令和8年3月 定例会02月20日
関口江利子 議員 通告に従い質問を始めます。
まず初めに、高次脳機能障害のある人への支援についてです。
昨年十二月に高次脳機能障害者支援法が成立、四月に施行されます。思わぬ事故や病気等で脳を損傷し、記憶や言語、社会的行動に障害を負った人の多くがまだ若く、その後の何十年という人生を支えるためにできた悲願の議員立法です。
世田谷区における高次脳機能障害の支援は、一九八九年に開設した区立総合福祉センターにて始まりました。国のモデル事業などを受けながら、同一建物内に相談機能と訓練プログラム等を整備したことで、それぞれの専門職が双方向に連携を取り、当事者の困り感を迅速に支援につなげる環境が整っていました。支援者と当事者の深い信頼関係と当事者同士の交流は、それまで健康だった人が、ある日突然障害と向き合いながら生きることになった戸惑い、不安、いら立ちを受け止める居場所としても重要な役割を果たしてきました。
しかし、二〇一九年に区立総合福祉センターは廃止、相談事業は区立保健センター、訓練は東京リハビリテーションセンター世田谷と別々の建物に移行され、支援体制は物理的に分断されてしまいました。新法の基本理念では、一人一人発現が異なる当事者の困難さに対して、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する機関が緊密な連携を取って切れ目なく支援を行うことが示されています。当事者、当事者家族の声を聞き、関係機関の連携体制が強化されることに大きな期待をいたします。今後、国、東京都から具体施策が示されますが、既存施策の点検や多機関連携に向けての準備など今できることに着手すべきです。区の姿勢を伺います。
高次脳機能障害は外見からは分かりにくく、診断ができる医師も少ないため正確な人数の把握はできていません。困難に見合った適切な支援を行うために、実態を把握することは不可欠です。区の見解を伺います。
また、診断の難しさから、高次脳機能障害の自覚がないまま困り感を抱えている当事者もいます。例えばカスタマーハラスメント扱いされてしまう人や子どもへの虐待など、高次脳機能障害に起因すると分かれば支援の幅が広がる可能性があります。障害部局以外でも理解を広げ、対応力を上げることが必要と考えます。区の認識を伺います。
脳梗塞などの脳血管疾患の場合、発症時四十歳を超えていると、原則介護保険サービスの利用となります。四十代で高齢者向けサービスのみを利用することは現実的ではなく、障害福祉サービスを組み合わせた併用プランが非常に重要です。しかし、高次脳機能障害の特性を理解し、就労等のライフプランに寄り添えるケアマネジャーは不足しています。ケアマネジャーの資質向上を促し、併用プランを作成できる人材を育成する取組を求めます。見解を伺います。
次に、学校現場における安全な職場環境の整備についてです。
当区立中学校で生徒から非常勤講師に対し、臭い、離婚している、ガイジ――これは障害児のことだそうです――など、不適切な発言が長期間にわたり繰り返され、教員が適応障害で休職に追い込まれる事案が発生しました。また、別の中学校では、生徒がタブレットを使って授業中に卑猥な画像を大型モニターに転送する悪質な授業妨害も起きています。
文科省の調査によると、全国国公私立小中学校における暴力行為の発生件数は十二万三千三十六件。そのうち、対教師暴力は一万五千百四十八件で、全体の約一二%です。しかし、本調査の暴力行為の定義は、故意に目に見える物理的な力を加える行為とされており、さきの当区中学校に見られるような言葉の暴力、授業妨害はカウントされておらず、含めれば相当な数に上ることが想像できます。
熊本市教育委員会は、児童生徒から教員への暴力暴言行為を深刻に受け止め、問題行動への対応の強化と教職員への支援を重点支援策として講じることを決定しました。同市の小中校長会アンケートでは、小学二年の男子児童から、死ね、消えろ、いなくなれと言われ続けた担任が精神的に追い詰められたなど暴言の事例もあります。
昨年の第四回定例会にて他会派から、子どもから教員への暴力発生に関する質問に対し、区教委は、子ども同士の仲裁に入った際に起きたものであり、教師を狙った暴力は起きていないとの認識を示されています。暴言も教員を脅かす暴力的行為だと認識している熊本市教委との違いは明白です。
教員から児童生徒への体罰等の不適切指導は厳しく規制が進んできました。一方で、子どもから教員への問題行動はうまく対応することが教員の力量として、自身で解決せざるを得ない職場環境になっていないでしょうか。心理的暴力も含めた子どもから教員への暴力の有無について、区教委の認識を伺います。また、トラブルが発生した際には、学校として当該教員を一人にしない、共に問題改善を図る体制が必要と考えます。区の見解を伺います。
今回の事例でもう一つ指摘したいのは、教員が非常勤講師だったことです。雇用形態の違いによる教員間の階級意識が些細な言動となって現れ、感性豊かな子どもの観察力が非常勤講師を立場の弱い先生と認識し、不適切な言動が収まらなかった可能性は否定できないと考えます。子どもへの影響と教員の安全な労働環境に鑑み、教員間の階級意識を生み出さない学校環境づくりを強く求めます。見解を伺います。
最後に、災害に対応可能な清掃・リサイクル事業の在り方についてです。
首都直下地震等が発生した場合、本区の約七〇%で震度六強の揺れが想定されています。生活再建と衛生保持のため、発災後の迅速なごみ収集は極めて重要です。特に懸念されるのがし尿ごみです。国は下水道の安全が確認できるまで、水洗トイレの使用を控えるよう求めており、一人一日五回、三日から七日分の携帯トイレを備蓄することを推奨しています。これを本区の人口に換算すれば、最大三千三百万回分を超える膨大な量のし尿が排出されます。下水道の破損の想定は一〇から三〇%と聞いていますので、段階的に水洗トイレの使用が進むとはいえ、看過できない量です。
しかし、現行の震災復興マニュアルは、発災後一か月程度までに道路や施設の復旧状況に合わせて、段階的に収集運搬を実施すると記すにとどまっています。災害時職員行動マニュアルも、直営職員の参集人数と収集開始時期が示されるにとどまり、大きな不安を拭えません。
能登半島地震の教訓から、携帯トイレのし尿ごみは圧縮式の収集車では内容物が飛散するおそれがあり、平積みのダンプ車が不可欠であることが明らかになりました。本区のマニュアルでは、こうした車両確保や人的配置の具体的な想定が見えてきません。
ここで、杉並区が災害時のごみ収集についてシミュレーションした資料を紹介します。直営職員や雇上会社の参集率を週単位でシミュレーションし、運搬に必要なダンプ車の運用にも踏み込んでいます。私は、世田谷区女性防災コーディネーターや避難所運営委員として活動していますが、現場の混乱を避けるには、こうした詳細なタイムラインをキーパーソンが知っておくことが必要だと考えます。本区においても、具体的なタイムラインによるシミュレーションを実施し、実効性の高い行動計画を作成すべきです。区の見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
◎副区長 私からは、災害に対応可能な清掃・リサイクル事業の在り方について御答弁します。
大規模災害の際には、道路や集積所の状況、人員や車両等機材の確保状況などを考慮しながら、避難生活や復興を支えるための収集を検討してまいりますが、公衆衛生上の観点から、まずは生ごみや使用済携帯トイレなどに限定した収集からスタートし、段階的に範囲を広げることを想定しております。時系列に応じたごみの収集体制については、地域防災計画の一部である災害時職員行動マニュアルや震災復興マニュアルに記載しているほか、区全体で毎年度実施している図上訓練において、年度ごとに異なる設定によるシミュレーションを行い、その検証を行っております。
こうした訓練の成果も踏まえつつ、お話の杉並の事例等も参考に、人員や想定されるごみ量、時間軸に沿った行動などをシミュレーションし、災害時のごみ収集計画がより実践的で精緻なものとなるよう、区全体での各マニュアルの改定に併せて検討してまいります。
以上でございます。
◎障害福祉部長 私からは、高次脳機能障害の方への支援について順次御答弁いたします。
まず、高次脳機能障害者支援法の施行に当たっての区の姿勢についてです。高次脳機能障害は、脳の損傷により言語や記憶などの機能に障害が生じ、機能回復までに時間を要することや、仕事や生活面における発症前との違いによる葛藤など、障害特性に配慮したきめ細かい支援を必要とする障害です。
高次脳機能障害者支援法では、障害者本人及び家族等への支援に関する施策や、地域支援体制の充実に関する内容が盛り込まれました。現在、区では、令和九年度からの高次脳機能障害者支援の本格実施に向け、梅ヶ丘拠点の連携強化、保健センターの相談支援の充実、地域における相談支援の強化を中心に、試行実施に取り組んでいます。
本格実施に向けた内容は、支援法に示された施策の方向性とおおむね合致していると考えており、今後、国や都から示される支援法に関する通知や当事者の声なども踏まえ、医療、福祉、教育など庁内や関係機関との連携を図りながら、高次脳機能障害者の自立や社会参加のための切れ目のない支援の充実に向けて取り組んでまいります。
次に、高次脳機能障害者の数の実態把握についてです。
高次脳機能障害は、症状に応じて、身体、精神等の各障害者手帳にまたがっており、また、手帳を取得せずに介護保険等を利用されている方や、発症後に障害であると認識できず潜在化している方もおり、全体的な人数の把握が困難な状況です。令和三年度に保健センターにおいて、関係機関等を対象に、高次脳機能障害者の相談支援体制等に関する調査研究を実施し、支援課題や対応方法の検討を行ったほか、次期インクルージョンプラン策定に向けた障害者(児)実態調査において、高次脳機能障害者の支援ニーズ等の把握に努めています。
実態把握については、今後の支援の拡充を図る上で有益な根拠となることから、支援法で規定された国における実態調査の動向を注視するとともに、保健センターと連携して、その手法について協議してまいります。
次に、高次脳障害の理解を広げること及びケアマネジャー等の質の向上についてです。
高次脳機能障害は、外見からは分かりにくい見えない障害とも言われ、当事者本人も障害の自覚がないまま、生活に困り感を抱えているケースが少なくありません。高次脳機能障害の方のニーズに合わせた適切な支援につなげるためには、当事者や家族への普及啓発とともに、その障害特性を理解した上で、支援機関が相互に連携して、相談を担える人材育成が重要であると認識しております。
これまで保健センターにおいて、福祉人材育成・研修センターと連携し、保健福祉センター職員やケアマネジャー等の多様な分野の支援者を対象とした研修等を開催するほか、経験が少ない支援者に対する助言、提案等の後方支援を通じ、対応力の向上を図っています。
今後さらに支援を必要とする方が適切なサービスにつながるよう保健センター等との連携を強化し、高次脳機能障害の普及啓発や理解促進を図るとともに、ケアマネジャー向け研修の充実等の支援者側の質の向上にも取り組んでまいります。
以上です。
◎学校教育部長 私から、二点御答弁いたします。
まず、子どもから教員への暴力の有無における教育委員会の認識及び共に改善していく体制づくりについてです。
児童生徒間で様々なトラブルが生じるように、その対象が教員となり、学校を通し、教員からの相談や学校として対応を求められる事例があることは認識しております。その中には、教員が子どもたちの言動によって深く傷つく場合もありますが、そのような状況においては、教員個人の問題と捉えるのではなく、学年や校内で連携し、助言や支援を行いながら組織として指導に当たることが重要であると考えております。
学級経営は、担任だけで完結するものではなく、多くの教職員の力が必要です。学級で生じた問題に組織的に対応することで、教職員一人一人の指導力を高め、学校全体としての力量向上につながると考えております。これらの点について、校長会において改めて指導するとともに、子どもにとっても、教職員にとっても安全安心な学校づくりが進むよう、教育委員会としても引き続き支援してまいります。
次に、学校の教職員間の環境づくりについて御答弁いたします。
学校には、校長、副校長をはじめ、様々な職層の教員と多様な職種の職員が在籍しており、互いに協力し合いながら学校運営を行っております。それぞれ職層や職種の違いはあるものの、全ての教職員がそれぞれの役割を担い、組織として力を尽くし、子どもたちの指導に当たっております。
学校は、子どもたちの人権感覚の醸成に大きな影響を与える場であり、教職員が相互に尊重し合う姿を子どもたちに示すことは、教育上も極めて重要であると認識しております。そのため、子どもたちの前でも教職員同士の振る舞いについては十分に注意を払って対応しております。
議員御指摘のような事例も確認されていることから、教育委員会としましても、この点について学校に対して改めて指導を行うとともに、講師を含めた教職員に相談窓口や相談方法について丁寧に周知するなど、適正な労働環境の整備に努めてまいります。
私からは以上でございます。
◆関口江利子 議員 災害時のごみ収集タイムラインを作成するとの御答弁をいただいたと認識しております。人口七十万人の杉並区では、発災七十二時間以内に参集できる直営職員はおよそ六割、必要な人数は九十名と試算し、逆算して直営職員の必要人数を百五十名としました。当区においても、熟議を重ねて必要な機能はきちんと残していただくように求めたいと思います。
また、高次脳機能障害については、予算特別委員会のほうで続きをやりたいと……

