第2回定例会 一般質問と答弁 2019.6.14 田中みち子

第2回定例会 一般質問と答弁 2019.6.14 田中みち子

 

まず初めに、性暴力の根絶に向けて質問いたします。

 

平成最後の三月から四月にかけての約一カ月の間に、性暴力を受けた事件の裁判で無罪判決が相次ぎました。中でも、静岡地裁での実の娘を十二歳から二年間性的暴行をした罪に問われていた父親の無罪判決に続き、名古屋地裁でも中学二年生のときから実の娘に性的虐待をしていた父親が無罪判決となっています。共通する判決の多くは、本人の意思に反する性交であると認めるものの、抵抗が著しく困難だとは言えないという驚くべきものでした。娘を性的虐待した父親はなぜ無罪なのか、多くの人たちから怒りの声が上がっています。

 

子どもたちは、知らない大人にはついていってはいけませんよと学習をします。しかし、性暴力の多くは親しい関係の大人が加害者であることが大きな問題です。子どもたちは、身近な大人の性暴力からどう身を守り、被害に遭ってしまった際にどう助けを求めればよいのでしょうか。ましてや実の父親が加害者となる性暴力を幼い子どもが暴力と認識するまでには長い時間がかかったり、助けを求めることで家族がばらばらになってしまうと我慢し続けたり、また、声を上げても今回の裁判のように無罪判決となればますます声を上げることなどできません。

 

性暴力を根絶するために、性暴力から子どもたちを守るために、教育長は何が必要だとお考えでしょうか。

 

今般、性教育の手引が十四年ぶりの改正となりました。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツとともに、性被害の現状や課題解決などにも踏み込んだ性教育の実施を求めます。見解を伺います。

 

また、義務教育後の高校生や若者に対する支援体制も重要です。レイプドラッグなどの被害件数もふえる中で、合意のない性行為は暴力であることを伝える予防教育や、困ったときに相談支援につながるようにふだんから顔の見える関係性をつくることが必要です。

 

希望丘青少年交流センターアップスは、子ども、若者の第三の居場所としてこうした機能を持たせ、性の知識に関する啓発などを行う最適な場所であると考えます。既に野毛青少年センターでは、定期的にエイズの知識を学ぶ機会があるなど、正しく性感染症を理解し、相談しやすい環境があります。新たな居場所アップスも性についてオープンに話すことができる機会をつくり、相談支援できる環境を整えることが必要です。見解を伺います。

 

さらに、児童養護施設退所者については、自立が困難な場合や愛着形成に問題がある場合も多く、危険な目に遭いかねない道に進んでしまうことがないよう継続した支援を行う必要があります。十八歳で社会に出された後、何らかの理由で施設との関係性が切れてしまい、相談する相手も見つからず、性産業に行き着いてしまうこともあるという現状を施設関係者から伺っています。

 

世田谷区が開設する児童相談所は、弁護士などの専門家によりアドボカシーの保障に取り組むとのことですが、児童養護施設や里親から旅立つ若者への就労支援とともに、弁護士などの専門家による相談体制を設け、退所後も相談できるようにする必要があります。見解を伺います。

 

最後に、性暴力を根絶するためには、性は人権であり、性暴力は魂の殺人であることを周知し、性暴力を個人の問題とせず、社会全体の問題として広く啓発し、加害者をつくらず、これ以上犠牲者を出さない土壌をつくる必要があると考えます。昨年のノーベル平和賞は性暴力の根絶に尽力する二人の人権活動家が受賞していますが、特にコンゴ民主共和国で起こる紛争は、携帯電話などに使われるレアメタル、鉱物資源の奪い合いによって長期化し、三人に二人の女性が性的テロである性暴力の犠牲となる惨状を私は訴え、私たち一人一人が傍観者であってはいけないはずだとこの議場で申し上げました。

 

性暴力被害者の治療に尽力するデニ・ムクウェゲ医師のドキュメンタリーの映画の上映、平和の象徴である平和資料館と、人権、ジェンダー平等に取り組むらぷらすを連動させた啓発事業などの取り組みを行うことを求めましたが、その後の取り組み状況を伺います。

 

次に、東京二〇二〇大会を契機にした持続可能な社会の実現について質問します。

 

コンゴ民主共和国の紛争の原因でもあるレアメタルが眠る都市鉱山についてはこれまでも議会で取り上げ、鉱物についても国内で自給自足できる一歩となり、持続可能な環境をつくる機運を醸成する意味で、東京二〇二〇大会のメダルを都市鉱山でつくるプロジェクトに積極的に参加することなどを求めました。このプロジェクトも三月で終了し、家庭内に眠る鉱物資源がいよいよオリパラのメダルとして生まれ変わりますが、東京二〇二〇大会のメダルと紛争鉱物のつながりを理解できる学習の場が必要と考えます。

 

携帯電話に使われるレアメタルが引き金となって起こる問題の存在を知らしめ、グローバル経済の仕組みと社会問題、自分とのつながりを理解し、そして、消費者としてこうした問題を解決するために、一人一人何ができるのかを生涯学習として啓発を行うことで、東京二〇二〇大会のレガシーとして継承することを求めたいと思います。そして、こちらに開発教育協会、教育NGOがつくった勉強の資料があるんですけれども、これはちょうど「スマホから考える世界・わたし・SDGs」と、まさにタイトルのものなんです。こういったものをぜひ活用していただいて、教育学習をお願いしたいと思います。

 

また、海の生態系に深刻な影響を及ぼすマイクロプラスチックは世界中でも大きな問題となる中、東京二〇二〇大会を契機に脱プラスチックへの取り組みを加速することも求めてきましたが、令和元年五月十日、スイス・ジュネーブで開かれた有害な廃棄物の国際的な移動を規制するバーゼル条約で、汚れたプラスチックごみを輸出入の規制対象に加える条約改正案が採択されました。

 

国内では処理できない産業廃棄物としての廃プラスチックが他国に輸出できなくなったことで、国から自治体に対して焼却の要請がありました。また、時を同じくして、先日の区民生活常任委員会でも、最終処分場延命化のための清掃一組不燃ごみ処理センター可燃性残渣の焼却についての報告もあり、プラスチック焼却への機運が高まることを危惧しています。国の要請については、このままなし崩しに受け入れることはせず、国に対して受け入れることはできないことを明確に意思表示する必要があるのではないでしょうか。区長に問います。

 

リサイクルはもう限界に来ています。企業へのプラスチックごみの発生抑制を求めることはもちろんですが、私たちもエコバッグやドギーバッグを利用したり、使い捨てプラスチック容器やペットボトルなどの汚れをきちんと落とし、分別、廃棄を徹底することなど、発生と消費に対する取り組みを進める必要があります。そのためには、環境政策部、経済産業部、清掃リサイクル部などの関係所管が連携して一体的に取り組む必要があります。京都府亀岡市では、市民、消費生活、環境、清掃などを一つの部に統合し、レジ袋を有料化するなど効果を上げています。亀岡市のように、組織編成を視野に一体的に取り組むことを求めます。また、亀岡市に続いて、神奈川県や鎌倉市などの自治体でもプラスチックごみゼロ宣言を行い、持続可能な社会を目指すまさにSDGsに即した具体的な取り組みを進めています。

 

世田谷区でもこうした自治体の事例を参考にし、二〇三〇年までのできるだけ早期に使い捨てられるプラごみゼロを目指し、実効性のある取り組みを行うべきと考えます。見解を伺います。

 

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

区長

田中議員にお答えをいたします。

 

国からの廃プラの清掃工場での焼却の要請についての対応についての御質問でございました。

議員御指摘のバーゼル条約改正に伴って、行き場を失った産業廃棄物のプラごみを自治体で焼却処理してほしいという国からの要請、六月十日現在ではまだ清掃一組には届いていないということなんですが、来た場合には、特別区長会及び一組の運営をしております清掃一組評議会、いずれも私もメンバーになって議論することになると思います。

 

清掃一組から聞くところによると、現在、二十三区清掃工場は一般廃棄物の処理だけで相当余力がないというふうに聞いておりまして、国の要請を受け入れることはかなり困難かと思います。一方で、バーゼル条約の改正を機に、廃プラ処理問題について、おっしゃった海洋汚染の問題も含めて区民の関心が高まってくることを踏まえて、この問題に対処していきたいと考えています。

 

今回の要請は、これまで廃プラスチック、これを当たり前のように海外へ輸出するんだということで、これを前提としてきた経済、生活サイクル、そのこと、そのものに大変大きな変化が生じたということだと思いますし、緊急避難的なもので焼却という要請が来ているものと思いますが、長期的にプラスチック代替品の開発や、レジ袋や身近なプラスチック製品の使用抑制について、国や社会、私たち自治体も含めて協力して取り組まなければいけない問題だと認識しています。

 

区としましても、海洋流出の原因の一つとされています町なか、あるいは河川敷などの清掃活動や、プラスチックの使用抑制に向けた普及啓発など、できることから取り組みをさらに強化するとともに、区として可能な抜本的な対策、これを区民の皆様の知恵や意見も伺いながらできるだけ迅速に指示をしていきたいと思います。

 

教育長

私からは、性暴力の根絶に向けて御答弁申し上げます。

 

性暴力等の報道は、私たち教育に携わる者として大変心が痛む深刻な問題でございます。子どもたちを取り巻く環境が変化する中で、子どもたちが被害を受けることがないよう、正しい知識を身につけ、みずからの身をみずから守るという観点からも性教育の重要性が高まっていると認識しております。

 

学校における性教育につきましては、発達段階に応じた体の変化の理解、心身の保持に関する知識を身につけるだけではなく、性に対する情報が氾濫し、さまざまな情報が入手できる環境にあることを踏まえ、SNS等を介したり、さまざまな場面において性的被害に遭う可能性があることを教えたりするなど、性に関する諸課題に適切な自己選択ができるよう、よりよく生きる態度の育成を図っております。

 

教育委員会といたしましては、東京都教育委員会が平成三十一年三月に改訂した性教育の手引を踏まえ、各学校が子ども一人一人の状況や地域の実態に応じた性教育を進めていくことができるよう、性被害の現状や課題など学習指導要領に示されていない内容も含めた形で教員研修の改善に取り組むとともに、各家庭や保健所、外部の関係機関等とも連携し、性教育の充実に向けて取り組んでまいります。

 

以上でございます。

 

生活文化部長

私からは、人権活動家のノーベル賞受賞に伴う区の取り組みについてお答えをいたします。

区では、第二次男女共同参画プランの基本目標の一つに女性に対する暴力の根絶を掲げ、DVの防止や被害者支援の充実、暴力を容認しない意識づくりに取り組むとともに、昨年十二月からは配偶者暴力相談支援センターの機能を整備し、DV相談専用のダイヤルを開始しております。

 

性暴力の根絶に向けては、広く現状を知っていただくことや、性暴力によって生まれる二次被害についても理解していただくことが大切であると考えております。また、性暴力に限らず、女性に対するあらゆる暴力の根絶についても同時に啓発していく必要があると考えております。

 

お話にございました人権活動家のデニ・ムクウェゲ氏が昨年ノーベル平和賞を受賞しておりますが、男女共同参画センターらぷらすでは、受賞にあわせまして、昨年十二月から本年五月までの間、ムクウェゲ氏の業績や受賞理由の紹介、著書や性暴力関連書籍の展示を実施いたしました。また、本年十一月になりますが、国による女性に対する暴力をなくす運動にあわせまして、世田谷平和資料館とらぷらすが連携し、ムクウェゲ氏の活動を紹介するドキュメンタリー映画の上映等を予定しております。引き続き、こうした活動を通じまして、性暴力を含めた女性への暴力根絶に取り組んでまいります。

 

以上でございます。

 

子ども・若者部長

私からは、希望丘青少年交流センターアップスにおける若者の相談支援についてお答えいたします。

 

性暴力の根絶のためには、まずは性に対する理解をすること、不安を感じたときに一時でも安心して過ごせる居場所があり、そこで相談したいときに相談ができる人がいることが重要であると認識しております。

 

希望丘青少年交流センターアップスは、誰でも自由に過ごすことができる子ども、若者のための居場所であり、小学生は午後六時まで、中学生は午後八時まで、高校生以上は午後十時まで利用ができ、悩みがある若者から相談を受けた場合はスタッフ等がまずは受けとめ、内容により必要な支援先等につなぐ体制を整えております。また、野毛青少年交流センターでは、性の知識を学ぶ機会として、エイズ啓発を平成二十八年度より二カ月に一度程度、東京都エイズ啓発拠点ふぉー・てぃーが、その場に集う若者たちにカードゲームを使用するなどして、遊びの中から正しく性感染症を理解してもらい、困ったことがあったら相談できる場所があると伝える取り組みを行っております。今後はこの取り組みについて、希望丘青少年交流センターアップスにも拡充し、相談につながる支援に努めてまいります。

 

以上でございます。

 

児童相談所開設準備担当部長

私からは、児童養護施設退所者等への相談支援についてお答えいたします。

 

自立に困難を抱えた若者、その中でも児童養護施設の退所者については、厳しい環境の中で生活をしなければならず孤立しやすいことから、退所後についても寄り添った支援が必要であると認識しております。特に重要なこととして、児童養護施設や里親のもとで暮らしている間の早い時期から将来の可能性を考え、自立し、自分が希望する道に進むための十分な準備を行う必要があると考えており、施設や里親と協力、連携し、進路指導や就業支援、経済的なことも含めました生活設計など、困ったときに相談できる支援体制の強化なども考えてまいりたいと思います。また、法律相談などの専門分野におけるサポートについても、区の各種相談事業や関係機関との連携も含めまして、切れ目のない相談支援の体制が構築できるよう検討してまいります。

 

以上でございます。

 

環境政策部長

私からは、二点御答弁いたします。プラスチック問題はさまざまな部署が一体的に取り組む必要があるとの御質問でございます。

 

国では、プラスチック資源循環戦略を定め、レジ袋有料義務化等によるワンウェイプラスチックの使用削減や、プラスチック資源の分別回収、リサイクル、ポイ捨て防止や散乱ごみの回収などの海洋流出対策などに取り組むとしております。

 

区におきましても、海洋プラスチックごみ問題のシンポジウム開催や町会・自治会などと連携したポイ捨て防止キャンペーンやごみ拾い活動、区主催イベントや会議等で使い捨てプラスチックを極力使用しないといった率先行動などにさまざまな部署と連携、協力しながら取り組みを進めております。とりわけ環境、清掃、市民、消費生活に関連する部署が連携を密にとのお話をいただきましたが、今後、計画をしております子ども向け海洋プラスチック問題に関する環境学習機会の提供や清掃活動やポイ捨て防止キャンペーンの実施、マイバッグ持参などの啓発活動など、さまざまな関係団体との協働とともに、庁内関係所管の組織横断的な取り組みによりまして、区を挙げてプラスチックの排出抑制に取り組んでまいりたいと存じます。

 

二点目でございます。プラごみゼロを目指して実効性のある取り組みを行うべきとの御質問でございます。

 

お話にありましたとおり、他自治体ではプラごみゼロ宣言を掲げ、マイバッグ、マイボトル等の使用による使い捨てプラスチックの使用を控えることなどを、市民への呼びかけやプラごみゼロ宣言に賛同するスーパーマーケット等の事業者を募り、賛同する事業者にロゴマークや登録証を発行するなど、持続可能な社会の実現に向けたさまざまな取り組みを進めていると承知しております。

 

世田谷区におきましても、本年二月にプラスチックごみ問題に関するシンポジウムを開催し、その結果を掲載したプラスチック・スマート通信を発行するとともに、区としての当面の取り組み方針を定め、この問題に取り組んでいるところでございます。

 

今後、プラごみゼロを目指し、ごみの減量、資源化に御協力いただいている小売店との連携強化など抜本的な対策の検討を進めるとともに、直ちに取り組めることとして、海洋プラスチックごみ問題に関するリーフレットによる情報発信やマイバッグ持参の推奨、町なかや河川敷の清掃活動などを進めてまいります。

 

以上でございます。

 

生涯学習部長

私からは、携帯電話をめぐる問題を改善するために何ができるのか、生涯学習として啓発をという御質問にお答えいたします。

 

お話しの都市鉱山からつくるみんなのメダルプロジェクトは、東京二〇二〇大会の入賞メダルを使用済み小型家電に含まれる有用金属を用いてつくる組織委員会主催のプロジェクトで、平成三十一年三月三十一日で受付を終了いたしました。世田谷区はこのプロジェクトに賛同し、スマートフォンを含む携帯電話を九千百八十六台回収し、メダルプロジェクト終了後も引き続き使用済み小型家電を回収し、有用金属の循環利用の促進に取り組んでいます。

 

議員御提案の生涯学習等での啓発とのことでございますが、生涯学習は、いつでも、どこでも、誰もが家庭、学校、地域、職場等あらゆる場において自由に生涯を通じて学ぶことで、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることを理念としております。

 

生涯学習の推進に当たり、お話しのレアメタルの問題のみならず、現代社会の持つあらゆる課題について、区民の学習活動、社会教育活動を、教育行政だけではなく、さまざまな立場から総合的に支援を行い、生涯学習社会の実現、ひいては東京二〇二〇大会のレガシーとなるように努めてまいります。

 

以上でございます。

 

田中みち子 議員

今回、性暴力の根絶と脱プラスチックの取り組みを質問しましたけれども、どちらもこのままではいけないんだという人を一人でも多くつくることだと思っています。そのためには効果的な啓発というのが何より重要だと思っていますので、しっかり全庁を挙げて取り組んでいただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。