令和4年(2022年)第1回定例会 一般質問
2022年2月22日
金井えり子
2022年4月から民法改正により、成年年齢が18歳に引き下げられ、クレジットカード作成や、ローンを組んで高額な買い物などの契約ができるようになります。若者に多い消費者被害救済のため消費者契約法改正もされました。小中高校の消費者教育の充実は国からも求められています。金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査2019」では、保護者の金融知識に関する自己評価で自信があると答えた方は12.1%でした。金銭教育は重要と思う反面、自分で教える自信がない方が多いという結果も出ています。かつては駄菓子屋さんや、お使いなどで自然に学んでいた「お金を使う」という体験も少なくなり、無限に買い物ができるかのように思えてしまうカード決済が身近になっている今の子どもたちです。スマートフォン、パソコンなども使い慣れていて、高額なゲーム課金トラブルも増えています。こんな時代だからこそ子どもの頃からしっかりとした金銭感覚を育てる、価値観を身に着ける事が重要です。「いつでもどこでもだれでもできる」のが消費者教育といわれますが、キャッシュレスや悪徳商法、被害に遭わない、加害者にならないなど、家庭の中の知識だけでは難しく、やはり、学校教育でもさらに力をいれていくべきと考えます。
現在、区立小中学校で使われている家庭科の教科書を確認しましたが、「物やお金の使い方」「いろいろな支払い方法」「見えなくなるお金キャッシュレス」「広告の影響」などたいへん詳しく書かれていました。今後さらに進んでいくであろう消費生活の変化、子どもたちば、知識を得て、お金という存在について考え、行動できるような消費者に育てていく必要があります。①区立小中学校の子どもたちへの消費者教育の現状を伺います。
新型コロナウイルス感染症の影響で、アルバイトが無くなってしまった大学生など若者がSNSを使った悪徳ネットワークビジネスの被害に遭うことが多くなっています。仮想通貨や海外事業への投資などモノなしマルチ商法など、見えないお金によるものです。
2019年の決算特別委員会で質問しましたが、大学内で先輩から後輩へ、友人間などでねずみ講のように広がる詐欺被害については、消費者センターが大学で「消費者トラブル防止講演会」や啓発チラシの配布などを行っているとのことでした。オンライン授業中心の大学が多いので、状況も変わってきています。②その後、大学との連携、大学生へのアプローチはどのようになっているのか伺います。
消費者教育は、消費者である誰もが受ける必要があり、受ける権利があります。学校に通う世代のみでなく、一般の大人へもキャッシュレスや時代によって変わっていく詐欺被害、広告宣伝の影響など、知らなければなりません。ゲームの課金、ワンクリック詐欺、アカウントののっとりなどどこに落とし穴があるかわかりません。詐欺でなくても買いたい物ではなく企業が売りたい物を買わされてしまう、中身の表示がはっきりしないなど、消費者が賢くなり選別していく必要があります。世田谷区には消費生活課があり、オレオレ詐欺の被害防止など重要な役割を果たしています。特に消費生活センターは、市民と消費者行政が連携・協働し、消費者教育の拠点として機能しているモデルであるといわれてきました。その特徴の一つが区民講師の出前講座です。これをもっと活用できないでしょうか。③オンライン講座や広報の工夫で消費者教育を幅広くすすめるべきと考えます。区の見解を伺います。
次にヤングケアラーについて伺います。
ヤングケアラーとは、大人が担うようなケアを引き受け家事や介護をしている18歳未満の子どもの事です。ケアが中心となる毎日の生活が子どもの健康、教育、幸福度に大きな影響を及ぼす可能性があります。過度のケアで学校を休む、友達と遊べない、部活動が出来ないなど、成長期の子どもに必要な時間がうばわれています。しかし子どもはケアラーの自覚はなく、家庭内のことは知られたくないなど周囲からは気付かれにくい存在です。
2020年度に厚生労働省が全国の中高生対象に実施した調査では、高校生では24人に1人、中学生では17人に1人いることが分かっています。介護などを始めた年齢の平均は、小学生に当たる9.9歳、そして、80%ヤングケアラーということを聞いたことがないと回答しています。少しずつ報道されるようになってきましたが、この問題の周知を広げ、子どもの声を聴いて支援に繋げることが急がれます。
イギリスでは、生徒手帳にヤングケアラーについて、相談、支援の情報が書かれているそうです。そこから学校でのサポート、家族へ支援、支援団体、ピアサポートに繋がります。世田谷区では早くからケアマネージャーとの連携で調査もしていますが、そこからがなかなかつながっていないようです。新たにアンケート調査を始めると伺いましたが、この調査が、学校の教職員、保護者、子ども自身も、理解や気づき、考えるきっかけとなり支援につながるものであるよう期待します。調査や周知をその先どのように繋いでいくのか、教育と福祉の連携が重要なポイントです。
先日ヤングケアラーだった方のお話を聞きました。家族をケアする場合、「ケアを代わってほしいわけではない」「純粋に家族が心配で学校どころではない」「ケア自体がつらい」「学校が唯一の自分でいられる場なので、特別扱いしてほしくない」など様々な事情や思いがあるそうです。まずは、それぞれの子どもが話を聞いてもらえる、声をあげられる場が必要です。④これから区が行う調査の目的とその後のアンケート活用について伺います。
ヤングケアラーも含め、家族介護者、ケアラー全体の問題もこのコロナ禍でさらに厚生労働省の発表で、高齢者を介護する家族らによる虐待は、2020年度、1万7281件で過去最多でした。外出自粛、介護サービスの休止、サービスの利用控えなどで家族への負担が増えたことが影響し、ケアを担う人の疲弊感が増しています。家の中のことは家庭で解決しなければという家族主義の意識は、まだまだ根強く残っています。あるケアラーは、日々介護をするだけの生活を「母と二人だけの世界。山奥に取り残されているような感じ。そして看取り後には自分にはなにもない」と表現していました。ケアラー自身が個人として尊重され、十分な睡眠、休養、余暇、社会参加等の自分の時間が保障されるべきです。⑤ホッと一息つける時間、話ができる場など、家族の介護を担うケアラーへの支援が必要です。世田谷区の現状と今後について伺います。
「子育て介護は社会の仕事」生活者ネットワークは政策に掲げ続けてきました。2000年にできた介護保険制度は、介護は家庭内だけで担うのではなく、在宅で介護サービスを受けられる(社会的入院などという医療化ではなく)、介護の社会化をするためにできました。この制度ができてから21年がたちますが、介護保険制度は改定のたびにサービスが削減され、介護従事者の報酬は低く慢性的な人材不足、その結果ヤングケアラー、ケアラーによる虐待、介護離職など、こんなにも家族介護の問題が出ています。2/15(火)朝日新聞に「家族任せ社会の含み損に」というタイトルで、医療社会学者の木下(きのした)衆(しゅう)さんのお話が載っていました。
「ヤングケアラー問題を機にもう一度、介護保険を鍛えなおすべきです。介護を必要とする本人が、自分がどんな介護を受けたいのかを、家族の負担を心配することなく安心して表明できる。そして、その実現に向け、多様な専門職が助けていく。それが、介護する人の負担を軽減していくことにもなります。」
介護を必要とする本人もケアラーも、自分で選び表明でき、必要な時に必要なサービスが受けられることこそが、介護保険が目指してきた介護の社会化です。その重要な介護サービスの人材不足がコロナ禍でさらに進んでいます。⑥福祉人材の確保と家族介護者への支援の充実、区の現状と見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。