第2回定例会 一般質問と答弁 2026.06.11 おのみずき

おのみずき 議員 性と生殖に関する健康と権利、いわゆるSRHRとは、誰もが自分の体や性について必要な情報を得て、自ら選択し、その選択を支える医療や支援を受けながら健康に生きるための基本的人権です。

 しかし、現実には、その保障は今なお十分とは言えません。そこで、今春、フランスとオランダを視察し、SRHRを保障する社会制度や実践について学んできました。本日はその知見も踏まえ、SRHRを保障するまちづくりに向けて、教育、相談支援、計画上の位置づけの三点について順次質問します。

 初めに、包括的性教育の制度化について伺います。

 視察先では、国際セクシュアリティ教育ガイダンスに基づき、幼少期から年齢や発達段階に応じて継続的に学ぶことが制度として位置づけられ、自分の体や感情の理解、人との関係性、同意や境界線、性の多様性などについて、単発ではなく、繰り返し学ぶことが重視されていました。

 一方、世田谷区では、学習指導要領に基づく授業に加え、中学三年生を対象とした出張リプロダクティブ・ヘルス/ライツ講座を一昨年度より実施し、今年度は全三十校での実施に拡充されました。

 講座後に配布される、こちらの「こころとからだのトリセツBOOK」には、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、子どもの権利、性的同意、バウンダリー、デートDV、SOGIE、妊娠、避妊、中絶、性感染症、相談先など重要なテーマが盛り込まれており、区独自の取組として評価しております。

 しかし、子どもの学ぶ権利の保障という観点から見ると、依然として課題があります。現在の区の取組は、中学三年生全員が講座を受けられる点では前進です。しかし、未就学期から小学校、中学校へと各学年で何をどこまで学ぶのかという系統立てた指導方針は、区として明示されておらず、学習機会も学校ごとの取組に依存しています。

 他自治体では、宮崎市が、幼少期から小中学校を見通した手引や系統表を整備し、モデル授業を経て、来年度より全校展開へと進もうとしています。世田谷区には既に教材も実践もあります。次に必要なのは、これを点の個別事業から線の教育保障へと進めることです。

 そこで、包括的性教育を単発の講座や周知啓発にとどめず、授業時数を確保し、年齢や発達段階に応じて継続的、反復的に学べるものとして保障していく意思があるのか、区教委の見解を伺います。

 制度化に向けて、障害のある子ども・若者への性教育と研修についても伺います。

 私は今回、子ども・若者が利用し得る区の相談窓口や支援機関等を対象に、性に関する悩みや性被害等の実態と支援上の課題を把握するための独自調査を行いました。全体統計ではありませんが、現時点で複数領域にまたがる三十七機関から回答を得ており、現場で何が起き、何が不足しているのかを示す重要な結果が見えてきました。

 二〇二四年十月の私の質疑に対し、区教委は特別支援学級における性教育推進を検討すると答弁されました。しかし、その後も、相談現場では、障害のある子ども・若者に関する性の相談や関連事案が約半数の窓口で把握されており、月経管理、身体境界や同意の理解、助けの求め方、SNS被害、性被害など、内容は深刻かつ多様です。加えて、現場では、障害特性に応じた教材や相談支援の不足も指摘されています。

 こうした実態を踏まえれば、検討段階にとどまらず、早急に具体化すべきです。障害のある児童生徒への性教育に関する検討は、その後どこまで進んだのか伺います。

 あわせて、昨年度は青少年交流センターのユースワーカー向けのSRHR研修が実施された一方、私が行った独自調査では、性に関する相談対応の標準フローやマニュアル等が「ある」、「一部ある」とした窓口等は半数にとどまり、対応が個人に依存している実態もうかがわれました。現場認識として、教職員・支援者向け研修や性暴力被害への初期対応知識の不足も指摘されています。

 障害のある子ども・若者に関わる支援者も含め、単発ではなく仕組みとしてSRHRに関する研修を整備すべきと考えますが、区の見解を伺います。

 次に、子ども・若者の性の健康を支える相談支援の在り方について伺います。

 学校性教育や出張講座等を通じて学んだことを実際の行動に結びつけるためには、困ったときに安心して相談でき、必要な支援につながれる環境整備が不可欠です。

 さきの独自調査では、八割以上の相談窓口等で、過去一年間に、性に関する悩みや性被害等の相談が把握されており、相談者は本人が最も多く、年齢層は、十八歳から二十四歳に次いで、中学生の相談も多くあることが分かりました。

 相談は複数の窓口に少数ずつ分散している傾向が見られた一方、中には二十件以上の相談を受けている機関もありました。これは、性に関する相談ニーズが存在する一方、相談先の周知や支援の標準化が不十分で、専門相談や医療につながりにくい構造があることの示唆であると考えます。

 実際に区が実施したリプロ講座後のアンケート調査では、さらに知りたい内容として、二割弱の生徒が「困ったときの相談先」を挙げた一方、一割前後の生徒は、性や人との関係性で困ったことがあっても「何もしない」と回答しています。知識不足に加え、学んだ先に、どこで相談できるか分からず、適切な支援につながれていない子ども・若者が一定数いることがうかがわれます。

 区は、現行の健康せたがやプラン(第三次)において、「からだやこころの変化や不調、性の悩み相談や支援に向けた環境整備」を掲げており、区政上の課題認識は既に共有されています。

 しかし、教育によって知識を得た子ども・若者が、困ったときに相談でき、必要な支援につながる仕組みは、依然として十分に整っているとは言えません。今必要なのは、その課題認識を具体策として実装することです。

 そこで、若者が気軽に性や体、心の悩みを相談でき、必要に応じて専門相談や医療につながれるユースフレンドリーな相談支援の仕組みとして、世田谷版ユースクリニックの導入を提案します。

 近年は、性教育の不足や若者の相談しづらさを背景に、国内でもユースクリニック、ユースヘルスケアと呼ばれる取組が広がっています。

 ユースクリニックは、運営主体や実施形態、機能が多様で、子ども・若者支援や思春期保健事業の一環として自治体が担う例も増えています。

 例えば、さいたま市では、書籍等の展示、専門家相談、生理用品や避妊具の使用方法のレクチャー等を含むイベント型のユースクリニックを実施しており、川越市も月に一回、拠点型のユースクリニック、若者のための街の保健室を行っています。

 重要なのは名称ではなく、若者が早期段階で相談でき、必要な支援につながれる仕組みを地域の実情に応じて整えることです。

 以上を踏まえ、二点伺います。

 第一に、区立中学校全三十校で実施している出張リプロダクティブ・ヘルス/ライツ講座に併せて、専門職が相談・情報提供を行う出張型のユースヘルスケア支援を区として試行実施できないか伺います。

 第二に、青少年交流センター等の既存拠点において、性に関する相談内容の分析、匿名ニーズ把握、医療や専門相談への接続可能性を検証し、今後の拠点型支援の在り方を整理する考えはあるか、あわせて区の見解を伺います。

 また、対面で情報を得たり相談したりすることが難しい子ども・若者にとって、オンラインで正しい情報や相談先にアクセスしやすい環境を整えることも重要です。

 区は、健康せたがやプランにおいて、子ども・若者が自分の体や心、性の健康について正しい知識を習得できるよう、アクセスしやすい情報発信を掲げています。

 そこで、十代、二十代の若者が性の健康に関する情報や相談先に迷わずたどり着けるよう、分かりやすく集約した専用ページや相談動線の整理を進めるべきと考えますが、見解を伺います。

 最後に、健康せたがやプラン(第三次)の中間見直しについて伺います。

 既に述べたように、現行プランでは、子ども・若者の健康づくり施策の一つとして、「からだやこころの変化や不調、性の悩み相談や支援に向けた環境整備」が掲げられています。しかし、実際には、特に性の悩み相談や支援について、保健福祉事業概要等を見ても、どのような相談窓口があり、どのような支援につながるのか、また、関係部署がどのように連携しているのかが、区民にも議会にも十分見える形になっているとは言い難いと考えます。

 プランの中間見直しに当たっては、この点について、区として現状の取組、課題、相談動線や連携体制を個別に整備し、可視化した上で後期計画に反映すべきです。あわせて、子ども・若者がアクセスしやすい相談支援や情報発信、必要に応じた専門相談・医療への接続を含め、性の悩み相談や支援の強化を具体的に位置づけるべきと考えますが、区の見解を伺います。

 以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

◎学校教育部長 私からは、性と生殖に関する健康と権利の二点について順次御答弁いたします。

 まず、包括的性教育を継続的、反復的に学べるものとして保障していく意思があるかについてです。

 児童生徒が、発達段階に応じて、包括的性教育について継続的、反復的に学ぶことのできる環境を整えることは重要であると認識しております。

 今年度、教育委員会では、中学校で実施しているリプロダクティブ・ヘルス/ライツ講座につながる学習として、まずは、小学校高学年でのモデル事業を実施し、その内容や教育効果、学校現場における実施状況等について検証を行っていくことを予定しております。

 今後、その検証と並行して、系統的な学びの保障を見据え、校長会の代表を委員とする教育課程検討委員会において、教育課程全体の中での位置づけや授業時数の確保の在り方も含めて、どのような形で実施することが適切か検討してまいります。

 次に、特別支援学級における性教育推進に関する検討の進捗についてです。

 教育委員会としましても、特別支援学級の児童生徒に対する性教育の重要性については認識しており、学校における指導の実態把握を進めているところです。

 現在、例えば小学校では、絵本を活用した学習、中学校では、個々の状況に応じた小グループや、心身の調和的発達の基盤を培う自立活動等での学習が行われており、その結果、学習内容を生活の中で意識した行動が見られるなど、一定の効果が確認されております。

 今後は、世田谷区立男女共同参画センターらぷらすや、地域のセンター的機能を担う都立特別支援学校との連携も視野に入れながら、教員研修やインクルーシブ教育支援員研修の在り方を検討するとともに、発達段階や特性に応じた教材や指導方法の整理充実についても検討を進め、特別支援学級における性教育の一層の充実に努めてまいります。

 以上でございます。

◎世田谷保健所長 私からは、SRHRについて四点お答えを申し上げます。

 まず、障害のある子ども・若者に関わる支援者の方の研修体制についてのお尋ねでございます。

 子どもや若者と関わる様々な支援者が、性と生殖に関する健康と権利について正しい知識を身につけ、子ども・若者との日々の関わりの中で適切に対応できるようにすることは重要であると認識しております。

 令和七年度に実施したユースワーカー向けの研修については、アンケートにおいて、大多数の回答者から「理解できた」との回答を得ており、正確な知識に加えて、子どもたちに対する心構えや具体的な関わり方、伝え方を学ぶことができ、今後の実務に役立つとの好評を得ております。

 今後は、障害の有無にかかわらず、学校、子ども・若者支援機関、障害福祉分野など、子ども・若者が過ごす様々な場面において、それぞれの支援者がSRHRの視点を持って関わることができるよう、各施策、事業所管課が課題を捉え、必要性を認識することが重要であり、庁内においてSRHRの周知を図るとともに、研修講師の派遣も活用するなど、保健所と関係所管が連携しながら必要な研修を継続的かつ円滑に実施できる体制を整えてまいります。

 次に、リプロ出張講座とセットによる専門職の相談、情報提供の体制についての御提案でございます。

 区では、全区立中学校での出張リプロ講座において、思春期の心と体、人との関係性や性的同意、妊娠や避妊等についての講話と、思春期の体や性に関する悩み等についての相談窓口や情報源の情報提供を行っております。

 実施後のアンケートはおおむね好評ですが、「よく分からない内容があった」との声もあり、性に関して心配なことや知りたいことがあるときの対応では、「家族に相談する」に次いで「インターネットで調べる」との回答が多いことから、講座後に性に関する正しい情報や相談窓口を掲載したリーフレット「こころとからだのトリセツBOOK」を配布する意義を再認識し、引き続き実施しています。

 区としましては、子ども・若者が自身の関心や悩みに応じて必要な情報や相談先につながれるようにすることは重要であると認識しています。講座の実施に当たっては、事前に学校から保護者へ、講座の目的や内容等について丁寧に説明を行っており、議員御提案の出張型ユースヘルスケア支援についても、今後、生徒や学校のニーズ、保護者の理解等を踏まえながら、これまでの取組を通じた産婦人科医や助産師等の専門職のネットワークを活用し、教育委員会と連携しながら対応してまいります。

 また、関心事や相談内容によっては、学校では話しにくさを感じる生徒もいると考えられるため、学校に限らず、子ども・若者が安心して相談できる環境や手法について、思春期保健部会において議論をしながら検討してまいります。

 次に、SRHRに関連して、二十五歳以下の若者の専用情報発信を行ってはどうかとのお尋ねでございます。

 区では、出張リプロ講座や中高生向け講演会の副読本として、性に関する正しい情報や相談窓口を掲載したリーフレットを配布しているほか、今後、区ホームページにおいて思春期世代向け講演会の動画を随時視聴できるようにし、希望者へリーフレットを配布するなど、広く周知をすることを検討しております。

 リーフレットを持っていない若者も、相談窓口や性の健康に関する情報にアクセスしやすくなるよう、リーフレット掲載情報も活用しながら、ホームページ上での情報発信の充実について検討してまいります。

 最後に、SRHRに関する健康せたがやプラン(第三次)の位置づけですが、健康せたがやプランにおいては、基本的な考え方に基づき、性の悩み相談や支援についても施策として横断的に位置づけています。

 主な取組として、各保健福祉センター健康づくり課の保健師と専門医による思春期相談や、匿名、予約不要で臨床心理士などが対応するこころスペースなど、関係所管が連携して取組を推進しております。

 今年度、プランの中間評価及び後期プランの改定に当たっては、世田谷区健康づくり推進委員会思春期保健部会などでの議論を踏まえ、性の悩み相談や支援について、担当所管での現行の取組や相談の動線、連携体制などの現状と課題を整理点検した上で、充実に向けた環境整備や後期プランへの反映を検討してまいります。

 私からは以上です。

◎子ども・若者部長 私からは、SRHRに関し、青少年交流センター等での今後の支援の在り方について御答弁いたします。

 子どもや若者が日頃から気軽に安心して利用ができる居場所で、性に関する正しい知識を得られたり、悩みや疑問の相談ができることは、それぞれの状況や個人差もある中で、多様な子ども・若者を支える大切なサポートであると認識しております。

 現在、各青少年交流センターでは、若者が集まる施設等で、性に関する相談や啓発を行う東京都の事業、出張ふぉー・てぃーを活用し、センターの利用者に対し、性に関する相談はもとより、性感染症やデートDV、リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する知識の普及啓発等を年二回ずつ実施しております。

 性に関する話題は、一人一人の受け止め方が異なることから、プライバシーや心理面にも配慮し、若者との気軽な会話やカードゲーム等を通じて、自然な相談や啓発につなげる工夫をしております。

 昨年度は、三センターの合計で約百三十名の若者との関わりを持ちました。引き続きこの取組を継続しながら、相談内容について分析を行い、他自治体の事例等も踏まえ、課題や潜在的ニーズの把握を進めるとともに、今年度から三センターに配置したユースコーディネーターが、地域の医療や相談機関等への連携を進めていくなど、センターとしての支援の在り方を整理しながら、より一層の環境整備に取り組んでまいります。

 以上です。

◆おのみずき 議員 一点再質問をします。先ほど、教育課程全体の中での包括的性教育の位置づけや授業時数の確保の在り方を含めて検討すること、また、特別支援学級では、発達段階や特性に応じた教材や指導方法の整理充実を進めるとの御答弁がありました。

 そこで確認です。今後の教育課程検討委員会等における包括的性教育の検討の中に、特別支援学級、障害のある児童生徒への性教育も、別立ての課題としてではなく、明確に検討対象として含める認識でよいのか伺います。

◎学校教育部長 再質問にお答えいたします。

 教育委員会といたしましては、教育課程全体の検討を進める中で、特別支援学級の児童生徒に対する性教育についても同様の枠組みとして取り扱っていくべきものと捉えてございます。今後、教育課程検討委員会等において包括的性教育の在り方を検討する際には、発達段階や特性に応じた指導についても視点の一つとして検討対象に含めてまいります。

 以上でございます。

◆おのみずき 議員 ありがとうございます。一連の区教委の御答弁は、包括的性教育の制度化に向けた大変重要な前進であると受け止めております。また、一方で、この子ども・若者のSRHRを保障するためには、教育だけではなく、相談支援や健康づくり、あるいは人権、ジェンダー平等も含めて、所管を超えて一体的に進めていく視点が不可欠です。

 そこで、区長に確認いたします。区長は子ども・若者のSRHRを子どもの権利条例の実装に関わる重要課題として認識し、関係所管を横断して推進していく考えがあるのか、伺います。

   〔保坂区長登壇〕

◎区長 おの議員の再質問にお答えします。

 SRHR、性と生殖に関する健康と権利については、子ども・若者を含めた全ての人が、性や生殖について十分な情報を得て、自ら選択、決定できる権利であり、世田谷区子どもの権利条例に定めている子どもの権利を保障する上で大変重要であると認識しております。

 この間の「こころとからだのトリセツBOOK」なども活用した、思春期世代に向けたリプロダクティブ・ヘルス/ライツの周知啓発の取組に加えまして、ただいま各部長が答弁した系統的な学びの保障を見据えた検討や、子ども・若者に関わっていく支援者に対する研修、また、情報アクセスの改善、青少年交流センターでの取組などは、どれもまた、子ども・若者が正しい知識を得て、安心して相談でき、必要に応じて支援につながるための一体的な取組にしなければならないと考えております。

 子ども・若者の権利保障であるということを十分理解し、この観点から、各所管が個別に施策を講じるのではなく、SRHRについて問題意識やおのおのの取組を共有しながら、連携して一体的に地域社会における取組を進めていくように指示してまいります。