令和6年3月定例会-02月22日
おのみずき 議員 通告に基づき順次質問します。
初めに、地域防災力の向上に向けて、せたがや女性防災コーディネーターの養成について伺います。
区独自の女性防災コーディネーター養成研修が実施され、一期生三十八名が修了してからはや五年がたちました。いつ起きてもおかしくない大地震や激甚化する気候災害リスクの高まりを踏まえ、災害時に地域で実働可能な女性防災コーディネーターの計画的養成を進めるよう、生活者ネットワークはこの間、繰り返し求めてきました。
今回、次期基本計画案の実施計画に、来年度から令和九年度までの四年間で毎年二十名、計八十名の追加的な養成計画が示された点は評価します。しかし、災害リスクは年々高まる一方であること、区内九十五か所の指定避難所への配置必要性に対し、あまりに悠長な計画ではないでしょうか。毎年の養成人数を倍増し、計画の迅速化を図るべきと考えますが、区の見解を伺います。
また、養成に当たっては単に数を増やすだけでなく、地域で効果的な活動を展開できるよう、避難所運営への参加等、平時から備えておく必要があります。しかし、実態はどうでしょうか。現状、女性防災コーディネーターの登録は三十四名ですが、実際に稼働している人数は減少を続けています。避難所運営ゲームHUGを使った地域啓発研修で講師を務めたのは、今年度実績で半数以下の十五名で、それ以外の自主防災活動の実態について区は全く把握していないとのことです。
稼働人数減少の原因はコロナ禍の活動休止の影響だけでなく、地域で防災訓練や災害対応に関わる人との顔の見える関係性が構築されていないこと、女性防災コーディネーター自体の認知度も低いことなどが考えられます。実際に女性防災コーディネーターの方々にお話を伺ったところ、発災時に避難所の開設運営において重要な役割を担う避難所運営委員会にほとんどの方が参画できていない実態も見えてきました。今年元旦に発生した能登半島地震では、女性や多様な人々の視点の欠如による様々な問題が改めて顕在化しました。
当区においても、防災担当所管、地域防災会議、防災士、消防団等の構成をはじめ、防災分野のジェンダーギャップは依然として大きい中、地域で女性防災コーディネーターが果たす役割は大きいはずです。発災時に彼女たちが実質的なリーダーシップを発揮できるよう、区は各支所やまちづくりセンターと連携して、町会・自治会への制度周知と人材活用への呼びかけを進め、活動の環境整備を支援すべきです。区の見解を伺います。
次に、ジェンダー・ベースド・バイオレンス、ジェンダーに基づく暴力への対策について、災害時と平時双方について三点質問します。
ジェンダーに基づく暴力とは、その人のジェンダーを理由に向けられる暴力のことです。DV等パートナー間で行われる暴力や性暴力など、加害者が被害者に対し相手をコントロールすることを目的として行使するこの暴力は、日本を含む世界中で起こっている問題です。被害者は個人的な問題として抱え込んでしまうことが多いため表面化しにくく、見えない暴力とも言われています。
ジェンダーに基づく暴力を生み出す根本原因は、ジェンダー不平等で、性差別的な社会構造にあることを踏まえ、個別事件や加害者、被害者、サバイバー、個人への対応を超えた社会全体での包括的取組が必要です。
災害時の対応、とりわけ女性への対応について、区の避難所運営マニュアルを確認すると、被害に遭ったときの対応として、すぐに警察に通報し被害を届け出ましょう、通報しにくい場合は避難所の巡回相談員などを通じて通報してくださいとだけ書いてあります。これはあまりに実態から乖離した内容ではないでしょうか。
過去の震災の調査結果から、パートナーや家族、親戚、避難所の住人やリーダー等、顔見知りによる加害が多くを占めていたことが分かっており、こうした関係性の中で起こった被害を警察に訴えることの困難さは想像に難くありません。また、通報しても、事情聴取後に加害者と被害者を同じ避難所に戻す、被害を過小評価したり、被害者を非難したりする二次加害を行うなど、警察や避難所関係者による不適切対応の報告事例もありました。
こうした被害を訴える際の困難を十分に認識した上で、被害に遭ったときに一人で抱え込まなくていいように、災害時においてもジェンダーに基づく暴力を想定した相談支援体制が確実に構築されるよう、体制強化に向けた課題の整理と関係所管の一層の連携強化を求めます。見解を伺います。
ジェンダーに基づく暴力を防止するためには、災害時だけでなく平時からの取組が重要です。被害者の声を中心に広がったMeToo運動に続き、昨年より芸能界での性加害問題が多数メディアで報じられ、加害のメカニズムにも少しずつ世間の目が向けられるようになっています。こうした中、性暴力対策として、被害者、加害者へのアプローチに加え、第三者による介入という視点ももっと広がってほしいところです。
アクティブ・バイスタンダー、直訳すると行動する傍観者ですが、この考えも近年知られるようになってきました。性暴力やハラスメントが起こった、あるいは起こりそうな場面に遭遇したときに、ちょっとした行動によって被害を防いだり、最小限にする行動を取れる人のことです。例えば声をかけて加害者の注意をそらす、駅員等ほかの人に助けを求めるといったアクションです。過去の震災時にも第三者による少しの介入で防げた被害が少なからずあったことが分かっており、また、平時からジェンダーに基づく暴力を許さないという社会的メッセージの発信、規範形成に向けても大変意義ある実践と言えます。
区としても、アクティブ・バイスタンダーを増やしていくために、ジェンダーに基づく暴力防止の観点からどのような取組ができるのか伺います。
もう一つ、平時から取り組むべきジェンダー・ベースド・バイオレンスの対策として、緊急避妊薬、アフターピルへのアクセス改善があります。これは性暴力被害に遭った人をはじめ、妊娠可能な体を持った全ての人にとって極めて重要な人権問題です。緊急避妊薬とは、性交から七十二時間以内に服用することで妊娠の可能性を下げることができる薬です。妊娠阻止率は約八五%ですが、できるだけ早く飲むことで高い効果が期待できます。
WHOは、思春期を含む全ての女性が安全に使用できる薬であり医学的管理下に置く必要はないとし、海外では十九か国で薬局などで直接購入でき、七十六か国で処方箋なしで薬局で薬剤師の管理の下、販売されています。しかし、日本では医師の処方箋がないと購入できず、保険適用外のため価格も六千円から二万円と非常に高いなど、緊急避妊薬へのアクセスには依然様々な障壁があります。昨年十一月には厚労省による薬局での試験販売の実証事業がようやく始まりましたが、取扱い薬局が少な過ぎるなど、本当に必要な人が必要なときに入手できない状況が続いています。特に深刻で緊急対応が必要なのは、性暴力被害に遭った人です。
区では二〇二一年より犯罪被害者等相談支援窓口を開設し、犯罪認知や被害届の有無にかかわらず、性犯罪・性暴力被害に遭った方の相談を受け付けています。性被害に関する相談は、今年度実績で全体の一三・五%を占める一方、配置された二人の相談員は、いずれもジェンダー・ベースド・バイオレンス専門のソーシャルワーカーではありません。望まぬ妊娠の可能性がある性暴力被害者が、七十二時間という時間制約の中で一刻も早く緊急避妊薬にアクセスするためには、ワンストップ支援機能を有しない現在の体制では到底不十分です。
被害者の人権尊重や包括的支援の推進を目的とし、来年四月の世田谷区犯罪被害者等支援条例の制定に向け、現在、あり方検討委員会での議論が進められています。性被害に関しては、その被害実態や支援に必要な専門性に鑑み、緊急避妊薬の無償提供を含め、性犯罪・性暴力被害者への支援を強化すべきではないでしょうか、区の見解を伺います。
最後に、全庁を挙げたジェンダー主流化に向けて質問します。
四月の実施に先立ち、次期基本計画案に、あらゆる政策においてジェンダーの視点を確保し、施策に反映するジェンダー主流化が求められる旨が明記されました。区の最上位の行政計画にジェンダー主流化が位置づけられたことをまず評価するとともに、各事業所管における来年度以降の取組に期待をしています。
従来の日本の男女共同参画行政では、性別に関わりなくその個性、能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現を掲げる一方、私たちが今生きる社会がどんな社会か、そこにどんな支配、抑圧の構造があるのかは問われてきませんでした。しかし、ジェンダー主流化は、既存の社会構造の中で、一見するとジェンダー中立的な事業が実は男女間で異なる結果をもたらしているかもしれない。それによって差別、抑圧の維持、再生産に加担しているかもしれない。こうした問題意識を持って実態を把握分析し、事業内容を見直し、その効果を高めていく、社会基盤に変革をもたらすための戦略なのです。
今回、次期基本計画にジェンダー主流化が明記されたこと、これは区として、事業実施に当たり、既存社会の構造に目を向け、これを変えていくための施策を展開していく、その決意と受け取ってよろしいでしょうか、区長の見解を伺います。
また、今後、全庁でジェンダー主流化を実践していくに当たり、継続的な取組となるよう庁内の実施体制をよく検討する必要があります。例えば今年度ジェンダー主流化事業点検に取り組んでいる埼玉県では、まず庁内でモデル事業を幾つか選定し、その結果を踏まえ、来年度より全庁へ展開予定とのことです。外部からのアドバイザーも招いています。
今後、区においても、例えば外部専門家による協力を仰ぐなど、様々なリソースの活用も積極的に検討すべきではないでしょうか。ジェンダー主流化の実践に向けた現状の区の見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
〔区長登壇〕
◎区長 おの議員にお答えします。
ジェンダー主流化、次期基本計画に位置づけたことについてでございます。
ジェンダー平等の実現及びジェンダー主流化は区政の骨格となる重要な視点だと認識しておりまして、次期基本計画案では、計画の理念の一つに、多様性を尊重し生かすことを位置づけました。性別をはじめ、年齢、LGBTQなど性的指向及びジェンダーアイデンティティー、国籍、文化の違いや障害の有無など、異なる立場の多様な価値観を持つ人々が共に社会を構築できるよう、広く多様性を尊重し生かしていくことを目指してまいります。
また、分野別政策とSDGsのゴールの関係を示す中で、ジェンダー平等の実現は、あらゆる政策に横串を刺す分野横断的な価値として、SDGsの全てのゴールの実現に不可欠であり、区政全体でジェンダーの視点を確保し、施策に反映するジェンダー主流化が求められている旨、明記をいたしました。基本計画をはじめ、今後策定する各領域分野の個別計画、こうした考え方も反映し、また職員にもしっかり浸透するように、昨年九月に庁内の会議体を通し、ジェンダー主流化の実践方法などについて全庁的に周知共有を図ったところでございます。
今後も全庁的な連携体制の下、事業の計画や実施、評価検証等の各プロセスにおいて、ジェンダーの視点に立った分析や課題の把握に努め、男女だけじゃなく、LGBTQなど多様な性も含めた全ての人が等しく利益を受けることができ、既存の社会構造による不平等が永続しないよう、着実に改革の取組を進めてまいります。
◎危機管理部長 私からは、女性防災コーディネーターの養成等について御答弁申し上げます。
区は、男女共同参画の視点を災害対策に取り入れるため、令和元年度に養成講座を修了した三十八名を女性防災コーディネーターとして認定いたしました。女性防災コーディネーターは、地域の様々な防災事業等において、講師として世田谷版HUGを活用した地域啓発研修を実施するなど、多様性に配慮した女性の視点から災害対策の普及啓発に取り組んでいるところです。
これまで、女性防災コーディネーターに対するフォローアップ研修を実施してまいりましたが、次年度からは、コロナ禍で休止していた養成講座を再開し、毎年二十名を育成していく予定です。この育成数につきましては、講座修了後、講師として活動可能な人員数を踏まえまして、今後さらに検討を加えてまいります。
また、将来的に避難所運営委員会に女性防災コーディネーターが委員として加入することを目指し、避難所運営委員会や訓練等に参画できるよう、総合支所、まちづくりセンターと連携し、支援に努めてまいります。
私からは以上です。
◎生活文化政策部長 私からは、四点御質問にお答えしてまいります。
初めに、災害時のジェンダーに基づく暴力を想定した相談支援体制についてでございます。区は、世田谷区防災会議の専門部会として設置していた女性の視点部会が平成二十九年にまとめた提言に基づきまして、多様性に配慮した女性への視点を、地域防災計画や避難所運営マニュアル等に反映するとともに、人権男女共同参画課、また男女共同参画センターらぷらすとも連携して、区民や団体を対象とした研修や訓練など、具体的な事業の実施に取り組んでいるところでございます。また、避難所運営マニュアル解説版では、女性、子どもなどへの犯罪防止について章立てし、万一、被害に遭われた方への対応として、警察への通報を基本に、避難所の巡回相談員などを通じて通報していくこととしてございます。
相談体制においても、平常時から行っているらぷらすの相談業務や、避難所の相談の窓口を迅速に復旧し、その相談体制を整え、被災による女性の様々な悩みや女性に対する暴力等への心身ケアに努めることとしてございます。今後も引き続き、御質問の趣旨を踏まえ、関連所管と連携協力し、体制強化に取り組んでまいります。
次に、第三者による介入によりまして犯罪の抑制ができないかということでございます。
区では第二次男女共同参画プラン後期におきまして、基本目標三として、暴力やハラスメントのない社会の構築の中で、暴力を容認しない意識づくりを掲げてございます。現在、暴力を生まない、暴力の連鎖を断つための取組として、区内の大学、企業等に向けた働きかけや、区内の中学校、高等学校と連携し、デートDV防止講座等学校出前授業を実施しているほか、チラシ、携帯カードを配布し、若年層を対象とした人権教育にも取り組んでいるところでございます。
こうした中、ジェンダーに起因する暴力やハラスメントが起きた際、その場に居合わせた周囲の人が、できる範囲で状況に応じた行動を取りやすい環境を整えるということは、犯罪の抑止、また被害を最小限に抑えるといった観点から望ましいと考えますが、適切なトレーニングやしっかりとした知識、理解を持たずに介入し過ぎることで、さらなる事態の混乱、あるいは拡大を招くことは避けなければならず、自身が危険にさらされる場合も十分に考えられることから、どのような取組が実効性があるのか、丁寧な検討が必要であるというふうに考えてございます。
次に、緊急避妊薬の無償提供についてでございます。
都内における近年三年間の性犯罪の認知件数は、警視庁の資料によりますと毎年増加している状況となってございます。性犯罪・性暴力被害者への緊急避妊薬の無償提供については、現在、警視庁や特定非営利法人性暴力救援センター・東京が行っているところでございます。
区では、犯罪被害者等支援条例の制定に向けて、犯罪被害者やその家族、遺族に対して、一日でも早く安全で安心できる日常を取り戻すために、どのような支援がよいのか、犯罪被害者当事者を含めた学識経験者、支援団体、また医師による検討委員会で検討を進めているところでございます。性犯罪・性暴力被害の支援の在り方につきましても、議員御指摘の緊急避妊薬の無償提供も含め、この検討委員会において御意見をいただき、充実に努めてまいります。
最後に、ジェンダー主流化の実践に向けた専門家の協力を得てはどうかという御質問についてでございます。
区のあらゆる施策において、男女だけでなく、LGBTQを含めた全ての人が等しく利益を受けることができ、また、不平等が永続しないよう、ジェンダーの視点を反映することが重要と認識してございます。男だから女だからといったジェンダーに起因する社会規範や構造的な格差が根本にあると、性別に関わりなく事業を実施しても、結果として、男女間の不平等や排除を助長してしまう、こういったこともございます。
庁内各部が主体的にこのジェンダー主流化が進められるようにするには、まず、それぞれの施策において潜在化しているジェンダー課題に気づき、具体的にその課題が整理されることが重要になってまいります。ジェンダー課題に気づくということは、ジェンダーに対する知識と深い理解が求められますので、お話しの専門性を有した方を講師に招くなど、そしてその上で講義いただくなど、職員の理解促進とともに効果的な手法を検討してまいります。
以上でございます。
◆おのみずき 議員 区が推進する防災人材が地域とつながっていない問題というのは、被災動物ボランティアに関しても同様です。ボランティアの登録を進めていますが、年一回の研修だけでは、いざ発災時にどう行動したらいいのか分からない。地域もこの人材をどう活用していいか分からないといった問題があるので、併せて対応の改善を要望し、質問を終わります。引き続き予算特別委員会で伺ってまいります。