第1回定例会 一般質問と答弁 2023・02・21 金井えり子

令和5年3月 定例会-02月21日

金井えり子 議員 通告に従い質問いたします。

お隣の樹木の枝葉に迷惑しているという声をよく聞きます。世田谷区の区民相談窓口への御相談も少なくないと聞いています。お隣、裏のお宅などの樹木が伸びて、自分の敷地に入り込んでいる。庭が暗くなり物騒。窓が開かない。駐車場に枝が伸び、車に傷がつくなど様々ですが、自分の所有のものではないので、勝手に切ることはできません。季節によっては落ち葉などの問題もあります。

当然持ち主に切っていただくのがよいのですが、樹木の持ち主が特定できない空き家の場合、また留守がちであったり、常に住んでいるわけではなく、時々管理の方が訪れているような場合は交渉もできません。また、樹木の持ち主が御高齢で手入れができないという場合もあります。高齢者御本人が自分で切ることはもちろん、どこかに頼む、相談するなども難しくなっていることもあります。お隣の方をよく知らないので声もかけられないといったお話もありました。そして、交渉を始めることができても、切れ、切らないで御近所トラブルに発展する例もあります。大きなストレスを抱え、日々の生活を送らなければならず、大変な困り事になっています。

幾つかの例を今挙げましたが、このお隣の木問題は多くの社会課題とつながっています。どのように対応しているのか。ケースによっては木の話にとどまらない寄り添った対応が必要と考えますが、区の見解を伺います。

表面上は小さなことかもしれません。木を切ってしまえばその問題は終わり。でも、それでよいのでしょうか。例えば、高齢でお庭の手入れができない、これは高齢者支援につなぐ必要があるかもしれません。高齢化率もますます高くなることを考えると、こういった事例は対策が急がれます。また、空き家対策の強化、地域のつながり、まちづくりなど、別の視点も必要になります。樹木の話の背景にある社会課題の解決こそ、区がやっていくべき区民サービスと考えます。課題の発見から多機関につなぎ、連携して検討し、適切な支援につないでいく包括的な支援が必要です。適切な連携を求めます。

これにつながるのが厚生労働省が進める重層的支援体制整備事業です。単独の支援関係機関では対応が難しい複雑化、複合化した課題を多機関で協同して対応する事業です。属性を問わない相談支援、社会とつながる参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に実践するものです。まさに担当外の問題やそれに伴うまた別の課題なども重ねて取り組めるシステムです。

世田谷区では、この重層的支援体制整備事業としてひきこもり支援を行っています。昨年四月には相談窓口リンクができ、多機関の連携が行われています。リンクには昨年四月から今年の一月までで百九十八件ものお問合せがあり、そのうち御本人からも三十二件、つながれたことは大きな成果です。多機関連携でアウトリーチ支援も行っていると聞いています。

私は二〇一九年、初めての一般質問で、生きづらさを抱えた人、特にひきこもり支援について取り上げています。家庭内の問題にとどめず、当事者や家族のSOSの受皿を広げていくこと、アウトリーチ支援、年齢制限をなくすことを求めました。四年がたち、具体的に進められていることは大変評価いたしますが、これからさらなる推進を求めます。殊にアウトリーチ支援は、過去に引き出し屋というような事例もありました。タイミング等も難しく、専門知識、経験などが必要とされます。世田谷区のひきこもり支援の現状と今後について伺います。

中野区の重層的支援体制整備事業の取組では、アウトリーチチームを地区担当として置き、地域の信頼を得て、支援を必要とする人の発見、把握されているが、解決できずにいた人への対応などを進めています。地域ケア個別会議、重層的支援会議で多機関の連携を図り、地域の医療、介護、地域団体等のネットワークづくりや、住民主体の活動支援も行っています。

世田谷区は総世帯数の約半数がひとり暮らしです。中でも孤立、孤独を感じている方、生活が困窮している方など、御自身で声を上げられない、上げない方も多くいらっしゃいます。外から見えにくいヤングケアラー、多頭飼育崩壊などもその手前で発見され、公的な支援と適切につながれば解消できることもあります。地域からの情報やアウトリーチ支援などから、これまでつながれなかった人と支援をつなげられる仕組みをつくることが求められます。世田谷区でもひきこもり支援だけでなく、地域の課題こそこの重層的な支援を行うべきです。区の見解を伺います。

これまでも介護の問題について、また、介護職の待遇改善、人手不足などについて伺ってきました。二月二日の朝日新聞に、ウィメンズアクションネットワーク理事長、上野千鶴子さんのインタビュー記事がありました。介護保険が始まる前、家の中で女がただ働きで介護をしていたことを私的家父長制と呼びます。制度ができ、介護が対価を伴う労働になっても、低賃金なのを公的家父長制といいますと語られました。プロフェッショナルな介護職の地位向上が進まないその裏には、大きくジェンダーの問題があります。待遇改善が図られない限り、慢性的な人材不足はいつまでたっても解消しません。

そのような中、ますます家族介護の負担は大きくなり、レスパイトが必要となっています。介護に全てが費やされ、自分のための時間が確保できないという声です。ケアをする側を支える支援、もっと必要と考えます。高齢者介護、介護者のレスパイトにはショートステイが欠かせません。有効に活用されているのでしょうか、また、地域に偏りはないのか、数は足りているのでしょうか。今後よりニーズは高まると考えますが、区としてどのように進めていくのか伺います。

ショートステイについて全く知らないところへ行くということに抵抗がある方もいらっしゃいます。御本人も御家族も同じ不安を持たれます。生活者ネットワークはこれまでずっと小規模多機能型居宅介護を提案してきました。通い、泊まり、訪問の三つのサービスを組み合わせ、自宅に暮らしながら、いつも通うデイサービスから、時には訪問をしてもらう。ショーステイもいつも通っている場所で、顔を合わせたことのあるスタッフの中で過ごせるといったものです。

特別養護老人ホームなどもいっぱいの状況。また、住み慣れた自分の地域で暮らしたいという方も多いです。小規模多機能型居宅介護や訪問看護なども受けられる看護小規模多機能型居宅介護など、もっと多く身近なところにあれば、地域で暮らし続けることができます。小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護を増やすことで、ケアをする方もされる方も安心して暮らせると考えます。区の見解、今後の展開について伺います。

介護の社会化と言われながら、介護離職、社会からの孤立、自分の時間がない、経済面や将来への不安などを抱え、ケアラーが疲弊している現状はまだまだ続いています。ケアラーの生活、人権を守ることが今求められています。

デンマークにはケアラー憲章があります。ケアラーが一人の人として、また、ケアラーとしての貢献が認められ、よい生活を送るための条件が記されています。このような視点を広げ、これを基盤とした支援を考えることが重要です。

埼玉県では二〇二〇年三月にケアラー支援条例を制定しました。多くの自治体がこれに続き、ケアラー支援条例をつくっています。北海道栗山町では、十年の実態調査などから、ケアラー支援はコミュニティーの再生、介護の社会化への先行投資となること、行政と町民の役割の明確化の必要性などが分かりました。二〇二一年三月にはケアラー支援条例ができ、これが条例化されたことで、公的支援策と継続性が担保できたということです。

世田谷区でも昨年ヤングケアラー実態調査が行われました。今後これを生かし、高齢者、障害者の介護、家族の世話、乳幼児のケア等の全てのケアラーに支援を厚くしていくべきです。世田谷区にもケアラーの人権を守るケアラー支援条例制定が必要と考えます。区の見解を伺います。

以上で壇上での質問を終わります。(拍手)

◎世田谷総合支所長 私からは、空き家の高齢者宅等の樹木の管理、また連携した支援について御答弁いたします。

総合支所の計画・相談担当窓口や区民相談室では、地域の困り事相談や日常生活の中で起こる様々な困り事への助言を行っています。区では、空き家や空き地においては、世田谷区空家等の対策の推進に関する条例や世田谷区環境美化等に関する条例の規定に基づき、所有者に対し適正な管理を働きかけています。

空き家や空き地において、樹木の枝や雑草が繁茂し、放置されているなど管理不全な状態の御相談を受けた際には、現地確認を行い、登記簿等を調査し、所有者に適正な管理を求めています。お住まいの場合は、民有地のお話となりますので、区が介入することが難しいことから、相談者御自身でお手紙を投函していただくなど、民事的な解決をお願いしています。また、樹木の所有者が高齢等の理由で御自身での樹木の手入れが難しい等の場合には、世田谷造園協力会の御案内や、除草作業や簡易な剪定作業についてはシルバー人材センターを御紹介しています。所有者の方が木を切りたくないなど解決が進まない相談につきましては、区が仲裁役を行えない旨を相談者に御説明するとともに、弁護士相談等の専門家の相談窓口を御案内しています。

今後も相談者の気持ちに寄り添い、丁寧にお話を伺うとともに、地域の皆様や関係部署と協力連携し、問題解決に向けた対応や情報提供に努めてまいります。また、支援が必要なケースについては、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会、まちづくりセンターや児童館、そして支所の福祉四課とも連携し、福祉に寄り添った相談に取り組んでまいります。

私からは以上です。

◎保健福祉政策部長 私からは三点、まずひきこもり支援について御答弁いたします。

世田谷ひきこもり相談窓口リンクは開設から十か月がたちました。例えば、八〇五〇の課題を抱える世帯は、親世代が高齢や体調不良で来所が困難であることや、相談対象である子ども自身も外出や相談に抵抗があるなど、来所相談だけではつながりにくい現状が、これまでの相談実績から浮かび上がっています。このため、リンクでは相談者の御自宅に職員が直接出向き、お話を伺うアウトリーチ支援も実施しており、実際にまずは支援者が出向き、支援者と家族や本人が信頼関係を築くことで、本人と家族の関係が好転した事例などがあります。

一方、アプローチの手段として有効なアウトリーチも、本人や家族の状況、関係性を把握せずに行ってしまうと、本人の支援機関への強い拒否感や家族関係の悪化を招くこともあるため、緊急性を要する場合を除き、事前の状況把握を十分に行い、例えば、自宅ではなく、近隣の相談スペースに御家族のみ出向いていただくなど、慎重な対応を行うこともあります。

このように、本人や御家族の気持ちを大切にしながら、個別の課題や状況を丁寧に把握し、当事者のところへ直接出向くアウトリーチ支援にも積極的に取り組み、心配になったときに気軽に相談できる相談窓口の構築に取り組んでまいります。

次に、重層的かつ包括的な支援についてです。

平成二十八年度より全地区の福祉の相談窓口において、あんしんすこやかセンターや社会福祉協議会による高齢者への戸別訪問やアウトリーチを実施し、支援を必要とする方の把握に努めるとともに、地区における課題やニーズを把握分析し、地域資源の創出やネットワークづくりに取り組んでおります。令和三年度からは、国による重層的支援体制整備事業の創設を受け、喫緊の課題であるひきこもりを中心に支援を行っております。

一方、お話にあった樹木の件、またヤングケアラー、多頭飼育崩壊、孤独、孤立など、児童、障害、高齢など、既存の仕組みでの支援だけでは解決が難しい困り事に直面した区民に対して、福祉分野はもちろんのこと、それ以外の分野も横断的に関与しながら、地区を中心に継続的に支援する体制を強化する必要があります。令和六年度からの新たな地域保健医療福祉総合計画の策定の中で、ひきこもり支援で先行した重層的支援や、お話しの取組を参考にしながら、複雑化、複合化した区民の困り事を早期に発見し、継続的に支援していくことができる包括的な相談支援の体制について検討してまいります。

次に、ケアラー支援関連です。

御家族などのケアをされている方の実態は様々であり、これまで区として各種支援に取り組んできました。ケアをされている方の負担軽減に向けて、ヤングケアラーについては早期発見の仕組みの構築を目指しており、介護や障害などの支援については、既存計画の目標実現に向けて着実に各種取組を実施してまいります。

一方、介護保険など各種制度によるケアの仕組みは様々ありますが、ケアをされている方に情報が行き届いていなかったり、制度がその当事者の方にとっては十分なものではなかったり、区として改善していく課題があるものと考えています。令和六年度からの新たな地域保健医療福祉の計画や介護や障害の計画などで、課題の解決に向けた施策を検討してまいります。

お話しのケアラー支援条例につきましては、条例を制定している自治体の実施状況等について情報収集に努め、新たな計画策定の参考にしてまいります。

私からは以上です。

◎高齢福祉部長 私からはケアラー支援について二点御答弁いたします。

最初に、ショートステイについてです。

家族等介護者のいわゆるケアラーが抱える課題には、介護と自分の仕事や生活との両立、ケアラー自身の心身の健康維持等があることから、区は、これまでケアラー支援について、福祉の相談窓口等における相談機能の充実や、家族介護教室の開催等に取り組んできました。

また、御指摘のように、ケアラーの負担軽減の観点から、レスパイト活用の機会を得ることは重要であり、その役割をショートステイサービスが担っていると認識しております。現在、区内には広域型特別養護老人ホーム併設を中心に二十四か所、定員三百六人分が整備されているところです。今後も新たに広域型特養が整備される際には、その運営法人に対してショートステイを併設することを求めていくとともに、ケアプランを作成するケアマネジャーに対しては、ケアラーのレスパイトとして有効活用していただくよう働きかけてまいります。

次に、小規模多機能型を増やすことについてです。

小規模多能型居宅介護は、御利用者の状況に応じて通いや短期の宿泊、訪問の各サービスを組み合わせながら、一つの事業所で提供するものであり、在宅生活の継続やケアラーの負担を軽減するための重要なサービスとして位置づけております。現在、区内に小規模多機能型居宅介護は十五か所、これに訪問看護を加えた看護小規模多機能型居宅介護は五か所、計二十か所が整備されているところです。今後、区内のどこにお住まいであっても、小規模多機能型のサービスを有効に御利用いただけるよう、未整備地域を中心に計画的に整備を進めていくとともに、より多くの方に御利用いただけるようサービスの周知にも努めてまいります。

私からは以上です。

金井えり子 議員 御答弁いただきました。

重層的支援体制整備事業なんですけれども、今世田谷区がやっている地域行政の四者連携、あれを超えて、縦割りももちろんもうそこにとどまらずに、本当に全庁をつないでいくような、そういった区民サービスができるようになるものだなと思っておりますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

また、ケアラー支援については、またこの後の予算特別委員会で質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上で質問を終わります。