第1回定例会 一般質問と答弁 2022.2.22 田中みち子

令和4年3月定例会02月22日

田中みち子 議員 質問通告に従って順次質問してまいります。

 まず初めに、HPVワクチンの積極的勧奨への区の対応についてです。

 子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス、HPVの感染を防ぐと言われるワクチンについては、令和三年第二回定例会でも取り上げました。情報提供の抜本的な見直しや子宮頸がん検診受診率の向上、性教育の推進などを求めましたが、情報提供においては全く改善されず、課題が残ります。

 HPVワクチンは、二〇一三年から公費での定期接種が開始された二か月後に副反応が相次ぎ、積極的勧奨は中止されていましたが、二〇二〇年、令和二年十月九日付の国からの勧告により、世田谷区では厚労省のリーフレットをワクチン接種対象年齢の女子一万七千人へ個別送付。このことで接種率は前年度比で六倍以上に跳ね上がりました。

 直近の国の副反応検討部会の報告を見れば、ワクチンとの因果関係が認められ重篤と判断された新たな被害者が出ているため、区の認識を問いましたが、問題意識は希薄だったと感じ、残念に思っています。

 国の報告では、重篤な方は一万人に五人、副反応疑いの方は一万人に九人――約千人に一人ですね――と言われています。世田谷区でのこれまでの接種人数は、二〇一〇年の平成二十二年から任意接種も合わせますと三万七千九百一人になります。ワクチン接種後の健康調査を行うなど、実態を把握する必要があります。見解を伺います。

 ワクチン接種後の副反応疑いの報告は、全国の医療機関や製薬会社からPMDAに集まり、区へも報告される仕組みがあります。世田谷区では任意接種として位置づけられていた時期に二件の報告があったそうです。その内容と、今後はPMDAからの情報提供をタイムリーに把握し、議会へも報告すべきです。見解を伺います。

 昨年の十一月二十六日付の国の積極的勧奨を再開することに対する区の対応報告では、キャッチアップ接種対象者については国の方針が決定され次第報告するとしつつ、中学一年生から高校一年生の四学年約一万二千人を対象に、三月中に予診票を個別送付する予定です。一方、お隣の杉並区では予診票は送りません。個別通知で対応し、対象者も中一と高一に限定するそうです。さらに、接種希望者へは窓口にて区独自のリーフレットを用いて説明した上で予診票を渡す対応を継続しています。

 世田谷区では、事務作業の効率化や予防接種法にのっとって対象者や内容は変えられないとかたくなな態度ですが、ここは一旦立ち止まり、慎重に対応すべきと考えます。なぜなら、今回、積極的勧奨再開に当たり、接種予定のワクチンは、勧奨が中止されていたサーバリックスとガーダシル、この同じものということです。成分について区は確認中とのことですが、私の周りでも改良されたワクチンだと思っておられる方が多く、誤解があると考えます。

 また、HPVワクチンは、接種後の重篤副反応の頻度がほかの定期接種ワクチンの平均の八・五倍、全国で百三十二人もの原告が国と製薬会社を相手取って薬害訴訟を争っているワクチンでもあります。スケジュールありきで進めずに、区として確認中の成分情報を入手し発信できる体制を整えてからでも遅くはないと思います。最悪を想定し、最善の対策を行うことが接種主体である自治体の責務と考えます。東京都内で最大の対象者を抱える世田谷区だからこそ、慎重な体制で進める必要があります。見解を伺います。

 また、HPVワクチン薬害訴訟全国原告団の皆さんは、対象者が納得して接種するかしないかを選択し、副反応の症状が出た場合には適切な支援や治療が受けられるよう、HPVワクチン積極的勧奨再開に伴う要請書――「寄り添う支援」に近づくための八項目――を全国市区町村宛てに提出し、対策の徹底を求めています。また、国の十二月二十八日付通知でも、相談支援や医療体制等が整備される前の積極的勧奨に慎重な対応を求めており、学校との連携体制も課題があります。

 世田谷区の相談支援体制や医療機関、学校と連携した支援体制の現状と課題認識、また、原告団からの要請書に対する区の受け止めとそれら八項目への対応も併せて伺います。

 医療体制にも課題があります。令和三年十二月二十一日現在の協力医療機関としては九十六か所の指定がありますが、HPVワクチン副反応支援センターを設けているのは一か所だけです。それは北海道大学病院で、小児科、整形外科、脳神経内科、婦人科、リハビリテーション科、児童思春期精神科、内科といったところが連携し、対応に当たっているようです。しかし、東京都では産婦人科とペインクリニックのみで、偏りがあります。積極的勧奨を行うからには、抜本的に治療できる専門機関を東京都につくることを世田谷区として求めていくべきです。見解を伺います。

 ヒトパピローマウイルスには、子宮頸がんを引き起こす十五種類ほどの種類があります。日本において無料で受けられるHPVワクチンは十六型と十八型のみ効果があるもので、その期間も十年程度と限定的である一方、子宮頸がんは、がんになる前の前がん病変の段階で見つけることができる珍しいがんです。ワクチンを接種した場合であっても、二十歳以降二年に一度の定期的な検診でほとんどの子宮頸がんは予防でき、早期発見、早期治療すれば死を避けられるがんでもあります。誰もが受けやすい検診体制を確立し、受診率を上げる対策が必要です。

 日本の検診率は四三・七%であるのに対し、検診率八〇%のイギリスでは、訓練を受けた女性の看護師が普通のベッドで検診できるよう進めています。こうした他国の受診率改善に向けた取組を日本でも行えるように国に対して求めていくことはできないでしょうか。区としてできる検診の受診率向上に向けた取組と併せ御答弁願います。

 また、検討中の区独自のお知らせには、子宮頸がんは定期健診できちんと予防できるがんであることや、HPVワクチンを打つか打たないか本人がしっかり判断できるよう、ベネフィットとリスクに関する正しい情報を提供し、親子できちんと話し合って納得の上で接種できる内容にすることが求められます。副反応については、被害当事者が作成したポスターいっぱい運動のポスターというものがあるんですが、こんなものも活用するなど、被害者の声をしっかり伝える工夫も必要だと考えます。見解を伺います。

 次は、医療的ケア児支援の強化についてです。

 医療の進歩で新生児の死亡率が下がる一方、胃瘻やたんの吸引といった医療的ケアが日常的に必要な子どもが増えています。全国で二万人と推計される医療的ケア児の家族の負担を軽減し、子どもの健やかな成長を図ることを目指して、昨年、医療的ケア児支援法が成立しました。自治体での支援が責務となり、保育所や学校などでの医療的ケア児を受け入れる支援体制が求められます。

 世田谷区では、医療的ケア児は百八十人あり、これまでも学校での付添いが必要な場合の看護師が配置されるなど、医療的ケア児支援に力を入れてきたことを評価します。

 昨年八月には、医療的ケア児とその家族を支えるための区独自の取組として、医療的ケア相談支援センターHi・na・taが開設しました。これまで課題とされてきた病院退院後の在宅生活支援プランの作成や災害時個別支援計画の作成支援など、医療的ケア児とその御家族が地域で安心して暮らせるための支援が包括的に受けられるものとなります。地域との連携も視野に、いつでも御家族に寄り添うことができるよう、相談日の拡充や広報を強化し、ピアサポート体制を早期に実現することを求めます。見解を伺います。

 また、来年度の予算案として約四億六千万円が計上されていますが、持続可能な体制強化を進めるに当たり、財源確保も課題です。今後どのように進めていくのでしょうか。見解を伺います。

 以上で壇上からの質問を終わります。

◎世田谷保健所長 私からは、HPV、すなわち子宮頸がんワクチン等について順次お答えをします。

 まず、HPVワクチン薬害訴訟全国原告団からの要請書に対する区の対応等です。

 平成二十五年六月に国は、HPVワクチンに関し、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛がワクチン接種後に特異的に見られたことから、積極的な接種勧奨を控えることを定期接種を実施する区市町村へ勧告し、世田谷区におきましても対象者への個別通知を見合わせておりました。

 今般、国の審議会においてワクチンの安全性について特段の懸念を認めないことが確認されたとして、国は予防接種法の規定による接種勧奨を行うことを区市町村に通知したことから、世田谷区も令和四年度より対象者への個別勧奨を実施することといたしました。なお、御指摘の要請書にも記載のとおり、積極的勧奨の再開に当たっては、ワクチンの有効性や安全性、相談体制や救済制度に関する情報提供、医療機関及び学校との連携、副反応被害者に対する無理解の解消、子宮頸がん検診受診率の向上等は重要な項目と認識をしております。

 区といたしましても、対象者の安全安心を最優先に考え、HPVワクチンの安全性や有効性といったメリットと副反応が起こり得るリスクの両面を対象者に十分に情報提供し、対象者や保護者が主体的に判断をいただくように努めてまいります。

 次に、副反応被害の把握と議会への報告です。

 予防接種を受けた方が報告基準に該当する症状を有する際には、医療機関の医師等が法に基づき医薬品医療機器総合機構、PMDAに報告をすることとされており、PMDAに提出された副反応疑い報告のうち世田谷区民に係るものは、国、都を経由して世田谷区に情報提供がされます。

 なお、平成二十二年度から令和二年度の間、区で把握するHPVワクチンの接種件数は三万七千九百一件で、副反応報告は二件受理をしております。二件はいずれもHPVワクチンが任意接種として位置づけられていた平成二十三年並びに二十四年に接種した際のもので、内容は接種部痛と発熱が一件ずつとなっており、二件とも軽症で、その後に回復されております。

 また、御指摘の副反応疑い事案の議会報告につきましては、今後検討してまいります。

 次に、HPVワクチンの接種者への健康調査と情報公開についてです。

 御提案の健康調査の実施や調査内容の情報公開につきましては、杉並区や武蔵野市等の自治体で実施されていると承知をしております。区といたしましては、まずは現行のPMDAへの副反応報告の枠組みの中で副反応を確実に把握してまいります。また、医療機関には副反応疑い報告の徹底をお願いするとともに、医療機関や対象者から副反応に関する情報を収集した際には、国にも積極的に情報提供をし、ワクチンの安全性の評価につなげてまいります。

 次に、医療機関や学校等と連携した相談支援体制についてです。

 HPVワクチンにおける区の相談支援体制につきましては、有効性や安全性といった御相談に保健所の専門職が対応しております。また、予防接種健康被害救済制度等に対するお尋ねにも情報提供を行っております。医療機関との連携では、対象者や保護者への不安への配慮や、接種後の体調の変化についても、主治医が決まるまでは責任を持って診療に当たっていただく等、接種に当たっての注意点等が記載された国のリーフレットを医師会を通じて提供し、各医療機関で御対応いただいております。また、学校との連携につきましても、関係所管と連携し、校長会を通じてHPVワクチンの情報提供を実施するとともに、対象者や保護者からの相談に応じるようお願いをしております。

 今回の個別勧奨再開に当たりまして、改めて、寄り添った相談や、また丁寧な対応を関係機関にお願いするとともに、御指摘にありました北海道大学HPVワクチン副反応支援センターのような関係する科が副反応に苦しむ方を総合的に診療する取組を東京都に働きかけてまいります。

 次に、子宮頸がん検診についてお答えします。

 区の子宮頸がん検診は、国の指針に基づき、二十歳以上の女性を対象に、二年に一度の受診を要件として、両医師会への委託により実施をしております。子宮頸がん検診の受診状況ですが、平成三十年度が三万百五十九人、令和元年度、二万八千七百五十人、令和二年度、三万千八百五十五人と三万人前後となっており、受診率では、職場等で受診機会のある方を除いた対象人口率で見ますと、約二一%から二五%という状況です。

 今年度からは、受診間隔が二年以上空かないよう、二十歳から六十五歳で前年度に未受診だった方に個別勧奨をしており、若い世代の罹患率急増等のデータを受診票に同封するなど、受診率向上に努めているところです。また、受診しやすさにつきましては、区に寄せられた御意見や苦情等は医師会を通じて各医療機関へフィードバックしてまいります。なお、検診手法につきましては、我が国での実績やエビデンスに基づいて確立をされており、海外の手法や有効性の評価などを慎重に見極める必要があると認識をしております。

 最後に、予防接種法の対象者についてお答えします。

 予防接種法におけるHPVワクチンの接種対象者は、小学校六年生から高校一年生相当の女子とされております。また、昨年十一月の国通知では、これまで個別勧奨を受けていない方、すなわち令和四年度中学校二年生から高校一年生に相当する女子にも配慮をすることとされております。

 区では、国通知に加え、接種を希望する対象者に接種の機会を提供することも勘案し、対象者として、中学校一年生から高校一年生に相当する学年に対して個別送付をする予定でございます。なお、送付の際には、HPVワクチンの有効性に加え、副反応といったリスクを情報提供し、接種者や保護者が接種するか否かを自ら選択いただくことが重要であると認識をしており、区でHPVワクチンに関する有効性やリスク、接種後の注意や子宮頸がん検診の必要性を盛り込んだお知らせを作成し、予診票や接種実施医療機関名簿とともに送付をする予定でございます。

 また、議員御指摘のポスター等の内容を送付物に加えるとの御提案をいただきましたが、保健所からのお知らせは有効性とリスクを偏りなく盛り込む必要がありますので、その観点に鑑み、内容を慎重に検討して、対象者や保護者が接種の判断をする際の一助となるよう努めてまいります。

 私からは以上です。

◎障害福祉部長 私からは、医療的ケア児の支援強化について二点御答弁申し上げます。

 まず、Hi・na・taの拡充強化についてです。

 事業開始から六か月が経過し、相談件数は延べ百三十九件、相談者の実数が八十九人、主な相談内容といたしましては、医療的ケア児の子育ての不安、保育園や幼稚園等に通うに当たっての情報整理、福祉サービスの利用に関する相談等となってございます。広報活動といたしまして、民間企業と連携したイベントの実施ですとかホームページでの情報発信にも取り組んでおります。

 事業を運営する中で、医療的ケアが必要な方の保護者や家族が気軽に立ち寄って相談できる敷居の低い居場所機能の強化ですとか、保護者や家族同士が情報交換できるネットワークづくり、こうしたことにも取り組む必要があるというふうに認識をしているところです。

 区といたしましては、令和四年度からスタッフの体制を拡充いたしまして、現在週二日の開所を週四日とし、ピアサポートの視点を大切にしながら、保護者、家族の交流の機会を増やすことなどにより、医療的ケアが必要な本人と保護者家族を支援する機能の充実に取り組んでまいります。

 続きまして、持続可能な推進体制に係る財源の確保といった御質問に対してです。

 区では、この医療的ケア児の支援について、令和四年度にこれまでの取組に加えて、Hi・na・taの機能強化、放課後等デイサービスでの夕方の受入れを促進するための運営補助の追加、ふるさと納税を活用したポータブル電源の配付、こうしたことを予定をしてございます。

 医療的ケア児者の支援策は、東京都からの補助を財源の一部とする事業も多く、医療的ケア児者に対する適切な支援と家族の離職防止につながる施策を今後も推進していくためには、国や都との連携、協力の上、安定的な財源確保が必要となります。

 区といたしましては、地域における支援の実際や課題等について、機会を捉えて国や都に情報提供を行い、財政支援についても意見を上げながら、今後とも医療的ケア児者と家族の暮らしを支える施策を展開できるよう検討してまいります。

 以上です。

田中みち子 議員 HPVワクチンについて再質問します。

 いただいた答弁でも、区の相談支援体制の部分で課題認識が明確になっていないと思います。このままの体制で進めるには少し不安があると感じているんですね。そして、相談支援体制、こういったことがきちんとできなければ慎重に進めなければいけないんだよと国の通知なんかもあるわけですね。ぜひ区長、これは答弁いただき……。

◎保坂 区長 田中議員の再質問にお答えをします。

 HPVワクチンの経過については、私も区長として、当時、副反応の例が報告をされ、積極的な勧奨を取りやめた経過などを存じ上げている次第でございます。

 このワクチンの健康被害については、議員お話しのように、現在でも大変お困りで日常生活に支障を来している重篤な例があることは、大変重く受け止めております。いただいている寄り添う支援八項目の中身についても、受け止めていくべきものと考えております。

 一方、予防接種の実施主体である区には、接種を受けることのできる方の機会確保として、病棟にお知らせをお届けすることやワクチンの効果などのメリットと同時に、副反応や重篤な健康被害のリスク、その双方の情報を客観性を持って正確に周知する責務があり、最終的に御本人が接種を受けるのかどうかを判断できるよう丁寧に説明をしていく必要があると考えています。

 また、副反応や健康被害への支援体制として議員からいろいろ御指摘をいただきました。保健所長が答弁しましたとおりですが、引き続き、国や医師会や関係所管と緊密に連携しながら、慎重にこの体制を築いていきたい、改善できるものは改善していきたいと思います。