区議会 第4回定例会 おのみずきが一般質問を行いました。質問全文をご覧いただけます。

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令和5年第4回区議会定例会・一般質問

2023年11月29日(水)11:30〜おのみずき

 通告に基づき、順次質問します。はじめに、子どもの権利擁護と虐待被害者支援に関連して大きく3点お伺いします。

 第一に、虐待被害者支援についてです。先日、児童虐待被害者の伴走支援を行う民間団体主催の「見えなかった子どもたち~虐待被害者の未来を知ってください~」というイベントに参加しました。ここでの“見えなかった子どもたち”とは、社会的養護に繋がることのできなかった成人の虐待被害者を指しています。同団体が実施したアンケート調査では、当事者683名の声が集まり、社会的養護未経験児童虐待被害者の成⼈後の実態にも焦点を当てた本邦初の調査データとのことで、各種メディアで報道されました。

 従来、虐待被害の影響として、身体的影響、トラウマやPTSD等の心理的影響、アタッチメント障害など関係性への影響がよく知られていますが、成人後の社会経済的影響に関しては注目されてきませんでした。本調査によると、6割近くが生活関連、半数以上が経済関連、3~4割が就職や住居にも困難を抱えていると回答しています。生活保護受給率は16.4%、また9割以上が希死念慮を抱え、この6割が実際に自殺を実行している点も看過できない重要な示唆です。

 区ではこの間、社会的養護経験者に対する事業を確実に拡充してきた点は評価します。一方、今次調査が明らかにした“見えなかった子どもたち”が抱える課題に関しては、ほぼ目を向けてこなかったと思います。

 来年4月より施行となる改正児童福祉法では、社会的養育経験者等に対する自立支援の強化が掲げられています。区としても、まずは、既存の各種相談窓口を中心に子ども時代の虐待経験がその後の人生に与えうる社会経済的影響に関する理解促進を図り、当事者の支援ニーズに寄り添ったアクセスしやすい相談支援体制への改善を進めてください。また、今年度よりスタートした児童養護施設退所者等相談支援事業(せたエール)の利用対象を拡大し、虐待の影響により困難を抱えている当事者のための支援に繋げられないでしょうか。見解を伺います。

 第二に、児童相談行政における子どもの権利擁護の推進について、学習権の保障と当事者主体の支援という二つの視点から伺います。

 先日、「世田谷区教育大綱」が策定されました。「区の教育に関して何か迷った時に、いつでも戻ってこられる基本的な理念を示すもの」との位置づけで、従来の行政文書の型からあえて脱却した、この新しい大綱は、子どもたちだけでなく、多くの区民に親しまれる存在になるとともに、区政において私たちが進むべき方向を示すコンパスの役割を果たしてくれると期待しています。

 先日早速、この教育大綱を読み直す機会がありました。というのも、世田谷児相の一時保護所において、子どもの学ぶ権利が守られていないのでは、とのお声を伺ったからです。児相に一時保護となった中学生のお子さんが、保護開始から丸5か月間にわたって一時保護所に留められることとなったそうです。この間、保護者の方が本人に一時保護所での様子を聞いたところ、『毎日本当にやることが無くて辛い。友達がいる学校に行かせてほしい。どうして自分たち子どもは何も悪いことをしていないのに閉じ込められ、大人たちは自由な生活を送っているの?』といった切実な声を聞いたそうです。

 一時保護は安全確保と引き換えに子どもの行動や自由、学習権を一定程度制限せざるを得ないため、長期化することは子どもにとって権利侵害となります。このため、一時保護は原則2か月を超えないことになっていますが、過去にも長期化するケースはあったと聞いています。特に学齢期の子どもにとって、数か月間学校から強制的に切り離されることの意味は計り知れない程重いものです。一時保護が長期化するケースの背景にはどういった要因があるのか、結果として学校で友人とともに学ぶ権利を含め、子どもの権利侵害が生じている事態に対して、区はどのようにお考えでしょうか。見解を伺います。

 教育大綱は、『学びの権利は、誰もが持つもの。 この保障と実現こそ、「世田谷の教育」が目指す礎である。』と謳っています。一時保護中の子どもに関して一部の権利を制限せざるを得ないのであれば、せめてオンラインで授業に参加できる仕組みを整備したり、原則通学不可のルールをより柔軟に運用したりする等、子どもたち一人ひとりの状況、学びを深める速度やリズムの違いに丁寧に寄り添った学習支援や通学支援を強化徹底すべきではないでしょうか。併せて見解を伺います。

 

 また、教育大綱では『子どもは個性を持った「独立した人格」』とされており、これは子どもの権利条約の理念にも通底するものです。この基本理念に立ち返るのであれば、児童相談所においても、問題解決の主人公は子ども本人であるという当事者主体の支援を進めるべきではないでしょうか。現に、児相につながった多くの子どもたちが、大人に対する信用を失っていたり、否定され続けたことで諦めに近い感情を抱いているケースが少なくありません。

 現在検討が進められている子どもの権利擁護にかかる環境整備や、意見表明等支援事業についても、丁寧に進める必要があります。こども基本法第三条三項に規定されるように、年齢及び発達の程度に応じて、子どもを交えた協議・双方向の意見交換の場を積極的に設けることで、子どもの自己情報コントロール権や意見表明権の保障を進めるとともに、新しく導入される「意見表明等支援員」には徹底した当事者主体の支援を行っていただきたいです。区の見解を伺います。

 第三に、社会的養育の推進についてです。家庭的養育優先の原則に基づき、区は「世田谷区社会的養育推進計画」を策定し、この間様々取組みを展開してきた点は評価します。しかし、里親等登録数は一定程度増えましたが、里親委託率に関しては、令和6年度の目標値55.5%に対して現状26.9%と、依然目標達成には程遠いです。実際に、区民の方から子どもの措置決定にあたり、里親を希望しても叶わなかった事例も聞いています。こうした事例を少しでも減らすためにも、里親登録数及び委託率の向上はより一層力を入れて進めていく必要があります。区はこれまでの取組みの効果をどのように評価し、今後の改善に活かしていく考えでしょうか。

 また、里親となりうる家庭をめぐる状況も、この間の社会情勢の中で大きく変化しています。現役世代や若い子育て世帯の経済的困窮、家族の在り方をめぐる価値観の多様化等、従来以上にアプローチする対象のニーズに寄り添った広報や周知啓発の展開が期待されます。見解を伺います。

 次に、多様な女性のエンパワーメント施策の強化・推進についてお伺いします。

 まず、「困難女性支援法」の実施に向けた体制整備についてです。同法は、これまでずっと福祉の対象とならずに取り残されてきた「女性福祉」の分野に特化し、人権擁護と男女平等の実現を基本理念に掲げた初めての法律です。市町村基本計画の策定は努力義務ですが、現場を担う自治体として、地域の特性を十分に反映する形で、多様な支援を包括的に提供する体制を整備するとともに、世田谷版基本計画の策定は必須であると考えます。見解を伺います。

 また、現実に機能する支援体制の構築にあたっては、新たな女性相談支援員をはじめ、人材の確保・育成が極めて重要です。区内外のNPO等民間団体との連携の必要性については、前回定例会での質問で確認しましたが、民間団体も数が限られています。こうした団体が運営する相談員養成講座もあるものの、あくまで民間資格のため、取得後のキャリアパスが明確でない点も多く、地域の潜在的人材候補と採用ニーズがマッチしていない現状も課題です。

 かかる状況に鑑み、区も既存団体との連携に加え、「地域で必要な人材を地域で育てる」との視座に立ち、女性支援に関わる人材の確保・育成施策を真剣に検討していく必要があると考えます。今後の取組みに関する区の見解を伺います。

 なお、新たな人材を養成した後に、会計年度任用職員等の不安定雇用となっては本末転倒です。ソーシャルワークに求められる専門性の高さを考慮し、女性支援に関わる地域の担い手の待遇改善を確実に進めるよう、強く要望します。

 最後に、地域の女性たちのエンパワーメント拠点の整備についてです。

先日、米国サンフランシスコで行われた第30回APEC首脳会議にあわせて企画された、第1回Open Futures Forumに参加してきました。このイベントは、APECの政策課題でもある、新世代の女性政治リーダーの育成支援を目的に開催され、21の加盟国から現職議員や、これから立候補を目指す人等が集まり、3日間のプログラムを通じてともに学び、交流しました。本イベントへの参加により、改めて心理的安全と参加者同士の信頼を担保した対話の場の重要性、国境を越えた共感とネットワーク構築の意義を感じ、私自身も大変エンパワーされる機会となりました。

 さて、翻ってここ世田谷区では、男女共同参画センターらぷらすが、地域における女性のエンパワーメントの主たる拠点機能を担ってきました。昨年より、国の方でも男女共同参画センターの機能強化に関する議論が進められ、所要の法案について令和6年通常国会への提出が目指される中、庁内のジェンダー主流化をはじめ、区におけるジェンダー平等施策推進にかかる重要なハブセンターとして一層の役割が期待されます。

 同時に、今後は地域の個人や団体、事業者と連携し、区民の身近な生活の中に、多様な女性たちが出会い、つながり、対話し、自信を獲得していくための場の創出を応援すべきと考えます。2003年から20年にわたって議会におけるパリテ(男女同数)を実現している神奈川県大磯町では、カフェを拠点におしゃべりする文化が育っており、女性たちはひとりでも「私はできる!」と自信をもって行動できる風土があるそうです。他自治体の事例も参考にしつつ、ハブセンターとしてのらぷらすと、地域と連携した女性たちのエンパワーメント拠点の整備・ネットワーキング支援を両輪で進めるべきと考えます。区の見解を伺います。

以上で、壇上からの質問を終わります。

ジェンダー版タウンミーティングを今後地域で実施予定とのことですが、区が音頭をとる企画だけでなく、地域の方々との協力連携、地域発のユニークな取組みをぜひ応援いただき、多様な女性たちのエンパワーメントにつなげていただくよう要望して、質問を終わります。