第3回定例会 一般質問と答弁 2020.9.17 田中みち子

田中みち子 議員 質問通告に従って、順次質問してまいります。

プラスチックごみゼロに向けた取組と世田谷清掃工場の建て替えについてです。

日本も批准し、世界百九十八か国が参加するパリ協定の目標、二〇五〇年の二酸化炭素排出量実質ゼロに向けて世田谷区一丸となって取組を進める必要があることから、世田谷区気候非常事態宣言を行い、気候危機への適応策と緩和策を進めることを提案してきました。いよいよ気候非常事態宣言が行われることを評価する一方で、廃棄物由来の二酸化炭素排出量をゼロにするために、海洋プラスチックごみ問題など国際的に大きな問題にもなっているプラスチックごみゼロに向けた取組も重要だと考えます。

東京都では、昨年十二月に策定したゼロエミッション東京戦略において、特にプラスチック分別を重要施策と位置づけ財政支援を行う事業を開始しています。また、国でも今年度中に、今後のプラスチック資源循環の基本施策の方向性の検討により、自治体の財政負担の軽減化を盛り込んだプラスチック分別の方針を示すと聞いています。

このような背景の中で、世田谷区としては、プラスチックごみゼロに向けた宣言によって啓発をし、二〇五〇年の二酸化炭素排出量実質ゼロを達成するために、プラスチックごみの分別回収を軸としたロードマップを作成し、区民に示す必要があります。区の見解を伺います。

一方で、ダイオキシンが漏えいし稼働がストップするなど、財政負担も多く、問題だらけの世田谷清掃工場のガス化溶融炉を廃炉にして建て替える報告が出されました。新しい焼却炉は、これまでの二倍の規模で六百トンの焼却炉案となっています。東京都や国が進めるプラスチック分別への方向性とは真逆です。ごみの減量は、分別回収が肝要です。今必要なのは、世田谷清掃工場に大規模な焼却炉を設置することではなく、プラスチックごみの分別に必要な施設などの用地を確保することが重要だと考えます。そして、実行するための具体的施策こそが求められています。区の見解を伺います。

次に、女性や子どもに対する暴力の根絶に向けて質問します。

東京・生活者ネットワークは二〇一八年からジェンダー問題プロジェクトを立ち上げ、女性たちが安心して住み続けられる町の実態調査を実施しています。今年はセクハラ、DV、性暴力の三つのテーマで、東京二十三区部と二十五市部の自治体に対し、防止対策、相談、被害者支援、予防教育や研修など約三十項目の調査を行い、その結果をランキングにして公表しました。世田谷区は五十四自治体中第四位でした。点数で言うと、百点満点中四十六点と低いんですね。一位の日野市でさえも五十四点と、誠に低レベルの比較となりました。セクハラ、DV、性暴力に対する自治体の施策は大変遅れていることが今回の調査で明確になりました。特に、性暴力については二十五点満点中、平均七点と三テーマでも非常に低い結果となり、自治体における性暴力の相談や支援が社会資源の一つとなるよう、法整備や民間団体との連携を深める必要があります。

私は、この調査の性暴力チームリーダーとして関わりました。私が性暴力防止に声を上げてきたのは、紛争下にあるアフリカのコンゴ民主共和国の紛争鉱物と性暴力の悲惨な事例を世界に紹介してきたアメリカのNGOと関わったところから始まりました。紛争下にあるわけではない日本でも、性暴力によって幼い命が奪われたり、人権が無視されてきた事例が報道されるたびにショックを受けています。どうして被害者である子どもを守る立場の母親が対応できなかったのだろうとバッシングもありますが、そういう事件の一端にあるジェンダーによる権力行使として、DV、性暴力は根が深いと感じています。

外出自粛制限により在宅時間が長くなるコロナ禍では、DVが世界規模で急増しています。国連でも、パンデミック対策の一環に女性への暴力防止、救済、保護を盛り込むよう各国政府に強く求めています。

世田谷区でも、DV相談は一・六倍に増えています。夫の暴力にさらされた女性だけの問題とせず、DV、性暴力に寛容な社会構造を変えるための啓発や研修、DV相談を受ける婦人相談員の質の担保など、加害者に知られることなく被害者が必要な支援につながることができるよう、体制強化を求めます。

一方、子どもに対する実の父親、兄弟間、同居する成人男性から家庭で受けている暴力の実態が、最近では少しずつ明らかにされています。それは、家庭内の性暴力が珍しいことではないこと、子どもに与える影響が大きいという実態です。また、学校の先生やコーチと呼ばれる指導的立場に立つ人からの性暴力や性的嫌がらせも顕在化しており、国としても厳罰化の方向性に向かっています。子どもへの性暴力、性的嫌がらせは、家庭でも学校でも見過ごせないところにあり、子どもたちを性被害から守るためには、幼少期から自分の体を大切にすることや、自分の身を守る手段など、年齢に応じて正しい知識を身につけ、被害者にも加害者にもならないための人権教育としての性教育が必要です。

そこで、さきの生活者ネットワークの調査では、産婦人科医や助産師、民間団体などの専門家による性教育の小中学校での実施状況を調べました。小学校では六割の自治体で未実施です。中学校では、全校で実施したと回答する自治体は、文京と豊島の二自治体のみ、実施しても一部の中学校にとどまる、世田谷はこの一部の中学校にとどまっています。また、約三割の自治体は実施していないと回答しています。全ての子どもたちに対する性教育の学びの保障には程遠い現状でした。

子どもの性被害については、自分が被害に遭っていることを認識できない場合も多くあり、幼少期からプライベートゾーン、水着で隠れる部分ですね、そこは人に見せない、触らせない、そして触らないというルールを教えることが重要です。こうしたルールなどが身につく子どもへの暴力防止プログラムの一つにCAPがあります。一九七八年にオハイオ州コロンバスのレイプ救援センターから始まり、子どもへのプログラムとして発展し、保育園や幼稚園、小学校低学年の子どもたちのもとへ出張し、ロールプレーで行います。寸劇や質疑応答を通して、安全に、強く、自由に生きる権利があることを教えるものです。

品川区では、小学校三年生全生徒に対してCAPを実施しており、保護者への参加も求めるそうです。三鷹でも実施していることが今回の調査で分かりました。また、東京都性暴力救援センターSARCでも、この講座を勧めています。世田谷区でも、幼稚園や小学校などでCAPが導入できるよう検討を進めていただきたいと思います。見解を伺います。

また、東京都では性教育の手引を改定し、学習指導要領に示されない内容を含む指導も可能として、性行為に伴う避妊や人工妊娠中絶などを扱う産婦人科による性教育モデル授業をスタートさせ、世田谷区ではいち早く昨年から実施したことを評価します。今年は用賀中学校で実施予定とのことですが、コロナの影響で講師派遣からDVDを使用したプログラムに変更されると聞きました。DVDであれば、ほかの二十八校全ての中学校で活用して授業をすることができます。世田谷区の教育委員会として、計画、推進することを提案します。見解を伺います。

さらに、私たちの今年の実態調査では子どもへの性暴力被害の取組について聞きましたが、何もしていない自治体が十五自治体と三割にも上りました。世田谷区の防犯メールには不審者情報も頻繁に届き、保護者からも不安の声が聞こえてきます。防犯メールなどに被害に遭った際の心のケアも含めた相談・支援先をリンク付けすることはすぐにできる対策ですので、改善を求めます。

最後に、これまで求めている授業などで使用できるリプロダクティブ・ヘルス・ライツのリーフレットや、インターネットを活用したツールの作成に向けた進捗状況を確認して、壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

清掃・リサイクル部長 私からは、二点御答弁申し上げます。

プラスチックごみの分別回収を軸としたロードマップの作成でございます。

区では現在、家庭から排出されるプラスチックごみは可燃ごみとして収集しており、清掃工場での焼却により発生する熱エネルギーは発電や熱供給に有効活用されているところでございます。三月に策定した世田谷区一般廃棄物処理基本計画中間見直しにおいては、プラスチックごみの分別収集につきまして、より環境負荷の少ない手法について、外部の知見も加えて調査研究し、コストに見合った環境負荷低減効果も含めて検討することと整理しております。

そこで、区といたしましては、二酸化炭素や環境負荷に関する科学的な知見を有する専門家と調査研究を進めるとともに、区民や有識者の御意見なども参考にしながら、プラスチックごみと二酸化炭素排出量削減についての区の考え方をまとめていきたいと存じます。

続きまして、世田谷清掃工場の建て替えの規模についてでございます。

二十三区には二十一の清掃工場があり、二十三区全体の可燃ごみを共同で処理しております。これらの清掃工場は今後近い時期に約半数が耐用年数を迎えることから、順次大規模改修するか改築する必要が生じます。清掃一部組合の基本計画実施計画案による区部の人口予測では、二〇二〇年が約九百五十九万人で、その後もほぼ横ばいと見ております。また、事業系の持ち込みごみも含めた区部のごみ量の排出量についても、しばらくは同様に横ばいの傾向と予測しております。

清掃一組からは、改修・改築期間中は稼働している残りの清掃工場で全量焼却しなければならないため、今後改築する工場については規模の拡大が必要であると聞いております。区部の人口予測やごみ量予測から見ても、世田谷清掃工場の処理能力は日量六百トンを必要としております。

世田谷清掃工場敷地内にプラスチックのごみの中間処理施設等を確保すべきとの御意見ですが、現時点では国からプラスチックごみの一括回収や中間処理の方法は具体的に示されておりません。今年度中に一定の結論が出ると聞いておりますので、引き続き十分に注視してまいります。また、清掃一組にはこのような御意見があったことをお伝えしてまいります。

以上でございます。

 

環境政策部長 私からは、プラごみゼロに向けた啓発について御答弁いたします。

区では、深刻化する気候危機の問題について、区民、事業者の皆さんとともに、現在の気象災害から区民の命を守る取組と、これからの気象変動を食い止めるための取組を加速させるため、世田谷区気候非常事態宣言を行うべく検討を進めております。宣言を契機に、区民一人一人の環境に配慮した行動が実践されるよう啓発リーフレットを作成、配布するなどの取組を行ってまいります。

プラごみゼロに向けた啓発につきましては、買物の際にはレジ袋や使い捨てとなるプラスチックの材料、容器などを使用しない、製造販売に当たってはプラスチックごみの排出抑制など環境に優しい取組を進めるなど、具体的な内容をリーフレットに盛り込み、二酸化炭素排出原因の一つであるプラスチックごみの削減に向け、啓発活動に取り組んでまいります。

以上でございます。

 

教育政策部長 私からは、学校での性教育について御答弁いたします。

学校における性教育は、学習指導要領を踏まえ、子どもたちの発達の段階に応じて保護者の理解を得ながら、保健体育や道徳科、特別活動などを中心に進めております。小学校では、体育の保健領域において性差による体つきの特徴を学ぶことでその違いを知り、思春期における心の成長にも触れ、自己の性に対する認識を深める学習を行っております。

また、中学校では、保健体育において体の発育、発達に加え、思春期における性意識の変化と性に関する適切な態度や行動の選択について考える学習を行っております。昨年度は、東京都の性教育モデル事業として世田谷中学校で医師を招いたエイズ及びその他性感染症等についての授業も実施しております。

御指摘の今年度実施予定の用賀中学校での性教育モデル事業の他の中学校への普及や、小学校における性教育の充実につきましては、校長会とも相談しながら検討してまいります。

以上でございます。

 

教育総務部長 私からは、幼稚園における性に関わる人権教育につきまして御答弁申し上げます。

幼稚園におきましても、日常生活の中で、自分の体はとても大切なものであり、他人に見せたり触らせたりしてはいけない部分があることを理解させるなど、子どもたちが日常生活を送る上で必要な指導を行っております。

御指摘いただきました子どもが性的被害などから身を守るための人権教育という意味で、自分がかけがえのない存在であることを子どもに伝えていくことや、危険な状況から自分を守るための行動をするための習慣や態度を教えていくことは重要な取組と考えております。

今後とも、幼稚園での教育、保育の中で子どもたちが性的被害などから自分の身を守るために必要な行動をとることの大切さを伝え、効果的な取組について関係部署とも連携しながら研究してまいります。

以上です。

 

生活文化政策部長 私からは、二点の御質問にお答えをさせていただきます。

まず、性暴力に対する理解、啓発についてでございます。

新型コロナウイルスの感染防止に伴う在宅勤務や外出自粛などにより、DV相談が増加傾向にあることから、本年五月に男女共同参画センターらぷらすでは、女性のための悩みごと・DV相談につきまして、時間帯や曜日を拡大するとともに、七月からはメールによる相談受付も開始し、相談しやすい環境を整えております。

DV相談の内容は、身体的暴力や精神的暴力だけでなく、性的暴力を受けている場合もあり、レイプなど緊急的な対応を要する相談に当たっては、警察署への届け出や東京都の性暴力救援センターにつないでいるところです。

性暴力の被害者は、心身の回復に長い時間を必要とし、相談をためらう場合も多いことなど、その実態や被害者の置かれる状況を理解していただくことが性暴力の防止と支援の第一歩と考えております。らぷらすでは、毎年十一月に国の女性に対する暴力を防止する運動に合わせ、関連図書の展示等を行い、啓発と理解促進を図っております。

今後、こうした取組に加え、研修会などを通じ、支援団体との連携強化を図りながら、「区のおしらせ」はもとより、SNSや映像なども活用し、性暴力の実態や相談機関についての情報発信と啓発の充実に努めてまいります。

次に、DV相談等に当たります婦人相談員の専門性の担保についてお答えをいたします。

婦人相談員は、売春防止法に基づく婦人保護を行う職として設置され、その後、配偶者暴力防止法やストーカー規制法等にも規定され、暴力、人権侵害、貧困など、様々な困難を抱える女性への支援を行う役割を担っております。

区では、各地域の子ども家庭支援センターの職員二十名が婦人相談員の業務に従事しております。専門性の担保については、東京都による基礎知識や支援技術に関する研修への参加に加えまして、区においても平成三十年の配偶者暴力相談支援センターの機能整備以降、DV相談支援専門員による指導、助言、定期的な事例検討会の開催、係長会を通じた情報交換などによりまして、対応力の向上を図っております。

DV被害者の中には民間団体の支援を受けている方もおり、婦人相談員はそうした団体とも連携しながら被害者との信頼関係を築き、適切な支援を行うことが求められます。今後も、DV被害などに苦しむ女性に寄り添った支援ができるよう、さらなる対応力の向上に取り組んでまいります。

以上でございます。

 

世田谷保健所長 私からは、リプロダクティブ・ヘルス・ライツのリーフレット等についてお答えいたします。

リプロダクティブ・ヘルス・ライツにつきましては、若い世代が自分の体を知り、自分やパートナーを守るための健康知識として思春期世代から基本的な知識を身につけることが必要だと認識をしております。

区は、この間妊娠期から安心できる相談体制を充実するとともに、思春期、青年期の子ども、若者を対象にした相談支援や、心と体の健康施策の充実に庁内や区内関係機関と連携して取り組んでまいりました。

リプロダクティブ・ヘルス・ライツの周知啓発につきましても、今年度より思春期青年期精神保健部会、犯罪被害者等支援連絡会など、教育委員会、生活文化政策部等の関係機関との協議の場を活用し、リーフレットの作成をはじめとして、思春期世代に効果的な情報提供の検討に取り組んでまいります。

以上です。

 

危機管理部長 私からは、性暴力などに対する相談窓口の区民周知について御答弁申し上げます。

警視庁の公表によれば、令和元年に都内で扱われたDVの相談件数は八千四百三十五件、ストーカーの相談件数は千二百六十二件であり、いずれも約八割が女性からの相談となっております。これらの相談以外にも、DV、ストーカー、また性暴力の被害に遭遇しているにもかかわらず、警察への親告に抵抗を感じて相談をちゅうちょするケースも否定できないことから、警察以外の機関が開設している相談窓口を知ってもらうことは大変重要だと認識しております。

DV、ストーカー、性暴力の相談窓口は、世田谷区のほか、東京都や民間支援団体が開設しております。被害者に複数の相談窓口を知ってもらうことで、早期に相談を促し、被害を回避できるなどの効果が期待できることからも、今後はお話しの防災・防犯メールやツイッター、区ホームページ、防犯冊子などを活用して、関係機関が開設する性暴力、DV、ストーカーの相談窓口を周知してまいります。

以上でございます。

 

田中みち子 議員 DV相談を受ける婦人相談員というのは専門性が求められますけれども、正規職員でやっていらっしゃるということで、異動があってノウハウの蓄積が難しいのではないかなと感じています。同じ方ができるだけ長くそこの業務に専念できるような体制というのをお願いしたいと思うんですが、答弁お願いします。

 

砧総合支所保健福祉センター所長 各総合支所の保健福祉センター子ども家庭支援課には、本件に関わる相談業務に担当係長一名と、数名の常勤の相談員を配置してございます。固定的な配置はしておりませんけれども、相談の質の担保ですとか、それからノウハウの蓄積、専門性の向上などの観点から、適切な相談体制を維持していくための検討を今後も進めてまいりたいと考えております。

以上です。