令和4年3月定例会02月24日
高岡じゅん子 議員 初めに、未来につなげる気候危機対策について質問します。
昨年の気候変動に対する国際会議COP26では、パリ協定で提示された一・五度目標が国際的な共通目標として明確化されました。既に地球の平均気温は産業革命以降、一度上昇しています。一・五度を超え二度にまで上がるとこの上昇傾向が後戻りできない、そういった次元に達し、干ばつ、熱波、巨大台風、高潮など、人類の全ての生存に関わる危機が予測されているためです。この気候危機を引き起こしている最大の原因物質は、人類の活動による温室効果ガス、CO2の過剰な排出です。石油に代表される化石燃料を使うことで経済的な豊かさを享受してきた私たち中高年世代に対し、未来を担わなくてはならない若い世代から真剣な取組を求める声が全世界で上がっています。
世田谷区は気候非常事態を宣言し、来年度中に二〇三〇年度までを期間とする世田谷区地球温暖化対策地域推進計画を改定し、二〇五〇年実質ゼロを目指すとしています。それはつまり一・五度目標に合った形に改定することを意味しているはずです。
先日、骨子案が提示されましたが、二〇三〇年までの削減目標設定については、従来の施策の積み上げでは四八%、都などの目標に合わせるために逆算した場合、求められる五三%から五五%減を目指すべく検討との報告でした。環境審議会を傍聴し、この目標設定を聞いた複数の区民から、区の気候危機対策への懸念の声が私に寄せられています。
世田谷区の最大のCO2発生源となっているのは家庭部門、つまり区民の暮らしです。ですから、CO2排出削減という目標を全ての区民が共有し、暮らしの変革に向けて行動する必要があるのです。国や都に追従するだけのバックキャスティングでは、多くの区民を巻き込んで挑戦していく目標にはなりません。例えば脱炭素先行自治体に応募し、全国をリードしていくようなビジョンを掲げるべきではないかと考えます。
そんな中で、来年度、気候危機対策基金の創設が提示されました。二〇五〇年に確実に脱炭素を達成するためには、今から二〇二五年までのスタートダッシュが大事です。危機感や切迫感を持ってCO2削減のため、今できることは全て着手するぐらいの取組が求められています。保坂区長に、この基金を今創設する狙いや気候危機対策推進についての見解を伺います。
二〇五〇年に社会の中核を担うことになる現在十代、二十代の若者にとって気候危機は大きな問題です。先入観のない若者世代にこそ、高度経済成長期の暮らし方や経済活動のパターンを脱し、暮らしを持続可能なものに変えていく可能性が残されています。ですから、世田谷区として、若者世代から脱炭素に向けた提案を積極的に聞き政策に取り入れていくことや、活動を始めた若者の情報発信や活躍の場を用意することが必要です。若い世代を巻き込んだ気候危機対策実現への方策を伺います。
地球温暖化対策は環境所管だけで実現するものではなく、全庁挙げての取組を今までも何回か求めてまいりました。世田谷の町を低炭素な暮らしが可能なものに変えていくには、特に歩行者や自転車、電池自動車などを活用した低炭素の移動を可能にする道の整備、車中心都市から人中心の歩いて楽しい魅力的なまちづくりが重要です。災害対策と一体化したグリーンインフラの充実なども都市整備所管にしかできない気候危機対策と言えます。都市整備領域所管による主体的な地球温暖化対策の推進を求めます。見解を伺います。
世田谷区立の小中学校では、長年エコライフ活動を続け、省エネ行動などが学校生活の一部となっています。SDGsの学習などを通じ、社会や経済活動の基盤となるのは、地球規模の環境であるということの理解も進んできているのではないでしょうか。教育委員会からさらに一歩進んで、気候危機に対し実験や化学の目で研究する子どもの後押しをすることを提案します。ガリレオコンテストを、省エネや断熱、異常気象など気候危機に関連する中学生の研究発表の場として活用すれば、地域や保護者にも波及効果が期待できる環境教育となります。そういった教育活動に対して創設が提案されている基金の活用も考えられるのではないでしょうか。来年度以降の気候危機対策に焦点を当てた環境教育の推進について伺います。
改築中の本庁舎の環境性能も大きな課題です。設計時には二〇五〇年八〇%減が全国共通の目標でした。今、二〇五〇年には実質ゼロが目標になっています。これから造られる新庁舎はもちろん二〇五〇年以降も区の中心的な施設として使い続けます。今からでもできる限りの手法を駆使して、新庁舎のCO2排出の削減を図り、二〇五〇年にも区民が誇りを持てるZEB、ゼロエネルギービルディングを目指すべきです。区民に気候危機対策としてライフスタイルの変換を求めていく世田谷区としては、新庁舎を通じて区の率先行動を区民に見える形として示していくことが必要です。新庁舎の気候危機対策の強化を求め、見解を伺います。
次に、資源循環型社会の実現に向けたリユースの推進について質問します。
地球の資源は限られており、日本も大量生産、大量消費、大量廃棄、大量リサイクルではない、新たな資源循環型社会に向かおうとしています。世田谷区は、そもそもごみになるものをつくらない、買わない、リデュース、物を安易に捨てず製品の形のまま必要としている人に渡すリユースの2Rをごみ減量の主力に位置づけてきました。しかし、区の収集するごみになる前に2Rに回ってしまう物品は清掃・リサイクル事業の中では可視化しにくく、かろうじてエコプラザ用賀での家具の再生利用や区民団体との協働による2R推進会議などによる啓発だけにとどまっていました。
昨年秋から行われた民間事業者との連携によるリユースの実証実験事業は区民に大変好評で、来年度さらに一年間、実証実験を延長するとの報告を受けています。新たに区からの予算をつけての実証実験継続になります。狙いや効果検証、その後の区政への活動などを明確にした上で、今後リユースに本格的に取り組んでいくべきだと考えます。見解を伺います。
リユースを根づかせることは、製品プラスチックを安易にごみとして捨てる習慣を見直すことにもつながります。プラスチックごみからリサイクルに適したものだけを分別することの困難やリサイクルの処理費用が自治体の持ち出しになることなど、プラスチックごみの処理に関しては課題が山積しています。
世田谷区は多くの区が容器包装リサイクル法に基づく資源分別化に取り組む中で、ペットボトル以外のプラスチックは分別せず燃えるごみとしてもよいとしてきました。生活者ネットワークは、プラスチックを安易に燃やし、ごみとして処理することには反対し続けています。世田谷区の分別の甘さは、暮らしの中で何がごみかを考え、資源として生かしたり、リユースに回したりという意識を薄めてきてしまいました。来年度以降、分別の在り方などを検討するに当たっても、リユースの啓発をさらに徹底することが真の資源循環型社会形成にも役立つ有効な手段ではないかと考えます。見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 高岡議員にお答えいたします。
二〇五〇年二酸化炭素排出量実質ゼロの実現に向けまして、決してこれは容易な道でないということであります。区民、事業者が主役となり、共に脱炭素に貢献するライフスタイルやビジネススタイル、この転換を大きく進めていくことが重要であると考えています。一方、これから三十年先の未来を担う若者世代が一斉に声を上げ、区民、事業者を巻き込むムーブメントが海外で、そしてこの日本国内でも始まっています。彼らの声に応え、脱炭素に向けて着実に歩みを進めることは、私たち大人世代の責任にもなります。
昨年十月に実施しました若者環境フォーラムで、若い世代の活動のモチベーションの向上に加えて、できるところから環境配慮の行動、アクションを捉えていきたい。一人の百歩より百人の一歩が大切だという声もありました。今後、この課題に関しては、必ず将来世代、今の子どもたち、若者の意見とともに論じていくようにしていきたいというふうに考えます。
今定例会に気候危機から区民の命と財産を守り、二酸化炭素排出量を削減し、気候変動を食い止める施策を安定的、継続的に行うための財源を確保していくために、仮称でありますが、世田谷区気候危機対策基金を創設する条例を提案させていただいています。現在、気候危機対策会議で、新たな中期目標やこれを達成する具体的な施策等について検討を進めるよう指示しております。また、区、区民、事業者が連携し、個人、NPO、専門家、企業、様々な人たちが力を合わせながらこの課題について大きな効果を上げていく対策のよりどころにしていきたいとも考えております。
区民、事業者だけではなく、もちろん区も率先垂範して行動に取り組むことが気候危機対策では欠かせません。今後策定します計画素案において、全庁的な検討体制の下、区独自の取組は具体的にこれだとしっかりとお示ししながら、若者環境フォーラムなど次世代の若者たちと問題意識、課題意識を共有し、発言をしっかり酌み取って環境審議会や区民説明会、また区議会での御意見を伺いながら、この政策を進めてまいりたいと思います。
こういった御意見、御議論を踏まえ、若い世代にとっても夢や希望が持てる、いわば数字合わせではない、根拠ある目標値を示していきたいと思っております。
◎技監 私からは、気候危機対策における都市整備領域所管による取組と推進についてお答えをいたします。
現在の地球温暖化対策地域推進計画の五つの施策の一つに低炭素都市づくりと適応策が掲げられています。その取組として、コミュニティバスの導入促進やレンタサイクルの整備、自転車走行環境整備などによる自動車に過度に依存しない都市づくりや、CO2吸収効果のあるみどりの保全・創出の推進、雨水貯留浸透施設の設置などによる豪雨対策・ヒートアイランド対策等の推進などグリーンインフラの整備があり、都市整備領域が担う役割は大変大きいものと認識しております。
これらの取組は、世田谷区都市整備方針に基づく分野別の方針、計画などにより着実に推進をしてきておりますけれども、今回推進計画骨子案で示している区内CO2削減目標達成に向けては、各所管が地球温暖化対策に寄与する施策をしっかりと意識しながら、道路、公園や公共施設整備における先導的な取組を推進していく必要があると考えています。
加えまして、区民一人一人の参加と協働が欠かせません。区民の行動変容を促す例えば歩きたくなる、自転車に乗りたくなる環境の整備や、みどりの保全・創出、豪雨対策に皆さんが取り組んでいただく意識啓発や助成の拡充などにもさらに力を入れていかなければならないと考えています。
今後、地球温暖化対策地域推進計画の見直しや次期基本計画の検討におきまして、気候危機対策の観点から戦略的、効果的な都市整備政策を検討し、職員一丸となって取り組んでまいります。
以上です。
◎環境政策部長 私からは、若い世代を巻き込んだ気候危機対策の実現の方策について御答弁を申し上げます。
二〇五〇年の目標達成に向けては、区民、事業者とともに脱炭素に貢献するライフスタイルへの転換を進めていくことが不可欠であり、とりわけこれからの未来を担う若者世代の参加と協働が重要と考えております。
昨年実施しました若者環境フォーラムでは、持続可能な社会の実現に向け、既に活動している高校生、大学生の環境保護サークルや区立中学校の代表生徒など若者同士の交流や意見表明の場づくりを行いました。フォーラムでは、自分たち以外の同世代の活動を知って活動のモチベーションが向上したといった声のほか、環境政策に対する御要望もございました。
今後もこうした取組を継続し、次世代を担う若者が発信できる機会を設け、主体的に取り組む若者からの政策提案も受けながら、中長期的な視野に立った施策の展開を進めてまいります。
以上でございます。
◎教育政策部長 私からは、学校におけるエコライフ活動についてお答え申し上げます。
学校におけるエコライフ活動につきましては、各学校での自主的な取組として実施しております。さらに、SDGsの研究校においては、身近な生活から地球規模まで自分たちができることを見つけ、実体験、体感を伴う教育活動を行うなど、より広い視点での環境教育を推進しております。そのような取組が浸透したことによりまして、若者環境フォーラムに中学生が参加し、大学生と高校生とともに気候危機問題について活発に議論しました。
また、ガリレオコンテストの応募作品の中には、環境に優しいプラスティックやグリーンな社会を目指した発電用風車についての研究など、気候変動を取り扱った研究が複数応募されております。教育委員会といたしましては、今後、環境政策部及び子ども・若者部と連携し、環境サポーターと呼ばれる大学生ボランティアを派遣した若者主体の出前授業を実施するなど、児童生徒一人一人が気候危機対策を自分ごととして関心を持ち、今後の気候変動を食い止めるための行動を取ることができるような取組を推進してまいります。
以上でございます。
◎庁舎整備担当部長 私からは、新庁舎における環境危機対策の強化についてお答えいたします。
本庁舎等整備においては、平成二十八年度の基本構想の段階から、環境と調和し、環境負荷の少ない持続可能な庁舎を基本的方針の一つに掲げ、環境性能の観点でも先導的役割を担うべく設計を進めてまいりました。快適な室内環境と省エネルギーを両立するため、高効率機器のほか、自然換気システムや二酸化炭素濃度による外気量制御システムなどを採用した結果、設計では一次エネルギー消費量を現行の建築物省エネ法で定める基準より四〇%以上削減するZEBオリエンテッドを達成しております。同時に建築環境総合評価システムによる建築物評価CASBEEでは、最高ランクのSランクを取得する計画となっております。
新庁舎等の環境性能に関しては、今後は建物の完成後において、エネルギー消費量等の実績値を計測し、設備機器等の運用改善を繰り返しながら省エネルギー効果を高める取組を続けていくことが重要と考えております。引き続き、地球環境、地球温暖化対策、脱炭素に資する本庁舎等整備を進めるとともに、新庁舎等における省エネルギー効果の見える化など、区民に分かりやすい発信方法の検討も行ってまいります。
以上でございます。
◎清掃・リサイクル部長 私からは、リユースの推進につきまして二点御答弁申し上げます。
まず、実証実験の継続についてでございます。
実証実験を一年間延長することによりまして、開始三か月間で六千件を超える大量のリユースが可能となった要因や、ごみ減量などの効果を検証し、さらに世田谷版として理想的に事業を拡大していくための効果的な手法を探ってまいりたいと考えてございます。
大量のリユースが可能となった要因としてフリマアプリを活用したほか、特に区と民間事業者が連携して設置した不要品持込みスポットの存在がございます。スポットへ気軽にリユース品を直接持ち込み、また引き取ることができるため、物を大事に使う、もったいない意識の醸成と地域内での物の循環の見える化が図られたと現時点で考えてございます。
本実験の効果として、リユース促進によるごみ減量効果、それに伴う収集経費等の削減やリユース品の譲渡による収入がありますが、季節変動や申込みから収集までのタイムラグ等があるため、年間での検証により精査することが必要であると考えております。また、より効果的なリユースを行うため、リユースに適する品物の精選、譲渡する際の価格づけ、大型家具のリユース、駐車場を含めたスポットの規模、粗大ごみ以外のごみ種への拡大等につきまして、令和五年度の本格実施を見据え検証を行ってまいります。
区が収集した粗大ごみのリユースを含めまして良好な結果が得られると想定される場合は、世田谷版の新たなリユース事業として展開してまいります。
次に、リユースの啓発を徹底すべきとの御質問でございます。
現在行っている粗大ごみの新たなリユースの仕組みに関する実証実験においては、衣装ケースや子どもの遊具、電化製品などプラスチック製品も多く持ち込まれ、また引き取られております。このようにプラスチック製品をリユースできれば、ごみの減量、ひいてはCO2の削減にもつながってまいります。今回の実証実験のような身近で分かりやすい好事例をきっかけに、粗大ごみやプラスチック製品をはじめ、リユースという選択肢が区民に広がれば、単なるごみの減量にとどまらず、循環型社会の実現に近づいていくものと考えてございます。
いまだ大量生産、大量消費、大量廃棄の面影を残す社会状況にございますが、区民の、物を大切にする意識を醸成し、簡単にごみとして排出するのではなく、大事に使い続ける行動変容が区民に広がるよう、効果的な周知や啓発等に取り組んでまいります。
以上でございます。
高岡じゅん子 議員
おのおの御答弁いただきました。
気候危機についてです。やはり若者世代の意見や提案をしっかり受け止め政策に生かしていただき、また活動に参加する若者を増やしてください。教育委員会とも連携し、小中学生からの提案も引き出し、地域を巻き込んでいけばより効果的だと考えます。
他会派からの質問に対して、先行地域への応募も検討していくという趣旨の答弁がおとといございました。これに応募するとすると、家庭部門での目標値が六六%減ということが求められます。思い切った目標設定を求めます。先行地域に選ばれると、庁舎のZEB化、ゼロエネルギービルディング化に国の補助が出る可能性もあると考えております。脱炭素のまちづくりではMaaS、モビリティーアズサービスなど最新の技術を駆使することも含め、公共交通手段の確保へ積極的な取組を求めます。
リユースについてです。リユースを事業化するに当たっては、以前ありました区民に伝わりやすいごみ減量課という名称を復活させて、ごみを減らしていくという区の意気込みを見せるということも考えてみてはいかがでしょうか。大量消費、大量リサイクルではなく、やはり循環型社会を目指す……。