区議会 第1回定例会 予算特別委員会 関口江利子が総括質疑を行いました。質問答弁全文をご覧いただけます。

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2024年3月6日予算特別委員会(総括)関口江利子

1災害対策

1-1.生活者ネットワークの総括質疑を行ってまいります。日本中で市民の防災意識が高まっている中で、防災行動の最初のきっかけはまず適切な情報を得ることです。当区では昨年6月に「せたがや防災」を発行しました。その後、半年も待たずに東京都発行の「防災ブック」が全世帯に配布されました。この都と区の啓発冊子を比べますと、非常に大切なことなのですが、内容の重複も多く見られるため、「せたがや防災」は世田谷区の地域特性をもっと取り入れたほうが良いと考えますがいかがでしょうか。

答弁

1.区では、日頃から各家庭や地域で災害への備えを推進するため、さまざまな防災に関する啓発物を発行しており、なかでも、せたがや防災には、防災に関する基本的な情報を掲載し、区民が災害発生時に適切な行動が取れるよう周知・啓発に努めております。

2.一方、委員お話のとおり東京都においても、定期的に東京くらし防災と東京防災がセットになった防災ブックなどの啓発冊子を発行しており、せたがや防災と重複している部分があることは認識しています。

3.防災に関する啓発は、繰り返し行うことが重要であり、都の防災ブックや東京都防災アプリ、世田谷区防災ポータルなど様々な媒体による啓発に加え、せたがや防災については、区が発行する啓発誌として、区の地域特性や危険度リスク等も踏まえた内容とするなど、都の防災ブックと比較し、より細やか且つ効果的な掲載内容を検討してまいります。

1-2.今、様々な防災に関する啓発物を発行しているとお答えいただきましたが、せたがや防災以外にも「高齢者・障がい者」「帰宅困難者」「妊産婦・乳幼児」など個別対象者に向けた冊子やリーフレットを作成しており、先週わが家にも在宅避難について記した「災害時お家生活のヒント」が配布されました。これらの冊子の中には3.11直後に作られ情報が古いものもあると感じているのですが、このままどんどん種類が増えていく前に、一度すべての内容の確認をし、わかりやすく整理をしたほうが良いと考えますがいかがでしょうか。

答弁

1.区では、日頃から各家庭や地域での災害への備えを推進するため、テーマや対象者に応じた様々な啓発物を発行しております。

2.しかしながら、委員ご指摘のとおりこれらの啓発物の中には、情報が古くなっている箇所もございます。

3.今後、これまで発行してきた啓発物の内容を再点検し、更新が必要なものについては、関係する各所管の協力を得ながら、改定に取り組んでまいります。

4.また、改訂にあたっては、災害に関する基本的な情報を掲載している「せたがや防災」を基本としたうえで、各啓発冊子との関係について、わかりやすい整理が可能か併せて検討してまいります。

1-3.よろしくお願いいたします。この個別対象者に向けた冊子類の中で最も古い2012年に発行された「いざという時のために〜高齢者・障害者を地震災害から守るための本人・家族・地域社会の行動マニュアル〜」につきましては、高齢者・障がい者を取り巻く現在の社会状況等にそぐわない内容を含むため新しく作り直すべきと考えます。また、作業にあたっては、障がい・高齢当事者または精通した方の意見を取りいれ、定期的に更新することも必要です。区の見解を伺います。

答弁

1.区では、高齢者・障害者を地震災害から守るための啓発物として、冊子「いざという時のために」を作成し、災害対策課・各総合支所地域振興課で配布しております。

2.「いざという時のために」のような対象者を絞った啓発物は、関係する所管の監修を受けながら作成しますが、初版から年月が経過しており、一部古い情報もあることから、喫緊に更新が必要であると認識しております。

3.今後、更新にあたっては、より当事者目線にたった、実用的な内容とするため、各関係所管と連携し、高齢者・障害者といった当事者のご意見も反映させるとともに、定期的な更新を行うタイミングについても検討してまいります。

1-4.防災関係最後の質問です。昨年より、既存の車椅子に簡単に取り付けられ、少ない力で移動支援をすることが可能な「けん引式車椅子補助装置」の普及について取り上げてまいりました。防災倉庫へ配置することと、学校等の指定避難所での避難所運営訓練で子どもが体験するなど活用を求めますが、いかがでしょうか。

答弁

1.けん引式車いす補助装置につきましては、来年度から区民向けの防災用品の斡旋事業の品目に加える方向で、準備を進めております。

2.また、けん引式車いす補助装置を指定避難所に配置した場合には、避難所運営訓練等の参加者や子供たちに向けた車いす利用者の補助体験にも活用できると考えております。

3.今後は、指定避難所への配置については、防災倉庫が狭隘である等の課題があることから、まずは区内に15か所ある広域用防災倉庫へ配置し、訓練や体験等に活用するとともに、発災後、必要となる避難所において活用を検討してまいります。

2視覚障害者支援

2-1.次に、視覚に不自由のある人への配慮について2つ質問します。いよいよ庁舎の一期工事が完了します。本庁舎等整備の基本的方針を見ましても、区の政策を体現するような場所になっていくことが望ましいと考えます。その一つが障がい者の人としての尊厳が守られる公共施設のあり方だと思います。これまで、視覚に不自由のある人が慣れない場所を移動するには介助者なしには困難な場面もありました。しかし近年、既存の点字ブロックに2次元コード加工をするだけで、スマートホンを介して音声でナビゲーションをしてくれるシステムが開発されてきています。視覚に不自由のある人にとって、介助者がいなくても自分の意思で行き先を判断できることは、自立への大きな一歩であり尊厳の尊重にほかなりません。昨年はうめとぴあにて実証実験も行ったと聞いています。基本的方針に則った庁舎運営を考えるにあたり、点字ブロックを活用した音声ナビゲーションの導入は有効と考えますが、区の見解をお聞きします。

答弁

1 区では、本庁舎等整備の基本的方針の一つに「すべての人にわかりやすく、利用しやすい、人にやさしい庁舎」を掲げ、設計段階から、ユニバーサルデザイン検討会等で、障害当事者や専門家のご意見を伺いながら、よりよい庁舎の実現に向けて検討を重ねてまいりました。

2 新庁舎の建物完成時点では、視覚障害の方への主な誘導方策として、点字ブロックは、ユニバーサルデザイン推進条例で定める「敷地に入ってから建物内の総合案内まで」に加え、総合案内から一番近いエレベーターまで、さらに主要な窓口のある階は、エレベーターから一番近い、窓口及びバリアフリートイレまで、敷設されます。また、バリアフリートイレ入口及び内部には、人が近づくと位置を案内する音声が流れるシステムを導入します。

3 ご質問の2次元コード付点字ブロックは、点字ブロック等に張られた図形パターンをスマートフォンで読み取ると、周辺環境や進行方向に関する情報を音声で得られるもので、同様のシステムが複数の企業で開発されています。

4 そのうちの3種については、昨年の5月に、羽田空港でも実証実験が行われるなど、視覚障害者の方が介助者を通さずに、自ら情報を得ることができる手段として、各方面で導入、検討が進みつつある状況と認識しております。

5 区といたしましても、新庁舎における2次元コード付点字ブロックの導入につきましては、当事者の方々とともに、今後の技術革新の動向や各システムの将来性を注視しながら、竣工後の1期棟において、引き続き、システムの選定方法や案内の内容等含め、検討してまいりたいと考えております。

2-2.今年秋オープン予定の区民ホールのエントランスのような広い空間でこそ発揮するシステムだと思いますので、当事者の声を聞きながら進めることが非常に大事です。開館時での導入を要望します。次に、視覚に不自由のある人への選挙時の投票支援についてお聞きします。世田谷区では、投票する際の配慮として「点字投票」と「代理投票」があると聞いています。これに加えて、幾つかの自治体では自筆投票ができるように補助具を用意していると聞いています。字が書ける中途失明者にとって、「自身で候補者名を書いて投票する」ということは大きな意味があると思いますが、当区における補助具導入はどのように考えているのでしょうか。

答弁

1.投票用紙記入補助具は、投票用紙に候補者氏名などを自署する際に、凹凸をつけた器具に投票用紙を挟むことにより、手で触って自署する場所を確認できるもので、中途失明などにより点字が使えない視覚障害者にとって有用なツールとして、導入した自治体があることは承知しております。

2.掛川市は、厚みのあるプラスチック製のクリアファイルの一部を切り抜いて手作りしているようですが、世田谷区は投票所が114か所、期日前投票所が29か所あるため、予備も含めて150個程度作成が必要となります。補助具が製品化されるという話も聞いておりますので、製品化され次第、現物を確認したいと考えております。

3.補助具の導入は、視覚障害者の投票環境向上に資することから、7月に執行される東京都知事選挙において統一的に導入できるよう、現在、特別区の選挙管理委員会が集まる会議体を通して、東京都選挙管理委員会に補助具の調達を要望しております。

4.当委員会としましては、引き続き視覚障害者の方々が安心して投票できる環境を整えてまいります。

3子どもの権利

3-1.最後に、子どもの権利について質問いたします。世田谷区は、「子どもの権利条約」に日本が批准したことを受け、国や都に先んじて2001年に「世田谷区子ども条例」を制定しました。特に保坂区長が就任されて以降、困難や生き難さを抱える子どもたちへの権利擁護の仕組みを整え、子どもの自発的な活動を引き出して自分の考えを発信する場も増えてきました。ここにきて、「東京都子ども基本条例」と「こども基本法」が制定されたことを契機に当区子ども条例の評価・検証を行い、2025年度の条例改正に向けて議論をすすめていることは特別委員会で報告を受けているところです。本年3月に答申がだされる、子ども・子育て会議および子ども・青少年協議会の主な論点の中で、わたしが注目したいのは子ども条例改正の目的は、「子どもの権利が尊重され、子どもも、大人も暮らしやすい社会」と「子ども・若者が、自分の意見を聴いてもらえている、自分の意見には影響力があることを実感できる地域社会」この二つの社会を目指し、「子ども条例を文化として根付かせる」ことを目標とする。という一文です。子ども青少年会議をはじめ、生徒会サミットなど、大人が用意したさまざまな”仕掛け”を利用して、声をあげた子どもたちはまだほんの一部にすぎません。答申のための論点で示されたような社会を目指すためには、すべての子どもたちと保護者、地域の大人へ「子どもが持っている当然の権利」をどのように浸透させるかが大きな課題だと思うのですが、区長と教育長それぞれのお考えをお答えください。

区長答弁

1子どもたちが自ら持つ権利に気づき、意見表明をする機会として、区では今年度、「次期子ども・若者総合計画で実現してほしいこと」をテーマに、小学生から高校生世代の子どもで構成する子ども・青少年会議を計4回実施した。最終回には私も参加し、子どもたちからの生の声をいただいた。次年度以降も、子ども・若者の声を施策に反映していく様々な取り組みを実施しながら子どもたちが自らの権利について知る機会を設けていく。

2現在、子ども・子育て会議と子ども・青少年協議会において、子ども条例の改正について議論いただいているところだが、子どもの権利の明示や、子どもの参加と意見表明などについて密度の濃い議論がなされていると伺っている。この議論のまん中に子どもがいることが、きわめて重要である。また、当事者である子ども・若者だけでなく、身近な大人、地域に浸透させることが重要であると認識している。

3来年度は条例改正に向けてのパブリックコメントや全区的なシンポジウム等を予定している。また、子どもの権利に関する学習の機会の確保やSNSの活用など、様々な取組みにより、権利の主体である子ども・若者をはじめ、保護者や子どもに関わる地域団体等に向けた普及啓発、人材育成等を進めていく。

教育長答弁

1 こども基本法が施行され、その基本理念を社会に広く浸透させていくためには、子ども自身が権利について学ぶことはもちろんのこと、自らの生活について意見を表明し、意思決定に参加できるようにすることも大切です。

2 学校では、子どもの意見を積極的に取り入れるようになってきており、今年度の生徒会サミットでは、子どもたちの考えや本音、意見等を学校生活に生かすことを目指して活動を続けています。

3 中堅教員を対象とした研修では「こども基本法」を取り上げ、法の趣旨についての理解を深めさせており、子どもたちへの指導の在り方について考えるようになってきております。

4 これらの取組みを更に進めるとともに、保護者や地域にもこども基本法の理念を浸透させ、子どもを取り巻く社会全体の意識を高めてまいります。

法整備が整えられたことで、教科書にも子どもの権利について掲載されると聞いています。授業で触れる機会は貴重ですので、先生も研修を活かして取り組んでいただきたいと思います。また、児童館を中心とした子どもの権利の拠点づくりについても検討を進めています。大人から頭ごなしに扱われるのではなく、すべての子どもが自分を受け止めてもらえることが当たり前になるよう子ども条例の改定を進めていただくことを要望して、質問を終わります。