第2回定例会 一般質問と答弁 2019.6.13 高岡じゅん子

第2回定例会 一般質問と答弁 2019.6.13 高岡じゅん子

 

初めに、若者の政治参加と投票率の向上について質問します。

生活者ネットワークは、政治を生活の道具にする、毎日の暮らしに密接につながる社会の仕組みを大勢の仲間の声を活かして変えていくことを目指す、地方政治に活動を特化したローカルパーティーです。そういった視点からいえば、国政選挙よりも身近な地域の政治を区民自身の声で変えていけるはずの区議会や区長の選挙に、もっと多くの区民が関心を寄せ、参加してもらいたいと願うわけですが、実は今回の選挙、投票率も、直近の国政選挙である二十九年の衆議院選挙に比べて一二%ほど低い投票率にとどまってしまいました。

区政に関心を持ち、投票しようと思っているのに、さまざまな理由で投票しにくいという区民に対しては、投票所に足を運びやすくする工夫として、車椅子動線の確保や、期日前投票により棄権を減らすための周知など、随分充実してきたとは感じています。それでも四月の区議・区長選挙では、有権者の半数以下しか投票していません。地方政治に関心の薄い層に対し投票を呼びかけ、投票率を向上させる、さらなる工夫と努力が必要ではないかと考えます。選挙管理委員会の見解を伺います。

 

さらに若い世代について見ると、今回も投票率の低迷は顕著になります。年齢別の投票率で、二十代の投票率は約二二%と、全年代の平均のさらに半分ほどの低さです。それに対し、初めて投票したであろう十八歳の若者の投票率は約四七%で、全年代の平均も上回っています。

 

十八歳までの選挙権拡大が初めて実施された平成二十八年の参議院選挙では、世田谷区の十八歳有権者の何と六八%が投票していました。このとき高まった若者の選挙に対する関心や参加意識を一過性のものにすることなく、継続的に参加する区民を育てていくことが必要です。

 

生活者ネットワークは、若者の投票率向上に向け、十八歳の選挙権年齢引き下げ以前から、選挙管理委員会と教育委員会が連携し、選挙に参加する意義を理解するための教育に取り組むことを求めてきました。この取り組みの成果と今後について、選挙管理委員会、教育委員会、それぞれの見解を伺います。

 

十八歳になって初めて政治に向き合うのではなく、政治を自分たちの生活に引きつけて意見表明や自己決定、ルールづくりなど、政治の機能と意義を学んでいくことが、参加する市民を育てるために必要です。子どもの権利の視点からも、意見表明権を正しく使っていく、人権教育としてのシチズンシップ教育が重要と考えます。

 

先日、道徳の公開授業を見せていただく機会がありました。「わがままな王子」という教材の授業で、わがままな王子がルールを無視したあげく、落ちぶれてしまうというストーリーから、ルールについて学ぶ授業だったのですが、四十五分という限られた時間の中で、ただわがままはいけないという表面的な学びに終わってしまったということを見て残念に感じました。そのルールをつくったのは誰なのか。ルールをつくる側の持つルールを守る責任や、新たなルールをつくっていける市民の力など、この教材の先にあることに、子ども自身が気づいていけるような対話的で本当に深い学びが、例えばこういった道徳の時間なども活用してシチズンシップ教育として必要だと考えます。

 

教育現場において対話的で深い学びを生かし、体験を伴ったシチズンシップ教育により、主体性のある市民を育てることが必要だと考えます。教育委員会の見解を伺います。

 

次に、在宅介護現場でのヘルパーに対するハラスメント防止と定着支援の強化について質問します。

 

介護保険制度も第七期となりましたが、介護人材の不足は深刻となり、サービスの維持にもかかわる事態になっています。

 

先日、世田谷区の家族介護慰労金支給制度が国の通知に従って改定され、住民税非課税世帯で介護保険の認定を受けたが、サービスを利用していない世帯への慰労金の支給範囲が拡大されたということを知りました。

 

国からこの制度を実施する自治体に対し、要介護四、五の重度者だけではなく、介護サービスを利用せず、要介護三や二で認知症状のある高齢者を在宅介護している家族も支給対象にするよう、全国で統一するという通知だと聞きました。介護の社会化、家族だけに担わせない介護を目指してきた生活者ネットワークとしては、このような国の施策が、介護サービスをより使いやすいものにしていく努力を放棄し、家族介護への回帰につながるのではないかと危惧するものです。

 

将来的に制度あってサービスなしという事態に至らないよう、今回は特に深刻な訪問系の在宅介護人材の確保に焦点を当てて質問します。

 

介護労働安定センターによる平成二十九年の全国の介護労働実態調査によれば、六六%の介護事業所が介護人材の不足感を感じており、特に訪問介護員の不足に関しては八割以上の事業所が不足と答えています。世田谷区内の事業所でも、特に訪問系の人材確保は難しくなってきていると聞いています。その要因も、訪問介護には現場に出る前に資格要件があるため、新規就労のハードルが高い。訪問介護員、ホームヘルパーの平均月収が、他の介護職員二十一万円台、これでも低いのですが、さらに低い十九万円台にとどまっている。少しでもよい待遇の職場を求めて、同業間での人材の取り合いが激しい。ベテランヘルパーの高齢化などさまざまで、人材確保、定着の決め手が見えないのが実情ではないでしょうか。

 

次期計画策定に向け、在宅介護、訪問介護の人材確保に焦点を当てた、より綿密な調査を行い、身近な地域で安心して老後が送れるための介護事業計画に反映していくべきです。区の見解を伺います。

 

昨年度、区が実施した介護現場のハラスメント調査は大変有用なものです。訪問介護事業所のその中では三五%がヘルパーに対する利用者や利用家族からのハラスメントについての相談を受けており、そのうち十三件はサービスの提供が困難になるほどの深刻なものだったというふうに調査結果が出ています。

 

入浴介助のとき、ヘルパーにも裸になってと求めたという事例など、このような事態を聞くにつれ、若いヘルパーが介護を続けていくということ、定着できるとは考えられません。多くの事業所ではさまざまな工夫をしていますが、より効果的なハラスメント防止策がとれるよう、区としても事業者に対し支援を進める必要があると考えます。区の見解を伺います。

 

日本は現在行われているILO総会でハラスメント禁止条約の批准も難しいというふうに報道されているなど、世界の基準から見て、働く場のハラスメントに対する社会の理解や法制度が進んでいません。まして介護の現場は、特に訪問介護の現場は家庭の中であり、利用者、その家族の背景により、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントへの理解には大変差があります。共通の理解のないところに、それがサービス停止の理由になるというふうに説明しても納得が得られず、利用者、事業者、ヘルパーの間でトラブルとなってしまうことも考えられます。

 

区が現場で説明に使いやすい具体例を示したリーフレットなどをつくり、利用者啓発を進め、介護現場のハラスメントを減らし、介護人材の定着支援の強化を図る必要があると考えます。区の見解を伺います。

 

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

鈴木 選挙管理委員会事務局長

私からは、若者の政治参加と投票率の向上につきまして、二点御答弁申し上げます。

最初に、投票率の向上に向けて、さらなる工夫と努力が必要ではないかについてでございます。

 

選挙は、民主政治の根幹をなすものであり、区民が政治に参加できる最大の機会です。とりわけ区議・区長選挙は、区民生活に密着した、最も身近な選挙であります。

 

選管では、これまでも投票率向上に向け、有権者の声に耳を傾けながら、誰もが投票しやすい環境整備に努めてまいりました。また、投票率の低い若者へは、大学の学生食堂での選挙啓発の文言を印刷したペーパーナプキンの備え置き、ファミリーレストランでのテーブルステッカーの掲出、居酒屋チェーン店へ投票日等を印刷したコースターの配布なども行っております。

 

加えまして、今回の区議・区長選挙では、スマートフォンやインターネットで検索した際に、その検索キーワードから世田谷区にゆかりがあると判断された方の画面に、選挙期日等を表示するバナー広告を行いました。この広告は延べ三百九十五万回表示され、そのうち約六千人の方が広告を通して区のホームページを閲覧されました。

 

また、ポスターのイメージキャラクターには、区になじみの深いウルトラマンを起用し、区内の私鉄全駅に掲出するなどしたところ、SNSでの反響もあり、一定の効果があったものと考えております。

 

選挙の投票率は、政治の状況、争点の有無、マスコミの報道等さまざまな要因にも左右され、このような啓発活動が直ちに投票率向上に大きく寄与するとは限りませんが、選管といたしましては、若手職員の英知を結集しまして、より効果的な啓発手法について、引き続き検討を重ねてまいります。

 

次に、教育委員会と連携した取り組みの成果と今後についてでございます。

 

選管では、有権者となる前から政治に関心を持ち、選挙を通して政治に参加することの大切さを理解してもらうことが何より重要であると考え、これまで、区教育委員会などと連携しながら、区立中学校を中心に出前授業などを行ってまいりました。出前授業では、社会科で学ぶ選挙制度や地方自治の授業の一環として、選管職員三名が区長候補者に扮し、空き地の活用方法を争点とした模擬区長選挙を実施するなど、あらかじめ社会科の先生と十分に協議した上、実施をしております。

 

模擬選挙では、単に投票の体験をするだけでなく、グループ討議や候補者への質疑などを通して、みずから考え判断し投票するプロセスを重視しており、先生からは、生徒が積極的に質問ができていた、よい雰囲気の中で授業に取り組んでおり、非常によかったと高い評価をいただいております。

 

このほか、生徒会選挙への協力として、投票所物品の貸し出しやミニ講座などを行っており、昨年度は中学校、高校、特別支援学校を合わせ、出前授業が四件、生徒会選挙への協力が十八件、合計で二十二件の実績がございました。

 

急な選挙がありますと、学校の要望にお応えできないのが課題でございますが、一校でも多くの学校で実施できるよう、引き続き教育委員会と連携して、各校に働きかけてまいります。

 

以上でございます。

 

池田 教育政策部長

私からは、二点御答弁させていただきます。

まず、投票率の向上に向けた取り組みでございます。

 

教育委員会における投票率向上などに向けた取り組みですが、引き続き選挙管理委員会と連携して模擬選挙などに取り組むほか、小中学校の社会科読本の改善などにも取り組んでまいります。

 

また、模擬選挙が実施されない学校においても類似の体験をしてもらうことができるよう、現在、職員が赴いて実施していただいている政見放送に相当する分を動画で提供する工夫などもしてまいりたいと考えております。

 

続いてシチズンシップ教育についてでございます。

 

次年度から小学校で本格実施となる学習指導要領でも、主体的、対話的で深い学びの実現が求められておりますが、社会のさまざまな課題を解決するために、さまざまな人たちと話し合い、自分で判断し決定していく体験を重視したシチズンシップ教育、主権者教育の実践は大変重要であると考えております。

 

現在、区立小学校では、学級活動や児童会活動等で自分たちのルールを決めたり、役割について考えたりすることを通して、自己決定することの大切さを学んでおります。

 

また、区立中学校では、模擬選挙の体験授業のほか、社会科での社会生活における物事の決定の仕方や、選挙で投票する意味、決まりの意義、権利と義務等についての学習や、特別の教科道徳や、学級活動、生徒会活動での考え議論し、合意形成を図る学習を通して、生徒の自立性と社会への参画意識を向上させるように取り組んでおります。

 

今後、シチズンシップ教育、主権者教育を進めるに当たり、区や都の作成した資料を有効に活用しながら、各教科等における学習を横断的に進め、主体性ある市民を育てるよう、さらに努めてまいります。

 

以上でございます。

 

長岡 高齢福祉部長

私からは、在宅介護現場でのヘルパーに対するハラスメント防止と定着支援の強化について、三点御答弁いたします。

 

まず一点目は、人材の確保、定着に関する調査についてです。

 

世田谷区としては、訪問介護員を初めとした介護ヘルパーの担い手である介護人材の確保・育成・定着支援は喫緊の課題であり、介護職員が安心して働くことができる職場環境を整える必要があると認識しております。

今年度、次期第八期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定に向けた検討の基礎資料とするため、区民及び区内介護事業所を対象に、高齢者ニーズ調査、介護保険実態調査を予定しております。前回、平成二十八年度に実施いたしました事業所を対象とした調査におきましては、離職した従業員の状況、労働環境の改善の取り組みとともに、人材確保や人材育成の状況についての質問も行っております。

 

今年度実施する調査の項目につきましては、現在検討しているところですが、介護分野の人材不足がますます深刻化している現状を考慮いたしまして、地域保健福祉審議会の意見等も踏まえながら、訪問介護員の不足状況等の問題点を把握し、今後の施策につながるような調査内容を検討してまいります。

 

次に、二点目といたしまして、ヘルパーに対するハラスメント防止のための事業所に対する支援についてです。

 

御紹介のとおり、区では昨年度、介護事業所におけるハラスメントに関する実態調査を、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所等七百六十二事業所を対象に実施いたしました。回答いただいた三百二十一事業所のうち、従業者が利用者家族からハラスメント行為を受けたと回答した事業所は全体の約二六%の八十三事業所でした。この事業所の管理者は、従業者へのハラスメント行為に関して、利用者、家族に対しサービス提供上の注意点などとあわせて丁寧に説明する必要があると考えております。

 

国においても、介護現場における利用者や家族等によるハラスメントの実態を踏まえ、平成三十一年三月に介護現場におけるハラスメント対策マニュアルを作成いたしました。その中で、介護現場におけるハラスメント対策の必要性や、事業者が具体的に取り組むべきこと等が盛り込まれております。

 

区では、ことしの四月に、国の対策マニュアルにつきまして、介護保険関係の情報を事業者等にお知らせするFAX情報便にて周知を図っております。

 

今後も引き続き集団指導や事業者向けの研修などの機会を捉えて、ハラスメント対策に関する周知を図り、働きやすい職場環境に向けた事業者への支援に取り組んでまいります。

 

最後に、三点目といたしまして、具体例を示したリーフレットなどをつくり、活用してはとの御質問についてです。

 

介護現場でのハラスメントは、介護職員への影響だけではなく、利用者自身の継続的で円滑な介護サービス利用の支障になることから、ハラスメントをなくすための取り組みは重要であると考えております。

 

働きやすい職場環境を整えるため、利用者、家族に対して介護サービスを適切に利用していただくための普及啓発用のリーフレットの作成については、区が実施するハラスメント対策として効果があると認識しております。

 

一方、国が作成した対策マニュアルにおいては、ハラスメントを行っている利用者の中には、疾患や生活困難などを抱えていて、心身の状態がさまざまな方がいることへの留意や、ハラスメントの具体例を挙げることにより、利用者に不快感や不信感を生じさせる可能性についても指摘されており、具体例をどこまで表現するかについては慎重に検討する必要があると考えております。

 

リーフレット作成に当たりましては、以上の点にも配慮した上で、事業者団体等の意見も踏まえながら進めてまいります。

 

以上です。

 

高岡じゅん子

まず、シチズンシップ教育に関してですが、大変いい出前授業があるようですので、一校でも多くのところで実施できるように、ビデオにするなど工夫していただきたいと要望いたします。

 

そして、人権教育としてのシチズンシップ教育を形だけのものにせず、子ども一人一人が自己肯定感を高めて、互いに認め合って意見を表明して、自分たちの学校生活を自分たちのものとして充実させていく、そういったことを通じてのシチズンシップ教育ということを、ぜひ実現していただきたいと願っています。教育委員会と、そして現場の皆さんのさらなる努力と工夫を望みます。

 

あと、介護のほうのハラスメントなんですが、やはりハラスメントをしていらっしゃる方自身は、それがハラスメントだとか、それほど深刻なことだと思っていらっしゃらない、ハラスメントに対する国民全体の理解のレベルが低いということもちょっと指摘させていただきましたが、やはり現場で持っていって本当に役に立つリーフレットの作成を急いでいただくようにお願い申し上げます。

 

以上です。