモデル事業や、東京都の新型コロナウイルス感染症緊急対策における遠隔手話通訳サービスなどがあります。八王子市では、この東京都の遠隔手話通訳サービスの利用が促進されるように動画発信などを工夫しております。

こうした事例を参考に、国や都の動きに迅速に対応し、周知を工夫するとともに、早急に支援体制を進めるべきです。見解を伺います。

次に、危機的状況下における食の支援の在り方についてです。

コロナ感染症防止のために、小中学校では臨時休校が三か月も続きました。四月一日に示された方針では、子どもの食を確保するため、給食を伴う臨時休業中における分散登校が示されましたが、感染拡大が懸念される中、多くの区民から反対の声が上がり、急遽方針転換せざるを得なかったことは理解します。しかし、学校給食が一日の栄養源となっている子どもはいます。生活に困窮していても声を上げられない家庭があることを忘れてはなりません。

今回の臨時休業中には、民間のフードパントリーや子ども食堂などが、独り親家庭や多子世帯など食を必要とする家庭へお弁当やお米、レトルト食品などを提供して子どもたちの食を支えていますが、民間ではカバーできません。今後、第二波、第三波に備え、また未知の感染症が発症するなど危機的状況下を想定した対策が急務です。

子どもの食、健康、これら全てが子どもの権利、生きる権利です。生きるためには食が必要であり、それが食の保障です。学校は、子どもの権利を守る責務があります。また、今回給食が停止したことによって、区内事業者百四十一社ありますが、こちらも大きなダメージを受けています。区内事業者を支える観点でも、学校での食の保障を求めます。

次に、多様な働き方の推進と子育て支援についてです。

これまでもライフスタイルの変化に伴う離職を防ぎ、職住近接を進めるために、区内産業におけるテレワークなど多様な働き方を進めることを求めてきました。区では、昨年度から区内中小企業の職場環境を改善するためのサポート事業をスタートしています。コロナ禍では、確実にテレワークが進みました。感染症拡大防止対策としてもますます必要とされ、企業の関心が高まる今こそ、仕事の切り出しによるテレワークの導入など、多様な働き方を進めるチャンスです。

子育てや介護などにより仕事を諦めることなく、生活と仕事の両立が可能となるよう、多様な働き方を推進するためには、特に、在宅での仕事を可能とする事業者拡大に向けた体制強化が求められます。見解を伺います。

そして、多様な働き方を推進する上では、時短勤務を希望する方などの保育ニーズにも応える必要があります。子どもの面倒を見ながら在宅で仕事をすることは容易ではありません。保育の受皿についても抜本的に見直す必要があります。見解を伺います。

また、新型コロナウイルス感染症の影響による子育ての負担の増加や収入の減少に対する支援を行うため、独り親家庭など児童扶養手当受給世帯に対し独自に現金を給付する自治体が相次いでいます。世田谷の独自支援が必要だと考えますが、いまだ検討が進まず残念な思いです。国は、ひとり親世帯臨時特別給付金の支給を予定していますが、八月までに支給になると聞いております。夏休みは給食がなくなることで、体重が減る子どもの問題もあります。まずは国のひとり親世帯臨時特別給付金を一日も早く給付すべきです。見解を伺います。

最後に、世田谷区新型コロナウイルスをともに乗りこえる寄附金についてです。

四月三十日に募集を開始した寄附金は、早くも一千万円を超えました。その使い道については、先日の区長の招集挨拶にもありましたように、まずは感染防止対策に必要なマスクなどの防護用品を購入し区内医療機関に配付するとのことですが、この寄附金をより募るためには、フェーズの変化に応じた、具体的に何に使われるかを明確にする必要があります。

国や東京都から様々な支援策が示されますが、世帯主と世帯を別にするDV被害者や、親の虐待から逃れ家を出ている子ども、外国籍の方、ホームレスの方、無国籍の方、みなし法人など、大きな枠組みの支援から結果的に外れてしまう方や事業者が出ていることを無視することはできません。制度からこぼれ落ちても生活の場である基礎自治体が救済する、世田谷区としての覚悟が求められています。

この寄附金は、本当に困っている方々に速やかに届くよう仕組みを構築すべきです。見解を伺います。

また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今後の世田谷区の財政見通しは、中長期的に見て収入減少が予想されており、極めて厳しい状況です。今こそ寄附文化を醸成させ、新型コロナウイルスを乗り越えるためのお金の循環を区内に生み出し、世田谷区が一丸となって取り組み、お互いを思いやり、支え合える世田谷にしていく必要があります。基金化すれば、年度を越えても寄附してくださった方の思いが生きる使い方ができると思います。第二波、第三波の到来に備え、長期にわたって活用できるように、寄附金から基金にすべきと考えます。見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

副区長 私からは、今後の第二波、第三波の到来に備えた基金を活用した継続する支援について御答弁申し上げます。

新型コロナウイルス感染症は、今後第二波、第三波の到来も想定され、長期にわたりまして区民生活への影響が生じることが見込まれる中、寄附による支え合いを継続できる環境、仕組み作りが不可欠であると認識しております。お話しのとおり、寄附金を当該目的のために長期にわたり活用することを想定すると、基金を創造し、その活用も有効であると考えております。後ほど政策経営部長より詳細を答弁させますが、一刻も早く寄附金として納めていただいたものを、早期に必要な方への支援にまずはつないでまいります。

以上でございます。

 

障害福祉部長 私からは、障害者に寄り添った新しい生活様式の構築について三点お答えいたします。

初めに、リモート会議を活用した障害当事者の参画についてでございます。

感染リスクを下げる新しい生活様式を取り入れるに当たっては、障害当事者の立場に立ち、合理的配慮を徹底することが重要です。お話しの障害者団体からの七つの提案でも、視覚障害者や聴覚障害者への配慮として、町なかでの声かけや手話、字幕、音声認識アプリの導入などが挙げられています。

お話しのリモート会議については、区においても、区民を初め外部の方々との対面機会を減らすため、この四月より導入を図ったところです。リモート会議の実施に当たっては、個々のICT機器の設置状況や習熟度の確認のほか、障害種別への配慮、安全面の対策などを講じながら、難病や重度心身障害など移動が困難な障害をお持ちの方も、会議やシンポジウム等を通じて区政に参画できる仕組み作りに取り組んでまいります。

次に、国や都が進めるサービスの速やかな導入についてです。

聴覚障害者などの意思疎通を支援するため、国では、電話リレーサービスのモデル事業を実施しているほか、都では、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる聴覚障害者が医療機関を受診する際、スマートフォンなどを活用した遠隔手話通訳による支援を開始したところです。また、都と区市町村から手話通訳者の派遣を受託している東京手話通訳等派遣センターでは、都の遠隔手話通訳システムを活用し、区からの遠隔手話通訳の依頼に対応することが可能とされております。

国の電話リレーサービスは、現在総務省のデジタル活用共生社会実現会議のワーキンググループにおいて、モデル事業の検証、検討が行われているところです。

区としては、今後電話リレーサービスなど公共インフラ化に向けた国や都の動きを注視するとともに、世田谷区聴覚障害者協会とも連携し、サービスの周知方法や支援の手法等について検討を重ねてまいります。

最後に、新しい生活様式に合理的配慮の視点を取り入れるべきとの質問についてです。

小学校への手話講師の派遣については、昨年度はモデル事業を十二月より実施いたしましたが、学校からの要望も多く、本年度は対象校を拡大し、昨年度の約四倍、計十六校、五十クラスで実施する予定でおりますが、新型コロナウイルス感染症による授業への影響に配慮する必要があり、今後教育委員会や学校と調整しながら進めてまいりたいと考えております。区では、現在区民への障害理解の促進に向け、事業者、区民などへの合理的配慮に係る取組を進めるため、「区のおしらせ」への掲載やシンポジウムの開催のほか、区職員や施設職員への研修を行うなど、普及啓発にも取り組んでいるところです。

区としては、お話しの七つの提案を含め、新しい生活様式に対応していくことはコロナ禍において大変重要と考えており、今後、障害当事者や障害者団体などの声に耳を傾けながら、より一層障害者への合理的配慮の視点に取り入れてまいります。

以上でございます。

 

教育総務部長 私からは、学校での食の保障につきまして御答弁申し上げます。

学校給食は、栄養のバランスが取れた多様な食事を提供することにより、児童生徒の体力の向上や健康の保持増進を図ることなど重要な役割を担っております。このことから、区といたしましても成長期にある子どもの食の重要性は十分認識しております。

しかしながら、学校給食は校内で配膳する必要があることから、感染拡大防止のための学校臨時休業といった緊急事態という状況下においては、細心の注意を払う必要があります。また、食事を持ち帰った場合、各家庭で早めに食べることや保管が適切になされる必要があり、食中毒などの危険性にも考慮する必要があります。これらのことから、新型コロナウイルス感染症拡大防止その他健康上の安全という観点から、区では通常の教育活動の再開に合わせて学校給食を実施することといたしました。

今回の学校の臨時休業及び分散登校の期間の給食停止による家庭の経済的負担の軽減を目的に、就学援助認定となった方に対しまして、四月以降の給食停止期間の給食費相当額を支給いたします。なお、今後第二波等の発生による臨時休業があった場合の食の支援につきましては、給食が子どもの健康に果たしている役割を十分踏まえて、学校の給食施設の活用の可能性も含め検討してまいります。

以上です。

 

経済産業部長 私からは、多様な働き方の推進について答弁いたします。

区では、子育てや介護、病気の治療をしながら働く方や、障害のある方をはじめ、誰もが個人のライフスタイルに合わせて生活と仕事を両立できる環境整備を進めるため、昨年度よりテレワークなど多様な働き方を推進する職場環境整備支援事業に取り組んでいます。昨年度支援した三社のうち、建設業の企業では、人材不足のためテレワークを導入することで子育て中の方などの応募が増えることを期待して取り組み、また、小売業の企業では、配偶者の転勤により優秀な人材が離職した経験から、離職せずに働き続けられる環境作りのために取り組みました。こうした内容を区内中小企業に啓発するため、冊子にまとめ、配布をしているところです。

新型コロナウイルス感染症の対応としてもテレワークは有効であることから、緊急的な区内企業への支援として、区では四月と五月に本事業を拡充し、オンラインによるテレワーク普及促進セミナーを開催しました。今後は、各業種の特徴に応じたセミナーを業界団体等で実施していただくことを提案するなど、多様な働き方の推進と、新しい生活様式に対応するテレワークの導入支援をさらに進めてまいります。

私からは以上です。

 

保育部長 私からは、短時間勤務への対応についてお答えいたします。

令和二年四月の待機児童はゼロとなったものの、入園申し込みをされた方のうち四百七十四名の方が保育を受けられていないと想定され、そのうち約三五%、百七十名が、お話のありました短時間勤務の保護者となっております。これまで短時間勤務の保護者の保育ニーズにも応えてきた区内の保育室でございますが、認可保育園への移行が進んでおり、区としましては、新たな受皿の確保は急務と認識しております。

一方、認証保育所は、ゼロ歳児保育や長時間保育を担うことなどにより待機児童対策に寄与してきておりましたが、認可保育園の整備が進んだことや働き方改革の影響等もあり、認証保育所におけるゼロ歳児保育や長時間保育のニーズが減り始めている実態がございます。多様化する保育ニーズに対応するため、区としましては、認証保育所には一歳児の受入れの拡充に加え、短時間保育の新たな受皿を担っていただけるよう施設へ働きかけるとともに、運営費の補助方法や保護者への保育料補助の見直し等を含め検討してまいります。

以上です。

 

子ども・若者部長 私からは、ひとり親世帯臨時特別給付金の支給について御答弁いたします。

新型コロナウイルス感染症の影響により、子育てと仕事を独りで担う低所得の独り親世帯には、特に大きな困難が心身に生じており、こうした世帯への支援に区としても早急に取り組むべきと考えてございます。

独り親世帯への臨時特別給付金の支給につきましては対象が多岐にわたりますが、一つは令和二年六月分の児童手当の支給を受ける方などに対し、一世帯につき五万円、第二子以降一人につき三万円を加算支給となります。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて家計が急変し収入が大きく減少しているとの申し出があった方などには、一世帯五万円を追加の支給となります。そのほか、家計が急変し児童扶養手当の対象となる収入となった方には、一世帯につき五万円、第二子以降一人につき三万円を加算支給となります。

まずは、区としましては七月の定例払いの独り親世帯を対象とした児童扶養手当の支給を行い、臨時特別給付金につきましても速やかに区として決定をし、支給をしてまいります。

以上でございます。

 

政策経営部長 私からは、新型コロナウイルスをともに乗りこえる寄附金について御答弁いたします。

新型コロナウイルスをともに乗りこえる寄附金は、区の新型コロナウイルス対策を加速させる目的に四月末から募集を開始し、昨日の時点で一千二百万円を超える御寄附をいただいております。刻々とフェーズが変化し、区民生活のあらゆる面に影響を及ぼす新型コロナウイルスに対応するため、区の対策の柱である感染拡大の防止、区民生活と事業活動の支援、子どもの育ちと学びの支援を活用の視点に定め、幅広い対策の財源とすることとしております。

使途を明確にしてPRすることの有効性は御指摘のとおりであり、こうした観点から、速やかに第一回目の活用方法を感染防止対策に必要な防護用品等を購入することと決定いたしました。このことについては、区ホームページ等を通じて広く周知をしているところです。

国や東京都から様々な対策が示されておりますが、こうした大きな枠組みの対象とならない方を基礎自治体が支援することも大切な視点です。寄附金の活用に当たっては、こうした点も考慮しつつ、寄附をくださる方の思いや期待にかなうPRにも取り組みながら、引き続き有効な対策や活用方法を検討してまいります。

以上です。