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決算特別委員会(企画総務領域)
2024年3月8日 生活者ネットワーク おのみずき
生活者ネットワークの企画総務領域の質疑を始めます。
はじめに、区の防災・災害対策について、避難所運営ゲーム(HUG)を用いた地域啓発研修と防災分野のジェンダー主流化の二点につき、順次伺います。
まず、地域啓発研修についてです。次期基本計画実施計画を見ると、令和6年度以降、毎年510人の参加を目標値に設定されていますが、ただやみくもに研修を実施して、広く区民の皆さんにHUG体験の機会を提供し、防災意識の啓発に役立てもらうだけでは災害発生時の有効な対策につながるとは言えません。重要かつ喫緊の課題は、実際に避難所運営組織等に関わる人たちに、地域啓発研修の受講やHUGのより実践的な活用を通じて、地域で共に生きる女性や多様な人々のニーズをどれだけ理解していただけるか、であると考えます。避難所運営組織等、災害時に現場に立つ可能性がある方々へのアプローチ強化について、具体的にどのような検討がなされ、今次予算案に反映されたのか、伺います。
答弁
地域啓発研修のメニューとして、現在、世田谷区版HUGを活用しておりますが、今後、2回目3回目の研修を受けて頂くために新たな研修メニューの開発も必要であり、これらのメニューを通じて避難所運営委員会等の理解を深める必要があると考えております。
一方で、地域啓発研修の講師を依頼しております、女性防災コーディネーターは、将来的には避難所運営委員組織の中で活動して頂くことも想定していましたが、令和元年度に区が養成して以降、コロナ禍もあり、養成講座を実施しておらず、避難所運営委員会に入り活動するには1人では厳しい、活動できる方が固定化される、活動の範囲が限定されてしまうなど人員不足の課題があります。まずは、新たな担い手の増員を目指し、令和6年度当初予算において、女性防災コーディネーター2期生養成のための予算を計上いたしました。令和6年度当初予算には、啓発研修等を含めた事業全体として、186万円を計上しています。
186万円で20名の女性防災コーディネーターの養成と年間500名以上の区民への啓発研修を実施するということですね。研修講師を務める女性防災コーディネーターの方々への謝礼も含まれるとのことですが、講師謝礼は交通費込みで3,000円と聞いています。養成された方々が継続的に関与していただけるように、活動に見合った金銭的な保障の在り方も今一度よく検討していただくように、強く要望しておきます。
次に、防災分野のジェンダー主流化についてです。先の一般質問においても少し言及しましたが、東日本大震災をはじめこの間様々な災害の経験を経てもなお、防災分野のジェンダーギャップは依然として大きいです。世田谷区の現状について、防災・復興の意志決定の場への男女別の参画状況を教えてください。
答弁
防災・復興の意志決定への参画に関しては、今年度委嘱された世田谷区防災会議の女性委員比率は53名中女性9名で16.9%でした。また、発災時に様々な対策の意思決定を行う災害対策本部長室の構成は、平時の女性管理職の少なさをそのまま反映して、女性比率10%です。
指導的立場への参加参画はいまだ不十分です。一方、防災の現場への参画という点では、令和3年10月の決算審査で、当会派が庁内防災担当部局の女性比率を上げるべきと指摘しましたが、現在の災害対策課の構成は常勤職員19名中女性4名と、当時の16名中3名からむしろ悪化しており、管理・監督的立場にはゼロという状況です。こうした中で、人口の半分を占める女性たち、特に障がい女性、高齢女性、シングルマザー、GBV被害女性、外国籍女性、不安定雇用で働く女性、トランス女性やXジェンダー・ノンバイナリー等の声はどこまで災害時の施策に反映されるのか、大変疑問です。
国は、平時からあらゆる防災施策にジェンダーの視点を入れることで、被害全体の縮小につながるとともに、災害にレジリエントな社会を構築できるとし、2020年には内閣府がガイドラインを策定し、普及啓発を進めています。この中に「男女別データチェックシート」というものがあり、平時から男女別のデータを収集し、活用することが重要であるとしています。リストに掲載されている項目をはじめ、区としても今後平時・災害時のデータ収集の在り方を検討し、見直していくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁
令和2年5月に国の男女共同参画局がまとめた「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」では、災害対応力を強化する女性の視点が掲げられ、その中に委員お話の「男女別データチェックシート」があります。このチェックシートでは、「平常時」から発災後の「初期段階」「避難生活」「復旧・復興期」まで収集しておくべきデータが例示されています。
この項目の中には、防災システム等で被害情報を収集する際に収集可能なデータや、収集そのものが困難なデータが混在していることから、今後、在宅避難者のニーズの把握など、被災後の適切な支援につながるよう各項目を検討し、適切なデータ収集の可能性を検討してまいります。
次に、区職員の人材育成方針について伺います。
2008年3月に策定された「世田谷区人材育成方針」が今年1月に16年を経て改定されました。改定作業の中で特定された課題のうち、人事評価や昇進・配置をめぐる課題は特に注目すべきと考えています。例えば、昨年6月の職員意識調査では「成長や能力開発を考慮した人事異動になっていない」「人事考課の仕組みや評価の決定プロセスへの納得感が低い」「昇任において適切な人材登用になっていない」といった声があったそうですが、今次改定にあたり、区はこうした意見をどのように受け止め、方針に反映させたのでしょうか。また、現行の人事考課制度では誰が、どのような視点で評価を実施しているのか、伺います。
答弁
区では、今回の人材育成方針改正に伴い職員意識調査を実施しました。調査結果からは、職員は仕事にやりがいや誇りを持ち仕事を通じて成長を実感しているなど、プラス面の回答が見られる一方、適切な人材登用になっていない、成長や能力開発を考慮した人事異動になっていないなど、職員の人材育成に関わる課題も明らかとなりました。
また、人材育成方針の改正に際して設置したプロジェクトチームや職員ワ-クショップでの議論からも職員が人材育成に抱いている思いや課題を把握することができました。人事課として、今後の区政を担う人材の育成は極めて重要な課題であり、職員の声を踏まえ、今の時代に必要な人材育成手法へと転換していくことが必要であると認識しております。
新たな人材育成方針においては、職員の意見も反映する形で、今後の重点取組みを設定しております。例えば、適切な人材活用が行われるよう管理職向けの人材マネジメント研修を実施するほか、職員の保有スキル・各職場の業務内容などを見える化し、適材適所の人事異動につなげてまいりたいと考 えております。
なお、人事考課は職員が設定した目標の達成度やその過程で発揮された能力等について一次評価を所属課長が、最終評価を所属部長が行っております。
今のご答弁や新しい人材育成方針にも「適材適所」の人事という言葉が散見されますが、先ほどの職員の声や、なかなか改善しない女性管理職比率の現状を踏まえると、「適材適所」とは一体何を意味するのか、その前提となる人事考課制度の在り方はどうなのか等、色々と疑問が沸いてきます。人事考課や配置検討も、ジェンダー規範など既存の社会構造の影響を免れない「人間」が行うものである以上、この問題もやはりジェンダーの視点で分析、検討する必要があると考えます。
昨年10月の決算特別委員会で他会派からも紹介がありましたが、ここで再び「女性公務員のリアル」という本をご紹介します。なお、この間、庁内でも管理職を中心に多くの方に読んでいただいていると聞いています。この本では、公務労働のジェンダー分析を専門に行っており、自らも現役の政令市職員である著者が、これまでの調査研究を通じて、「なぜ女性公務員(特に正規公務員)は昇進できないのか」という問題に切り込み、様々な示唆を示してくれています。
最も重要な指摘は、「配置部署や担当業務に男女間で大きな偏りがあり、結果として組織の重要な意思決定の場(=基幹部署や管理職)に、女性が非常に少ない、あるいはほぼいない状況が生まれている」というものです。偏りが生じる原因として、家事育児等の家庭内無償労働が女性に偏っている結果、長時間勤務ができない女性の割合が高いことや、役所内で「女性用の仕事」「女性には振られない仕事」が存在していること等がデータとともに示されています。一例を挙げると、財政・人事・企画等の基幹部署は、時間外勤務が多く女性が配置されにくいとの指摘は、当区も決して他人事とは言えないのではないでしょうか。
人事考課や昇進・異動に関しても、経済産業研究所の2016年の研究論文は「長時間労働が女性の昇進率に影響した」という看過できない重要な指摘をしています。男性の場合、昇進には評価や学歴が大きく影響するのに対し、女性の場合は、評価や学歴ではなく長時間労働をしているかどうかが大きく影響する、といったデータが示されたのです。
こうした様々なエビデンスを踏まえ、庁内でも簡易調査を行ったと伺いました。実施した調査の概要と結果について、ご紹介いただけますか。
答弁
人事課としては、世田谷区においても委員紹介の書籍の自治体と同様な傾向がみられるのかを把握するため、男女合わせて8人の管理職をサンプルとして抽出し、管理職昇任までの経歴、いわゆるキャリアパスの分析や各所属でどういった業務に従事されたのかなどの確認を行ったところです。
結果といたしましては、今回の調査においては、男性職員・女性職員で管理職昇任までの経歴に大きな差は見られなかったものの、多くの職員が意思決定に関わる政策経営部門や総務部門を経験しているという傾向が見られました。
一方、管理職につながるキャリアという意味においては、庶務的な業務への従事経験を含め、経験した様々な業務経験が、管理職としての業務に有用であるとの意見がご意見がほとんどでした。
私も調査結果を拝見しました。午前中の他会派の質疑にもありましたが、調査結果の分析が少々甘いのではないかと思います。サンプル数が少なく、質問票ベースの回答なので詳細や全体傾向の把握には限界があるのは重々承知していますが、それでも、私は今次調査結果からは別の示唆があるのではないかと思います。例えば、男性職員は、管理職に昇進するまでの間に、予算・決算事務、人事・労務管理、庁内調整、企画・計画策定、議会対応等、管理職として活躍するためのスキル形成に効果がある業務に入庁後早い段階から携わっているのに対し、女性職員は、こうしたスキル形成業務をほとんど経験することなく管理職となっている人もいました。また、文書事務・服務事務等のいわゆる庶務事務の経験に関しては、男性職員がキャリアの数%~10%台を占めるのに対し、女性職員は20%~30%台と、明確な差が見受けられました。
今回の調査結果を踏まえ、庁内全体の実態を把握すべく、サンプル数を増やして全庁的な調査を実施すべきではないでしょうか。人材育成方針には『職員意識調査を定期的に実施する等、職員の状況を数値化し、定量的に把握していくことで、職員の意欲・能力向上につながる人材育成施策展開等の参考にしていく』との記載がありますので、今後の職員意識調査において、追加の調査項目を検討し、ジェンダーの視点を踏まえた更なる調査・分析を行う等、より踏み込んだ対策によって女性管理職割合の向上につなげていくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁
人材育成に係る職員意識調査は、今後、毎年実施することを予定しております。これにより、経年で職員の意識の確認を行い、人材育成方針に基づく各取り組みの効果も図ってまいりたいと考えております。委員お話しの調査内容についですが、経年での職員意識の変化を確認することが中心となるため、同一の項目とすることを想定しております。ジェン ダーの視点については、担当の生活文化政策部と調整のうえ、人材育成の取り組みに反映することについて検討してまいります。
なお、総務部といたしましては、女性管理職を増やしていきたいという思いでありますので、打てる手は様々考えながら女性職員の政策立案部門などへの配置を増やしていく取組みを進めるとともに、女性職員の生の声を聞く取組みや専門家の助言を受けることなどを通じて、考え得る対策を講じてまいりたいと考えております。
また、今回は詳細に伺いませんが、仕事上のコミュニケーションや信頼構築をめぐる課題も、今後の取組みが重要だと思います。職員意識調査に寄せられた「区組織に大切にされていると感じていない」「職層や年齢が壁となり、意見が言いづらい」「自分の考えや気持ちを安心して話すことができていないと感じている」といった職員の声からは、少なくともこの回答をした職員の方々にとって、今の区役所は心の安全と信頼が担保された職場となっていない可能性があります。このことはメンタル不調や休職者数が若手に多い現状と無関係ではないのではないでしょうか。この点も、特に管理職の皆さんの真摯な対応をお願いします。
最後に、区政運営に関わる著作物の取り扱いについて伺います。
他会派からも言及がありましたが、ドラマ「セクシー田中さん」をめぐり、原作者で漫画家の芦原妃名子先生が今年1月に急逝されたことは、原作を楽しみに読んでいた一人としても大変ショックな出来事でした。事件後に小学館HPに掲載された第一コミック局編集者一同のコメントは、「著作者⼈格権」という、著作者のみが持っている、著作者の精神的利益(こころ)を守る権利に関してとても大切な指摘を含んでおり、ぜひ皆さんにもご一読いただければと思います。
私たち生活者ネットワークも、著作権人格権は極めて重要な権利であり、著作者等の権利を守ることは、あらゆるクリエイターの命を守ることにつながると考えています。翻って区では、来年度より「新たな行政経営への移行実現プラン」の下で、業務委託等多様な主体との協働や生成AIを含むデジタル技術の活用を推進していく計画としており、その過程で著作物の取り扱いも、量・質ともに従来以上に複雑で高度な判断を要求される場面が増えてくると思います。
現状、著作権契約を含む契約事務は基本的に各部の判断で行っているとのことですが、4月からは丸1年間不在だった法務担当副参事が就任予定と聞いています。この機に、著作物に関する取り扱い等について疑問がある場合は、契約締結前に専門家である法務担当に気軽に相談できる体制とし、組織としてのリスク管理及び著作者の権利保護を徹底すべきと考えますが、見解を伺います。
答弁
所管が事業を遂行するにあたり、法的な疑義が生じた場合、適宜、所管からの法律相談を受け、課題を解決するため、弁護士を活用するなど支援を行っております。
著作権の取扱いに関する相談を受けた場合においても、区が著作権者の権利を侵害することのないように、著作物の適切な取扱いについて、サポートに努めてまいります。
区は発注者として、多くの取引において権力側にいることを理解し、区政運営をともに担う人たちの権利を侵害することがないよう、組織としての対応を検討すべきです。そもそも、区内最大事業者でありながら、事業全体に目を配る契約法務の担当所管が無いという現状は大変問題があると思います。著作物の取り扱いをはじめ、組織としての方針を提示できる部署を定め、法令遵守と区が協働する人たちの権利保護の徹底に向け、何らかの形で体制強化ができないか考えていただきたいです。この件は、引き続き取り上げたいと思います。
以上で終わります。