区議会 第3回定例会 決算特別委員会 おのみずきが総括質疑を行いました。質問答弁全文をご覧いただけます。

議会の様子は↓こちらからご覧いただけます。

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生活者ネットワークの総括質疑を始めます。はじめに、困難な問題を抱える女性への支援についてです。

 まず、令和5年度決算関係書類より、国庫支出金の「困難な問題を抱える女性支援推進等事業」147万8,000円について、具体的な使途を伺います。

答弁

(生活文化政策部長)お話の、国の「困難な問題を抱える女性支援推進等事業費」は、現在、都道府県や市町村に対し区分として20種類の支援事業等がございます。昨年度区では、「婦人相談所等職員への専門研修事業」と「婦人相談員等専門職採用促進事業」において147万8千円の国庫補助金の交付を受けています。

 ご質問の使途についてですが、9万5千円につきましては、総合支所の女性相談支援員を対象とした事例検討会を開催した際、DV相談等に精通した専門家を講師としてお招きした謝礼の1/2の額となっており、昨年度は7回開催いたしました。

 次に、138万3千円につきましては、人権・男女共同参画課に配置しているDV相談支援専門員2名の人件費の1/2の額となっております。

 いずれも、女性支援新法施行前から実施している事業ですね。厚生労働省は、ここ数年新法を見据え、困難な問題を抱える女性への支援に係る事業予算を拡充してきました。特に「女性相談支援員活動強化事業」では、今年度26億円の予算を付け、女性相談支援員の処遇改善のための手当や加算を設けています。当区ではまだ利用がないと聞いていますが、こうした制度も含め、国や都の補助事業を積極的に活用しながら、ソーシャルワークの専門性を以て支援を担う女性相談支援員の計画的な配置拡充、身分保障、待遇改善を鋭意進めてください。

 まずは試行的に一人でも女性相談支援員を専門職として配置し、当事者中心の中長期的な支援に携われるようにすべきと考えますが、区の見解を伺います。

答弁

(生活文化政策部長)各総合支所子ども家庭支援課に配置された21名の女性相談支援員の内訳は、常勤15名会計年度任用職員6名となっております。

 会計年度任用職員の任用にあたっては、「世田谷区生活支援専門員設置要綱」に基づき、社会福祉士の資格を有する者またはそれに準ずる知識と能力を有すると所属長が認める者とし、女性相談及び母子父子自立支援員としての役割を担い、現在も専門的な知識と経験を有する職として配置しています。

 当該会計年度任用職員の安定的確保のための待遇改善については、地方公務員法の規定により一年度以内の任期を定めて任用される職であるため、会計年度任用職員には昇任制度や報酬加算を導入することは、現時点では困難な状況です。とはいえ、専門的知識と経験をあわせもった職を計画的に配置することは、委員おっしゃる通り女性相談の支援の質の担保につながると考えますので、引き続き課題として検討してまいります。

 今後の課題として、女性相談支援員の専任での配置も必要です。当区では女性相談支援員のほぼ全員が他業務と兼務しており、窓口対応の約8割は別の相談に追われているとも聞きます。1人日の2割を女性相談の業務に従事すると仮定すると、専任換算での実質的な配置人数は4.2人、92万人の人口を抱える当区において到底十分とは言えません。早急な改善を要望します。

 これに関連して、会計年度任用職員に対する区の考えについて伺います。

 令和5年度一般会計歳出決算のうち、職員費の執行額約552億円のうち、会計年度任用職員の人件費は約122億円、22.1%です。昨年度の職員数は3月時点で常勤職員5,289人、会計年度任用職員5,192人とほぼ同数ですが、人件費では総額ベースで約3.5倍もの差があることに、改めて大変驚きました。会計年度任用職員の中でも職種や勤務形態の違いがあるとはいえ、これほどの人がいかに安く使われているか一目瞭然です。

 区の会計年度任用職員は8割以上が女性であることから、その影響は区が公表している職員の男女間賃金格差にも如実に表れており、公務非正規労働はジェンダーギャップ解消にあたって区が真正面から取り組まなければならない問題であるといえます。区政運営を支える多彩な職場で、経験や専門性を活かして継続的に働く会計年度任用職員の任用にかかる取り扱いにつき、区はどのように考えているのか改めて伺います。

答弁

(総務部長)区では、任用条件として雇用の更新に年限を定めない会計年度任用職員を活用し、一定の質の確保と迅速なサービス提供を両立しながら、多様化する区民ニーズに応えています。

 一方で、会計年度職員の割合が多く、任用管理業務などで常勤職員に負荷も生じていることから、いわゆる「退職不補充」による定数管理を基本として、常勤と会計年度職員の人数バランスの計画的な改善にも取り組んでいます。

 今後、常勤職員は、DX推進など業務の効率化を図りながら、区民に寄り添う相談支援や、まちづくりの合意形成などに振り向けるとともに、会計年度職員は、現在は女性が多い状況ですが、専門性の高い職種を中心に活用することで、行政需要の多様化等に対応し、公務の能率的かつ適正な運営を推進してまいります。

 

 専門性の高い職種を中心に会計年度任用職員を活用していくと言うのであれば、抜本的な制度見直しの可能性も含め、処遇改善や当然の権利保障に真剣に取り組んでください。定数管理が注目されますが、そこにいるのは人です。会計年度任用職員を含めたディーセントワークの実現を求めます。この問題は、行政機関が生み出した構造としての性差別の最たるものだと思いますので、引き続き取り上げてまいります。

 次に、気候変動緩和策・適応策の一層の推進に向けて、順次伺います。

 IPCC第6次評価報告書(AR6)によると、気候変動緩和策の取組は進んでいるものの、世界のGHG排出量は依然として増加しており、現状の各国NDCの目標では、パリ協定の1.5℃目標どころか、2.0℃目標の達成すら難しいとされています。もはや1.5℃目標のオーバーシュートが避けられない状況になりつつある中、世界全体で気候危機に対処すべく一層の取組み加速が必要です。

 しかし、世界の気候資金フローの実績は、パリ協定の目標達成に必要な投資額と大きなギャップがあるのが現状です。AR6は『資金フローは、全てのセクターや地域において、緩和目標の達成に必要な水準に達していない』とし、世界的に緩和・適応ともに資金不足が指摘されています。

 翻って区では、2030年を計画目標年とする新たな「世田谷区地球温暖化対策地域推進計画」が昨年度よりスタートしました。野心的な排出削減目標を掲げ、各事業領域・所管にまたがる様々な取組み方針が示されていますが、果たして計画初年度は、掲げられた各種施策に対して十分な資金は投入されたのでしょうか。令和5年度の区の気候変動対策関連事業費は、総額でどの程度の決算となったのか、伺います。

答弁

(環境政策部長)当該計画には、緩和策としてエネルギー施策、区民や事業者に向けた普及啓発施策に加え、廃棄物抑制や資源循環、交通など脱炭素都市づくり、緑化の推進などの政策を、また、適応策として水害対策、熱中症対策などを盛り込んでいる。

 このうち本計画で区独自の温室効果ガス削減目標に直接関連する政策は、エネルギー対策や脱炭素の普及啓発などであり、これらの事業規模は令和5年度決算額で約1億5600万円、人件費等も含めると約2憶6700万円である。その他の廃棄物部門や緑化部門、交通部門等の政策は、本来の政策に加えて温暖化対策の側面も有することから計画に位置付けたものであり、本計画の事業規模に含めることは必ずしも適当ではないが、合計約120億円の決算額である。

 つまり、主たる所管である環境政策部の実施事業以外の、他所管の事務事業の気候変動対策に資する部分に関しては、縦割り行政の弊害もあり、その具体的な規模や決算金額を詳細に把握できていないということですね。

 次に、施策のモニタリング評価についてです。区の気候変動対策は、温対計画に基づき推進されています。しかし、当該計画は、特に進捗管理に関していくつか問題を抱えているように思います。

 まず、計画に書かれた各種施策、施策の柱ごとに設定された進捗管理指標、及びCO2排出削減目標が、明確に紐づけられていません。そもそも、区独自の対策を通じた排出削減目標や進捗管理指標は、実質的にそのほとんどが環境政策部に課されており、その他の事業所管に関しては指標が無い、あっても具体的にどの程度削減目標に貢献する必要があるのか明示されていない、という状況です。これではいくら計画上は全庁をあげた気候変動対策の推進といっても、環境政策部以外の所管に排出削減のモチベーションは生まれません。

 また、排出削減効果は、オール東京62市町村共同事業「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」が算定・公表する区市町村別のGHG排出量等の推移によって把握するとしていますが、当該データは算定対象が限定的です。なお、現状報告先の環境審議会に対し、初年度の進捗報告がされた形跡は見当たりません。

 さらに、先ほど確認した通り、計画に記載された各種施策と予算は紐づけられておらず、資金を含めた取組み状況のモニタリング評価が容易でない点も看過できません。こうした諸課題を孕む中で、区は温対計画及び各種気候変動対策の進捗管理をどのように行っていくのか、見解を伺います。

答弁

(環境政策部長)計画に数値目標を掲げている以上、その進捗を把握し必要に応じて見直しを行うことは当然である。

 しかしながら本計画は、国の温暖化対策計画の目標値に更に上積みした目標をまず設定し、その目標に寄与し得る取組みを網羅的に記載するという手法で作られており、必ずしも個別の政策の積み上げで目標が設定されてはおらず、この中から特に有効な政策を積み上げて推進する必要がある。

 区における温室効果ガス排出量の内訳のトップが家庭部門からの排出によるものであることから、当面2030年度の計画目標達成に向け、家庭部門の脱炭素化を推進する取組みを中心に政策ロードマップを作成しているところである。具体的には、個人間電力取引の実証実験など成城地区における「脱炭素地域づくり」の取組みや、家庭の太陽光発電の導入支援、再生可能エネルギー電力の利用促進などを盛り込む予定であるが、今後、これらの行動量や成果指標を含めたロードマップを報告、公表するとともに、これに基づく進捗管理を行っていく。

 計画だけでなく、実施、モニタリング、評価、報告の責任を庁内全体に割り当てていくことで、透明性と説明責任が生まれ、掲げられた目標とのギャップも明らかになります。ぜひ、Climate Budgetingと併せて気候変動対策の主流化を進めてください。

 また、今のご答弁は緩和策に関するものでしたが、適応策に関しても、単に個別の既存政策の延長線上に位置付けるだけでは全く不十分です。AR6は、もはや気候変動が既に人間と自然のシステムを破壊していることは疑う余地がなく、今後10年の選択と行動が、気候レジリエントな社会をどの程度実現しうるか決めると示唆しています。

 しかし、地域気候変動適応計画を包含する区の温対計画では、適応策に関する取組みがとても弱いように思います。適応策の分野は多岐にわたりますが、例えば環境省が公表している「気候変動影響評価報告書」によると、農業への影響は2015年の前回評価時から重大性・緊急性ともに深刻度が上がっています。実際、この夏は過去一番、酷暑による農作物への影響を感じました。しかし、区の計画では農業分野の適応策に一切言及がありません。せたがやそだちの野菜が死に絶えてもよいのでしょうか?

 自治体の中では最も早い2008年から気候変動適応策に取り組んできた埼玉県では、各分野の短期的・中長期的な気候変動の影響評価を行い、その結果に基づく既存施策の点検と今後の取組みの方向性を示しています。適応策の重要性がますます強まる中、区も科学的知見に基づく影響評価を行い、各事業分野への気候変動リスクを把握し、適応目標をしっかり立てて取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

答弁

(環境政策部長)気候変動対策の適応策は、区民の生命を守るために基礎自治体が取り組むべき責務であり、すでに地球温暖化の影響が顕在化している現在、その重要性がさらに高まっており、温暖化を止める緩和策と表裏をなす取組みとして、一体的に進めなければならない。

 すでに豪雨対策と熱中症対策を計画の適応策に位置付けているが、お話しの区内農業への影響をはじめ、植生等生物多様性へ影響、農業・水産業の激変に伴う食品供給や価格等への影響、エネルギー需要の変化に伴う生活や産業への影響など、気候変動の影響は多岐に及び区民生活に大きなリスクをもたらす。これらを一つひとつ分析し、庁内の推進体制である気候危機対策会議において適切に伝えることで、各部門における適応策の展開を促すとともに、危機意識を背景とした緩和策の推進にもつなげていく。

 

 適応策の推進において重要なM&E(Monitoring & Evaluation)の研究にも着手し、全庁で危機感を持って取り組んでください。また、都内で初めて「地域気候変動適応センター」を設置した江戸川区のように、適応策を力強く推進する組織体制の在り方についても、真剣に検討いただくよう強く要望します。

 最後に、情報開示について一つ提案します。2017年に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の最終報告書が公表されて以降、日本でもESG投資の拡大とともに大企業を中心に非財務情報開示の流れが一気に加速しました。いまや気候関連のみならず、自然関連財務情報の開示が求められるようになっています。つまり、企業が投資家に対して財務情報を開示する際に、自社の事業活動が自然環境や生物多様性とどのように関連し、どのようなリスクや機会を与えるかを評価・報告することが推奨されているのです。

 こうした情報開示の国際潮流は都市や自治体にも広がっています。一例として、イギリスのNGOであるCDPと、国際的な都市間連携ネットワークのICLEIが共同で運営する統一報告システム「CDP-ICLEI Track」を紹介します。こちらはWEB上の質問書に回答する形で報告データを提出すると、それに対してスコアリングとフィードバックが行われます。情報開示プロセスを通じて、世界の環境報告標準とのギャップを理解し、今後の改善点・分野を確認したり、データの質を改善につなげることができる他、投資家や企業との対話・協働が促進されることも期待できます。また、多様なアクターの連携によって地域の脱炭素を進める重要性が注目される中、区域のステークホルダーに最も近い行政自治体がリーダーシップを取り、透明性の担保と説明責任を果たしていくことは極めて重要です。

 23区も他の市区町村同様にCDPへの開示が可能で、実際に新宿区、足立区、板橋区がCDPを通じた情報開示に取り組んでいます。こうした既存システムも有効に活用しながら、区も積極的に情報開示を進めるとともに、グローバルネットワークにも参加していくことで、不断に取組みのアップデートを図るべきと考えますが、見解を伺います。

答弁

(環境政策部長)気候変動対策を進めるためには、行政として最大限の政策を展開することはもとより、住民や事業者の意識変容、行動変容を促すこととともに、脱炭素を目指す企業活動や環境ビジネスを志向する企業との連携が重要だ。

 そのためには、世田谷区の取組みを第三者の評価も含め積極的に開示することにより、区民の参加意識や、企業、投資家の関与を誘発していくことが重要と考える。どのような情報開示が有効か、まずは研究し効果の高い情報開示手法を確立していく。

 第1回グローバルストックテイクの結果を踏まえ、日本を含む世界各国がさらに目標を引き上げた「2035年目標」を設定する次期NDCの提出に向けて検討を進めています。区もこうした国際的努力の一翼を担う都市としての自覚をもって取り組んでください。

 以上で終わります。