区議会 第3回定例会 決算特別委員会 おのみずきが都市整備委員会所管の質疑を行いました。質問全文をご覧いただけます。

議会の様子は↓こちらからご覧いただけます。

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2023年 10月12日

決算特別委員会(都市整備所管)おのみずき

 それでは、生活者ネットワークの都市整備領域の質疑を始めます。今回は、「これからの世田谷のまちづくり」を考える観点から、大きく三点質問したいと思います。

 はじめに、区におけるエディブルシティ実現に向けた取組みについて、お伺いします。当会派は、令和3年3月の予算特別委員会において、議会で初めてイギリス中部の小さな“食べられる町”、トッドモーデンの取組みを紹介し、以降、地産地消促進や区有地の農的活用の観点から、世田谷区でも同様の取組みができないか、度々質問に取り上げてまいりました。

 今年3月の定例会では、区民が身近な公園内でも野菜等の農作物を育てることができるように、「区立公園等における『花による緑化推進』事業実施要綱」の改正を求めました。これに対し、区から『令和5年4月からの規制緩和に向け検討を進めており、野菜、果実の栽培を行うことを禁止事項から外すべく、現在調整をしている』との答弁をいただいていますが、その後の状況について教えてください。

 「区立公園等における花による緑化推進協定」につきましては、要綱の改正を行い、野菜や果実等の栽培を禁止する条項を削除し、令和5年4月に施行したところでございます。

 これは、昨今求められている、区民が身近に農との触れ合える場所の提供や、公園の柔軟な利活用などの要望を踏まえて、花壇などでの花づくり活動の規制を緩和したところです。

 要綱の改正がされた旨、確認ができて良かったです。改正後の周知も併せてお願いしていたかと思いますが、ホームページ等には見当たりません。公園での野菜作り実施に向けた、現在の検討状況と今後の計画についてお伺いします。

 

 これまでの観賞用の花苗とは異なり、野菜等は収穫行為が伴うことから、収穫物が団体の構成員により消費されてしまう恐れや、公園利用者への理解が得られるかなど、公共的な活動であるが故の課題があると認識しております。

 現在、収穫した野菜等の取り扱いや、栽培可能な範囲や面積、公園利用者への周知方法など、具体的な運用について検討を行っており、現時点で協定団体への周知には至っていないところですが、来春の花苗供給時期までに周知できるよう準備を進めてまいります。

 来春からの確実な実施に向けて、ぜひHPやSNS、区内各種施設での周知と併せて、準備をお願いします。

 なお、2008年にトッドモーデンの‘guerrilla gardeners’によって始められた“Incredible Edible”の活動は、この15年間でイギリス国内170以上の団体、世界約1,000の団体に拡大し、アーバンガーデニングを通じたコミュニティの再生や住民自治の実践を提示し続けています。住民たちの活動によって、緑が増えて街の景観改善や活気醸成に寄与しているのももちろんですが、特に強調したい点は、この取組みが持つ「包摂性」です。活動に参加するのに必要な資格も条件もない。完全ボランタリーで、参加したければ誰だって一員になれる。畑仕事の後には必ず、みんなで一緒に食卓を囲み、年齢も、人種も、国籍も、宗教も、職業も、ジェンダーやセクシュアリティも関係なく、ワイワイ楽しくおしゃべりする。作った野菜は、誰でも収穫してOK。こうした住民主導の自由な発想や小さなアクションを応援することこそ、本来の公共の役割ではないでしょうか。現在運用ルールを検討中とのことですが、参加と協働を掲げる区には、ぜひ区民ニーズを踏まえた柔軟な対応をしていただくよう、要望します。

 次に、都市計画におけるジェンダー主流化について伺います。「私たちが暮らす街は、一体誰の視点でつくられてきたのか?」皆さん、考えたことがありますか?なぜ、ベビーカーを引いて移動するのがこんなに大変なのか。なぜ、女性用トイレはいつも長蛇の列なのか。10歳以上の女の子たちが公園で遊ばなくなるのはなぜか。女性たちは暗い夜道で後ろを気にしながら速足で家路を急がないといけないのはどうしてか。

 答えは簡単です。これまで都市は男性、特に夫兼父親で、一家の稼ぎ主で、健常者で、異性愛者でシスジェンダーの男性を基準として計画・設計されてきたからです。年齢や国籍・障害の有無を問わず、あらゆる女性や少女、性的マイノリティの人たちの都市におけるニーズ、関心、日常活動の実態が無視されることで、経済的な機会へのアクセス、モビリティ、心身の安全、健康、公衆衛生など、様々な側面において既存の都市環境は特定の人たちに不均衡な負担をもたらし続け、 結果的にジェンダー不平等の悪化・強化に寄与しています。

 これに問題提起をするのは、『フェミニスト・シティ』の著者、レスリー・カーンだけではありません。20世紀後半にはすでに多くの女性たちが、都市計画におけるジェンダー主流化を訴え、スウェーデンやウィーン市など欧州を中心に取組が進んでいますし、日本でも豊島区や兵庫県豊岡市、UN Womenのグローバルイニシアチブに参加した堺市等、他自治体の先行事例もあります。

 しかし、残念ながら、世田谷区の都市計画に関わる各種施策には、『誰もが安全・安心・快適』とかユニバーサルデザインの理念を謳いながら、ジェンダーの視点が殆ど反映されていないように見受けられます。SDGsを筆頭に、世界をあげてジェンダー平等実現に向けた取組が進行する中、都市計画分野における実践が中々進まない事態に対処するため、World Bankは2020年に“Handbook for Gender-Inclusive Urban Planning and Design”を刊行しています。自治体職員もターゲットに想定されて作られていますので、ぜひこういったものも参考にしながら、世田谷区でも今後の都市計画・設計のプロセスにおいて、ジェンダー主流化を実践していくことで、既存のユニバーサルデザインの考え方を深化させ、真の意味で『誰もが安全・安心で、快適に住み続けられるまち』を目指すべきと考えますが、区の見解を伺います。

 ご指摘のとおり、かつてのまちづくりや施設の設計においては、障害のない成人男性の利用を想定したものが主流でありましたが、近年は、女性の社会参加や子育てする男性が増えてきていることなど 、性別を問わないまちづくりが社会的に求められているものと 、区も認識をしております。

 区では平成21年度に、年齢や性別、国籍、能力等にかかわらず、すべての人が便利で心地よく利用できる生活環境の整備を推進するため、ユニバーサルデザイン推進計画を策定し、委員の約半数が女性委員であるユニバーサルデザイン環境整備審議会より毎年度、講評と提案をいただきながら、まちづくりを進めてきました。

 また、 誰もが歩いて楽しい街なかを目指した「ウォーカブルなまちづくり」の取り組みを、各地域の社会実験などを通じて実施しており、先にお示ししました世田谷区次期基本計画(素案)の中でも、「魅力ある街づくり」の政策の中にある「歩いて楽しめる魅力づくり」の施策において、安全で安心な歩行空間を確保するなど、人中心の歩いて楽しい街づくりを進めていくこととしております。

 こうした取り組みはこれまでも行ってまいりましたが 、より一層のジェンダー視点のまちづくりの在り方について、今後幅広く検討してまいります。

 

 先のWBのハンドブックでは、都市環境におけるジェンダー化された課題への対処にあたって考慮すべき6つの点を挙げています。例えば、アクセス(公共空間で制約や障壁なしにサービスやスペースを使えること)、モビリティ(都市の中を安全かつ容易に、また手頃な価格で移動できること)、暴力の心配がなく安全であること(もちろん、これは公的空間だけでなく私的空間、つまり家の中でも確保されている必要がありますが)等が含まれます。

 6つの視点の中で、暴力の心配がなく安全であること、に関するデータを少しご紹介します。公共空間で抱く危機意識や恐怖心に男女間の明確な差があることは、多くの調査・研究が示しています。イギリス運輸省の研究によると、バス停で待っているのが怖いと感じる女性は49%に対し男性は20%、バス停や駅から家まで歩いて帰るのが怖いと感じる女性は59%に対し男性は25%、という結果が出ています。

 また、Kernによると、よくあるキャットコーリング(路上で声をかける等する性的ハラスメントの一種)をはじめとする性的ハラスメントも、公共空間における性的対象化や居心地の悪さを常態化させ、さらに女性の恐怖心を増大させているそうです。実際に私もこれが原因で、電車に乗って人が多い駅に行くのも怖くなって家から出られなくなった時期がありました。

 こうした恐怖のコストは、女性たちの移動や公共交通機関の利用の制限、経済的機会の損失、健康への影響、保護者としての男性への依存等、目に見えない形で、しかし確実に伝統的な性別役割分担意識やジェンダー規範の維持に寄与しています。

 先ほど、都市計画課より、今後は区の都市整備領域においてもジェンダーの視点に基づき幅広く検討していく、とのご答弁をいただきましたが、区の都市計画に関する基本的な方針を構成する「地域整備方針」について、平成27年4月の前回改定からもうすぐ10年ということで、さらにこの先の10年を見据えて、これから見直しに向けた具体的な検討を進めていくと聞いています。とても良いタイミングですし、各総合支所の街づくり課をはじめ、都市整備領域の所管課には、ぜひ、これまで都市計画における‘標準仕様’とされてこなかった多様な区民の意見やアイデアを聞きながら、「地域整備方針」におけるジェンダー主流化を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 世田谷区では、区民が安全で良好な環境のもと、安心して住み続けられる街づくりを進めるため、街づくりの総合的な基本方針である「世田谷区都市整備方針」に基づき、一人ひとりが街づくりの担い手となる区民主体の街づくりや、住宅や道路などのユニバーサルデザインの視点による整備、誰もが安全で快適に移動できる交通ネットワークの充実などに取り組んできました。

 今般、方針策定から10年を迎えたことから、方針の第二部にあたる地域整備方針の見直しに着手し、現在「将来目標を実現するためのテーマ別方針」及び「街づくりを優先的に進めるエリアに関する方針」について、総合支所をはじめとして関係所管と連携してこれまでの取組み状況等の整理を進めております。

 区といたしましては、これまでの街づくりの取組みや委員お話のジェンダー主流化の視点も踏まえ、意見交換の実施やオープンハウスなど、誰もが方針策定のプロセスに関われるような機会を設けながら、方針の見直しに取り組んでまいります。

 ハード面の整備だけでなく、ソフト面も含めて全区的に実施いただきたいので、本件は引き続き補充質疑でも取り上げてまいります。

 また、今後の課題として、検討の基礎となる性別ごとに区分されたデータの収集が求められます。例えば、トリップチェインに基づく移動パターン分析、公園やスポーツ施設などの公共空間における過ごし方の違い、街中で不安や恐怖を感じる場所やその程度など、データの種類は様々考えられます。そもそもデータがない、あっても性別ごとに集計されていない等、データにおけるジェンダーギャップの問題を認識し、区にはしっかり取り組んでいただきたいです。区だけでは対応が難しいこともあるかと思いますので、大学等と連携してジェンダー統計に取り組んでいただくよう、要望いたします。

 なお、都市計画におけるジェンダー主流化を進めていくにあたり、これからの時代はインターセクショナリティの考慮を当たり前にしていく必要があります。女性の安全のための施策によって、他の誰かの安全が脅かされることはあってはなりません。この点も併せて指摘して、次の質問にいきます。

 最後に、区内に設置されているベンチについてお伺いします。こちら又はお手元の写真をご覧ください。これは区内に設置されたベンチの一つですが、どこのベンチかわかる人いらっしゃいますか?はい、正解。烏山総合支所前に置かれたベンチです。

 私は2年前に世田谷区に転入してきました。その前はロンドンにいたのですが、引っ越してきてすぐに感じたのは、歩道の狭さとヒヤリハットの多さ、そしてベンチのデザインへの違和感です。街中を歩いていると、こうしたベンチの真ん中に手すりが設置されたデザインがとても多いことに気が付き、この街は他者にやさしくない、とても不寛容なまちなんだ、と思うようになりました。

 こうしたデザインは、日本では「排除アート」、海外では“Hostile architecture”と言われます。直訳すると、敵対的建築物です。例えば、ベンチに寝そべらせない、空間に長居をさせない、など「~させない」という機能を持たされたデザインのことです。建築史家の五十嵐太郎氏は、これを『言葉によって禁止を命令しないが、なんとなく無意識のうちに行動が制限される、いわゆる環境型の権力』と表現しています。

 区は「路上ベンチ等設置指針」を作成、公表していますが、この中で示される「ベンチのタイプ別歩道有効幅員」一覧表を見ると、排除アートと言われても否定できないデザインのベンチばかりがずらっと並んでいます。確認ですが、こうした手すり付きのベンチが、標準仕様として規定されているのでしょうか?ベンチの設置にかかる区の考え方を教えてください。

 区では、多くの人が外出中にひと休みできる場を増やすため、公共建築物の外構や、道路、公園などの公共空間において、ベンチ等を設置する場合の具体的な手引となるよう「座れる場づくりガイドライン」を作成し、関係所管と連携し、ベンチ等の設置に取り組んでおります。

 委員よりご紹介いただいた、長ベンチの中間に手すりが付いている仕様につきましては、手すり機能とともに、スペースを区切ることにより、多くの方が利用し易くなる役割も担っております。

 手すり付きが必ずしも標準というものではなく、ガイドラインでは、様々な仕様のベンチの事例を紹介しております。

 引き続き、設置する場所や周辺環境への配慮、設置目的などを踏まえながら、多様なベンチの設置により、多くの方に利用していただけるように配慮し進めてまいります。

 絶対にこのデザインでないといけない、というルールはないのですね。区は昨年度、ベンチの設置費用補助制度も実施し、4件、合計10台のベンチ設置の実績があると伺いました。公共空間の一部を構成するベンチについても、数を増やすだけでなく、誰かにとって使いにくかったり、誰かを排除したりしていないか、という視点から適当な対応を検討いただきたくよう、要望します。

 また、区のHPには、ベンチ一覧が公開されていますが、こんな感じでベンチが設置されている住所と数が内部資料的にまとめられているのみで、例えば、保健医療福祉総合プラザには2~5基とありますが、どこにどんなタイプのベンチがあるのか全くわかりません。ベンチマップを作成して、アプリで気軽に見られるようにする等、区民にも情報を活用しやすいように工夫をすべきと考えますが、いかがでしょうか。

         

 区では、区が管理する建物や公園、バス停などに設置されているベンチについて、区のホームページで掲載しており、今年度を目途に、区が管理する道路上に設置した「路上ベンチ」につきましても、掲載する予定としております。

 委員ご指摘のとおり、ベンチの一覧では、どのような仕様のベンチが設置されているかを詳細に確認することができない状況となっており、ベンチの仕様や場所などの情報が分かり易くする工夫が必要であるものと認識しております。

 今後、写真の掲載や、地理情報システムを活用した電子地図データベースの「世田谷iMap」の活用の可能性も含め、ベンチ情報の充実について検討を進めてまいります。

 

 区民からは、もっとベンチが欲しいという声が寄せられています。ぜひ、多様な人たちにとって本当に居心地がよく快適な街づくりに向けて、引き続き取り組んでいただくよう求めて、生活者ネットワークの質疑を終わります。