第2回定例会 一般質問と答弁 2022.6.15 金井えり子

令和4年6月定例会06月15日

金井えり子 議員 地域共生社会の実現に向けて質問をしてまいります。

 障害理解には、まず、考え方を医療モデルから社会モデルに変えること、例えば車椅子の方の前に段差があるというとき、医療モデルで見ると、障害は足にあることになりますが、社会モデルでは、段差という障壁こそが障害です。この障壁をなくすために合理的配慮が必要です。

 ただ、この配慮という言葉は、心配り、気遣い、してあげるという印象を与え、なかなか真意が伝わらないこともあります。行政や福祉の現場では当たり前のように使われている言葉ですが、正しい理解を広げるためには、改めて原点に戻り、丁寧に伝えていく必要があります。

 その人に環境がマッチしているかに焦点を当て、配慮という言葉のイメージにとどまらず、環境整備のみならず、環境調整を行う、これが社会モデルであると考えます。

 ちょうど今、世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例の素案が出され、パブリックコメントに同様の事例がありました。不適切な状態から合理的配慮のある状態へと、イラストと共に書かれています。段差をスロープにすることはもちろん必要な環境調整ですが、それだけでなく、この車椅子の方が何を求めているのかを聞き、一緒に考える対話も環境調整です。

 条例の素案の中にも、社会モデルに関する理解を深めるとあります。障害理解を促進するには、何々してあげるではなく、まず平等な立場から始まり、ハード面、ソフト面も含まれる社会モデルの考え方を伝えていくことが重要と考えます。区の見解を伺います。

 環境調整という面から、子どもの遊び場、公園について伺います。

 世田谷区には、都立砧公園のみんなの広場や区立二子玉川公園などにユニバーサル遊具のあるインクルーシブな公園があります。以前、他会派からも質問がありましたが、全てを変えなくても、地域に今ある公園に車椅子でも楽しめる砂場をプラスするとか、ブランコを一つユニバーサルデザインのものに変えるなど、特別な公園だけでなく、地域の公園にも広がっていくとよいと思っています。誰もが楽しめるような公園づくりを進めていると聞いています。現状を伺います。

 そもそも公園とは、誰もが利用できる公の場であり、インクルーシブをわざわざうたわなければいけないということはとても残念ですが、そうなっていない現実があるようです。

 一般社団法人TOKYO PLAYが公益社団法人東京都公園協会の協力で行った砧公園のみんなの広場での聞き取り調査では、障害に理解がない、公園に行くこと自体がハードルという意見がありました。

 反面、地域で分かり合うことを求める声や、インクルーシブな公園に期待する声もあったといいます。また、障害のある人に会ったことがない、どのように接したらよいか分からないという方もいました。

 子どもたちは、障害のあるなしに関わらず、子ども同士楽しく遊べます。子どもは、接し方が分からなければ、素直に本人に聞いて、お互いに尊重し、助け合って遊びます。地域共生社会の実現には、子どもに学ぶのがよいのかもしれません。

 ユニバーサルデザインの遊具があるだけでは、心のバリアを取り去ることはできません。しかし、遊具をきっかけに地域の理解が広がれば、公園に行くこと自体がハードルと思う方の心のバリアフリーにつながります。

 世田谷の環境の中で緑を感じたり、体を伸び伸びと動かしたり、出会いや体験を重ねられる公園の存在は貴重です。当事者の方々との対話を基に、誰もが安心して遊べる地域の公園づくりを進めるよう求めます。見解を伺います。

 地域共生社会の実現とつながるのが、世田谷区認知症とともに生きる希望条例の視点です。認知症観の転換、まさに医療モデルから社会モデル、生活モデルヘの転換です。アクションガイドも区のホームページに紹介されました。より多くの区民に周知が広がることを期待します。

 地域の方から、自分の今やっている活動を生かして、何ができるか考えたいという声もありました。すぐにでもアクションチームが動き出しそうです。アクション講座について現状を伺います。

 この認知症希望条例のアクションこそ、地域で活用すべき、コミュニティーづくりの基になる考え方です。認知症とともに生きるため、アクションチームとして地域で多様な人たちがつながり、自由に語り合い、楽しく活動が展開されていく。そのためには、まちづくりセンター、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会、児童館の四者の連携が必須と考えます。

 特に地域を把握し、中心にもなり得るのがまちづくりセンターです。認知症希望条例の視点を理解し、地域をつなぐため、まちづくりセンターヘのアプローチは重要です。どのようになっているのか伺います。

 次に、令和三年度せたがや食品衛生講座について伺います。

 現在「知りたい!聞きたい!食品添加物」、「もっと知りたい!聞きたい!食品添加物」の二本の動画が配信されています。大変目立つ大きなポスターでの広報を見て、あっ、世田谷保健所は世の中の動きや区民の不安に対応してくださるのだなと大変期待しました。

 しかし、中を見て驚愕しました。第一回の講師は、内閣府食品安全委員会リスクコミュニケーション官、藤田佳代氏。無添加表示が不安をあおっている、科学的見地なしにイメージで食品添加物を安全でないと言っている人がいる、国が調査をして基準をクリアしているので安全、などの発言をされています。

 第二回に至っては、一般社団法人日本食品添加物協会常務理事の川岸昇一氏ということで、何と事業者代表、食品添加物は安全アピールでした。

 区民は、国や事業者の宣伝を聞きたいのではありません。食品添加物を使わずに大変な努力をして安全な食品をつくっている方もいらっしゃいます。動画配信のみの形で、区民の意見も聞かれない一方通行の講座であったと感じました。

 ただでさえ分かりにくい食品添加物の表示、特に令和四年三月に出された食品添加物の不使用表示に関するガイドラインは、無添加表示すらもあやふやにするものになっています。

 私たち消費者には知る権利、選ぶ権利があります。そのための正しい情報は必要です。日本の基準に対して不安に感じた多くの消費者が運動したことにより、平成十五年に東京都には食品安全条例ができました。

 翌年には、化学物質の子どもガイドラインもつくられています。このガイドラインには、一般に化学物質が与える影響は、成長期の子どもと大人に対する場合とは大きく異なるとあります。国の基準は、まだ健康な成人男性です。体の小さな子ども、妊娠している人や体の弱い人、高齢者にとって安全とは言い切れません。海外で禁止されている食品添加物も認められているような日本の現状です。

 仮に食品添加物の一つ一つが基準をクリアしていても、複合的に使われた際の危険性も不安です。なぜ今このテーマを取り上げ、このような内容で講座を行うのか、この講座のテーマ設定、目的、講師の選び方、効果などを伺います。

 せたがや食品衛生講座は毎年度ごとに開催しているということですので、今後は区民のニーズを捉え、不安解消につながるテーマや講師の選定を行うよう求めます。

 世田谷区民意識調査などで、食についての調査も入れるべきと考えます。食料自給率三八%の日本ですから、海外の動きに大きな影響を受けます。その時々で状況も変われば、区民の興味関心も変わります。

 食べることは生きること、食は体をつくるだけでなく、心も支える命の源、重要課題と考えます。今後の食品衛生講座は、一方通行でなく、区民の思いに応え、本当に知りたい、聞きたいものとなるよう求めます。区の見解を伺います。

 以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

◎障害福祉部長 私からは、地域共生社会の実現に向けて障害理解を促進するための社会モデルの考え方について御答弁を申し上げます。

 障害の社会モデルとは、障害は心身機能の障害と、社会的障壁との相互作用によってつくり出されるものであり、そのバリアを取り除くのは社会の責務であるとする考え方です。

 バリアの除去に当たっては、過度な負担にならない範囲の対応や調整を行う合理的配慮が求められます。例えば建物に段差というバリアがある場合、状況に応じて段差解消の工事やスロープ設置のほか、スタッフによる介助といった対応も考えられます。

 今回の(仮称)世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例(素案)においても、この障害の社会モデルの考え方は重要であり、基本理念に位置づけております。区職員や事業者だけではなく、多くの区民の方にも知っていただき、御理解いただく必要があると考えてございます。

 今後、ホームページなどを活用いたしまして具体的な事例を紹介しながら、障害理解の促進に向けた効果的な周知啓発を図ってまいりたいと考えてございます。

 以上です。

◎みどり33推進担当部長 私からは、インクルーシブな公園づくりについてまとめてお答えいたします。

 区ではこれまで公園を新設改修する際は、ユニバーサルデザインの考えによる、誰もが利用しやすい施設整備に取り組んできており、議員御紹介の車椅子に乗りながら遊べる高床式の砂場設置などのほか、昨年度はインクルーシブ遊具として製造販売されている、車椅子からも乗り移りやすく、緩やかに回転する遊具を二つの公園で設置しております。

 一方で、誰もが利用しやすく楽しめる公園としていくには、インクルーシブ遊具を設置すれば終わりではなく、園内の移動円滑化をはじめ、利用者の様々な特性を踏まえたバリエーション豊かな遊具設置のほか、虫や鳥の声や水の音などの聴覚、花の香りなどの嗅覚といった五感で自然環境を楽しめる工夫など、様々な利用を考える必要がございます。

 現在、来年度改修予定の公園で、ユニバーサルデザインに関する様々な利用を住民参加により検討していこうと考えており、委託事業者選定に向け作業を進めているところでございます。

 今後もインクルーシブ遊具の設置のほか、様々な利用を想定したユニバーサルデザインによる施設整備や啓発に取り組むことで、障害のあるなしにかかわらず誰もが日常的に楽しめる公園づくりを目指してまいります。

 以上でございます。

◎高齢福祉部長 私からは、世田谷区認知症とともに生きる希望条例の視点を生かしたまちづくりについて二点御答弁いたします。

 最初に、アクション講座の現状についてです。

 区では、令和三年度に認知症サポーター養成講座をリニューアルし、区独自の新しいテキスト、みんなでアクションガイドや、認知症御本人が出演された動画などを使用したアクション講座を、区民、社会福祉協議会、金融機関などを対象に、各あんしんすこやかセンターや認知症在宅生活サポートセンターが実施しております。令和三年十二月から令和四年五月末時点で計二十五回、延べ九百五十名程度の方々に受講いただいております。

 受講前アンケートでは、家族が大変になる、本人の性格が変わってしまうといった認知症に対してマイナスイメージを持っていた方が、受講後には、本人主体の生活のために、本人の意見を聞き、できる限り希望を実現していくことが大切との回答が得られるなど、認知症観のプラスイメージへの転換が図られていることがうかがえました。

 引き続き各地区においてアクション講座を開催し、アクションチームの結成を後押しするとともに、認知症になってからも希望を持って、安心して暮らせる地域づくりに取り組んでまいります。

 次に、まちづくりセンターへのアプローチについてです。

 希望条例では、認知症になってからも安心して暮らせる地域を地域ぐるみで実現していくことを目指しております。そのためには、区民にとって身近な行政拠点であるまちづくりセンターを含む四者がお互いの強みを生かしながら連携し、住民主体のまちづくり活動をバックアップしていくことが重要と考えております。

 まちづくりセンターへの説明については、昨年度に引き続き、まちづくりセンター連絡調整協議会、各地域のブロック所長会に加え、今回はまちづくり・防災担当係長幹事会にも出向き、アクションチームの具体的なイメージや、まちづくりセンターの役割などの説明のほか、各地区の現状や課題の共有を図っております。

 また、今後は、まちづくりセンター、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会、児童館の四者で合同研修を行うなど、希望条例の理解を共に深めてまいります。引き続き、まちづくりセンターはもとより、多様な方々に条例や計画についての理解促進を図りながら、条例の理念に掲げる地域共生社会の実現に向けた地域づくりに取り組んでまいります。

 以上です。

◎世田谷保健所長 所管してございます世田谷食品衛生講座について二点お答え申し上げます。

 食品添加物は、保存料や甘味料など、使用により細菌などの繁殖を抑えたり、品質の劣化を防ぐ等の役割があります。その安全性は、国の食品安全委員会が有する科学的知見に基づき、一日の摂取許容量として規定されています。

 一方、摂取による健康影響や中長期的な安全性に不安を抱えている区民がいらっしゃることは区としても十分認識してございます。このため、区は食品添加物の安全性確保の仕組み、プロセスや消費者が参考にする表示方法や意味に関する情報を分かりやすく周知することを目途として、令和三年度には、食品添加物をテーマとする食品衛生講座をオンラインで開催しました。

 リスクと安全性を消費者、事業者、行政がおのおのの立場で情報を共有し、相互に意見交換を行うというリスクコミュニケーションの考え方に基づいて講師の選定を行い、具体的には、一回目には、行政機関の食品安全委員会から、二回目は、事業者である日本食品添加物協会に講師を依頼したものです。

 従来は対面開催であったものを、新型コロナウイルス感染拡大防止を受けて、動画配信により開催しております。従来と比べて参加者が大幅に拡大したものの、双方向のコミュニケーションができず、区民との意見交換ができなかったことは課題であると認識しております。

 次に、区民の食に対する不安の受け止めと今後の講座の開催についてでございます。

 区は、区民が食の不安を感じる要因を、食の安全性確保や検査のプロセス等が見えにくく、流通食材の安全性と健康との関係性をどう理解すればよいかが漠然として分からないという要素が大きいものと理解しています。

 なお、令和元年度に区が開催した食品衛生講座のアンケートでは、講座に取り上げてほしいテーマとして、食品添加物、遺伝子組換え食品、食品表示が上位を占めました。

 保健所では、国内の食品添加物の違反事例などの動向を把握し、迅速な情報提供を図るとともに、日々の業務の中で、区内の流通食品に対する検査を実施し、添加物などの適正使用等に取り組んでおります。

 今後とも、食の安全に関する区民ニーズを踏まえ、多様な手法により、分かりやすい情報提供を継続するとともに、関係者、区民の相互のコミュニケーションを通じ、安心して選択し、楽しめる食環境を整えてまいります。

 私からは以上です。

◆金井えり子 議員 様々御答弁いただきました。

 今の食のことですけれども、親としては、もう本当に子どもには少しでも有害なものを取らせたくないと思うのが、本当に親たちの多くの声だと思います。そのあたりで、やはり予防原則というところから様々なことを考えていただけたらと思います。やはり基準というのは国がつくっていくものですし、東京都ではそういうガイドラインみたいなものをきちっとつくっています。でも、世田谷区では、そうしたら何をしてくださるのかなと言ったら、やはり区民に対して本当の情報を流していただきたいというところがあります。私たち、知る権利があると思っていますので、ぜひそのあたりをお願いしたいと思っています。

 それから認知症とともに生きる希望条例ですけれども、私、十五年ほど前に地域にそういう方がいて、そのときにこの条例に出会っていたら本当によかったなと思っています。コミュニケーションが取れるようになるし、本当に地域のためになると思っています。