令和7年12月 定例会11月28日
初めに、SRHR、性と生殖に関する健康と権利を基盤とした性犯罪・性暴力被害者支援について伺います。
先月二十日、厚生労働省が国内初となる緊急避妊薬、通称アフターピルのスイッチOTC化を承認し、来年春頃から薬局等での販売が開始されることとなりました。これにより、今後は医師の処方箋がなくても登録薬局で緊急避妊薬を購入できるようになります。市販化の決定は、薬剤師の立会いの下で服用する、いわゆる面前服用の義務づけや、試験販売時の一錠七千円から九千円に基づく高額な販売価格の問題など、依然として課題は残るものの、意図しない妊娠の予防という点でSRHR保障の重要な前進であり、これを機に区のSRHR施策もさらに深化すべきと考えます。
区では、四月施行の犯罪被害者等支援条例の下で緊急避妊等に係る医療費助成を行っていますが、まだ利用実績はありません。今回、緊急避妊薬の購入、服用に当たり、年齢制限を設けず、親の同意も不要とした国の方針決定を受け、区も未成年者の本制度利用に係る保護者の同意・同伴要件を見直すと聞きますが、どんなによい制度があっても必要な人に届かなければ全く意味がありません。
そこで、適切なケアへのアクセス改善に向けて、以下三点伺います。
第一に、条例が規定する性犯罪被害とは何を指すのかについてです。一般に性犯罪と聞くと、見知らぬ男性から女性へのレイプを想像する方も少なくありません。しかし、これはレイプ神話と呼ばれる性暴力の実態を歪める偏見の一種であり、被害者への不当な非難や二次加害を引き起こすだけでなく、ここから外れる被害者が適切なケアにつながるのを阻んできました。
しかし、二〇一七年と二三年の刑法改正によってレイプの法的定義は少しずつ拡張され、今や性別等を問わず被害者、加害者にもなり得ることや、配偶者間、パートナー間の同意のない性交等も犯罪として明確に位置づけられています。かかる点も踏まえ、本条例が規定する性犯罪の定義を改めて伺います。
また、性暴力とは同意のない性的行為全般を指しますが、法律上に規定される性犯罪はそのごく一部にすぎません。例えば、一般社団法人ソウレッジが実施した調査によると、避妊をしてもらえなかった経験がある人は三五・四%に上りますが、これは性的自己決定権を侵害する性暴力に当たります。条例第二条の定義を踏まえるなら、こうした避妊への協力拒否や同意なくコンドームを外すステルシングなど、現行の刑法等性犯罪には明確に該当しないものの、性暴力と定義される行為による被害は、本条例が言う性犯罪被害に含まれるでしょうか。当該被害に対する各種支援策の適用範囲について、併せて区の見解を伺います。
第二に、制度周知の在り方についてです。レイプの法的定義は徐々に見直されてきた一方、社会的な認識はなかなか変わりません。そのような中で、性犯罪被害と言われて、どれほどの人が被害に遭ったときに自分もケアを受けられると思えるでしょうか。性暴力についてはいまだ声を上げにくく、被害者自身も被害として認識できないことも多いです。実際に条例が対象とする性犯罪、性暴力の範囲は社会的な認識よりも広いのなら、ケアや支援を必要とする当事者の区民にとって分かりやすく、制度利用にかかる心理的ハードルを下げられるよう、相談窓口や制度周知の在り方を改善すべきと考えますが、区の見解を伺います。
第三に、薬局等との連携によるアウトリーチについてです。緊急避妊薬の市販化に先立ち、国が示した販売対策によると、性交同意年齢の十六歳未満や、性犯罪被害等が疑われる購入者に対しては、今後は薬局等がハブとなって支援情報や支援機関の連絡先等をまとめたリーフレット等を提供するほか、地域のワンストップ支援センターや児童相談所、産婦人科医等の関係機関との地域連携が求められています。翻って、区が実施する緊急避妊薬等の経費助成は、自ら薬局等で購入した薬代の事後精算も可能とされています。
そこで、性犯罪被害に巻き込まれたのに経済的負担から緊急避妊薬の購入をためらう人を減らし、かつ、その後の適切なケアにつながる可能性を少しでも広げるべく、市販化を機にハブ機能を担う区内薬局との連携を強化し、区の犯罪被害者等支援に関する取組をより広く周知することができないか、見解を伺います。
次に、性暴力を容認しない世田谷区に向けて伺います。
性犯罪、性暴力に対して、被害者支援の拡充と併せて、加害行為の防止が不可欠です。これは、第一義的にはバウンダリーや性的同意といった対人関係の基本を学ぶ包括的性教育によって進むものと考えますが、同時に、社会全体で性暴力を容認しないという意識を広く浸透させていくことが肝要です。
昨今、自治体職員や教職員等によるセクハラ、性暴力事件も度々報道されていますが、当区も対岸の火事ではありません。過去に区職員による女性への性的暴行や園児への性加害が発覚した際、当会派は再発防止を強く求めてきましたが、その後も職場でのセクハラ、電車内での加害行為、駅での盗撮再犯と、毎年発生しています。
職員によるわいせつ事案が相次いだ横浜市は、今月より懲戒処分の処分量定を定めた懲戒処分の標準例を改正し、わいせつ行為等のうち、淫行、痴漢、盗撮行為の処分量定を一律免職に改めました。一方、当区の懲戒処分の指針を見ると、免職となるのは強制わいせつ――今は不同意性交わいせつですが――と児童買春のみ、十八歳未満の者への淫行は免職または停職、痴漢行為は停職または減給、盗撮、のぞき、児童ポルノの所持・提供等、その他のわいせつな行為は免職、停職、減給または戒告とされています。痴漢や盗撮等の行為も一律免職または停職としている豊島区や足立区等の他区や東京都の指針と比べても、その量定は性暴力に寛容過ぎると思われても仕方ないのではないでしょうか。
公権力による処罰の妄信には慎重であるべきと考えますが、行政が発するメッセージの重みに鑑みても、この現状は変えていくべきです。特に盗撮行為は、二〇二三年の刑法改正と同時に施行された性的姿態撮影等処罰法に基づく撮影罪に当たり、三年以下の拘禁刑または三百万円以下の罰金に値する犯罪です。こうした昨今の法改正や社会情勢の変化等も踏まえ、性犯罪、性暴力に関する職員の懲戒処分の厳罰化が必要と考えますが、区の見解を伺います。
また、性暴力を容認しない世田谷区に向けて、今後、職員研修をどのように強化していくのか、併せて見解を伺います。
次に、(仮称)世田谷区第三次男女共同参画プランについて伺います。
令和九年度から五年間を計画期間とする新プランに関しては、現在、骨子案作成に向けた検討が進められています。推進の方向性として、あらゆる分野においてジェンダーの視点を取り入れ、施策を展開していく世田谷版ジェンダー主流化が掲げられた点は期待をしていますが、他方で、昨年、国連女性差別撤廃委員会、CEDAWから出された日本政府の条約履行状況に対する総括所見や各種勧告に全く言及がないことは課題と考えます。
緊急避妊薬のスイッチOTC化もCEDAW勧告を踏まえた対応であることに鑑みれば、その意義は大きく、今後のジェンダー平等施策を推進する上で区においても積極的に参照し、次期プランに反映していくことを求めます。
特に、昨年の定例会では区の特定事業主行動計画の改定に当たり、CEDAW勧告を踏まえた目標設定等を求めましたが、課題は管理職における女性職員の割合のみにとどまりません。例えば、区主催のシンポジウム等において登壇者が一方の性に著しく偏っているといった光景はいまだに見受けられ、日常レベルの意識変革も必須です。
次期プランでは、各種指標の設定と併せて、意思決定層から区の個別事業に至るまで、あらゆるレベルで多様な女性と男性がフィフティー・フィフティーとなるパリテを前提とし、庁内にもその意識を浸透させる具体施策を盛り込んだ計画としていただきたいです。区の見解を伺います。
最後に、ジェンダーの視点を取り入れた文化芸術振興について伺います。
先日、世田谷美術館で開催されたミュージアムコレクション展「もうひとつの物語――女性美術家たちの100年」を鑑賞しました。戦前、東京美術学校、現東京藝術大学に女性の入学が認められなかった時代に女性がアーティストを目指すことがどれほど険しい道だったか知るとともに、今なお男性至上主義が根強いアートワールドにおいて、依然マイノリティーの女性アーティストへのエールの気持ちが込められた構成は大変すばらしいものでした。
二〇二二年に表現の自由調査団がまとめたジェンダーギャップ白書によると、国内の美術大学におけるジェンダーバランスは女子学生が七三・五%を占めるにもかかわらず、過去十年間に国内の主要美術館で開催された個展数に占める女性アーティストの割合は一五・四%にすぎないこと、別の調査が示す国内美術館の収蔵品の男女比でも女性は約二割にとどまることなど、各種データはアートに携わりたい女性はいるのに十分活躍できていない実態を明らかにしています。
区は、世田谷美術館、世田谷文学館という貴重な公立施設を有しており、こうした構造的な格差是正にも積極的に貢献していただきたいです。今後の展覧会の企画に当たり、展示基準にジェンダーの視点を加え、区としても積極的に女性アーティストに光を当てるアファーマティブ・アクションを推進いただきたいです。見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
◎生活文化政策部長 私からは、五点の質問に御答弁申し上げます。
初めに、性犯罪・性暴力被害者支援について三点、順次御答弁申し上げます。
まず、条例が規定する性犯罪の定義は何か。また、各種支援策の適用範囲についてでございます。
世田谷区犯罪被害者等支援条例における犯罪等の定義につきましては、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為と定めてございます。性犯罪に関する定義につきましては、各種支援要綱で刑法第百七十六条、不同意わいせつ、第百七十七条、不同意性交等、第百七十九条、監護者わいせつ及び監護者性交等、第百八十一条、不同意わいせつ等致死傷、または第二百四十一条、強盗・不同意性交等及び同致死、及びこれらの罪の未遂罪としており、こうした性犯罪につきましては、たとえ婚姻関係があっても犯罪として成立いたします。
区は、これらの性犯罪被害者に対して給付金や日常生活支援などの支援の対象としてございます。なお、避妊への協力拒否やステルシングなどは内閣府においても性暴力に該当するとされてございますが、刑法上の罪に当たらないことから、現在のところ、支援策の対象とはしてございません。今年度中に学識経験者等を交えた犯罪被害者等支援検討委員会を開催する予定ですので、性暴力の被害者につきまして、その捉え方など、御意見を頂戴してまいります。
次に、相談窓口や制度の周知の在り方の改善についてでございます。
性犯罪の被害に遭われた場合、被害者が警察署や相談窓口に相談しづらい状況であることは認識してございます。区の相談員は、いわゆるレイプに加え、盗撮や痴漢などの被害についても相談を受けてございます。相談者から丁寧にお話を聞き取り、必要な支援を御案内するほか、本人が希望する場合には警察署や医療機関への同行も行っております。
今後は、性犯罪の事案に応じて相談員を担当制とすることや、性犯罪となる具体的な事案の例示も行い、相談窓口や制度の周知の在り方について工夫し、性犯罪の被害に遭われた方が安心して相談窓口に相談できるよう努めてまいります。
次に、緊急避妊薬支援に関し、区内の薬局と連携し、取組をさらに広く周知していくことについてでございます。
区では、性犯罪の被害に遭われた区民の方に対しまして、警察署への被害届を提出しない場合においても緊急避妊薬購入にかかる費用について助成制度を設けております。本制度は、犯罪被害を受けた方々への支援の御案内リーフレットを活用し、周知啓発しておりますけれども、性犯罪被害者への緊急支援に特化した内容とはなってございません。
議員お話しの区内薬局等との連携による周知啓発は有効な手段と考えておりますので、関係所管などとも連携し、効果的なチラシ等、周知媒体の作成について検討してまいります。
次に、(仮称)世田谷区第三次男女共同参画プランにおいて、意思決定の段階からあらゆるレベルにおいて、男女比五〇、五〇を前提とした計画策定についてでございます。
令和九年度からの(仮称)世田谷区第三次男女共同参画プラン検討に当たっては、国の基本計画や東京都の推進計画などの上位計画のほか、関連する世論調査等の結果も分析し、様々な視点で検討しているところでございます。議員お話しの昨年発出されました女子差別撤廃委員会の一般勧告や日本政府報告書に対する総括所見についても内容をよく精査し、次期プランへの反映を検討してまいります。
お話にございましたパリテは、意思決定過程において男女がフィフティー・フィフティーに参画し、女性と男性が平等に権利を行使することを意味し、男女共同参画の観点から早期に実現すべき課題であると言えます。現在の第二次男女共同参画プラン後期計画においても、各組織や会議体における女性の占める割合について目標を定め推進しており、改善傾向ではありますけれども、なかなか達成できないという現状がございます。
今後も引き続き、女性の登用を庁内に呼びかけ、さらにはジェンダー平等の推進を次期プランへ位置づけることでパリテやクオータ制などの考え方を全庁に浸透させてまいります。
最後に、ジェンダーの視点を取り入れた文化芸術振興についてでございます。
区は、第四期文化・芸術振興計画におきまして、文化、芸術に触れる、楽しむ取組を通じて区民の心の豊かさを育み、様々な価値観に触れ、そうした機会を提供することで多様性を受け入れる土壌を築くことを目指してございます。お話しの世田谷美術館のミュージアムコレクションⅡ「もうひとつの物語――女性美術家たちの100年」は、四十年にわたって世田谷ゆかりの作家などの作品を収集した収蔵品を生かし、女性美術家の歩みに光を当てることを目的に開催したもので、近年の収蔵品展の中では反響も大きく、多くのメディアにも取り上げられました。
また、世田谷文学館では近年、森鴎外の次女で世田谷に長く暮らした随筆家、小堀杏奴氏、昭和を代表する映画で映画衣装を担当した柳生悦子氏の展覧会を開催し、来年度は、自立した女性の姿を体現したと評価される宇野千代氏の収蔵品展の開催も予定しており、女性作家の企画展覧会に積極的に取り組んでいます。
美術作品や文学作品の企画展示につきましては各館の自主性や創造性を基本としてございますけれども、議員お話しのジェンダーなど多様な視点を取り入れ、魅力ある展覧会の実現に向けて、美術館、文学館と連携して取り組んでまいります。
以上でございます。
◎総務部長 私からは、性暴力を容認しない世田谷に向けてということで、二点御答弁申し上げます。
まず、性犯罪、性暴力に関する職員の懲戒処分の厳罰化についてでございます。
懲戒処分の指針は、令和二年四月に、これまでに事例のない非違行為の発生や、新たに策定された職場におけるハラスメント防止に関する基本方針などに対応するための改正を行い、現在に至っております。令和五年七月の性的姿態撮影等処罰法の制定、刑法等の改正による不同意わいせつ罪等の新設、本年十一月の横浜市懲戒処分の標準例の改正等は把握しているところでございますが、そのような中で区職員によるわいせつ行為やハラスメント等による懲戒処分が続いていることは大変遺憾に思ってございます。
処分の厳罰化は非違行為の抑制につながることが期待されますが、これまでの処分量定とのバランス、非違行為に対する昨今の社会情勢を考慮する必要があるというふうに考えてございます。法改正に沿った文言改正はもちろん、他自治体の規定を参考にしながら、時代に合わせた処分量定のアップデートについて、早急に進めてまいります。
続きまして、職員の研修の強化についてです。
職員は、公務内外を問わず法令、条例、規則や社会規範を遵守することは区民全体の奉仕者として働く上での基本的な責務です。当然ながら、性犯罪や性暴力を含めた傷害、暴行、わいせつ行為やハラスメント行為等、職員による非違行為は許されるものではございません。
社会状況が様々に変化し、時代に合わせて施行、改正される法律等を正しく理解し、職員一人一人が人権尊重とコンプライアンスを深く認識、行動し、行政の信頼性を確保するため、区では、採用年次や職層研修など、研修の機会において関係する判例や法制度、こういったものの改正等に触れるなど、引き続きコンプライアンスの意識の醸成を図ってまいります。
私からは以上です。
◆緊急避妊薬の市販化は支援につながる入り口になり得ますが、性犯罪・性暴力被害に巻き込まれた方の回復には多くの場合、中長期的なサポートが必要です。地域の民間支援団体との協働により、一人でも多くの方が適切なケアを受けられるよう早急に支援体制を構築してください。
なお、妊娠不安から緊急避妊薬を必要とする人の約七割はコンドームの破損、脱落によるものです。子どもの権利保障の観点から、特に価格が服用障壁となっている子ども、若者だけでも性被害の有無を問わず、意図しない妊娠を防ぐ最後のとりでとしての緊急避妊薬を安価な価格で入手できるよう、区でもぜひ支援を検討いただくことを要望します。
以上で終わります。
