区議会 第3回定例会 決算特別委員会 おのみずきが区民生活委員会所管の質疑を行いました。質問全文をご覧いただけます。

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2023年 10月6日

決算特別委員会(区民生活所管)おのみずき

それでは、生活者ネットワークの区民生活所管の質疑を始めます。先日の一般質問で私は、本気のジェンダー主流化を実践してください!との主旨で質問しました。この視点から、本日は、スポーツ施策と清掃事業における女性登用の二点について伺ってまいりたいと思います。

 まず、区のスポーツ施策についてです。スポーツ基本法の下で、区では現在、次期スポーツ推進計画の策定に向けて審議が続けられているところです。令和4年度に策定された「世田谷区スポーツ推進計画(調整計画)」では、期間中に達成すべき目標として、2年後、つまり今年度末ですが、までに「成人の週1回以上のスポーツ実施率65%以上」を掲げています。ところが、昨年度の実績は48.2%。途中パンデミックがあったとはいえ、この10年間、スポーツ施設整備等に公金を投じながら、ずっと50%前後を推移し続け、まして当初計画策定時の数値(49.7%)を下回っている現状を重く受け止め、事業検証と改善策を講じる必要があると思います。

 さて、事業が成果に結びついていない要因の一つとして、次期スポーツ推進計画を含め、ジェンダーの視点が抜け落ちている点を指摘したいと思います。こちら又はお手元の表をご覧ください。国・都・区それぞれの令和4年度のスポーツ実施率について、男女別・年代別に一覧にしたものです。調査実施方法の違いから、区のみ、10代・20代を併せて集計しているため、便宜上20代の欄にまとめて表示しています。

 下4段は、スポーツ実施率の男女差をポイントで表した数値で、赤字は女性の方が数値が低いことを示しています。全国的かつ世代を問わず、総じて女性の方が運動していない傾向が見られますが、区は特にその傾向が顕著で、20代、30代女性に関してはそれぞれ-10.3ポイント、-16.8ポイントと大変深刻です。

 実は、平成30年の都のスポーツ推進総合計画策定時にも、同様の傾向が指摘されていました。都はこれを改善すべく、政策目標「スポーツを通じた共生社会の実現」の下で、達成目標に20代、30代女性のスポーツ実施率向上を掲げ、女性等のスポーツ振興にかかる施策を実施することで、この表にも記載の通り、確実に数値を改善しています。

 区も、スポーツ分野におけるジェンダーギャップの解消に向け、各事業についてジェンダー統計に基づく分析を行い、次期スポーツ推進計画の下で、しかるべき介入策を検討・実施すべきと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。

(スポーツ推進課)区のスポーツ推進審議会においても、30代の女性のスポーツ実施率の低い反面、男性が高いという状況についての意見をいただいています。

 また、女性で子育てをしている、忙しくて運動していないなどの理由であるならば、どのようなアプローチが必要なのかを考え、取り残さないための施策も大事であるとし、例えば、情報を取るということはしていると思うので、スポーツに関係する情報を積極的に提供していくことも必要であるとの意見をいただいています。

 次期計画では、障害の有無や年齢、性別、国籍等を問わず、全ての人が分け隔てなく共にスポーツに参加できるよう取り組んでいきます。その際、委員お話のとおり、女性のスポーツ実施率向上に向け、女性が気軽にスポーツに参加できる仕組みを検討し、女性のスポーツの参加を高める環境整備にも取り組んでまいります。

 スポーツをめぐるジェンダー格差は大人だけの問題ではありません。子どもの体力が二極化している問題についても併せて指摘したいです。こちらのグラフをご覧ください。「令和4年度東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査結果」の抜粋で、1週間の総運動時間が420分以上(1日平均60分以上)の児童・生徒の割合を示しています。コロナ禍を経て男女ともに運動習慣がある人が減少傾向にあるものの、ここでは特に中学生以降の女子の運動習慣が、同年代の男子に比べて低い点に着目すべきです。このジェンダーギャップは、WHOの調査研究をはじめ、世界的に見ても同様の傾向が課題として指摘されています。

 イギリスのチャリティ団体Women in Sportの調査によると、かつて積極的にスポーツに取り組み、楽しんでいた10代女子の43%が、10代の間にスポーツから遠ざかり、十分にスポーツに参加できていないと感じるようになったそうです。この理由として、他者からジャッジされるのが怖い、自信がない、学業のプレッシャー、外での安全が感じられない等が挙げられており、また78%が生理のときスポーツを避けると回答しています。

 心身の形成期にスポーツの機会から離れることは、人生の喜びや生涯にわたる健康を失うだけでなく、チームワークやリーダーシップなど、多くの極めて重要なライフスキルを身につける機会の逸失にも繋がります。

 私たちは、10代の少女がスポーツや運動をやめてしまうのは、単なる個人の選択の結果に留まらず、根深いジェンダーステレオタイプやジェンダー不平等社会の結果として、スポーツから排除されている点を理解しないといけません。

 こうした女子の心身及びその後の人生に対する中長期的な影響を重く受け止め、区が実施する各種大会やレクリエーション等においても、子どもたちの参加状況に関するジェンダー統計をとり、女の子たちのスポーツ参加促進、運動習慣改善のための施策検討に活用すべきではないでしょうか。お伺いします。

(スポーツ推進課)委員お話の調査は、東京都教育委員会が児童・生徒の体力の低下している状況を踏まえ、体力・運動能力及び生活・運動習慣等の実態を把握・分析し、体力・運動能力等の向上に係る施策の成果・課題を検証し、改善を図ることを目的に実施しています。

 これを踏まえ、区では今後も東京都の調査結果を注視していくとともに、区教育委員会とも連携を図りながら、今後の施策に活かし、また、区が実施している子どもを対象としているスポーツ事業では、性別ごとの参加比率等について分析し、女子の参加を促進してまいります。

 国連女性差別撤廃条約第13条では、「レクリエーション、スポーツ及びあらゆる側面における文化的活動に参加する権利」が規定されており、締約国はこの権利の確保、差別撤廃のためのすべての適当な措置をとることが求められています。1985年に日本も本条約に​​批准しています。ぜひ次期スポーツ推進計画のもとで、取組みを進めていただくよう要望します。

 スポーツ参加促進にあたっては、スポーツする人の心身の安全・安心を守ることも重要です。昨年、国が策定した「第3期スポーツ基本計画」においても、スポーツ分野におけるあらゆる暴力を根絶することが謳われています。東京2020大会の時には、女子アスリートに対するデジタル性暴力などが大変問題になりました。それだけでなく、コーチやトレーナー等の指導者的立場にある者から女子アスリートに対してのハラスメントや性暴力、競技場での性的視線による盗撮など、純粋にスポーツを楽しんだり競技者として研鑽を積んだりすることを嘲笑うかのような卑劣な行為は決して許されるものではありません。

 女性アスリートや子どもたちを性暴力から守るために、まずはすぐにできることとして、区主催の競技大会やスポーツイベントにおいて、盗撮行為や性的ハラスメント等を防止するための周知啓発ができないでしょうか。お伺いします。

 

(スポーツ推進課)競技大会やスポーツイベントにおいて、競技者やイベント参加者が安心・安全に参加できる環境を整えることは、大変重要なことであると認識しています。

 区では、会場内での盗撮や性的ハラスメントの抑止等、適切な大会運営を行っていくために、大会スタッフによる会場内の見回りや、注意喚起のアナウンス等の対応を強化してまいります。

 次期スポーツ推進計画では、スポーツを通じた共生社会の実現が掲げられていますが、そのためには今回取り上げた女性や女の子のスポーツ参加促進にとどまらず、トランスジェンダーなど多様な性を生きる人たちがスポーツに参加する権利の保障に関しても、科学的根拠と正しい理解に基づきながら今後考えていく必要があると思います。IOCは2021年に「公平で性自認や身体の性の多様性にもとづく排除や差別を容認しないIOCの枠組み(最新フレームワーク)」を公表しました。この中では、差別をしないこと、​​​​根拠のない排他的理由による排除を行わないこと、などスポーツにおける公平性を保ちながらも、人権の観点から大変重要な原則が掲げられています。男女共同参画・多文化共生条例を有する区においては、今後のスポーツ振興策を検討する際には、ぜひIOC最新フレームワークをはじめ、現在進行形で進む国際的な議論の動向を踏まえ、差別を煽るデマや言説に惑わされることがないよう強く要望して、次の質問に移ります。

 総括質疑で人材不足問題について伺いましたが、ここではエッセンシャルワークの一つ、清掃事業における女性登用について質問してまいります。

 はじめに、区の清掃事業における人員体制の現状について、女性職員の数と併せて、お伺いします。

(清掃・リサイクル部管理課)本年10月1日現在の清掃・リサイクル部の職員数は事務職・技能系合わせ、再任用を含む正規職員が352名、会計年度任用職員等が36名、内女性職員については、正規職員等が15名、会計年度任用職員が8名となっている。現場の収集作業等に従事する技能系の女性職員については、正規職員はゼロ名、会計年度職員については令和4年度に2名の任用があったが、現在任用者はいない状況となっている。

 女性職員の割合は全体の約6%。区内には 世田谷、砧、玉川の3つの清掃事務所がありますが、いわゆる現業に従事する女性職員はゼロということですね。これは、単に女性が手を挙げないから等という理由だけでは到底説明できないと思います。

 例えば、足立区では昨年末より2度にわたり、清掃事業者が女性だけのごみ収集チームを結成し、現場での課題把握と住民サービスへの影響等の効果検証を行っています。収集作業の合間に住民との対話が生まれることで、女性チームが来るのを楽しみに待つ高齢者の方がいたり、「女性のほうが話しかけやすい」「細やかに対応してくれる」「同じ女性として尊敬する」等の声が聞かれたり、住民の評価も高いようです。

 清掃業界全体として人手不足問題が喫緊の課題となる中、区は現場に従事する女性職員ゼロの現状を放置せず、由々しき事態と捉え、女性を含む多様な人材を受け入れられるよう、早急に改善策を講じるべきです。清掃事務所における設備等のハード面、勤務形態の見直しやともに働く人たちの意識改革などのソフト面、両輪での受け入れ体制整備と定着支援が必要と考えますが、具体的に今後どのように進めていくのか、お答えください。

 

(清掃・リサイクル部管理課)清掃業務は、その大部分である集積所での排出指導やごみ収集作業に加え、高齢者訪問収集、ふれあい指導班による管理が適切に行われていない集積所への排出指導や環境学習など区民の方々へ直接対面する業務が多くなっている。

 また、職員の勤務はシフト制を基本とし、班体制を組んで祝日を含む月曜日から土曜日まで従事し、特にごみ量の多い年末年始は特別体制を組み業務を行っている。

 特にこれまで女性職員が少ない職場であったことから、今後、女性が勤務しやすく、定着できる業務とするために、他の自治体や業界団体の取組例なども参考に、関係所管との調整を行いながら、支援やソフト面など労働環境の充実に向け取り組んでいく。

 女性職員が勤務しやすく、定着できる職場づくりには、ソフト面だけでなく、ハード面の整備も不可欠と考える。

 清掃事務所においては、建物のスペースの制約がある中でも、更衣室の確保や休憩室等の使い分けなどの柔軟な対応を実施しているほか、例えば、女性職員の清身に関し、砧清掃事務所では千歳清掃工場の女性職員用設備を借用するなどの工夫を図っている。こうした工夫ができない清掃事務所においては、清身用の施設改修など具体的な環境整備の準備を進めている。

 女性用のシャワー室がない玉川清掃事務所の施設改修をはじめ、予算を確保して、早急に整備いただくようお願いします。最後に、女性を含むより多様な人材の応募につながるような採用プロセスの見直しについても、改善案を併せてお伺いします。

(清掃・リサイクル部管理課)正規・会計年度任用職員の募集にあたっては、主な職務内容を「ごみ収集作業等の職務」としており、男女とも応募が可能となっている。

 今後清掃事業に携わる女性職員が増えていくには、採用選考の認知度を上げ、応募自体を促していく必要がある。例えば図書館や福祉施設、学校など募集案内の配布場所の拡充や、選考実施の周知にSNS等の効果的な活用など、今後、関係所管とも協議しながら、女性も応募しやすい工夫に取り組んでいく。

 ジェンダー主流化の実践に向けて、今後も質問していきたいと思います。以上で、質問を終わります。