金井えり子 議員 通告に基づき質問いたします。
まず、香害、化学物質過敏症の啓発について伺います。
前回も質問しましたが、柔軟剤、消臭剤などの人工的な香りによる香りの害についてです。これは嗜好だけの問題ではありません。自分が使わなくても、ほかの人が使う香りの成分が空気中に舞い、引き起こされる健康被害です。香料の成分もさることながら、柔軟剤などに含まれる香り入りのマイクロカプセルは、ポリウレタンの材料であるイソシアネートや毒物及び劇物取締法上の劇物に指定されるアクリルアミドなどというプラスチックでできています。柔軟仕上げ剤には、附属のキャップ一杯に約一億個のマイクロカプセルが入っており、この八割以上は下水に流れますが、洗濯物を干すと、衣類の乾燥とともに周囲に多量に飛散します。さらに、乾燥後の衣服に付着して運ばれ、空気中に香料、抗菌成分、揮発性有機化合物、マイクロプラスチックなどが飛散します。これらを吸い込むと血管に入り、血液に乗って肺胞にまで達すると言われます。これはプラスチックですから、体内で分解されるものではありません。
世田谷保健所主催で十月三十一日に、そよ風クリニック院長、北里大学名誉教授の宮田医師を招いて、シックハウス症候群の原因と対策というセミナーが開催されました。私も参加しましたが、都内で唯一の化学物質過敏症の相談ができると言われる宮田先生から、柔軟剤を初め身の回りの環境汚染物質や化学物質過敏症の症状、対策について詳しく聞くことができました。こうしたイベントも含め、とにかく、まずは多くの方に知ってもらうことが必要と考えます。その意味でも、新しくできた子ども向けチラシの活用が期待されるところですが、保健所では今後どのように子どもチラシを活用していくのか伺います。
化学物質の問題は、特に体の小さな子どもへの影響が心配されています。東京生活者ネットワークでは、都内の小中学校に向け、独自にアンケート調査をし、現在集計中です。世田谷では、小中学校全校から回答をいただきました。世田谷区の小中学校で、教職員などの学校関係者や児童生徒及び保護者や地域関係者に強い香りの着香製品の使用自粛を呼びかける、そういった呼びかけやポスター、ホームページでの啓発をしている学校はありませんでした。給食着の洗濯については、強い香りの着香製品の使用自粛を呼びかけているのは、小中合わせて四校。学校へ児童生徒や保護者等からの声としては、給食着について二件、教室内での香料と思われるにおいからぐあいが悪くなったという声も一件上っています。
自分の体調の悪さの原因が香りかどうかわからない場合もあります。子どもや保護者への啓発、周知は必要です。新しい子どもチラシは、家庭数の配付、授業で使用するなど、具体的にどのように活用されるのか、区の見解を伺います。
次に、子どもの遊ぶ権利の保障について伺います。
一九八九年に国連で子どもの権利条約が採択され、ことし十一月二十日に三十年を迎えました。一九九五年に百五十八番目として日本が批准して二十五年になります。しかし、現実には、子どもが権利を持つ存在であるという認識は薄く、子どもは大人の所有物として虐待が起きたり、子ども自身がこれを知らず、いじめが起きたり、自信を持てず命を絶ってしまうことさえ起きています。
先日、子どものころ虐待を受けていたという方から、子どもに権利があるなんて知らなかった、あのころの自分に教えたいというお話を聞きました。子どもには、どの子にも幸せに生きる権利があります。世田谷区では、子どもの権利条約を母子手帳や小中学生に配付している世田谷区子ども条例の冊子にわかりやすく載せています。世田谷区子ども計画(第二期)後期計画(素案)では、子どもの権利への意識の醸成、学習の強化、子どもの権利を守る仕組みの強化と体制の充実とありますが、子ども自身への周知についてどのように進めていくのか、区の見解を伺います。
子どもの権利条約第三十一条、世田谷区子ども条例十条に子どもの遊ぶ権利があります。遊びこそ子ども主体、大人はその権利を守らねばならないと考えています。しかし、最近では、都市化、少子化、スマートフォンや携帯ゲーム等の影響からか、子どもが外で遊ぶ姿が少なくなりました。外に出て自然に触れると、子どもはそれぞれの感性で遊びを始めます。年上の子どもと出会うとまねをしたくなり、自分より小さな子どもは守ってあげたくなります。季節を感じたり、時には危険なこともありますが、外遊びの体験は、子どもの育ちにとても重要です。
世田谷区には、プレーパークや自主保育などすばらしい活動があります。そとあそびプロジェクト・せたがやという外遊びを推進、検討する団体もあります。区もこのそとあそびプロジェクト・せたがやと協働する取り組みで、さまざまな活動を紹介するマップづくりやシンポジウムを行い、外遊びを勧めています。外遊びができる環境づくりやそれを支える人の確保が難しいことなど、課題も多いとは思われますが、世田谷区の外遊び推進についての現状とこれからについて伺います。
続いて、教育総合センターの目指す幼児教育支援について伺います。
「せたがや11+」は、これまでの世田谷九年教育に区立幼稚園の二年を合わせて十一年を基盤とし、私立幼稚園や保育所等との連携やかかわりを充実してプラスすると聞いています。ネウボラなど切れ目のない子育て支援、成長を見守る視点からの流れを考えると、よい部分もあるとも感じますが、その反面、幼児期から小中学校まで、高校や大学に向かって一筋に描かれており、幼児教育が小学校の予備校になってしまうのではないかと危惧しています。
大人の考えるいい子どもをつくる幼児教育では、子どもを管理しがちになるのではないでしょうか。この時期こそ、子どもが伸び伸びと個性を発揮できるような環境が重要だと考えます。幼児期から決まったカリキュラムで教育することは、子どもにとっても教師にとっても負担が大きくなるのではないかととても心配です。「せたがや11+」ではどのように進めていくのか、区の見解を伺います。
そして、教育総合センターに整備する乳幼児教育支援センターについて伺います。
教育総合センターの開設に向けて、鶴川女子短期大学国際こども教育学科の森眞理教授の「響き合う内と外の関係性―イタリアのレッジョ・エミリア市の実践から―」という講義がありました。レッジョ・エミリアの乳幼児教育は、これからの日本の幼児教育に求められる子どもの主体的で対話的な深い学びが実践されています。
乳幼児教育支援センターの事業として、子どもたちの探究的な遊びと学びを推進するカリキュラム、ICT等を活用した教材の導入、実践、普及とありますが、これはレッジョ・エミリアを参考にした取り組みなのでしょうか。言葉は似ていますが、本質が違うように思えます。レッジョ・エミリアで自然とデジタルの融合という取り組みも行われているようですが、その前に、まずレッジョ・エミリアの子どもたちは、町に出て散策し、理解し、一市民としてまちづくりに参加しています。文化芸術などの本物に触れ、自然の体験も重ねています。このベースがあってこそ、デジタルとの融合という取り組みができるのではないでしょうか。
幼稚園教育要領の中にも、幼児期は直接的な体験が重要であることを踏まえ、視聴覚教材やコンピューターなど情報機器を活用する際には、幼稚園生活では得がたい体験を補完するなど、幼児の体験との関連を考慮することとあります。区の見解を伺います。
以上で壇上での質問を終わります。
世田谷保健所長 私からは、子ども向け科学物質啓発チラシの活用についてお答えいたします。
芳香剤や柔軟仕上げ剤など、日用品に含まれる化学物質の人体への影響は一人一人異なり、ある人が快適なにおいと感じても、別の人では目や喉に痛みを感じるなど、体調が悪くなることもあります。また、化学物質の影響は大人より成長期の子どものほうが大きく、多くの子どもへも知らせていくことが大切です。
これまで、区は化学物質過敏症の対策に必要な情報を発信するためにチラシを作成し、区政PRコーナーでの普及啓発に活用するとともに、健康に関するイベントや介護施設、高齢者福祉施設へも継続的に配布してまいりました。今年度は、日用品に含まれる化学物質の人体への影響について、より多くの子どもに理解を促すため、教育委員会と連携して、わかりやすく解説した小学校高学年に向けてチラシを作成いたしました。今後は、チラシを活用し、動物フェスティバル等、子どもの来場が見込まれるイベント等で配布するなど、化学物質過敏症の対策等の普及啓発に努めてまいります。
以上です。
教育政策部長 私から、まず香害に関するチラシの学校での活用について御答弁申し上げます。
今年度、世田谷保健所より提供を受けました香害に関する子ども向けのチラシについては、全区立幼稚園及び小中学校に対して、授業での活用や、園内、校内での掲示を促すとともに、小学六年生の全児童に対して配付をさせていただいたところでございます。今後とも、子どもたちや保護者、教員に対して健康や安全に関する情報提供を積極的に行い、子どもの健康、安全安心を守る取り組みを進めてまいります。
続けて、世田谷区における乳幼児教育について御答弁申し上げます。
教育委員会では、今後の教育行政の取り組みとして、「せたがや11+」という考えをお示ししたところです。「せたがや11+」においては、乳幼児期から義務教育の期間を通じて一貫して遊びや体験を重視した教育を展開することを目指しております。令和三年度に開設を目指す教育総合センターでは、乳幼児教育支援センター機能を整備し、子どもたちが遊びや生活といった体験の中から、創造性や自己肯定感、粘り強くやり抜く力などの非認知的能力を育み、生きる力の基礎を培う幼児教育を推進してまいります。
具体的には、イタリアのレッジョ・エミリア市での取り組みなども参考としながら、区内幼稚園や保育所等で、文化芸術活動や外遊びなどの多様な体験を通じて、子どもたちの感性や主体性、創造性を育む学びが展開されるよう、支援体制を整えてまいりたいと考えております。なお、ICT教材については、子どもたちが自然や本物に触れ、体を動かして体験する遊びなどを補完するものとして検討してまいりたいと考えております。このような取り組みを進め、子どもたちがさまざまな体験や人とのかかわりを通じて、みずからが主体的に学び、これからの社会を生き抜く力を育むことができるよう努めてまいります。
以上でございます。
子ども・若者部長 私からは、二点お答えをさせていただきます。
まず一点目、子どもの権利の子ども自身への周知についてでございます。
区では、平成六年の国の子どもの権利条約の批准、発効を背景に、権利条約でうたう子どもの生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利が保障されるまちづくりを進めることを掲げた子ども条例を平成十三年十二月に策定し、この間、この条例を基本として、さまざまな子ども・子育て支援施策の充実を図ってまいりました。
子どもの権利に関する子ども自身への周知につきましては、小学校高学年、中学生向けに「みんなでいっしょに考えよう!」と題した子ども条例に関するパンフレットを、学校を通じて配付しております。この中では、誰でも、学びや遊びなどの体験を通して、個性を生かしながら、持っている力を十分に伸ばすことができることなどをわかりやすく記載しておりまして、授業での活用等を通じて、子どもたちがみずからのことを考える機会となっております。
現在、子ども計画(第二期)後期計画の策定を進めておりますが、新たな計画の中では、子どもの権利が守られる環境の確保に向け、改めて子ども主体という基本コンセプトを掲げております。今後、次期計画に係る情報発信の機会も捉えながら、引き続き、遊びを含めた子どもの権利に関しまして、子ども、保護者、地域等に深く周知を図ってまいります。
二点目でございます。外遊びについての現状と今後の取り組みについてお答えいたします。
これまで、区では日本初のプレーパークの開設やプレーカー、プレーリヤカー、砧・多摩川あそび村など、区民や地域活動団体と協働し、外遊びを推進するとともに、世田谷区子ども計画(第二期)や、新実施計画に外遊びの推進を位置づけまして、外遊びの啓発や外遊びの機会の場の拡充に重点的に取り組んでおります。今年度からこれらの取り組みを充実させるため、外遊び推進員を委託により一名配置いたしました。この活動により、区民と活動団体をつなぎ、馬事公苑けやき広場や下北沢駅周辺の道路予定地等を活用した外遊びの体験の場をつくるなど、身近な場所での新たな外遊びが始まっております。
今後は、砧地域へのプレーパーク設置に向け、これまで行ってきた外遊び体験イベント等を充実し、子どもや保護者等に外遊びの楽しさや体験することの重要性の啓発をさらに進めるとともに、シンポジウムの開催等による全区的なネットワークの拡大や、外遊び推進員による身近な遊び場の開発とあわせまして、外遊びを支える拠点やネットワークづくり、人材の発掘、育成を進めてまいります。
以上でございます。
答弁いただきました。ありがとうございます。
子どもの本来の持つ力は本当にすばらしいものだと思います。特に乳幼児期は、教えられ、育てられるよりも、遊びから学んでみずからが育つといいます。これを伸ばすのが子どもの主体的な遊びであり、また外遊びだということで、今、区も新しい取り組みをたくさん進めているという話がありましたけれども、もちろんその新しい部分をどんどん進めていただきたいですが、今までずっと子どもの遊びを支えてきたプレーパークや新BOP、児童館、さまざまな幼稚園、保育園など、支える環境、そして人材への支援も今後ともあわせて要望していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、香害、化学物質過敏症などで学校に行きたくても行けない子どもがいるということ、こちらの認識も皆様に深めていただきたいと思います。改めて子どもの学ぶ権利、遊ぶ権利、育つ権利をしっかりと保障していただけるよう求めまして、質問を終わります。