第2回定例会 一般質問と答弁 2019.6.14 金井えり子
初めて質問に立ちます。生活者ネットワークの金井えり子です。どうぞよろしくお願いいたします。
私はこれまで人形劇団などに携わり、地域でも読み聞かせなどの活動を続けてきました。子どもたちの笑顔にはいつも励まされています。一九八九年、国連で採択され、日本は一九九四年に批准した子どもの権利条約は、生きる権利、守られる権利、育つ権利、参加する権利の四つが柱になっています。この子どもの権利を守ることは大人の責任です。しかし、今、子どもたちは、いじめ、不登校、虐待、貧困、事件に巻き込まれるなど困難な時代を生きています。このような情勢の中、新しく教育長になられ、どのように取り組んでいかれるのか、教育長に伺います。
五月二十八日朝、登戸駅周辺で起きた殺傷事件は、スクールバスを待つ子どもたちなど二十人に負傷を負わせ、二人が亡くなるという痛ましい事件でした。亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、負傷された方々が一日も早く回復されるようお見舞い申し上げます。
子どもが犠牲になる事件が起こるたび、これまでも地域での見守りや集団登校などさまざまな対策が講じられてきましたが、今回の事件は子どもを守る対策がいかに難しいかを突きつけていると思います。昨年の新潟市の小学校二年生が下校中に連れ去られ殺害された事件の後、国の指導により、通学路の安全点検を強化する動きが広がりました。殺傷事件のあった川崎市では警察のOBをスクールガードリーダーとして採用し、通学時の子どもを見守っていましたが、人材不足により、七校を一人のスクールガードリーダーが巡回しており、なかなか目が行き届かない状況のようです。
世田谷区でも二十四時間安全安心パトロールの車が巡回していますが、子どもの通学時はどのように対応しているのか、伺います。また、地域、警察、区が連携していくことが重要かと思いますが、どのような連携を進めているのかを伺います。
突然襲われるような事件ではすぐに逃げることが大切ですが、子ども自身がふだんから自分の身をどのように守るのか、意識していなくてはいけません。危険を感じたら、大人の指示がなくても自分の判断で逃げる、不審者を見かけたら、見えなくなっても助けてもらえる大人がいるところまで逃げる、すぐに行動がとれるようにいつも使う通学路を親子で一緒に歩いて、危険な場所や逃げ込める場所、身を守るものがどこにあるのかを知っておく必要があります。
さらに、大人が地域を見守っていくことが重要です。事件や事故が起こった全国の地域では、住民やボランティアによる見守りが広がっていると聞いています。世田谷区では幸いにも子どもが巻き込まれるような大きな事件は起きていませんが、昨年も学校下校時の子どもが交通事故で亡くなるという痛ましい事故がありました。その後、各学校通学時での子どもの安全対策はどのように進められているのか、伺います。
先日、下馬周辺の学校で不審者情報があり、保護者間の携帯メールでそのことが流れました。学校に保護者や子どもへの情報提供の連絡を求めましたが、学校側の対応はされなかったと聞いています。緊急な通報があった場合は、学校はどのような連絡方法をとるのか。事実関係を確認できたら、緊急メールを回すか否かの判断はどこでされるのか。学校の危機管理と緊急メールの運用状況について伺います。
今回の殺傷事件を起こした男性は、長い間、ひきこもりで、家族関係もうまくいっていませんでした。このことが報道された直後、長い間、息子から暴力を受けていた元農林水産省事務次官が、精神的に追い詰められ、息子を殺害するという事件が起こり、大きな衝撃を受けました。六十代から七十代の親からの相談がひきこもりの当事者と家族を支援するNPOなどに多く寄せられています。このような事件を二度と起こさないためにも、家庭内の問題にとどめず、当事者や家族のSOSの受け皿を広げていくことが大切です。
生きづらさを抱えた人への支援は、若いうちから必要です。世田谷区にはメルクマール、若者サポートステーションなどもありますが、なかなか当事者から声を出していくのは難しいのではないかと考えます。東京都のひきこもりサポートネット事業は、NPOに委託し、アウトリーチで若者や家族への支援を進めていますが、世田谷区ではどのように進めているのかを伺います。また、東京都のひきこもりサポートネット事業は対象とする年齢制限の上限を撤廃していくことになりましたが、若者総合支援センター事業は今後どのように対応していくのか、区の見解を伺います。
次に、太子堂のまちづくりについて伺います。
私は太子堂周辺に住んで三十年になりますが、町の姿もさまざまに変わってきました。太子堂二、三丁目は昭和の終わりからまちづくり計画がつくられ、地区計画は平成二年に策定され、住民参加で長い間進められてきています。公園のないこの地域にポケットパークができ、地域のコミュニティーづくりにもつながったといいます。
昨年四月、地域の人たちと一緒に三軒茶屋駅から太子堂周辺防災まち歩きを行いました。以前に比べ道が広くなったり、通り抜けができるようになったり、整備が進んだところもありますが、空き家が数軒あり、道幅が狭く、火災時に消防自動車が入れないところも残っています。修復型のまちづくりということで時間はかかるとは思いますが、まだまだ課題は残っていると感じました。特に三太通りは、三宿一丁目まちづくり協議会、太子堂二・三丁目まちづくり協議会、世田谷区、沿道会議でさまざまな意見が交わされ、防災性能の向上と安全確保のため、整備にかかわる共同宣言が出されている道です。ここはまだ高低差やカーブが大きく、見通しが悪い部分も残っています。今後どのように解消していくのか、区の取り組みについて伺います。
太子堂地域は木造住宅が密集しており、大地震が発生した場合、大規模な火災が起こるのではないかと心配されます。特に太子堂五丁目は東京消防庁の地震に対する地域危険度測定調査で、火災の危険度や災害時活動困難度がかなり高いことがわかっています。延焼による大火を防ぐために、燃えないまちとして東京都の木密地域不燃化十年プロジェクトが進められていますが、この取り組みは令和二年度までと期限も迫ってきています。目標の不燃領域率七〇%を超えているのは、住民参加で地区計画が行われている太子堂二、三丁目、三宿一、二丁目の太子堂・三宿地区のみです。
一方、お隣の太子堂・若林地区は不燃領域率が目標に達していません。太子堂・若林地区の太子堂四丁目、若林一丁目には地区まちづくり計画がありますが、太子堂五丁目、若林二丁目にはまだありません。防災対策を進めるためには、福祉、医療、教育、交通安全、防犯など暮らし全般を考えていかなければなりません。防災まちづくりには、住民の積極的なまちづくり活動への参加が必要と感じます。今後、住民参加の防災まちづくりを進めるためにはどのような取り組みをしていくのかを伺い、壇上からの質問を終わります。(拍手)
教育長
私からは、子どもを守る対策について御答弁申し上げます。
子どもたちの人権、生命、健康は、私たち教育に携わる者を含め、社会全体で守るべきものと考えております。近ごろは子どもが犠牲となる本当に痛ましい事件が発生し、胸を痛めております。いじめ、不登校、虐待などはどの学校でも起こり得る問題であり、全教職員が子どもたちの様子を注意深く見守り、家庭、地域の状況等の把握に努め、未然防止、早期発見、早期対応に努めることが重要であります。それには、スクールカウンセラーなど専門性の高い職員の活用や、保護者、地域の協力、警察、子ども家庭支援センターや児童相談所などの諸機関との連携強化など、学校の組織的、総合的な対応力を高めることが必要だと考えております。
私は、困難な時代だからこそ、学校、教育委員会が一丸となって、子どもの安全安心を守っていかなければならないことを校長会を通じて校長、園長に、生活指導主任や教育相談主任を対象とした研修会などを通じて現場の教員たちに直接伝え、課題意識を共有するとともに、さまざまな手段を講じて安全確保を最優先に、子どもたちの人権、生命、健康を守ってまいります。
以上でございます。
教育次長
私からは、学校の通学路の交通安全対策につきまして御答弁申し上げます。
教育委員会では、平成二十六年九月に区立小学校の通学路において下校中の児童が交通事故によりお亡くなりになるという痛ましい事故を受けまして、区立の全小学校の通学路について、関係機関と連携のもと、緊急の合同点検を実施いたしました。また、警察、道路管理者、学校、PTA等が緊密な連携を図ることを目的とした通学路安全対策連絡会を設置し、通学路の安全対策の強化を図ってまいりました。教育委員会では、こうした通学路の合同点検を継続的に行うことが一層の安全確保につながるとして、通学路安全対策連絡会で検討の上、平成二十九年二月に通学路交通安全プログラムを策定し、区立小学校を四つのグループに分け、それぞれ四年に一回は、学校、PTA、道路管理者、警察、区教育委員会等の参加のもと、通学路合同点検を実施しております。
しかしながら、昨年十二月十七日に区立小学校一年生の児童が路線バスと接触し、お亡くなりになるという大変痛ましい交通事故がございました。教育委員会では、改めて交通安全、交通事故防止を徹底するため、各学校や幼稚園を通じて児童生徒等に対し、道路に広がらずに白線の内側を歩くことや、通学路や通学経路の確認と経路を守って登下校することなどの指導の徹底をしております。
教育委員会では、引き続き、通学路交通安全プログラムに基づき、関係機関と連携を図りながら通学路合同点検を実施し、通学路の安全対策の向上に努めていくとともに、児童生徒がみずから危険を予測し、回避する能力と他者や社会の安全に貢献できる資質や能力を育成するための安全教育を推進してまいります。
以上でございます。
危機管理室長
私からは、学校周辺のパトロールの状況と地域との連携について御答弁いたします。
世田谷区二十四時間安全安心パトロールにつきましては、犯罪を予防することを目的とし、公園や緑地、公衆トイレなどの巡回にあわせ、先日発生しました川崎の事件以降、登下校時の通学路周辺への巡回対応を実施しているところでございます。また、子どもに対する声かけ事案等が発生した場合には、その都度警察署と連携し、事案発生場所周辺の巡回活動を適宜対応しているところでございます。
地域と連携した取り組みにつきましては、子どもの安全安心を見守るため、子ども等に係る異常を察知した場合の一一〇番通報など一時的な対応につきまして、郵便局、運送会社等の八団体と協定を締結し、御協力をいただいているところでございます。また、区民の防犯意識の向上を目的とし、町会の代表者などを対象に地域防犯リーダーの育成のための地域の危険箇所改善指導者講習会を実施するなど、地域との連携を図っているところでございます。
以上です。
教育政策部長
私からは、学校が不審者情報を得た場合の緊急連絡メールについて御答弁申し上げます。
不審者等の子どもの安全安心に関する情報については、事実関係を精査し、必要な情報を適切かつ速やかに保護者などに提供する必要があると認識しており、その方法の一つとして緊急連絡メールを活用しております。各学校が保護者、地域から不審者情報を得た場合には、発生した事案の事実関係の確認や教育委員会や警察との連携を図った上で、事案の緊急性などを勘案し、メールの配信の判断をしております。その際、事案の状況や学校の対応について、学び舎や近隣校と情報を共有し、同様のメールを発信するなど連携を図っております。また、区として子どもの安全安心に関する情報を得た場合には、教育委員会から学校に情報発信を指示しております。
なお、年度初めには、保護者に対して区立学校の緊急連絡メールだけでなく、世田谷区の災害・防犯情報メール配信サービス及び警視庁のメールけいしちょうなどの情報提供システムへの登録についても周知し、さまざまな機関からの情報収集を推奨しております。
教育委員会といたしましては、今後とも学校とともに、子ども・若者部や危機管理担当課、警察等の関係機関と連携し、PTAや地域の方々との協力を一層深めながら、子どもたちの安全確保に努めてまいります。
以上でございます。
子ども・若者部長
私からは、二点についてお答えいたします
まず、一点目でございます。世田谷区の若者のひきこもり支援についてお答えいたします。
区では、子ども・若者育成支援推進法に基づく相談支援機関としてメルクマールせたがやを平成二十六年九月に開設し、同時に子ども・若者支援協議会を立ち上げ、関係機関と定期的に情報共有、意見交換の機会を設けながら、生きづらさを抱えた若者の支援を行っております。この協議会は代表者による会議のほか、不登校・ひきこもり、ひきこもり・就労、思春期青年期精神保健の三つの部会から成る実務担当者会議を年九回実施し、事例検討等を通し、各機関の特徴や支援情報の共有を行いながら、顔の見える支援者ネットワークを築いております。
また、昨年度は若者にかかわる公的ネットワークと民間の団体や活動者がつながる機会として、広く参加者を募り、若者支援シンポジウムを開催いたしました。二十四団体、二百名が参加し、困難を抱えた当事者が支援につながるためには、親でも先生でもない、第三の大人のネットワークが重要であることを共有したところです。
今後も、公的機関や専門機関との連携にとどまらず、NPOなど民間の活動団体とも積極的につながる機会を設け、さまざまな困難を抱えた当事者が身近な日常の場から切れ目なく適切な支援につながることができるよう取り組んでまいります。
二点目でございます。東京都のひきこもりサポートネット事業は年齢制限の上限を撤廃したが、区の若者総合支援センター事業はどのように対応していくのかという点にお答えいたします。
東京都のひきこもりサポートネット事業は、ひきこもり状態の長期化、高年齢化の課題に対応するため、これまで十五歳からおおむね三十四歳までを対象として実施していた訪問相談事業について、今月より年齢制限の上限が撤廃されました。また、事業の担当所管も青少年・治安対策本部より福祉保健局に変更をされております。区の若者総合支援センターでは、子ども・若者育成支援推進法に基づく事業のため、中高生世代から三十九歳までの若者と家族の相談支援を担っております。現時点では四十歳以上の方からの御相談はほとんどございませんが、御本人やその御家族からお問い合わせを受けた場合は、その方の状況を伺い、適切な支援先を御案内いたします。
また、教育委員会や学校と連携した早期の取り組みや若者の居場所事業と連携した支援、区民や関係機関への若者総合支援センターのPRなどひきこもりが長期化する前に、当事者や家族の孤立状態を解消する取り組みに引き続き注力してまいります。
一方、四十歳以上の方の支援につきましては、都や国、他自治体の動向を注視するとともに、メルクマールせたがやで培いましたノウハウを生かしまして、早急に関係所管で検討を進めてまいります。
以上でございます。
世田谷総合支所長
私からは、太子堂周辺のまちづくりについて二点お答えいたします。
まず一点目、太子堂二・三丁目地区の防災まちづくりの状況についてです。
太子堂二・三丁目地区のまちづくりにつきましては、昭和五十五年から地域住民の皆様と話し合いをしながら、地区街づくり計画などのまちづくりのルールを定め、修復型のまちづくりを進めてきたところでございます。この間、避難活動の円滑化のための道路や通り抜け路の整備、密集地域の防災機能の向上のための公園の整備等を進めてまいりました。また、不燃化特区制度の導入の効果もあり、この地区を含め、太子堂・三宿地区では、延焼による市街地の焼失がほぼゼロになると言われる不燃領域率七〇%の目標値を平成三十年度当初で達成しております。
お話にありました太子堂と三宿の間を南北に通る三太通りにつきましては、見通しの悪いカーブなどもあり、順次改良工事を進めております。今年度においても太子堂三丁目三十番から一番先の高低差のある見通しの悪いカーブの改良工事を行っているところでございます。
今後とも引き続き、防災まちづくりの推進のため、三太通りの整備も含めて、太子堂二・三丁目地区周辺のまちづくりに積極的に取り組んでまいります。
次に、太子堂・若林地区の防災まちづくりについてお答えいたします。
太子堂・若林地区につきましては、既に東京都建築安全条例に基づく新たな防火規制の指定や東京都の不燃化特区制度の指定を受けたことで、建築の際に防火性の高い建築物に誘導することにより、地区内の建築物の不燃化を促進してきたところでございます。この太子堂・若林地区のうち、烏山川緑道の南側にある若林一丁目や太子堂四丁目につきましては、防災性の向上や住環境の保全などを図るため、世田谷区街づくり条例に基づく地区街づくり計画が既に策定されており、防災まちづくりを進めているところです。
また、緑道北側の太子堂五丁目、若林二丁目につきましても、地区街づくり計画などの策定に向け、昨年度、地区の現状を把握するための基礎調査を行い、今年度以降も引き続きまちづくりの検討を進めてまいります。
防災まちづくりの推進において、地域住民の皆様の御理解と御協力は欠かせません。今後とも意見交換会などを行い、地域住民の皆様の御意見を伺いながら、いつまでも住み続けられる災害に強い市街地の形成に向けて、防災まちづくりの推進に積極的に取り組んでまいります。
以上です。
金井えり子 議員
いろいろ答弁いただきましたが、太子堂の防災まちづくり、よろしくお願いいたします。
そして、世田谷区は二〇一五年に子ども・子育て応援都市宣言をしています。その中で、子どもには、自分らしく、尊重されて育つ権利があること、大人は、子どもをしっかり見守り、励まし、支えること、地域は、子育て家庭が楽しく子育てできるよう応援していくこと、そして世田谷区は、区民と力をあわせて、子どもと子育てにあたたかい地域社会を築きますとあります。ぜひ子どもが萎縮せず、伸び伸びと育っていけるように、そんな安全対策を進めていただけるよう要望しまして、質問を終わります。
ありがとうございまし