第1回定例会 一般質問と答弁 2023・02・21 高岡じゅん子

令和5年3月 定例会02月21日

高岡じゅん子 議員 通告に基づき順次質問します。

初めに、来年度を初年度とする新たな世田谷区地球温暖化対策地域推進計画に基づくカーボンニュートラル実現に向けて質問します。

 二〇三〇年までのCO2削減目標値を二〇一八年計画の二七・三%から六二・六%まで高め、二〇五〇年までに世田谷区がカーボンニュートラルを確実に実現することがこの計画の目標です。気候危機を深刻な課題と考える多くの区民の声に押され、さらなる削減を目指すことも書き加えられました。これには、建物の環境性能の向上による省エネと区内での創エネがその鍵になります。

区民は、世田谷区役所がどのぐらい真剣にCO2削減に取り組もうとしているかに注目しています。まずは、区の率先行動に関して二問質問します。

昨年は、エネルギー価格の高騰を受け、世田谷区の公共施設の光熱費も度々の増額補正が必要になりました。世界的なエネルギー価格の上昇、高止まりは今後も続きます。この状況下では、少し建設コストが高くとも環境性能のよい建物をつくることが、未来への先行投資として意味が出てきます。先日、本庁舎整備における断熱材の厚みを十ミリ増やす仕様変更について報告を受けました。新築時でのこの追加投資は、光熱費の削減効果により、八年で回収できる見込みです。財政所管として、世田谷区の公共施設の環境性能を上げることの投資としての意義をどう捉えているのか伺います。

国の建物の省エネ基準もこの数年間で急速に変化し、令和四年度から、官公庁新築に当たっては、ZEBオリエンテッド以上となりました。東京都や横浜市などは今年一月、公共施設の標準仕様書の変更を発表し、より高い基準での公共施設整備を目指しています。世田谷区の公共施設のZEB化に向けての取組状況についてお答えください。

世田谷区内のCO2排出の四四・六%は家庭部門からの排出であり、できるだけ多くの区民が地球温暖化対策を自分事として考え、実現に向け行動することが必須になります。しかし、何ができるか、どこから手をつければいいのか、多くの区民には十分な情報が行き渡っていません。

先日、区内で地球温暖化に対して活発に活動してきた六団体が参加し、気候危機区民会議が開催されました。CO2排出削減に向け行動する区民の裾野を広げ、この問題に関心を持たなかった区民にも行動変容を促していく必要性を再確認するにとどまり、各団体の得意分野を生かした具体的な展開には至りませんでした。この会議を単発に終わらせず、区内の団体、人材の力を生かし、気候危機対策の充実を図り、より広い区民を巻き込んだ運動につなげるべきと考えます。今後の気候危機区民会議の発展に向けた取組について伺います。

未来の世田谷を担っていく子どもたちが主体的に気候危機問題に取り組むことは、特に重要です。今年度は、無作為抽出による三千人の子どもたちに対し、環境に関する意識調査が行われ、大人の会議に先立ち、せたがや子ども気候会議が四月には始まると区長の招集挨拶にもありました。

調査では、子どもたちへの支援として、取組を進めるためのアドバイスと表彰が欲しいとの声が上がっています。来年度予定されている子どもエコ活動コンテストは、子ども自身の疑問や問題意識から活動を表彰するものであり、多くの参加が期待されます。今年度に引き続き、区が養成した大学生の環境サポーターによる出前授業を活用し、気候危機区民会議などでつながった区内の活動団体などからもアドバイスや協力を受け、より実践に結びつく、子ども主体の環境学習活動を進めていく必要があると考えます。教育委員会の見解を伺います。

次に、災害関連死ゼロに向けて質問します。

生活者ネットワークは、阪神・淡路大震災の頃から、避難所における女性の性被害、食事や衛生面など、避難所を生活の場として整える必要性を主張し続けてまいりました。十二年前の三・一一、東日本大震災後の避難所においても、こういった基本的な課題は解消されておらず、多くの災害関連死が引き起こされました。その反省に基づき、災害関連死をゼロにすることが世田谷区防災計画の目標の一つとなっています。区はこの問題にどのように取り組み、改善してきたのか伺います。

一月末には、東京都の防災計画(震災編)の改定素案が発表されました。この中の災害関連死の施策に注目しています。世田谷区でも、女性リーダー育成や避難所資機材、ベッド、トイレや衛生、調理、そして通信の確保をさらに進めることに加え、地域の在宅避難者を孤立させない災害ボランティアコーディネーターなどの活動推進が必要ではないでしょうか。来年度は区の防災計画改定に向け検討を進めることになりますが、今後の取組について伺います。

どんなよい計画ができても、自分たちの地域、地区で実践できなくては意味がありません。地域行政推進条例もでき、来年度以降、地区ごとの防災への取組が一層実践的になるものを期待しています。全ての避難所にマンホールトイレなどが配備されていますが、現場での使用の訓練などはあまり行われていません。平時からやれていないことは非常時にはできません。より実践的な災害に向けた訓練について伺います。

災害時には、平時からの人権意識が試されます。百年前、関東大震災三日後、デマの飛び交う状況の中、世田谷区内でも、朝鮮半島出身の土木作業員が路上で撲殺されるという事件が起こっています。このようなことが起こる背景には、当時の社会全体にはびこっていた偏見と無責任に流された誤情報がありました。現代の私たちは、この百年前に比べ、直接的な暴力の温床となる文化的暴力、偏見、差別をどこまで乗り越えることができているのでしょうか。

昨年の外国人区民意識調査の結果を見ると、世田谷にお住まいの四五・九%、約半数の外国籍の方が偏見や差別を感じることがあると答えています。具体的に差別を感じる場面としては、住居を探すときが一番多いです。賃貸住宅契約時に不動産事業者が貸し主に対して、外国人の方ですがいいですよねと念押しするのはあり得ることです。こういった扱いが差別の構造を温存することにつながっているということに気づき、払拭していくことが必要です。来年度は、世田谷区多文化共生プランの次期計画づくりが始まります。外国人差別をなくしていくための今後の取組について伺います。

世田谷区は、外国人差別に限らず、人権尊重を推進するための世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を持っています。今議会の議案となっている個人情報保護条例の全面改定においても、この条例を持っていることを根拠とし、国籍、性的指向、DV被害者などの情報を条例要配慮個人情報として特に手厚く保護することができました。人権配慮としての個人情報の扱いは、今後一層丁寧な対応が求められます。特に窓口での言葉で区民を傷つけてしまうことや、ミスで情報を漏らしてしまうことなどがないよう、人権意識を高めて取り組む必要があります。世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を持つ区としてのビジョンを伺います。

最後に、日常の中の非平和、差別を乗り越える対話による区政運営について、区長の見解を伺います。

平和学における非平和とは、武力戦争のことだけを意味するのではありません。ふとしたところで露呈される人権規範の不足、差別、偏見は、日常の中の暴力であり、社会が実は平和でない非平和な状況であると言えます。デマやフェイクニュースは、この差別を助長します。正しい判断には、正確な情報がまず必要です。さらに、意見対立がある場合でも、問答無用と切り捨てることがなく、多様性を認め合い、対話を続けることでしか、人権意識の根づいた健全な民主主義社会は保っていけません。区長には、区政の隅々まで、憲法にも保障されているこの人権規範を徹底させる義務があります。対立をあおる情報に惑わされない対話、人権規範の徹底を区政の根幹として、これからも区政に臨んでいただきたいと考えます。区長の見解を求めます。

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

   〔保坂区長登壇〕

◎保坂 区長 高岡議員にお答えいたします。

この対立をあおる情報に惑わされない対話の重要性についての見解ということでございます。

今日、対立をあおる情報による偏見や差別は、最近では、匿名性や情報発信のしやすさから、SNSによる誹謗中傷や偏見、差別、これが後を絶ちません。誰もがやっているから、やっている方が多い、そういう言動が多いからという責任転嫁や、あるいは、ゆがんだ排外的な敵対感情、また、誤ったラベリングの暴走により特定の個人や団体が攻撃される、こういったケースが数多く発生をしております。

差別的な言動があった際、その言動を用いた側に注意喚起することだけでは、人権侵害がなくなることが残念ながらありません。誰もが加害者、傍観者、被害者にならないように、日頃から他者の人権を思いやる気持ちや、無意識のうちにしてしまう行動を改めて客観的に見詰め直す意識を持つことが大事だと思っております。

そして、こうした今日の風潮を防止するために、そのリテラシー教育、まさに子ども、若者の段階で人としての尊厳を捉えて、互いに人格を攻撃をしたり中傷することは、たとえ、有形力――物理的な力ですね――でなくても、暴力であると、暴力として作用することがあるということをきちんと伝えていくことが重要だと思います。

そして、対立を生み出す事柄について問題提起をし、多様な視点を持った人と一緒に考え、対話によって平和的な関係を築いていく行動は、人権遵守の基礎となると考えております。

私は、歴史的にこれを振り返り、かつてこの社会に根強くあった民族、宗教、肌の色などによる差別が、残念ながらこれは消えておらず、次世代に伝わって、今日残存しているということも捉えながら、改めて他者の考え方を尊重し、互いに信頼が形成できる、憲法に保障されている人権尊重の地域社会に向け、区が率先して意識変革を進めて、開かれた対話による区政運営を目指していきたいと考えております。

以上です。

◎政策経営部長 私からは、区の公共施設の環境性能への投資について、財政所管としての認識を御答弁いたします。

世田谷区地球温暖化対策地域推進計画におきまして、施策の柱の一つに区役所の率先行動を掲げており、区役所は区内最大の事業者として、公共施設整備や維持管理等の様々な場面におきまして、脱炭素を推進していく必要がございます。

本庁舎整備におけます断熱材や窓ガラスの仕様変更のような公共施設等総合管理計画に示す財政目標を基本としまして、将来負担の軽減あるいは平準化を図る初期投資については効果があるものと認識をしております。

今後、ZEB指針の策定や公共施設等総合管理計画の改定を予定しておりますが、計画に掲げる目標を踏まえ、費用対効果を十分に検証した上で、省エネ性能を備えた公共施設整備に係る財源確保を図ってまいります。

以上でございます。

◎施設営繕担当部長 私からは、区の公共施設のZEB化に向けた取組状況についてお答えいたします。

二〇二一年十月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画では、公共建築物における二〇五〇年、ストック平均で、ZEB水準の省エネルギー性能の確保など、我が国の新しいZEBの実現に向けた目標が設定されました。

区では今年度、プロポーザルを実施した上で、来年度予定している公共建築物におけるZEB指針の策定に向けて、大成建設株式会社をパートナーとして選定し、作業に取り組んでいるところです。令和五年度にはZEB指針を取りまとめ、財政負担を伴う対応を公共施設等総合管理計画に反映し、新築、改築、あるいは改修の機会を捉え、世田谷区の公共建築物のZEBの実現について取り組んでまいります。

以上です。

◎環境政策部長 私からは、気候危機区民会議の今後について御答弁申し上げます。

脱炭素社会の実現に向けては、区民や事業者等の様々な活動主体が生活や事業活動の中で自分事として行動を進めていくことが求められています。

区では、これまでも機会を捉え、様々な主体が参加することができる意見交換等の場を設定してまいりました。本年二月十日には、新たな連携、協働の創出につなげる機会として、日頃から環境に高い関心を持って活動されている環境団体等による気候危機区民会議の第一回を開催したところです。会議では、六団体、三十四名が参加され、日頃の活動紹介に続き、今後の気候危機への取組について御議論いただきました。

次年度以降も、区民や事業者一人一人の脱炭素に向けた行動の裾野を広げるための効果的な取組について、他自治体の気候市民会議の手法も参考に、引き続き検討してまいります。

以上でございます。

◎教育総合センター担当参事 環境教育についてお答えいたします。

教育委員会では、様々な関係課と地域事業者と連携を図りながら、脱炭素社会に向けた環境教育を進めているところです。今年度、環境政策部と連携し、世田谷区環境出前授業をスタートさせ、小学校七校で実施したところ、自らも持続可能な社会を目指していきたいという子どもたちの声が多く聞かれました。このような子どもたちの環境保全への意識の高まりを、次年度より開催される子どもエコ活動コンテストにつなげ、さらに子どもたちの主体的な環境活動を支援していきたいと考えております。

今後も、関係課や環境分野を専門とする人材、事業所等と連携を図り、実践に結びつく環境教育を推進してまいります。

以上でございます。

◎危機管理部長 私からは、災害関連死ゼロに向けた取組について二点御答弁申し上げます。

初めに、災害関連死の問題にどのように取り組み、改善してきたのかについてです。

被災者の避難生活上のストレス等に起因する災害関連死につきましては、過去の災害における反省も踏まえ、区の地域防災計画において死者数をゼロにすることを目標に掲げ、関連施策の推進に取り組んでおります。特に避難所の生活環境に関しましては、多様性に配慮した女性の視点を踏まえた避難所運営体制の確立のため、現在進めている避難所運営マニュアルの見直しの検討に際して、せたがや女性防災コーディネーターにも御参画いただくなどしながら、具体の取組を進めているところです。

また、社会情勢が刻々と変わる中、最新の感染症対策の知見や、区民防災会議などの御意見等も踏まえ、このたびの当初予算案では、段ボールベッド等の備蓄や避難所の衛生管理の専門アドバイザー派遣などの経費を計上しております。

続きまして、今後の取組についてでございます。

今般公表された都の地域防災計画素案では、避難所内の環境整備と併せ、在宅避難者等に対する支援体制の構築、強化が掲げられております。避難所の生活環境の改善はもとより、家族やペットと一緒にプライバシーも守られた環境で過ごせる在宅避難を推進することは、災害関連死の抑制のために重要な取組であり、必要となる支援体制の整備を目指すこととしております。

こうした都の方針は区の方針と方向性を同じくするものであり、今後、都の関連施策も活用しながら、避難生活の生活環境の向上に向けた取組を加速していきたいと考えております。

いずれにいたしましても、発災から復旧、復興までを通じ、被災者の心身の健康を守ることで、災害関連死ゼロを目指してまいります。

私からは以上です。

◎北沢総合支所長 私からは、マンホールトイレなどに関した実践的な災害訓練についての御質問にお答えいたします。

現在、避難所運営訓練などでは、様々な体験型の訓練を行っており、マンホールトイレのテントと便座を組み立て、井戸水をマンホールにためてトイレットペーパーを実際に流してみるという訓練を行った避難所もあります。また、青少年地区委員会と防災塾の共催で、かまどベンチに火をつけてお湯を沸かしおにぎりを作る体験の実施を予定している地区もございます。楽しみながらも役に立つような体験型の取組は、より多くの区民に参加いただくきっかけにもなる中で、災害への備えを再認識できるなど、地域防災力の向上につながる効果があります。

区といたしましては、各地区での様々な工夫を避難所運営委員会などの関係者間で情報を共有するとともに、他自治体を含む先進的な取組を提案することなどにより、実践的な訓練が広く実施されるよう取り組んでまいります。

以上でございます。

◎生活文化政策部長 私からは二点お答えいたします。

初めに、外国人差別をなくすための取組についてです。

昨年実施した世田谷区における外国人区民の意識・実態調査から、多くの外国人が偏見、差別を感じている実態が明らかになる中、区としましても、差別の解消は大変重要な課題と認識しております。

世田谷区多文化共生プランにおいては、多文化共生の意識づくり及び偏見、差別の解消を基本方針の一つに掲げ、様々な交流事業等を通じて、人権を尊重し合いながら共に暮らしていける多文化共生の意識づくりに取り組んでおります。

今回の実態調査の分析結果も踏まえ、現在準備を進めている(仮称)世田谷区第二次多文化共生プランの策定に向け、関係団体にもヒアリングを行うなど、実態を把握しながら、差別解消に向けた効果的な手法を検討してまいります。

次に、多文化条例を持つ区としてのビジョンについてです。

区では、日常生活のあらゆる活動において人権尊重の視点を根づかせるよう、人権週間記念事業、人権擁護委員による活動のほか、庁内職員に向けた研修、メールマガジン等により人権意識向上に努めております。先日、梅まつりにも人権男女共同参画をテーマに出展いたしましたが、大変多くの方々に人権に関するクイズ、アンケートに御参加いただいたところです。

多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例の施行から約五年となりますが、性的マイノリティーへの理解促進など、職員をはじめ多くの区民の方々が多様性の尊重に対して意識が高まっていると感じております。

今後、多様性を尊重することが当たり前となる社会を目指し、地域のコミュニティーをはじめ、区の窓口や事業実施など、あらゆる機会を通じて人権意識が隅々まで行き渡るよう普及、啓発に努めてまいります。

以上です。

高岡じゅん子 議員 御答弁いただきまして、公共施設の維持管理、さらに整備に関しては、やはりランニングコストの視点をきちんと精査して、財源確保と同時に、区民サービスの維持向上という視点で取り組んでいただきたいと要望いたします。

また、子ども気候会議にとても期待しております。