第3回定例会  一般質問と答弁 2022.09.21 田中みち子 

令和4年9月 定例会-09月21日

田中みち子 議員 質問通告に従って、順次質問してまいります。

まず初めに、手話言語条例の制定に向けた実効性のある取組についてです。

私は、平成二十九年三月、三十年九月の一般質問や、平成三十一年の予算特別委員会でも取り上げ、誰もが平等に言語としての手話を学ぶ環境を整えることを求めてきました。

世田谷区の身体障害者手帳を持っている聴覚障害者は、直近のデータでは約千九百人いますが、手話を使える人は約二〇%程度と言われています。聾学校では、口の動きを見て意味を理解する口語法が重視され、手話が禁じられてきた歴史の弊害が大きく、手話教育や手話通訳の配置を充実させるためにも、手話を言語として認め、広く普及する手話言語条例の制定は、聴覚障害の方々の悲願であり、私も求めてまいりました。

保坂区長は、手話言語法の制定を目指す全国手話言語市区長会のメンバーでもありました。手話言語法の動きを促進する上で必要な手話言語条例の早期実現を期待していましたが、ようやく検討することになり、当事者団体の皆様の希望につながっています。ぜひ当事者の声を生かした実効性のある条例の早期制定を求めます。見解を伺います。

また、手話を言語として位置づけ、広く普及する上では、区内に手話に触れ合い、就労にも結びつく場所が必要です。

令和二年には、手話を共通言語とした国内初の店舗、スターバックス、サイニングストアが東京国立市に開業しています。区内でも新庁舎や公共施設内での場づくりを視野に、こうした民間事業者の事例などを参考に具体的な検討を進めるべきです。見解を伺います。

さらに、手話通訳者の育成も必要です。世田谷区内には男性の手話通訳者が存在せず、通院などでの同性通訳者が求められており、課題があります。専門性が求められる手話通訳ですが、その報酬には自治体ごとにばらつきがあり、世田谷区の報酬単価は全国平均を下回ります。速やかに報酬単価を見直し、男性の手話通訳者も確実に増えるよう、せめて全国平均を下回ることがないよう改善すべきです。見解を伺います。

次に、心のバリアフリーと合理的配慮についてです。

私は、これまでも障害者差別解消法の具体的な取組を進めるために、世田谷区独自の条例の早期制定や、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックを契機に、誰もが暮らしやすいまちを目指したユニバーサルデザインや心のバリアフリーを推進することを求めてきましたが、残念ながらあまり変わっていない印象です。

生活者ネットワークでは、七月から八月にかけて、実際に車椅子を利用して、一部の商店街や横断歩道など、まちのバリアチェックを行いました。

段差が解消された道路であっても、その距離は百メートルほどで、その先は、車椅子を押す手に力を入れなければ真っすぐにスムーズな移動ができにくい状態でした。

また、店舗では、車椅子に乗ったまま利用できるトイレはほとんどありませんし、段差解消スロープは一店舗のみ、筆談ボードや点字メニューはゼロ、大型チェーン店舗では合理的配慮がなされているとは言い難く、ハード面での対応はまだまだです。

他方、ソフト面では、障害のある方や高齢の方、ベビーカーを利用する方が安心して外出でき、困った方がいたら声をかけあえる社会を目指し、心のバリアフリーを広める活動を進めるNPO法人ココロのバリアフリー計画の代表、池田君江さんのお話を伺いました。

池田さんは、バリアフリー対応のお店でなくても、周囲の優しさで行けるところが広がる、障害のある方が店舗などを訪問するときに必要なのは、バリアの有無よりも具体的な情報とも話され、令和二年からはシェアスロープを設置する店舗を増やす活動にも力を入れており、優しさをシェアする取組に共感いたしました。こうした取組にも光を当てて大きく育てていくことも必要です。

今定例会には、世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例が提出されています。心身の機能に障害のある方々などが安心して暮らし続けることができる地域にするためには、ハードとともに心のバリアフリーを進めることが必要です。見解を伺います。

また、平成二十八年の一般質問では、合理的配慮への具体的な取組として、点字メニューや筆談ボード、段差解消スロープの設置などを求め、商店街に予算がつきましたが、今年度から外されています。合理的配慮を進める上でも必要な予算です。ぜひ予算の再開を求めます。そして、シェアスロープなど設置後の店舗情報が、必要な人に届くよう、当事者団体などとも意見交換を重ねるなど、周知の工夫も併せて伺います。

次に、エディブルシティに向けた区有地の農的活用についてです。

エディブルシティとは、直訳すると食べられるまち、経済格差の広がる社会状況を背景に、新鮮で安全な食を入手することが困難なアメリカの都市を舞台に、一部の市民が始めた、アスファルトやコンクリートをガーデンに変えていく活動を紹介するドキュメンタリー映画のタイトルでもあり、御存じの方も多いのではないでしょうか。

最近では、お料理やスイーツなどのお皿に彩りを添えるように、食べられるお花、エディブルフラワーを使ったお店が人気ですが、まち全体を食べられる都市に、すなわちエディブルシティも同様に、世界に変化を促しています。

一方、私たちはロシア連邦のウクライナへの侵攻によって、既存の食料システムや社会システムがいかに脆弱かを目の当たりにしています。

日本の食料自給率は四〇%を切る中で、農への関心や新鮮な食べ物を自分で作れる環境を求める区民の声は高まっています。これまでも空き地の有効活用の一つとして、イギリスのトッドモーデンの取組を紹介し、公園や区有地の空き地などの農的活用を求めてきました。

道路用予定地や代替地など、区が所有している土地で使用されていない土地の農的活用は、みどり33の達成と気候危機を防ぐためにも重要な取組であり、積極的に進めるべきです。見解を伺います。

自己決定権が尊重された性教育について伺います。

日本の性教育の遅れは、子どもたちが性に関する科学的知見に基づいた知識を身につけることの機会と、自分自身の身を守るための手だてを奪うもので、自己決定権が尊重された性教育には程遠い現状です。

小さな子どものときから自分の体の大切な部分、いわゆるプライベートゾーンですね、こういったところを触られるようなときに、ノーと言える権利など、幼児期から自分を守るための包括的性教育の重要性を指摘し、外部講師を活用した性教育やリプロダクティブ・ヘルス/ライツの推進などを求めてきました。

区では、思春期世代に向けたリプロダクティブ・ヘルス/ライツの周知啓発の在り方について、前身の会議体である世田谷区健康づくり推進委員会から専門部会を設置し、具体的な啓発と取組への検討を進めています。

私はこれまで、性と生殖に関する権利を伴う教育は、保健所だけではなかなか進まないことから、教育所管や人権・男女共同参画課が同じテーブルに着いて議論を進めることの必要性を指摘してきました。ようやく形になり、具体的な検討が進んでいることを評価します。

今回の検討は思春期に向けたものですので、今後は幼児期から年齢に応じた包括的性教育が進むことを求めるとともに、先駆的な取組が他自治体へも波及することを期待しております。

一方、現在の義務教育の学習指導要領には、いわゆる「はどめ規定」と言われる性教育に関する制限があります。小学校五年生ではヒトの受精に至る過程が、中学校保健体育では妊娠の過程が、取り扱わないものとするなどとされており、学校現場での性教育から性交というテーマが排除されています。

また、保護者の理解や学校全体で共通理解を図ることが、中学校の学習指導要領に記載されていることで、「はどめ措置」とも言われる運用上のハードルとなり、学校での性教育は遅々として進みません。

性に関する知識不足の実態は、日本社会全体の問題です。性に関する自己決定権が尊重された地域社会の実現のためには、性教育問題を社会全体の課題と捉え、関係所管が連携し、性教育を充実させる必要があります。

区長と関係所管の見解を求めて、壇上からの質問を終わります。(拍手)

〔保坂区長登壇〕

◎保坂 区長 田中議員の御質問にお答えをいたします。

日本の性教育の現状をどういうふうに世田谷区として取り組んでいくのかという御質問です。

令和三年におきます性犯罪は、東京都内だけでも認知件数七百八十三件、東京都の相談窓口には五千九百九十四件の相談があったと聞いております。被害に遭った後も、長期間精神的なダメージを負ってしまう性犯罪は、重大な人権侵害であり、とりわけ子ども、年少の時期に被害に遭うと、これが表面化しにくいという深刻な犯罪であります。

このような性犯罪が繰り返され、またなかなか表面化しない背景には、日本の性教育の在り方にも一つの要因があると考えております。

私は、性に関する正しい知識を伝えることが、いわゆる議員御指摘の「はどめ規定」により制限をされていて、性行為と妊娠に至る過程の教育が行われておらず、ある出版社で聞きましたけれども、小学生が、お父さんのメダカとお母さんのメダカが泳いでいて、次に今度赤ちゃんが生まれると、これが性教育だと聞いて非常にびっくりしたことを覚えておりますが、十代の望まない妊娠も相変わらず増えています。そして、社会全体がまだまだ性に関する話題をタブー視していることも背景にあるかと思います。

その一方で、インターネットの中では、ゆがんだ性情報があふれ返っておりまして、暴力や女性の人権を踏みにじるような情報に、子どもたちはさらされて、しかも影響を受けているということも見逃せません。

性教育は人権教育であり、互いを思いやり、命、尊厳を守る取組として、幼少期から年齢に応じて、発達段階に応じて取り組んでいくことが肝要だと考えております。

区といたしましては、人権、保健福祉、教育の各機関、またトータルに、残念ながら日本の性教育、実はほとんどしっかり行われていないということをもう一度総括的に捉えて、慎重な判断と行動の下に、子どもたち自身が、あるいは成人してからも、自らの尊厳を守り、性に関する自己決定権を行使して、その自己決定権を尊重し合うという地域社会の構築に向けて取り組んでいくということをしっかりと発信をしていきたいというふうに考えております。

◎障害福祉部長 私からは、手話言語条例、それから心のバリアフリーについて順次御答弁を申し上げます。

まず、聴覚障害者の当事者交流の場、就労の場の設置についてというところになります。

お話の国立市の喫茶店は、聴者、聞こえる人と聾者、聞こえない方が共に働く場所で、多様な方々の居場所となることを目指して民間企業が開設した店舗というふうに認識をしてございます。

この店舗では、手話が共通言語となることで、聾者にとっては、障害による社会的障壁を感じることなく働ける就労の場となり、聴者にとっては、言語としての手話を身近に感じられる場所となっているものと考えております。

こうした障害のあるなしに関わらず、同じ場所で共に働き、そこに人々が自然に訪れるというような場は、障害理解の促進につながります。今後、お話の事例なども参考に、障害者団体や民間事業者、関係機関などからの御意見をいただき、課題を整理しながら検討してまいります。

続きまして、手話通訳の報酬改善や男性の手話通訳についてです。

手話通訳の報酬については、令和元年度に社会福祉法人の調査により、派遣事務所に所属する方の全国平均が、一か月五・六回の派遣で約三万三千円、一回当たりに直しますと約六千円となってございます。

派遣時間が異なりますので、単純な比較はできませんけれども、区の手話通訳の派遣は、現在、派遣時間二時間三十分で三千四百二十円となっております。

男性の手話通訳につきましては、令和三年度、全国約四千人のうち一割となっておりまして、区の手話通訳者等派遣センターに登録されている男性はゼロとなってございます。

また、聾者の方にとって手話言語は、自身の考え等を率直に伝え、他者との意思疎通を図るために必要な言語であります。日常生活において病院の受診などで、同性の手話通訳者が望まれる場面など、プライバシーにも関わってくるものというふうに考えてございます。

今後、手話言語条例の制定に向けて検討を進める中で、男性を含めた手話通訳者の養成、それから報酬の在り方、こういったものについても、当事者、関係団体等に御意見を伺いながら検討をしてまいります。

続きまして、条例制定のスケジュールについてです。

手話言語条例につきましては、本定例会に御提案している条例案の検討をする中で、同じ条例に位置づけることも検討いたしましたが、言語としての手話と、意思疎通手段としての手話を同一の条例に盛り込むことは、言語としての手話について社会の認知や理解が深まらないおそれがあるといった御意見もありました。こうしたことを踏まえまして、今般の条例案とは別に、独立した条例として検討することとしております。

今後、令和六年度から次期せたがやノーマライゼーションプランが始まります。この検討のスケジュールと併せ、手話を必要とする方々の権利の尊重を基本とした手話言語条例の制定に向けまして、当事者、それから関係団体からも御意見をいただき、検討を進めてまいります。

続きまして、心のバリアフリーの推進についてです。

区では、東京二〇二〇大会を、障害理解を促進する大きな機会と捉えまして、国から先導的共生社会ホストタウンの認定を受け、ユニバーサルデザインのまちづくり、パラスポーツの推進、心のバリアフリーを柱といたしまして取組を進めてまいりました。

障害理解を促進し、差別を解消するためには、道路や建物などの物理的なバリアを取り除くことはもちろんですけれども、これに加えて、様々な人々が相互に理解を深めようと、コミュニケーションを取り、支えあう心のバリアフリーがとても大切です。

区といたしましては、本定例会に御提案しております世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例案、こうしたものを基に、誰もが安心して暮らし続けることができる地域づくりに向けて、当事者の参加や活躍、それから支えあいを促す取組など、具体的な施策展開について検討してまいります。

最後に、物品助成の再開、それからシェアスロープの周知等についてです。

区では、先ほど申し上げましたが、東京二〇二〇大会を契機に心のバリアフリーを推進してまいりました。この一環として令和元年度から三年度まで、商店等に対する段差解消スロープや点字メニュー、筆談ボードなどの物品購入の助成を行っております。

本事業は、当初より期間限定だったため、三年間で終了してしまいましたけれども、ふだんはあまり接点のない事業者の方へのアプローチといったものもあり、有効な事業であったと考えております。

今般、先ほど申し上げました条例案に基づく事業といたしまして、今後の実施に向けての調整をしてまいりたいというふうに考えてございます。

また、段差解消のスロープを複数の店舗で共有して使うシェアスロープにつきましては、段差解消はもちろんですけれども、複数の店舗で共有するということで、地域のつながりづくりということにもなるかというふうに考えてございます。

先ほどの助成事業での活用や、当事者の方への情報提供など、様々検討してまいります。

私からは以上です。

◎世田谷保健所長 性教育についての保健所の取組についてお答え申し上げます。

これまで保健所では、性感染症予防教育、いのちと性の健康教育を助産師会に委託し、希望する中学、高校に出張講座を実施してまいりましたが、現状としてこの取組が区内学校全体までは広がっておりません。

今年度より思春期世代に向けたリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関わる周知啓発の在り方について、世田谷区健康づくり推進委員会に新たに部会を設置いたしました。

部会は、健康、人権擁護、教育を所管する部署との連携の下、多様な分野からの外部委員及び庁内の関係管理職委員から構成し、議論を重ねているところでございます。

先日開催いたしました保護者と若者世代を対象に実施したワークショップでは、性的接触や性交について教育を受けてこなかったので、正しい知識を教えてほしい、性について語り合う場が欲しいなどの声をいただきました。

さきの常任委員会においても、検討状況について様々な御意見を頂戴しております。区としては、初めての取組でございますが、議会をはじめ公の場で議論をいただいていることに意義を感じております。

引き続き専門部会で議論を深め、庁内連携の下、世田谷区の思春期世代に届く周知啓発を実現させてまいります。

私からは以上です。

◎教育政策部長 私からは、自己決定権が尊重された性教育について、教育委員会の取組についてお答えいたします。

現在、教育委員会では、担当職員が、世田谷保健所が推進する思春期世代に向けて性教育の大切さを周知啓発することを検討する専門部会、思春期世代に向けたリプロダクティブ・ヘルス/ライツ周知啓発専門部会に参加しております。

そこでは、思春期世代が心身の健康についての正しい知識等を身につけ、心身の健康を保持することを共通の目的として検討を進めております。

各学校においては、児童生徒の発達段階を考慮しながら、性に関する基本的な知識等を習得させるとともに、対話を通して自分の意見を表明したり相手の意見を受け止めたりしながら合意形成を図っていく能力を育成することなどとしているところです。

また、希望する学校には、産婦人科医や助産師を派遣して、命の尊さや望まない妊娠、性感染症予防などについて、生徒が専門家から学ぶ機会を設定するとともに、他校の教員がこれらの授業を参観し、学校の実態に即した性教育の推進を図ることができるよう周知しております。

引き続き専門部会の検討状況を踏まえ、区長部局や東京都教育委員会等と連携し、各学校の性教育が充実するよう取り組んでまいります。

以上でございます。

◎都市整備政策部長 私からは、区有地の農的活用、地域コミュニティーの醸成についてです。

国は、都市における農地がもたらす機能は、農作物の供給にとどまらず、良好な緑や景観、防災機能などの多様な期待から、都市農業振興基本計画におきまして、都市農地の位置づけを、宅地化すべきものから都市にあるべきものへと大きく方向転換し、この間、生産緑地法の一部改正や制度の創設など、農地保全への施策を展開してきてございます。

区では、農地保全や農業振興を喫緊の解決すべき課題と捉えまして、様々な施策に努めてきており、その中の一つに、多面的な機能を有する地域の財産として、区民と農がつながる取組を広げながら、農地の保全と活用を進めていくことといたしまして、令和三年度より官民連携による提案型協働事業を実証的に始めたところでございます。

この取組は、区有地を暫定的に活用し、NPOや地域の皆さんとの協働により、多様な方々とのつながりを育てる畑を目指し、名称をタマリバタケとして農的活用を進め、農の大切さと農の多面的な機能の理解を深めながらコミュニティーの醸成を図るもので、休日には家族連れなど多世代にわたり多くの人が集まり、自然共生農法や堆肥づくり、ベンチづくりなどを通じて、人と人との新たな交流が生まれております。

一方で、継続的な活動場所や財源など、さらなる展開に向けた課題も見えてきたところでございます。

区といたしましては、こうした取組を通じて、さらなる農への理解、環境や景観形成、教育に加え、地域のコミュニティーの醸成にも大いに寄与するものと考えており、さらなる活動につながるよう、引き続き庁内連携してまいります。

以上でございます。

田中みち子 議員 この続きは決算で行います。

以上です。