第3回定例会 一般質問と答弁 2020.9.16 高岡じゅん子

高岡じゅん子 議員 通告に従い順次質問します。

初めに、社会活動を止めない新感染症対策について質問します。

新型コロナ感染症は、九月半ばの今もなお、東京都における市中蔓延期にあります。そういった中でも死者を最小限に抑え、区民が社会生活を続けられるために、世田谷区が積極的に対策を進める必要があります。国際的な相互依存、地球温暖化と環境破壊の進む中、今回のコロナウイルスは、今後も発生してくる新たな感染症の一つにすぎません。一過性でない対応体制を構築する必要があります。

保健所は、一月の新型コロナウイルス感染症が指定感染症に指定されて以来、感染症関連の諸法や制度に基づき対策の渦中に置かれてきました。区内で感染疑いの一報を受けると、患者の移動や検査、検体採取、検体運搬、検査の外部委託、結果の通知や入力、入院、入所、自宅療養の手配まで、この全てを保健所が中心となって担うことになりました。

特に医師、看護師、保健師など感染症対策に一定の見識のある人材への業務集中が起こり、四月には、検査の目詰まり状態により、患者が亡くなった後になって初めて陽性が判明するという事態まで発生してしまいました。全国のどの保健所でも、過労死ラインに達する残業が行われていたと調査結果が出ています。未知の感染症に対応する体制として、昨年度までの保健所の体制や人員配置では、新感染症に対応し切れなかったということは明らかです。

今、風邪やインフルエンザがはやる冬が近づいています。発熱時、風邪なのかコロナなのかインフルなのか、できるだけ、身近な場所で、早く正確な診断が受けられる必要があります。今後の新感染症に対応できるための保健所の果たすべき役割や、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行を見越した対応について伺います。

社会活動を止めないために必要な社会的検査についても質問します。

第二回定例区議会において、重症化しやすい高齢利用者への感染拡大を防ぐために、介護従事者が優先的に検査を受けられる仕組みをつくるべきではないかと提案いたしました。今定例会に提案されている社会的検査は、この要請に応えるものと評価しています。介護現場以外でも、身体接触が頻繁でクラスター感染の震源地になると影響の多い、障害者の介助や保育などの現場にもこの検査が適用されるという提案にも必然性を感じます。

新型コロナウイルス感染症確定診断、この目詰まりやコスト高の要因として、医療スタッフの手技が必要な鼻咽頭拭い液による検体採取、PCR検査機器の処理能力などが指摘され、その弱点を乗り越える検査手法の開発を期待してきました。

九月十一日付で、国から一定の理解を示す回答が得られたとの報告も受けていますが、今後も、効果的で費用の安い手法の採用に向け、厚生労働省や医療機関、各種研究機関などと連携し、保健所に業務集中を起こさない形での社会的検査の仕組みづくりを進めることを求めます。

また、この検査で発見された陽性者やその周辺の濃厚接触者が現場から速やかに離れ、感染拡大を止めるために、安心して休業し、養生できるような個人と事業者双方に対する支援も必要です。世田谷区における今回の社会的検査実現に向けた方策について伺います。

次に、住み慣れた地域で支えあい、自分らしく安心して暮らし続けられる世田谷を目指して質問します。

介護保険制度が始まって二十年。世田谷区は、介護保険が始まる以前から高齢者福祉に力を入れ、地域の団体等とも協力し、高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の基本理念である、住み慣れた地域で支えあい、自分らしく安心して暮らし続けられる地域福祉社会の実現を目指してきました。国の一律の制度だけでは行き届かない部分には、世田谷区独自の支援も行い、高齢者ニーズに応え、家族などのケア者を支えてきたと評価しています。

超高齢化社会を迎え、高齢の一人世帯や高齢者のみの世帯が増えるだけではなく、同居家族がいても日中は独居、一日誰も話す機会がない社会的孤立も深まっています。家族介護に寄りかからない介護の社会化がより必要とされているのです。

一方、高齢者に自助や健康をまず求めるような国の政策に沿った健康寿命の延伸という圧力には、自分らしく安心して暮らす基本理念から離れていってしまうのではないかと違和感があります。第八期計画の策定に当たり、区独自の支援に関しても議論が行われています。生活のニーズと制度の両方が変化する中、常に制度のはざまで不足する支援が発生します。世田谷区の実施してきたこういったはざまの部分を補う独自支援に今後も取り組んでいくべきだと考えます。区の見解を伺います。

高齢になっても住み慣れた地域で暮らし続けるために、世田谷区は在宅生活支援に力を入れてきました。生活環境を整え、買物や調理など暮らしを成り立たせる家事を支援する生活援助サービスは、自分らしく安心して暮らすために欠かせないものです。次期計画での生活援助の位置づけや、今後の在り方について伺います。

高齢になってからの心身の健康維持と社会参加や外出頻度には相関関係があるということが明らかになっています。今年に入り、新型コロナ感染症の影響で、高齢者の外出が急激に減っています。感染リスクを恐れ、定期的に利用していた通所介護を休止した。三月から五月にかけて、健康体操などの地域活動も中止になった。一度失われた外出する習慣を取り戻すには、今までにない工夫や働きかけが必要になります。

重度化防止という観点から、介護保険制度を用い、通院の付添いをケアプランに入れることは可能です。しかし、介護保険の範囲での外出支援には限りがあります。また、地域資源を使ったふれあいサービスでは、ニーズに対応した十分な支援者が確保できないという現状があります。介護保険と地域資源の両方を活用したコーディネートは十分にできているのでしょうか。新型コロナの影響からの回復のためにも、今後、外出支援のさらなる推進が必要と考えます。区の見解を伺います。

介護保険の導入当時、措置制度から利用者主体の契約制度への変換ということが、大きな希望として語られました。それは、高齢になった当事者の自己決定権を尊重することであって、契約による自己責任を負わせることではなかったはずです。今、財政問題と絡めて語られる自助優先の論議は、介護の社会化で、共助、公助によるセーフティーネットをつくるという理想とは離れていっているのではないでしょうか。

こういった風潮の中で、今定例会に世田谷区認知症とともに生きる希望条例が上程されました。認知症の当事者参加でつくられ、当事者自身が自分の希望を表明し、できる限り自己決定権を行使して生きる希望を、この条例は保障しようとしています。住み慣れた地域で支えあい、自分らしく安心して暮らし続けられる世田谷を実現するために必要な条例です。

一方、現状を見ますと、認知症ケアの困難にお散歩があります。本人の気の済むまで歩くことに付き添い、安全に帰宅できるよう支援するというのが理想ですが、実現するのは本当に難しいのです。これはほんの一例ですが、当事者の希望を尊重したケアに必要なマンパワーはどのように確保していくのか。この条例制定後の大きな課題でないかと考えます。区の見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

世田谷保健所長 私からは、新感染症に対応するための保健所の役割等をお答えいたします。

今般の新型コロナウイルスのような新感染症対策での保健所の役割は、感染症の発生予防及びその蔓延防止に向け、患者等の人権を尊重しつつ、適切な医療につなげ、感染症予防施策を総合的かつ迅速に実施するよう努めることでございます。

この役割を果たすに当たっては、公衆衛生の観点から、法に従い、感染症対応を遂行することが必要であり、保健師、看護師などの医療専門職等の人材確保が不可欠です。そのため、今般の組織改正により、保健所長の指揮命令系統を明確化し、五地域の保健相談課の医療専門職を機動的かつ柔軟な配置を可能にすることに加え、民間の看護師等の医療専門職を活用することにより、体制を強化いたしました。また、医療職のみならず、事務職の確保も必要であり、必要な人員につきましては、保健所内での応援体制に加え、関係所管と連携を図り、庁内からの応援職員を引き続き依頼してまいります。

なお、先般、国から都道府県に対し、新型コロナウイルス感染症が終息しない中で、インフルエンザが流行した場合に備えた体制整備を求める通知が発出されました。各保健所での対応につきましては、後日、東京都から具体的な通知があると考えられますので、区は、それを受け、引き続き必要な人材等の確保に努めつつ、持続可能な感染症対策に取り組んでまいります。

以上です。

 

保健福祉政策部次長 私からは、今回の社会的検査実現に向けた方策についてお答えいたします。

今回、区がお示しした社会的検査は、介護事業所や障害者施設等を利用されている方の重症化を避けるため、また、現場におけるクラスター化を抑止するため、その職員や利用者、特に感染への不安がある職員を対象として実施するものでございます。

対象となる事業所は、介護事業所や障害者施設、一時保護所等、保育園、幼稚園の職員等を対象に、延べ二万三千件分の検査を想定しております。現に陽性者が発生した事業所における濃厚接触者以外の方や、感染への不安がある方を優先するとともに、施設によって定期的、複数回の実施も予定しております。

検査方法については、先行実施については従来の検査方法で実施してまいります。なお、前鼻腔方式による自己採取の検査を取り入れた場合、行政検査と認められるかを国に照会してきましたが、このほどその回答が得られたところであり、十月からの本格実施は前鼻腔自己採取を想定しております。

検査の結果、陽性者が発生した場合は、当該施設では職員の出勤制限や消毒等により休業を強いられる場合もございます。こうした状況におきましても、区の独自支援や都が行うサービス継続支援事業等を活用するなど、事業の再開に向けて適正な支援を行い、事業所が安心して検査を受けることができる体制を整備してまいります。

私からは以上です。

 

高齢福祉部長 私からは、住み慣れた地域で支えあい、自分らしく安心して暮らし続けられる世田谷に向けて、四点御答弁申し上げます。

まずは、区独自の支援についてです。

区では、高齢者福祉の充実を目的に様々な独自サービスを実施し、これらは、制度開始以来、高齢者の生活を支えるサービスとして定着し、親しまれてまいりました。しかしながら、開始後相当の年数が経過し、高齢者を取り巻く社会状況は変化し、高齢者本人や家族のニーズも多様化しております。今後、さらなる高齢者人口及び社会保障関連経費が増加する中、高齢者の生活を支えるのに必要なサービスを維持するために現行事業を見直し、持続可能な高齢者福祉サービスの提供体制を整える必要がございます。

区では、見直し検討を進めるに当たりまして、基本的な考え方や分析、評価の視点につきまして、高齢者福祉・介護保険部会において御意見をいただき、それらを踏まえまして見直し検討に取り組んでいるところでございます。限られた財源をより有効に活用し、必要とされる高齢者福祉サービスを提供できるよう、引き続き見直し検討に取り組んでまいります。

次に、生活援助についてお答えいたします。

介護を必要としている方が住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らし続けられるためには、訪問介護における掃除、洗濯、調理などの日常生活を支援する生活援助は重要なサービスの一つであると認識しております。区では、同居家族がいる方に対する生活援助のサービスにつきましては、同居家族の有無で一律に判断するのではなく、同居家族の方に疾病等がある場合をはじめ、やむを得ない事情により家事が困難な場合には、ケアマネジャーの適切なアセスメントに基づき、必要なサービスを認めるなど、柔軟な運用を行っております。

また、平成三十年度の介護報酬改定において、ケアプランに一定回数以上の生活援助を位置づけた場合に区への届出が義務化されましたが、区では、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、よりよいサービスにつなげていくことを目的に、ケアプランの検証を行い、ケアマネジャーへの助言等を行っております。

現在、令和三年度からの介護報酬等の在り方について、国の社会保障審議会にて議論が行われておりますが、区では、その動向を注視するとともに、第八期世田谷区高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画におきましても、介護を必要としている方の様々な事情に配慮しながら、利用者によりよい介護サービスが提供できるよう取組を進めてまいります。

三点目は、外出支援についてです。

高齢者が住み慣れた地域で安心した生活を送るためには、外出支援は重要であり、こうした生活における希望に対して、介護保険サービスなどの公的なサービスだけではなく、地域資源等を活用したインフォーマルサービスを組み合わせて利用することも重要であると認識しております。介護が必要な方の生活全般のマネジメントを担うケアマネジャーに対しては、研修の実施やケアプラン点検等により、利用者の自立支援・重度化防止の観点を踏まえ、ケアプランの作成支援を行っておりますが、外出支援などの利用者のニーズに対しましては、インフォーマルサービスも含めたケアプランの作成について、区から助言をしているところでございます。

また、現在策定中の第八期の世田谷区高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画においては、重点的取組に自立支援、介護予防、重度化防止の推進を掲げ、適切なケアマネジメントの推進をその具体的な施策の一つとしております。区といたしましては、介護保険制度の基本理念である高齢者が尊厳を保持し自立した生活の実現に向け、適切なケアマネジメントを推進し、利用者のニーズに沿ったケアプランの作成助言など、引き続きケアマネジャーへの支援に取り組んでまいります。

最後に、認知症とともに生きる希望条例に関しまして、ケアに必要なマンパワーの確保についてです。

本条例では、医療機関や介護事業所等の御本人へ直接関わる方の役割として、どこで暮らしていても、その希望及び権利が尊重され、適切なサービスが受けられるよう努めることを定めております。区では、医療及び介護職員を対象に、認知症の行動・心理症状に隠された御本人のニーズを分析して接することを学ぶ日本版BPSDケアプログラムの専門研修を開催し、専門的な認知症対応型の施設にとどまらず、高齢者に係る職員の認知症ケアの質の向上に努めております。

また、認知症サポーター養成講座の受講者を対象に、認知症サポーターステップアップ講座を開催し、地域での見守りや支えあい活動の担い手を育成しております。さらに、サポーターが継続的に活動し、個人だけでなくチームで活動できるよう、認知症サポーターフォローアップ講座にも取り組んでおり、地域で活躍できる仕組みづくりも進めております。

今後、条例の周知を図りながら、介護職員向けの専門研修や地域でのボランティア育成等の人材育成に取り組むとともに、御本人の意思と権利が尊重され、安心して暮らし続けることができる地域をつくってまいります。

以上です。

 

高岡じゅん子 議員 御答弁ありがとうございました。

高齢になっても、認知症になっても、希望を持って生きられる世田谷をぜひつくっていただきたいと思います。

新型コロナ対策に関してですが、今後も国の状況はどんどん変わっていくと思います。指定感染症についての扱いについても検討がされていますので、それらの状況を適切に捉え、区の両医師会などとも協力して、安心して暮らせる、そうして今年の冬を乗り切りたいと思っています。

一点確認のために質問します。今回の社会的検査の仕組みというのは、やはり国の制度に合わせて死者を出すのを減らすため、クラスター発生予防ということだと思うので、世田谷区の身の丈に合った最低限のものなのではないかと認識しています。この検査をぜひ一日も早く実現していただきたいと思います。