第4回定例会 一般質問と答弁 2021.11.30 田中みち子

田中みち子議員 まず初めに、子どもの権利擁護の推進と児童相談業務の見える化について質問します。

毎年十一月は児童虐待防止推進月間です。全国で虐待防止に向け啓発が行われていますが、令和二年度中に全国二百二十か所の児童相談所が対応した虐待相談は二十万件を超え過去最多を更新、都内の児童相談所が対応した虐待件数も二万五千七百三十六件あり、十年で六倍です。また、コロナ禍で在宅時間が増え、DVの問題が影のパンデミックとして世界中で顕在化しました。DV救済の中での子どもへの対応など、子どもたちの健やかな成長に影響を及ぼす虐待の防止については、社会全体で取り組むべき大きな課題です。子ども条例を制定し、子どもの権利擁護にいち早く取り組む世田谷区の児童相談所は、他の自治体の先頭に立ち、子どもの権利を最大限保障した体制を早期に確立することが重要です。

今月に入り、児童養護施設内の少女と性行為をしたとして、神奈川県や熊本県の児童養護施設職員による暴力が相次いで報道されました。虐待から保護された子どもが保護された先でこうした暴力を受けることはあってはならないことです。施設内での子ども同士の性被害もあることを前提に対策を取る必要があることは、社会的養護が必要な子どもを多く受け入れてきた里親さんからも聞いており、チェック機能や予防策、対応策を強化する必要があります。見解を伺います。

また、令和二年度の世田谷区の児童相談所が受けた相談別対応状況を確認しますと、十一件の性的虐待がありました。年齢では一歳児の乳児から十六歳までの十一人。そのうち実父が六人、実父以外の父親が一人、実の母が三人、その他一人となっています。私たち生活者ネットワークは、性暴力の根絶を訴えるフラワーデモに合わせ、性暴力の加害者も被害者も生み出さない社会に向けて活動しており、この報告は看過できない問題です。児童相談所の対応について伺います。

世田谷区の児童相談所が開設され一年半が経過し、虐待によって貴い命が奪われるといった痛ましい事件の報道があるたびに、児童相談所での対応などが問題視されてきました。第二回定例会では、一時保護され帰宅した後での虐待死事件は後を絶たないことから、虐待のおそれのある子どもからの丁寧な意見を聞く場の保障や検討中のアドボケイト導入先の一つとして、一時保護され家庭に戻る子どもへのアウトリーチ型のアドボケイトの導入などを提案していますが、進捗は全く変わらず、早期実現が求められます。

また、相談支援体制については地域における子どもに関するあらゆる相談の窓口である子ども家庭支援センターと児童相談所の職員が住所地域担当制を実施し、同一住所地域を同一の担当者にすることで、一つのチームとして顔の見える関係性を築いていることは強みである反面、担当者との信頼関係が崩れた場合の問題も指摘をさせていただきましたが、いまだ改善が見えません。家庭養育原則に基づいた相談支援体制の充実を図り、家族再統合に向けた子どもと親、双方の相談支援体制をアップデートしていく必要があります。見解を伺います。

世田谷区内の虐待相談対応件数は年々増加しています。子ども家庭センターの対応件数を合わせれば、昨年度は約三千件、そのうち児童相談所で対応した数は千五百二十五件です。世田谷区の児童相談業務が適正に実施されているのかどうか、その質を向上させるためには第三者評価の早期実施が望まれますが、評価を行うために必要な専門性と中立性を担保した適切な実施者がどれだけあるのかといった課題がありました。

一方で、これまで一時保護所、児童相談所の第三者評価ガイドラインの策定やモデル実施に関わってきた専門家、実務家が中心メンバーとなった新たな第三者評価日本児童相談業務評価機関、J―Oschisが創設されたとの報道がありました。立ち上げ段階ではあるものの、二〇二二年度には十か所、二三年度には二十か所、二四年度には三十五か所に増やす予定だそうです。国でも、来年度予算概算要求で第三者評価を受けた児相を所管する自治体への補助金を盛り込んでおり、評価制度を広く進めたい考えだと結ばれています。お手盛りにならない第三者の評価があってこそ対策が進むという視点に立ち、こうした動きを的確に捉えて、児童相談所への第三者評価の早期実施に向け積極的に取り組むことを求めます。見解を伺います。

また、一時保護所については三年に一度の第三者評価の実施を想定していますが、せめて開所後五年程度は毎年受審し、業務の質の向上を充実させる必要があります。見解を伺います。

次に、コロナ禍における子どもたちに対する長期的影響への対応と不登校対策についてです。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で登校できなくなってしまった生徒がいます。新たな変異株オミクロン株も世界各地で確認される中、過度なストレスや恐怖、不安などが引き金となり、不登校やひきこもりにつながることがないよう対策が求められます。出席停止扱いになりますし、学校へ行かないほうが安心だからあえて登校しない場合は心配の限りではありませんが、家族の意志に押されて登校できない場合もあり、家族も含めた直接的支援が必要です。感染症に起因して学校へ通えない子どもの実態を把握し、家庭へのアプローチも含めた適切な対応を進める必要があります。見解を伺います。

また、コロナ禍ではリモート授業が一気に進みました。登校できない児童に対しては、一人一人の状況に応じたタブレットを活用した担任との個別のやり取りや授業配信が進み、不登校生徒への学びの保障が担保されたと聞いていますが、一人一台の端末が配付されたことによるタブレット上のいじめが起きないか保護者の不安は尽きません。町田市の女子児童が、学校で配付されたタブレット端末でのいじめを理由に自殺したとの痛ましい事件が起きましたが、父親の訴えでは、端末は家に持って帰ってくるのでいじめは家までついてくる。親の寝ている間もついてくるとの言葉に胸が詰まります。タブレット端末がいじめの温床につながることはあってはなりません。世田谷区での対策を伺います。

さらに、世田谷区の不登校の子どもたちは小学校では三百九十二人、中学校では五百七十六人と約千人で増加傾向にあります。新たな不登校生徒を生み出すことがないよう対策強化を進め、一人一人の状況に応じた多様な相談支援や居場所の確保が必要です。

先般、不登校の子どもたちの居場所である三つのほっとスクールの運営評価の結果が報告されました。スタッフの質や学習支援計画の未作成、進路指導における学校との連携など問題が散見されます。ほっとスクールは登校できない子どもへの支援に大きな役割を担っており、さらなる支援の充実が求められます。今回のほっとスクールの運営評価の受け止めと今後の取組について見解を伺います。

特に進路についても、本人も保護者も大きな不安を抱えています。多様な学びの場が当たり前の選択肢になったり、自立につながるような進路に関する情報を得る機会を充実させる必要があります。今年度、新たな進路説明会を開催し、好評だったと聞いています。その参加状況とさらなる拡充を求めます。見解を伺います。

最後に、ランドセル症候群への対応についての質問です。

ランドセル症候群とは、重たいランドセルを長時間背負うことで、筋肉痛や肩こり、通学自体が憂鬱になるなど心身への影響を及ぼす状態のことで、背負う荷物の重さは体重の一〇%以下が望ましいとのアメリカの研究結果もあるそうです。しかし、タブレット端末が増えたことにより子どもたちの荷物はますます重くなってしまいました。宿題に使わない教科書などは学校に置いて帰ることとしているそうですが、学校や先生によっては対応が違っているようです。共通の対応と保護者への周知徹底を求めて、質問を終わります。(拍手)

 

児童相談所長 子どもの権利擁護と児童相談所における相談業務の見える化について、私からは二点についてお答えいたします。

初めに、家族再統合に向けた支援の充実についてお答えいたします。

児童相談所の相談業務では、子どもの最善の利益のために、必要に応じて一時保護や施設への措置入所などにより、一時的に親子分離を図ることが必要になることもあります。親子分離を図った場合であっても、家庭養育を原則とする考え方から、子どもの状況に合わせて可能な場合は手紙や電話、面会など様々な手法を用いた親子の交流を検討し、家庭復帰に向けて段階的に進めてまいります。

また、家族の再統合に向けては親子関係の評価を行いながら、ケースワークに家族の強みを引き出す面接の手法を取り入れ、家庭復帰に向けた支援プランを丁寧に説明するとともに、子どもと離れて暮らす保護者の気持ちも酌みながら一緒に検討することにより、子どもの安全な家庭復帰が円滑に進むよう支援してまいります。

次に、性的虐待の実情と支援についてお答えいたします。

昨年度の区児童相談所における性的虐待の対応件数は十一件となっております。その中には、保護者の性行為の目撃や家庭内の不適切な接触などが含まれております。性的虐待が疑われる事案が発生した際は、必要に応じて一時保護を行うなど加害者との分離を図り、子どもの安全の確保に努めるとともに、被害確認面接や系統的全身診察の実施など速やかな調査を行い、子どもの心身の被害状況について早期かつ的確な把握を行っております。その後は、子どもが受けた心のダメージに合わせた心理ケアを行うなどの支援を行うとともに、加害をしていない保護者に対しても、子どもの安全の確保や心理状態の理解を深めてもらえるよう継続的な支援をしていくことになります。

性的虐待は子どもの心身や将来に与える影響がとても大きいことから、今後も学校や地域の関係機関などとも連携を図りながら早期発見、早期対応に努め、適切な支援をしてまいります。

私からは以上でございます。

 

子ども・若者部長 私からは、子どもの権利擁護と児童相談所における相談業務の見える化について三点御答弁申し上げます。

まず一点目、児童相談所への第三者評価の実施について御答弁申し上げます。

児童相談所の第三者評価は、子どもの権利擁護機関としての児童相談所が機能しているかを確認するために行うものであり、評価を通じて、児童相談所の業務の質の確保、向上を図ることを目的としたものであると認識してございます。令和元年度の児童福祉法改正において、都道府県知事は、児童相談所が行う業務の質の評価を行うこと等により当該業務の質の向上に努めなければならないこととされ、令和三年三月に、厚生労働省より児童相談所における第三者評価ガイドライン案が示されたところでございます。

今後、区はガイドライン案を踏まえるとともに、国の動向やモデル的に取り組んでいる他自治体の取組なども注視しつつ、区としての児童相談所第三者評価実施に向けた検討を進めてまいります。

次に、一時保護所第三者評価について、毎年度受審すべきではないかについて御答弁申し上げます。

区では、児童相談所開設初年度である令和二年度に、一時保護所外部評価を受審いたしました。この外部評価につきましては、社会的擁護関係施設に向けて厚生労働省より発出されている通知において、三か年度ごとに一回以上受審するとされており、当該通知に準じて区の一時保護所でも三か年に一回の受審を想定しております。あわせて、同通知では、第三者評価基準の評価項目に沿って、毎年度自己評価を行わなければならないともされております。この点を踏まえて、令和三年度においては、一時保護所の内部評価を実施することとしてございます。

議員より御指摘いただきました外部評価の受審頻度につきましては、今年度の内部評価の実施状況なども踏まえつつ、今後検討してまいります。

次に、児童養護施設内での子ども同士の性被害予防策、対応策について御答弁申し上げます。

児童養護施設では、施設職員から、また子ども同士での性暴力を予防するために、職員への研修などによる職員の意識の向上、死角をつくらないような施設のハード面での工夫、複数で対応できる職員体制の確保、また権利ノートを使った子どもの権利教育などを実施し、子どもが意見を言いやすい環境づくりに努めるなどの対応を行ってございます。

区としては、児童養護施設におけるグループホームの整備などについて、小規模かつ地域分散化計画として取りまとめたところでございますが、あわせてこうした取組についても支援していくことで、問題の未然防止や早期発見を図る環境を整えてまいります。

また、里親家庭においては、里親が孤立して密室化することがないように、児童相談所職員や里親委託推進員等が必要に応じて訪問や面接を行うとともに、登録更新時研修などでは、子どもの権利の理解や不適切な対応を行わないために必要な知識の習得をカリキュラムに入れて実施してございます。

引き続き、施設やフォスタリング機関等と連携しながら、社会的擁護の下、養育されている子どもたちへの性暴力を未然に防止し、子どもの権利と最善の利益が守られるように取り組んでまいります。

以上でございます。

 

教育政策部長 私からは、五点お答え申し上げます。

初めに、新型コロナウイルス感染症により学校に行けない児童生徒への対応についてお答え申し上げます。

現在、新型コロナウイルス感染症の影響により登校していない児童生徒につきましては、昨年度から不登校の月例調査の中で、新型コロナウイルスの感染回避の枠を設けて実態を把握し、対応につなげているところでございます。各学校では、一人一人の状況に応じてタブレット端末を活用した担任とのやり取りやオンラインでの授業配信、ロイロノートを活用した課題提出などを通して、子どもと直接教員が関わりを持つなど、学校に来ていない子どもが担任とつながることができるための取組を進めております。今後もさらに、登校していない児童生徒について実態の把握に努めるとともに、オンラインを活用した教育活動の実施や家庭との連携を図ってまいります。

次に、ほっとスクールについてお答え申し上げます。

今回実施したほっとスクールの運営評価では、区内三施設のいずれも適切に運営しているとの評価をいただきましたが、評価結果を受け、区としてもさらなる運営の質の向上に向け、改善すべき課題もあると認識しております。

教育委員会といたしましては、委員会での御意見も踏まえ、スタッフの資質や専門性の向上に向けた研修の充実を図るとともに、ほっとスクール間の連携や交流を促進し、施設相互でノウハウやネットワークを共有することで、全体の運営の質の向上を図り、多様なニーズに応えられる運営を行ってまいります。

また、支援の取組を定期的に評価、見直しを行う仕組みを構築するとともに、不登校特例校との機能や役割の違いを明確にし、児童生徒一人一人の状態に応じた適切な支援を行ってまいります。今後、次期アクションプランにおいて、これらの取組を着実に推進し、ほっとスクールにおける支援のさらなる充実に取り組んでまいります。

続きまして、不登校の生徒とその保護者の進路に関する対応についてお答え申し上げます。

不登校の生徒とその保護者が抱える進路に対する不安は大きく、進路に係る情報提供の充実は重要な取組であると捉えております。教育委員会では、これまで不登校保護者のつどい進路の会や、ほっとスクール合同進路説明会を開催し、不登校の生徒とその保護者に対し、進路に関する情報提供に取り組んでまいりました。また、今年度からは新たな取組として、八月に進路説明会を開催し、オンラインを含め百名近くの参加がありました。また、十一月にも都立・私立高校八校を招いた個別進路相談会、個別高校説明会を開催し、八十八組の参加があり、改めて情報提供の機会の重要性を認識したところでございます。教育委員会といたしましても、今年度の実施状況を踏まえ、今後も情報提供の内容や機会の拡充充実に取り組んでまいります。

次に、タブレット端末といじめについてお答え申し上げます。

タブレット端末の不適切な使用によっていじめの温床となることは、決して許されるものではないものであると考えております。現在、児童生徒が利用している学習用タブレット端末は一人一人異なるパスコードを設定しており、他人が勝手に操作できないようにしております。また、児童生徒のチャットややり取りは教員が全て閲覧できるようにし、ビデオ会議を主催できるのは教員のみとするなど、いつでも児童生徒のやり取りを確認できるように設定しております。

教員が見守る中で、児童生徒にはオンラインの特性を理解して、円滑にコミュニケーションが図られるようリテラシーを醸成するとともに、トラブルに備え適切な利用に向けて、繰り返しマナー等について指導してまいります。

最後に、ランドセルへの対応についてお答え申し上げます。

タブレット端末が学習道具として増えたことにより、児童が登下校時に持ち運ぶ荷物については、児童の健康や安全等の面からも、今後一層の配慮や見直しが必要であると認識しております。現在、区内各学校においては、持ち帰る教科書や教材の精選を行い、宿題に使わない教科書等は学校に置いて帰ることとしております。あわせて、ランドセルの使用について区や学校としての指定はございませんので、安全性や耐久性、容量、子どもの体格などを考慮した通学用の鞄を使用できるよう、入学時の説明会など適切な時期に改めて各学校に周知してまいります。

 

田中みち子 議員 今回性犯罪の件で数字も、虐待の数ですね、十一件ということを申し上げさせていただきました。所管とのやり取りの中で、この数をきっちり把握していないということとか、一歳が被害に遭っているよということも把握していなかったりということが一部ございました。できるだけ早期に第三者評価を導入していただきたいと思います。