第4回定例会 一般質問と答弁 2023・11・29 関口江利子

関口江利子 議員 通告に従い、四つのテーマで質問をいたします。

 まず初めに、子どもの食の安全性と質の保障について質問します。

 平時のほっとスクールと長期休暇中の新BOP学童クラブの昼食用弁当について、これまで原則保護者が用意してきましたが、順次デリバリー弁当が利用できるようになります。保護者の負担軽減の視点から大変喜ばしく、待ち望んでいた方もいらっしゃる一方で、提供される弁当の安全性と質について気になるところでもあります。

 学校に通う子どもの多くが食する学校給食については、学校給食法第二条で七項目の目標が定められており、その中の二つを紹介しますと、適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること、食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこととあります。さらに、区立小中学校の給食物資の納入規格基準では、青果、肉類は国産であること、食品添加物は適正に使用すること、遺伝子組換え表示のあるものは使用しないことなどが定められています。

 このように、世田谷区の給食は、子どもの心と体の最善の利益を考慮して提供されていることが分かります。

 こうなってくると、新しく始まるデリバリー弁当のトレーサビリティが気になるところです。それぞれの請負事業者は、給食とまではいかなくても、調理食材や調理方法への配慮が必要と考えますが、区の見解をお聞きします。

 また、あってはならないことですが、原因となり得る要素が追加されるという観点から、万が一、食中毒等が起きたときの対応についても改めて確認し、備えることを求めます。

 次に、柔軟剤や消臭剤に含まれる化学物質で起こる健康被害、いわゆる香害についてお聞きします。

 厚生労働省ほか関係省庁が作成した啓発ポスターが本年七月に改定されたことに関係して、決算特別委員会では、区立小中学校へ向けて、化学物質過敏症当事者中学生が作成したポスターの周知を求め、データ配布していただくことになりました。さらに、第三回定例会の後、厚生労働省から、今度は日本医師会へ向けて、柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がするという相談が消費生活センター等にあることを踏まえ、日本医師会会員に対し、啓発ポスターについて院内への掲示等を依頼する文書が発出されました。

 柔軟剤や消臭剤の化学物質で健康被害を起こす方々にとって、体調が悪いときにかかる医療機関で、医療関係者の着衣からの暴露はさらに体調を悪化させ、健康が脅かされる可能性があります。国から医療機関への依頼通達にとどまらず、区としても後押しが必要と考えます。対応をお聞きします。

 三つ目に、本定例会で議案として上程されている手話言語条例についてです。

 条例に基づき、出張所等での遠隔手話通訳の実施や、区役所での待機手話通訳者の時間拡充などが実現できることは、聞こえない人が円滑に行政サービスを利用する上で大変期待できる取組です。今後も手話通訳者を積極的に活用していただきたいと思います。

 一方で、手話通訳者の育成と確保を進めるためには、処遇改善が欠かせません。今回、区が手話通訳者へ支払う報酬が改善されると聞いていますが、例えばイベント等で英語から日本語への同時通訳者の報酬は、一般的に一時間当たり一万から一万五千円が相場となっているのに対して、手話通訳者が得られる報酬は三千円弱と、まだまだ不十分なことは明らかです。成り手不足の解消のためにも、手話通訳者を専門職として扱い、今後の処遇改善の道筋を立てていくべきと考えますが、区の見解をお聞きします。

 先日、原宿で期間限定でオープンしたみるカフェを訪れました。二〇二五年に東京都で開催される耳が聞こえない人のスポーツの祭典、デフリンピックの関連取組として、このカフェではデジタル技術を活用して言語を見える化し、聞こえる聞こえないにかかわらず、誰もがつながることができることをコンセプトにしています。

 カフェは、場所柄なのか多くの若者であふれ、あちこちで手話会話が弾んで、皆さんとても楽しそうに過ごしていました。カフェのスタッフは全員手話が使えますが、聞こえるスタッフもいたのでお話を伺うと、スタッフミーティングは通訳者を入れて、手話と発話と半々くらいで行うそうです。込み入った内容になると、専門的な手話技術が必要なためだそうです。異なる母国語を持つ専門会議においては通訳者がサポートで入りますが、手話にも同じことが言えるように感じました。

 確かに接客も料理もしっかりしており、来客者は満足した様子で過ごされており、障害があっても工夫をすれば満足度の高いサービス提供ができると感じました。

 デフリンピックでは、区内の駒沢オリンピック公園でも、陸上、ハンドボール、バレーボールが開催されます。条例制定とデフリンピック開催を好機として、区民への障害理解の促進と手話言語を一つの文化として浸透させるため、イベント等で直接手話と触れ合える機会の創出が必要と考えます。区の見解をお聞きします。

 最後に、ヤングケアラー支援について質問します。

 来年度から、ヤングケアラーの支援策として、ヤングケアラー支援基盤強化事業が始まります。新設されるヤングケアラーコーディネーターが、ヤングケアラーの早期発見と、当事者、各関係機関への助言、相談を行うというものです。

 私は、障害のあるお子さんのケアに入ることが比較的多く、放課後デイを利用していても、下校してから保護者が仕事から帰宅するまでの隙間時間、ケアを行うのは同年代のきょうだいの役目になりがちな現場を多少なりとも知っております。また、高齢者介護においても支援の手が足りていないために、子どもや若者が動員されている状況にあります。

 しかし、このような状況に置かれている子どもや若者は、家族のためだからと受け入れているケースが多く、本人が改善の必要性に気づいていなかったり、苦しんでいても相談できなかったりするため、学校や地域でも気づかれにくくなっています。

 ここでお伝えしたいのは、公的な支援が既に入っている家庭に関しては、家族全体の状況に一番最初に気づけるのは、家庭に入り日常的に接している訪問系介護従事者、いわゆるヘルパーだということです。しかし、現場のヘルパーが利用者以外の情報を口外することは意外と高いハードルとなっています。

 全てのケアを管理するサービス提供責任者へ、気になる子どもの情報を共有する意識づけを行うことが非常に重要だと考えます。そこから、高齢者であれば介護支援専門員、障害者であれば相談支援専門員、親の精神疾患等に伴う困窮家庭であればケースワーカーへと共有されることで、早期発見の道筋の一つとなるのではないでしょうか。区の見解をお聞きします。

 以上で壇上からの質問を終わります。

◎子ども・若者部長 私からは、三点御答弁いたします。

 初めに、新BOPデリバリー弁当における調理食材等についてです。

 これまで一部の新BOP学童クラブでは、保護者が主体となり、小学校の長期休暇期間中における児童の昼食を民間のデリバリー弁当事業者により提供できる仕組みを導入してきました。次の冬休みからは、保護者の負担軽減等の観点から、これまで保護者が担ってきた弁当事業者との調整業務を区が担うこととし、先般公募により事業者を選定したところです。

 この公募では、極力、食品添加物を少なくすることや、弁当の量や質など児童にふさわしいものとなっていること等を仕様書に盛り込んでおり、選定した事業者からは、食品添加物の使用を抑えることや、現時点において、遺伝子組換えの食品を使用していないこと等を確認しております。

 弁当を注文するホームページ上では、メニューの主な材料やカロリー、アレルギー表示など、保護者がメニューの詳細を確認することができます。また、食材等の内容を含む不明点については、保護者が事業者に対して直接質問することができる問合せフォームを御案内する予定でございます。

 次に、食中毒の対策を含む衛生管理等についてです。

 新BOPで使用している安全対策マニュアルでは、食中毒予防の対策として、低温管理や殺菌などの手順を定めており、デリバリー弁当の取扱いにおいても、こうした手順に基づき対応することが基本となります。具体的には、保冷剤等を活用した適切な温度管理や、配付に携わる職員に手指消毒など基本的な衛生管理を徹底することで、食中毒をはじめとした事故の発生を予防してまいります。

 また、世田谷保健所とも連携し、事業者に対して衛生管理の徹底を求めることや、衛生面に関する対策の実施状況を定期的にヒアリングすることで、製造や配送等の過程において十分な対応が講じられているか確認するとともに、万一、食中毒が発生した場合には、迅速かつ的確に対応してまいります。

 引き続き、保護者の負担軽減を図りつつ、児童が安全においしく食べられる食の提供に向け取り組んでまいります。

 次に、ヤングケアラーの早期発見の仕組みと、家族全体を支える専門職の活用についてです。

 ヤングケアラーの支援におきましては、日頃から当事者、それからその家族と接点のある介護支援専門員や相談支援専門員、訪問介護員、ケースワーカー、学校の教員、児童館、青少年交流センターの職員などの現場の専門職が、まだ深刻な問題を抱える前から緩やかに見守りを続け、家族や本人の状況に変化があったときに、速やかに支援につながれる環境づくりが重要であると考えております。

 そのためには、各現場の専門職がヤングケアラーへの気づきの感度を上げ、本人や家族への接し方や、ヤングケアラー特有の課題、支援のつなぎ方等を把握しておく必要があります。

 区では、今年度中に世田谷区版ヤングケアラー支援マニュアルを作成し、関係機関に在籍する事業者や現場の専門職がヤングケアラー支援について理解を深め、必要な支援につなげられるよう普及啓発を行います。また、令和六年度より、ヤングケアラーコーディネーター業務を開始しますので、各現場の専門職がコーディネーターの相談、助言を受けられるよう、庁内の連絡会や研修等を通じて広くコーディネーター業務の周知を行い、ヤングケアラーの早期発見と早期支援の実現に向けて取り組んでまいります。

 以上です。

◎教育総合センター長 私からは、ほっとスクールのデリバリー弁当と緊急時の対応についてお答えをいたします。

 ほっとスクールに通室する児童生徒については、家庭からの弁当の持参をお願いしておりますけれども、弁当用意にかかる負担軽減のため、希望する家庭が民間事業者の弁当を注文できる仕組みを年度内に試行し、令和六年四月より実施するよう進めております。

 弁当業者の紹介に当たりましては、子どもたちに必要な栄養やカロリー、添加物が少ないなどに配慮し、児童課で選定した事業者などの情報を参考にしながら、子ども向けの弁当に実績のある事業者を選ぶとともに、保護者が複数の事業者の中から自由に選択ができるようにしていきたいと考えております。

 また、緊急時の対応につきましては、ほっとスクールでは危機管理マニュアルを作成し、食中毒やアレルギー対策について明記しており、食中毒の予防や連絡体制、アレルギー情報の事前把握など緊急時の対応に備えております。

 以上でございます。

◎世田谷保健所長 私からは、香り配慮啓発ポスターについての区の取組についてお答え申し上げます。

 世田谷保健所では、化学物質に頼り過ぎない生活を送るための情報を区民に周知するため、区立小学校、区内保育施設、図書館、まちづくりセンターなどでのチラシの配布や、区の広報掲示板での掲示、区政PRコーナーへの展示に加え、講演会の開催、動画配信、区ホームページやツイッターなど、様々な媒体を使用して情報を発信してまいりました。現在も多くの区民に周知するため、庁内関係所管と連携し、継続的に啓発を進めているところです。

 議員お話しのように、令和五年十月三十日の通知において、香りへの配慮に関する啓発ポスターについて、国から日本医師会に周知が依頼されております。本文書は、日本医師会から東京都医師会を経由し、世田谷区医師会、玉川医師会にも通知をされております。

 区は、引き続きホームページで、化学物質に頼り過ぎない生活を送るための情報を周知するとともに、両地区医師会に対して五省庁連名の香りへの配慮に関する啓発ポスターの周知について、重ねて要請してまいります。

 私からは以上です。

◎障害福祉部長 私からは、手話言語について二点御答弁申し上げます。

 まず、手話通訳者についてです。

 区では、手話講習会を実施して修了後の選考試験に合格した方を区の手話通訳者として登録しております。その報酬につきましては、報酬の額や交通費、キャンセルの取扱いなどが課題となっております。本定例会に御提案しております世田谷区手話言語条例におきまして、手話を使いやすい環境の整備等を進めるため、手話通訳者を手話という言語と文化を理解した上で、日本語を話す人とつなぐ専門家として評価し、今後、安定的に活動できるよう処遇改善を行うなど取組を進めてまいります。

 続きまして、条例、デフリンピックを契機とした手話言語の理解についてです。

 本定例会に御提案しております条例を契機として、手話言語の理解を進めるため、令和六年度には「区のおしらせ」の定期的な手話イラスト掲載や手話に関する啓発イベント、こちらを実施したいというふうに考えてございます。

 また、令和七年度開催のデフリンピック、ろう者のためのスポーツの祭典ですけれども、こちらも契機と捉えまして、手話言語を普及していくための啓発を実施したいというふうに考えてございます。

 手話を使う方は、日本語の文字を理解する際に視覚から得た文字情報を頭の中で手話に変換して言語として理解することや、人と話すときに肩を叩いて目を合わせてから会話を始める、こういったような文化がございます。こうした手話が言葉や文化であるということを区民に実感して理解していただくには時間がかかるというふうに考えております。

 啓発事業の実施に当たりましては、参加者が主体的に考えて体験することにより、手話に関する理解が深められるよう工夫するなど、多様な区民が共に暮らす地域共生社会の実現に向けて今後とも取り組んでまいります。

 以上です。

 関口江利子 議員 ヤングケアラーコーディネータ事業を進める上で、ぜひ留意をしていただきたいことがあります。先日、区が主催の研修会に参加した中でケース検討が行われ、相談支援専門員から障害事例が共有されました。その当事者には子どもがおり、ヤングケアラーになっている可能性が高いと感じましたが、参加者の専門家、障害当事者の中からヤングケアラー支援に言及した方は一人もいらっしゃいませんでした。これは誰が悪いということではなく、参加者の中に子ども支援機関がいなかったため、それぞれが自分の専門分野で真面目に議論をした当然の結果と言えます。

 多機関連携が非常に重要なこの事業は、各専門職に対していかに意識づけを行っていくかが大きな鍵です。それを引き出す役割のコーディネーターの育成については、また別の機会で取り上げたいと思います。

 また、香害に関しては、直近五年間で世田谷保健所に寄せられた香りに関する相談は百十六件です。そのうち六十九件については、世田谷区が独自に作成した香りのマナー啓発チラシに関するものとのことなので、チラシが一定の効果を果たしていることは評価したいと思います。

 一方、消費生活センターへ寄せられた相談は五年間で二十九件、これに関しては、消費生活センターから香りの健康被害に関する情報提供を行ったことがないことを確認し、来年三月のせたがや消費生活センターだよりにて周知を行うことになりました。これにより寄せられる相談が増加する可能性がありますので、各関係機関が互いに情報共有を行いながら、丁寧な対応をお願いしたいと思います。