第3回定例会 一般質問と答弁 2019.9.18 高岡じゅん子

ことしの夏、福祉保健常任委員会で北海道苫小牧市に視察に行ってまいりました。そこで見てきた苫小牧市の障害者差別解消に向けた取り組みの中から、世田谷区もすぐにでも取り入れるべきものがあるのではないかと考え、まず質問していきます。

 

一つ目は、あいサポート運動についてです。この運動は鳥取県が開発し、協定に基づいて全国の自治体にプログラムを提供しているもので、障害をお持ちの方々が普通に外出できる町をつくっていくものと感じられます。東京都から始まったヘルプカードもその運動の中で役立てられています。世田谷区でも配布を進めているこのヘルプカードは、一見困っている状態が見えにくい内部障害の方や聴覚障害の方たちが身につけておられます。ヘルプカードをつけている方を見かけても、どのように手助けをしていいのかわからず、ただ見守るだけになってしまいがちです。あいサポート運動は、ちょっとした声のかけ方や手話などの入門講座を地域で行い、理解を広め、自然と手助けのできる町をつくっていくものです。

 

苫小牧市では、この運動を昨年から始め、毎月講習会を実施し、七月までに九百名以上のあいサポーターを誕生させたと聞きました。一方、先日配布された世田谷区の平成三十年度の主要施策の成果を見ますと、障害者差別解消法の認知度は二十九年に比べて約四%下がるという大変残念な結果になっています。今までも世田谷区は障害者差別解消に継続的に取り組んできていますが、広く区民の理解、関心を高めるためには、何らかのてこ入れが必要な状態です。プログラムがきちんと組まれているこのあいサポート運動を世田谷区でも実施することで、障害者差別解消を進めてはと提案いたします。区の見解を伺います。

苫小牧市でさらに見習いたいと感じた点は、手話言語条例をスピーディーに実現し、手話の普及啓発活動や窓口での手話通訳に聴覚障害の当事者も登用し、聴覚障害によるコミュニケーションの困難を市全体で乗り越えようとしているということでした。

 

生活者ネットワークは、世田谷区においても手話を言語として位置づけ、手話コミュニケーション条例をつくるべきと質問に取り上げてきました。東京都の障害者差別解消条例の動向を見きわめて、区としても手話言語の普及などに取り組むという答弁を受け、昨年の十月、都条例施行後の進展に期待しました。都の障害者差別解消条例には、情報保障の推進や言語としての手話の普及が書き込まれています。しかし、現場では窓口の手話対応時間の延長、また手話理解の拡大や普及活動などの具体的な効果が見えてきていません。聴覚障害当事者の目線を生かした手話言語の普及啓発活動への取り組みの強化を求めます。区の見解を伺います。

 

苫小牧市が障害当事者を職員として登用していることにも大変刺激を受けました。聴覚障害当事者が相談窓口にいることで、当事者ならではの寄り添い型の相談支援の実現ができ、手話の啓発活動などにも役立っています。この点も、世田谷区における当事者参加の新たな形として大変参考にすべき事例ではないかと考えます。障害があることを強みとし、行政サービスの担い手として当事者の活躍の場を広げることについて区の見解を求めます。

来年度から始まる心の相談事業では、当事者ならではの目線を相談事業に生かす試みとして、精神障害を経験したピアサポーターの参画が決まっています。心を開きやすい相談相手がいるということによる居場所づくりだけにとどまらず、経験者ならではの専門性を仕事として評価し、当事者参加による相談支援のモデルケースとして仕組みづくりにつなげていく必要があると考えます。区の見解を伺います。

 

次に、プラスチックごみ対策の前進を求めて質問します。

 

化石燃料や化石由来のCO2の排出を二〇五〇年には実質ゼロにすることがパリ協定では求められています。世田谷区のごみの分別では、プラスチック包装材料も製品も燃やすごみとされています。焼却すれば海洋汚染の原因にならないとはいっても、現在はほとんどのプラスチックは石油からつくられており、長期的な温暖化対策としては安易な考え方と言わざるを得ません。海へのプラスチックごみの流入問題に市民の関心が集まっていることしこそ、世田谷区民のプラスチック分別意識を高め、ごみを減らす動機づけを強めるよい機会ではないかと考えます。

 

世田谷区環境基本計画後期の策定と世田谷区一般廃棄物処理基本計画の中間見直しが並行して進められています。この機会に、鎌倉市や亀岡市などに倣って、プラスチックごみゼロに向けた区の姿勢を区民に示すことが必要です。二十三区の中でも十三区が容器包装リサイクル法に基づく分別回収を実施しています。この見直しを機に、世田谷区もプラスチックを分別回収する方向に政策を転換すべきと考えます。区の見解を伺います。

 

最後に、介護人材の確保に向けた特定技能在留資格制度の活用について質問します。

 

今年度始まったこの特定技能在留資格制度は、一定の技能水準を持った外国人材を即戦力として介護など人材不足に悩む業種に限って、五年間日本国内で働いてもらえるという制度です。

 

この制度には、利点と難点があります。利点は、来日してすぐに介護施設でフルタイムでの就労が可能なことですが、難点は、働きながら日本の介護福祉士の資格を取得することは大変難しく、五年後、職場にはなれても資格取得ができなかった時点で帰国を余儀なくされてしまうという点です。世田谷区民は、質の高い介護サービスを求めています。そういったサービスの提供のためには中核としてサービスを支える人材が不可欠で、そのためにも、介護人材の定着が常に課題となっています。海外からの人材についても、五年で帰国してしまわない形での受け入れや育成が必要です。外国人材の確保と定着に向けて、国内介護事業者と福祉系の専門学校が協力し、海外からの介護人材受け入れのためのコンソーシアムを立ち上げたと聞いています。このコンソーシアムの現状と人材確保、定着に向けた取り組みについて伺います。

 

国では、特定技能在留資格から日本の介護福祉士資格を取得し五年目以降も地域で働いていける海外人材に対し総合相談窓口を設けるとしていますが、実際に家族を呼び寄せ、地域で暮らし、介護の仕事を続けていくには、家族をも含めた日本語習得の課題や住まいの確保などさまざまな支援が必要になることが予想されます。民間のコンソーシアムに全てを委ねるのではなく、区として果たすべき役割もあると考えます。区の見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

障害福祉部長

私から、障害者差別解消の推進について三点お答えいたします。

 

あいサポート運動の世田谷区での実施についてです。

 

あいサポート運動は、平成二十一年に鳥取県で始まったもので、あいサポートはあいサポーターを養成し、誰もが障害の特性や困り事を理解して、ちょっとした手助けや配慮を実践することにより、障害のある方が暮らしやすい地域社会をつくっていく運動です。実施自治体は、鳥取県を初め島根県、広島県、奈良県、山口県、岡山県など関西より西の自治体に多く、それ以外では長野県や神奈川県の大和市のほか、お話しの苫小牧市等になっています。区では、障害者差別解消法の施行を機に専門相談員を配置して、障害者や事業者などからの差別に関する相談や問い合わせに対応するとともに、ヘルプマークの普及を図るなど、支援を必要とされる方に援助をしやすくする環境づくりに努めているところです。

区としましては、支援を必要とする障害者などに自然に手が差し伸べられる地域づくりに向けて取り組みを継続するとともに、あいサポート運動への参加については、実施している自治体の取り組みを参考に研究してまいります。

 

次に、聴覚障害者の目線から手話言語の普及啓発の取り組みを強化せよについてです。

区では、心のバリアフリーを推進する事業の一つとして、区内小学校において障害理解、差別解消、手話の普及を目的とした学習を行う場合の講師派遣について、来年度からの実施に向けて教育委員会と調整しております。事業の内容としましては、聴覚障害のある当事者と手話通訳者が講師となり、障害当事者から直接体験談を聞いたり、簡単な手話を一緒に学んだりするなど、小学生にわかりやすく親しみやすいものとなっております。障害者差別解消を推進していくためには、障害について区民に正しく理解していただくことが重要と考えます。今後も機会を捉え、障害理解の啓発に取り組んでいくとともに、障害当事者の目線を取り入れた効果的な手法について研究してまいります。

 

最後に、苫小牧市での障害当事者の登用を参考に、サービスの担い手として活躍の場を広げていくべきとの質問についてです。

 

お話にございました苫小牧市における取り組みについてですが、市では、聴覚等の障害により意思疎通に支援が必要な方とのコミュニケーションを円滑にするため、平日の九時から午後五時まで専任の手話通訳員を、また当事者から直接相談を受けるため、平日の十時から四時まで、障害当事者であるろうあ者生活相談員を非常勤職員として常時窓口に配置し、対面を初め、電子メールやSNS等のコミュニケーションツールを活用し、相談の対応をしているとのことです。これにより、従来からの対面で相談者の意図を酌み取りながら丁寧に相談に応じることに加え、電子メールや、近年利用者がふえているSNS等のコミュニケーションツールを利用し気軽に相談することができるため、これらのツールを活用した相談のケースがふえてきていると聞いております。

 

区としましては、こうした事例を含め、他自治体の状況を参考にしながら、障害当事者の雇用を含めた活躍の場を広げる取り組みについて今後研究してまいりたいと考えております。

以上でございます。

 

世田谷保健所長

私からは、心の相談事業でのピアサポーターの位置づけについてお答えいたします。

 

ピアサポートは、専門家の支援とは異なり、病気や障害等同じ境遇にある仲間として互いに助け合い、支え合うことにより、安心感や自己肯定感を得ながら問題の解決を図ることができると言われており、国の精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業におきましても、ピアサポートの活用が位置づけられております。

 

そのため、区は来年度、保健医療福祉総合プラザに移設する保健センターに、区が閉庁する平日、夜間、休日等に相談できる電話相談窓口を開設し、専門相談員に加え、ピアサポーターを相談員として活用する仕組みを導入する予定で準備を進めております。この仕組みの導入により、同じ境遇にある当事者同士がお互いを尊重し合い、相談できるピアカウンセリングの手法によるきめ細やかな相談対応ができることや、精神障害者の活躍の場の拡大を目指しております。将来的には、今後の事業実績等を踏まえ、障害者の雇用促進支援の観点からも事業を評価したいと考えております。

 

以上です。

 

清掃・リサイクル部長

私からは、世田谷区もプラスチックを集積場で分別回収する方向に政策を展開すべきという御質問にお答えいたします。

 

区では、平成二十七年度から令和六年度までの十年間を計画期間とした世田谷区一般廃棄物処理基本計画を策定し、リデュース、リユースの2Rの推進に重点を置いた事業を展開しているところです。現計画の実施期間中ではありますが、海洋プラスチック問題など、この間の国際的な流れや国の計画などを反映した中間見直しを進めております。

 

中間見直しでは、プラスチックもほかのごみと同様に、第一に発生抑制、リデュースによりごみ排出量を減らす必要があると考え、使い捨てプラ製品の削減や自主回収に取り組む小売店等の支援を新たに計画しています。一方で、最終的にごみになったプラスチックの処理については、中国などの輸入禁止措置により、国内でリサイクルを含めた処理が逼迫し、国がプラスチックの焼却を自治体に要請するといった動きもあります。

 

このような状況の中で、区は拡大生産者責任の考え方に基づく排出抑制の推進など、2Rの徹底を前提としつつ、清掃工場で焼却をして発電をする現状のサーマルリサイクルを当面の間継続しながら、より環境負荷の少ない手法について調査研究し、コストに見合った環境負荷低減効果も含めて検討してまいります。

 

以上でございます。

 

高齢福祉部長

私からは、介護人材の確保について二点御答弁申し上げます。

 

まず、コンソーシアムの現状と人材確保、定着の取り組みについてです。

 

国は、本年四月、新たな在留資格特定技能を創設するなど、外国人人材の受け入れに向けた環境整備を進めており、区といたしましても介護人材確保策の一つであると認識しております。こうした中、昨年十二月には社会福祉事業団など複数の社会福祉法人と介護福祉士養成校による世田谷コンソーシアムが設立され、在留資格「介護」の取得を目指す外国人留学生の受け入れが始まっております。留学生の受け入れに当たっては、現地送り出し機関との調整や候補者との面接、入管申請書類の作成、奨学金の申し込みといった手続のほか、住居の手配を初め、日本で生活するためのさまざまなサポートが必要となります。世田谷コンソーシアムは、こうした煩雑な手続などを標準化し、区内における他の法人への普及と介護留学生の定着を図ることを目的としており、今年度はベトナムから四人の留学生が来日いたしました。

 

区といたしましては、世田谷コンソーシアムや他の法人が独自に進める外国人人材の取り組みについて、関係者の御意見を伺いながら、支援策の検討を進めてまいります。

 

二点目といたしまして、介護外国人人材の地域への定着のための区の役割についてです。

EPA、経済連携協定や在留資格「留学」で来日された方々が、介護福祉士資格を取得後、在留資格「介護」にて業務に従事する場合は、新たに御家族の帯同も可能になることから、その定着に向けた取り組みも重要と認識しております。公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会では、介護福祉士を目指す留学生のための相談支援センターを設置し、生活のことやお金のこと、日本語のことなどの悩み事に応じております。

 

区においても、日常生活全般の相談に応じているほか、外国語版生活便利帳の発行、外国人のための日本語教室など在住外国人が活用できるさまざまな事業を行っております。外国人介護人材を受け入れる法人がその家族も含めた定着をサポートできるよう、こうした活用できる資源の情報提供に努めるとともに、関係所管課と連携いたしまして交流の場づくりなどに取り組んでまいります。

 

以上でございます。

 

再質問いたします。

 

プラスチックごみ対策の前進に向けて再質問いたします。

 

現在の日本の流通の構造や使い捨て文化の中で、プラスチックごみの削減は多くの事業者の協力がなければ実現不可能だと考えております。世田谷区の区民の出す一人当たりのごみ量は、確かに少しずつ減っています。その割にごみが減っているという実感がないのは、やはり世田谷区から出るごみ、特に持ち込みごみを含めた事業系ごみを合わせた総ごみ量の把握が不十分で、やはりごみがきちんと減っていないのではないかというふうに考え、昨年度質問に取り上げております。区内業者者に対するプラごみ資源化に向けた一層の啓発など排出抑制に向けた取り組みを求め、区の見解を伺います。

 

清掃・リサイクル部長

再質問にお答えいたします。

 

家庭ごみにつきましては、計画は上回るペースでごみ排出量が減少している一方で、事業系ごみについては微増傾向にございます。そこで、昨年度より事業者向けのセミナーを新たに実施するとともに、現在検討しています世田谷区一般廃棄物処理基本計画の中間見直しにおきましても、新たに事業者への情報提供の充実や、プラスチックごみ削減に向けた小売店への支援などの施策を予定しています。

 

これらの取り組みを通じまして、事業系一般廃棄物につきましても排出削減に取り組んでまいります。

 

以上でございます。

 

本当にプラスチックごみの削減を着実に進めていくしかないので、事業者と、そしてまた区民全体の啓発を合わせて進めていただきたいと思います。

 

障害者差別解消についてですが、あいサポート運動も含めて、すぐに始められる、本当にきちんとできているプログラムですので、研究と言わずにできるだけ早く、世田谷区内でたくさんの方がこれを使っていけるように検討を進めていただきたいと要望いたします。

 

また、介護人材なんですが、本当に全ての会派の方が介護人材の設定について質問していると思います。外国人人材の定着というのは、本当に限られた人数でありますが、もし世田谷に来て働いていただいた方が世田谷を好きになって帰っていただけるように、本当に心配りをしていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。