第3回定例会 意見 2021.10.19 高岡じゅん子

高岡じゅん子 議員 生活者ネットワーク世田谷区議団を代表し、令和二年度世田谷区一般会計決算外四件全てに賛成する立場から意見を述べます。

令和二年度は、新型コロナ感染症の流行に振り回された一年間でした。その中でも世田谷区財政は健全性を維持しています。昨年度のオリンピック関連予算について不必要な支出は行わず、区民の命と生活を守ることに予算を集中したことを確認しました。

ふるさと納税による七十億円の歳入流出は看過できない問題です。区民生活が区税によって支えられているという実感がないことが、この高額な流出を招いているとは言えないでしょうか。

今後、区政は、地域行政条例づくりや区民目線でのDX推進を通じ、世田谷区の一つ一つの施策が生活に役立っているということを区民により明確に示す必要があります。各地区のまちづくりセンターの機能を高め、真に頼りになるワンストップ窓口を実現すべきです。また、個人情報保護の原則を堅持し、参加と協働で持続可能な世田谷をつくっていくよう求めます。

新型コロナ感染症対策についてです。

私たち会派は、高齢者施設における死亡率の高いクラスター発生は何としても防がなければならないと考え、検査の充実を求めました。世田谷型社会的検査は、高齢者施設での死亡、重症化例を最小限にするという意味で有効な検査だったと評価します。今後も、感染状況の推移に素早く対応できる随時検査、訪問型の介護介助事業者へのスクリーニング検査など必要な検査体制の維持を求めます。

この間の保健所や保健福祉政策部の働きに感謝します。医療・保健関係専門職の人員が限られる中、業務の集中は緊急時としてやむを得ない事態でした。今後の新興感染症などに備え、人員の増強を含め、保健所体制の強化を求めます。地域医療との連携強化や区民への適切な医療情報の提供も必要です。

感染症対策において人権意識の徹底は重要です。ワクチン接種は任意であることも含め、排除や差別につながらない啓発周知を今後も続けてください。

コロナ禍は、非正規やフリーランスなどの世帯収入を直撃し、格差が拡大しています。その多くを占める女性、特にシングルマザーの生活は困難な状況にあります。昨年度の住居確保給付金の利用額は、令和元年度の七十倍以上の二十六億円余になりました。今後もシングルマザーなどの支援を必要とする区民に対し、住居の確保と生活の安定のために積極的な支援策を行うことを求めます。

どんな状況でも子どもの生きる権利、学ぶ権利を保障すべきです。給食による最低限の食の維持やIT格差を広げないオンライン授業の実施方法など、コロナ禍での経験を生かし、子どもに格差をつくらないことを求めます。

固定的性別役割分業意識や性別による差別、構造的暴力は日本社会に根強く残っています。だからこそ、DVや性暴力防止に対応できる相談・自立支援体制の構築や、ジェンダー・人権教育を幼児期、学童期、思春期と生涯にわたり行うことを求めてきました。性暴力被害を減らすためにも、男女平等なセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツに関する教育が必要です。オンラインなど新たな手法も駆使し、全中学校での実施を求めます。教育委員会と保健所が協力して作ったリーフレットを活用し、さらに東京都助産師会などとも連携し、ぜひ実現してください。

生理の貧困解消への取組も求めます。

世田谷区は二〇二〇年十月、気候非常事態を二十三区で最初に宣言しました。若い世代の区民にも呼びかけ、今、温暖化対策地域推進計画の見直しを進めていますが、まずは区の率先行動が重要です。できるだけ多くの太陽光発電施設を学校など公共施設に設置できるよう、指針、方針を見直すなど、公共施設の環境性能向上に取り組む必要があります。さらに、区民の自然エネルギー利用が進むよう、区内建設業者などとも連携し、区民への相談体制の整備を求めます。

香害について周知が少しずつ進んでいることを評価します。次世代への責任として、石けん利用の推進、除草剤、殺虫剤の使用禁止など、予防原則に立った化学物質汚染対策を求めます。

災害対策にも気候変動への理解が必要です。区施設や公園へのグリーンインフラの採用と同時に、区民への啓発活動を続けてください。

災害弱者を守る個別支援計画の作成を急ぎ、地域住民とともに見守りを支援する体制整備を求めます。ここに女性の視点の活用が必要です。

感染症対策で定員が限られる避難所に関して区民の理解が不足しています。区民が最適な避難行動を取れるような事前周知、情報発信体制の整備を求めます。

先導的共生社会ホストタウンとして、障害者差別解消に取り組んできた世田谷区は、今、独自の条例づくりを進めようとしています。障害者当事者の声を丁寧に聞き、共に暮らす地域づくりに役立つ条例とすることを求めます。必要な人に必要な情報が届くコミュニケーションの保障と、独自の文化である手話の普及理解は特に大切です。手話言語・コミュニケーション条例制定についても同時に検討するよう求めます。

インクルーシブ教育は、共生社会の実現の第一歩です。新法にのっとり、普通学級での医療的ケア児の受入れ準備を確実に進めることを求めます。

最後に、プラスチックごみ処理の将来像に関してです。

生活者ネットワークは、ごみ処理が自立した自治体に必須のサービス、分権自治の第一歩と位置づけ、世田谷区が自主独立の気概で、区民とともにごみ減量に積極的に取り組むことを求め続けてきました。

プラスチックごみについては、ペットボトル以外の集積所回収を世田谷区は行ってきませんでした。しかし、今年、プラスチック資源循環促進法が成立し、CO2が出る焼却から資源循環へと、国の方針が大転換されました。世田谷区も分別区分を見直し、この大きな流れに合わせていく必要があります。

作業室内のダイオキシン汚染が問題となった世田谷清掃工場が、十八年という異例の短い期間で建て替え予定となったことは評価します。時代は資源循環型の新たな廃棄物中間処理を求めています。この建て替えを機に、資源循環という視点を取り入れた世田谷清掃工場敷地の新しい使い方の再検討を世田谷区から東京二十三区清掃一部事務組合に対し正式に申し入れることを求め、以上、生活者ネットワークの意見といたします。