第1回定例会 予算特別委員会 文教所管の質問 2019.3.19 高岡じゅん子

第1回定例会 予算特別委員会 文教所管の質問 2019.3.19 高岡じゅん子

 

子どもの権利、子どもの人権の保障ということを生活者ネットワークは二十年以上言い続けてきています。特に大切なのは、子ども自身の中から湧き出る育つ力や子どもが自分で自分を守るために主張できる子どものエンパワーメントということではないかと私は考えています。

 

世田谷区に子どもの人権擁護専門機関、せたがやホッと子どもサポートがあり、子ども自身からのさまざまな相談や訴えに対応しているということは大いに意義があることです。

さて、このせたホッとは、設立当初から区長と教育委員会の両方に属する執行機関として設立されており、子どものために大胆に横串を通した位置づけがされています。せたホッとは設立六年になりました。共管所管、共同管理の所管として教育委員会も子どものいじめ防止や学校における暴力や体罰の根絶などに取り組んできたと思います。さらに、ことし起こった野田市の児童虐待死の事件などからも、児童虐待の発見や防止に対しても地域の公立学校の果たすべき役割が注目されています。

 

教育委員会として、子どもの権利擁護の課題に今後せたホッとなどを活用し、どのように向き合っていくのか、まずは教育長の見解を伺います。

 

教育長

今お話しにありましたせたがやホッと子どもサポート、世田谷区子どもの人権擁護委員についてですが、平成二十五年四月に設置されて、七月から相談を始めました。六年が経過しております。

 

区長部局と教育委員会が一体となって、区全体で子どもの権利侵害に関する救済に取り組んでいくということを明確にしたもので、川西市に次いで全国で二番目ということでいろいろな取り組みをしてまいりました。

 

御案内のように、二〇二〇年から児童相談所がこちらに設置されることになります。千葉県野田市のことにならないように、関係機関、私どもと世田谷区子どもの人権擁護委員と情報の共有化を図りながら、改めて連携をしていかなければならないと考えております。

 

せたホッとは、教育委員会自身の持っている執行機関でもあります。密接な連携と活用を望みます。あと、子ども自身がせたホッとを自分の問題解決に活用できるように、今でも子どもへの定期的な周知を行っていらっしゃるというふうに聞いていますが、校内に常にせたホッとの情報が置かれ、子どもがいつでも手にとれるような環境づくりを要望しておきます。

 

野田市の栗原心愛さんが虐待の末、死亡した事件の報道で私がいつも気になるのが、そもそも児童相談所や教育委員会に問題のアンケートを渡したり、見せたりする前に、本人に意向確認を現場でしていたんだろうかという点です。この時点できちんと本人に向き合って事実を確認していたなら、後から父親がそれは虚言だというふうに言い出しても対抗できたと考えるからです。

 

世田谷区立の小中学校でもQ―U調査やさまざまなアンケートを通じ、子どものいじめなどの情報をつかむ工夫をしていると聞いています。発見された問題の解決には担任の先生が一人で抱え込むのではなく、学校全体で一丸となった取り組みが不可欠です。また、場合によっては学校の枠を超え、先ほど取り上げたせたホッとなど外部の機関と情報共有し、子どもの抱える問題を解決していく取り組みが必要になります。

世田谷区教育委員会として、子どもの自己決定権を大切にし、秘密と約束したアンケートなどを子どもの権利保護のために使う場合も子ども自身に確認をとるなど、子どもを一人の人格として尊重する考え方を徹底していただきたいと考えます。見解を伺います。

 

副参事

今、委員おっしゃいますように、子ども一人一人の人格を尊重した対応は大変重要であると考えております。

 

学校では、教職員が日ごろから一人一人の様子を見守るとともに、区独自の調査を含め、児童生徒への学校生活アンケートを学期ごとに年三回実施し、担任はもとより、養護教諭や専科の教員、生活指導担当教員など複数の教員で確認するなどいたしまして、いじめや体罰等の状況を丁寧に把握してございます。

 

また、アンケートを実施する際には、書かれた内容については秘密を守るとともに、学級担任や養護教諭など校内の教員等が確認をいたしまして、安全や安心を守る体制を整えるということを児童生徒に伝えてございます。個別に具体的な対応が必要な場合には、学校外の相談機関との連携におきましてアンケート等の内容が重要な情報となるケースもございますので、そういった場合には当該児童生徒の意思を確認しながら対応しております。

いずれの場合におきましても、被害者、また被害を受けていると思われる児童生徒を徹底して守るという観点から、加害者等への情報提供等につきましては、慎重に行ってございます。

 

児童を守るというしっかりしたスタンスを全教職員が共有して情報保護に努めることを求めておきます。

 

子どもの虐待や権利侵害に関して、教育現場にはいち早く子どもの変化に気づき、支援に結びつける力が求められています。このような相談支援と本来業務である教育活動の両方を現場が担わなければならず、教員の多忙化に拍車をかけているという課題があります。

世田谷区教育委員会は、このような課題に対し、現場教員を支えるバックアップ体制として、教育支援チームというのをつくって今まで対応してきたと聞いています。この支援チームにおいて弁護士を配置して、そして教員の方を法的にもバックアップするということを早くから取り上げてきたということは大変有効なことだったと考えています。いじめや暴力などに対しては、やはり弁護士も入った教育支援チームが存在して、現場をバックアップして重度化、深刻化を防ぐというふうに聞いているんですが、教育委員会や先生方にとっての問題の深刻化防止というのではなく、子どもの環境をきちんと守る、子どもたちの学ぶ権利を守るという視点で重度化防止をぜひ弁護士の先生の力も使って進めていきたいと思っています。

 

さらに、虐待防止という観点では、長期欠席児童や生徒の背景に家庭の事情が絡んでいる場合があるということが早くから認識されています。そこで、世田谷区はスクールソーシャルワーカーを全区で今四人配置し、複雑な家庭環境に置かれた子どもの支援をしているということです。来年度、各総合支所の子どもの見守り力の強化がなされ、虐待防止のための体制整備が区長部局でも進みます。教育委員会としても現場のバックアップ体制のさらなる強化が必要と考えますが、見解を伺います。

 

教育指導課長

委員お話しのとおり、教育委員会では教育支援チームによる弁護士等の専門的な見地からの指導、助言を行いまして、区内全ての幼稚園、小中学校を支援しているところでございます。

 

また、お話に出ました外部から学校を支援する体制といたしまして、学校教育相談体制の充実や特別支援の推進の観点から校外アドバイザーの役割を総合教育相談室に位置づけ、学校からの要請に基づき、心理教育相談員とスクールソーシャルワーカーが助言の支援を行っております。

 

教育委員会といたしましては、今後、教育総合センター開設に向け、教育支援チームを核として総合的な教育相談や不登校対応など組織や機能の検討を進めて支援体制を整えることで強化を図り、学校現場を支え、充実した教育活動が推進できるよう努めてまいります。

 

スクールソーシャルワーカーを配置されているということなので、そこが有効に機能して、来年度組織強化される総合支所の子ども家庭支援課とのより緊密な連携がとれる体制づくりを望みます。

 

先ほども申し上げましたけれども、教育現場の本来業務というのは教育活動です。日本の教育関連費の国家予算に占める割合は三・四七%、世界比較では百五十四カ国中百十四位と報じられています。人を育てるのは人です。十分な人員配置がなくては十分な教育ができません。

 

先日、文部科学省は、学校の働き方改革のプロモーション動画の配信を開始いたしました。これも見せていただきましたが、学校現場の過酷さというものを減らすには、やはり学級の少人数化など抜本的な対策により教員の増員を図るしかないのかなと、それを見ても私は感じました。

 

余裕のある人員配置で先生方が過労に陥らない体制というのが望ましいのですが、実際の学校運営は今配置されている人員で回していかなければなりません。特に小学校では、学級担任の方の病欠とか休職などの代替は、多くは副校長が担っています。副校長には副校長としての職責もあり、授業に入ることでそれを後回しにせざるを得ないということになります。誰かにしわ寄せが来るという過度な心配をせずに、必要なときに安心して休めるということは学校の働き方改革としても最低限実現すべきことです。

 

教員の休職などの代替業務が在職校の副校長に集中せずに、職員も管理職も本来業務である教育活動に安心して取り組めるような仕組みをつくるべきだと考えます。見解を伺います。

 

教育指導課長

委員お話しのように、教員の休職については副校長の負担が大きくなると認識しております。学校においては、学年や専科の教員を中心として校内体制で担当しております。また、副校長の業務については、校長や主幹教諭、事務職員等が分担して支援をしております。

 

教育委員会といたしましては、来年度より副校長を退職した者を教育嘱託員として教育センターに任用し、緊急の場合に臨時的に派遣したり、年度当初や学期末など昇任副校長の学校を巡回したりして副校長の業務の支援をすることで、管理職が学校経営を円滑に進められるよう努めてまいります。

 

学校がブラック職場の代表のように言われる状態ではよい人材は集まりません。副校長にまでなった人材が着任後予想外の激務で休職するという事例もあるというふうに聞いています。人材を大切に、世田谷区の教育の質を守っていくことを求めます。

 

最後に、就学支援の制度改正について質問します。

 

十月以降、所得制限ラインを引き上げ、給食費の支援についても活用できる世帯の範囲を拡充したことは、今まで支援が届かなかった子どもに支援が届きやすくなったと言えます。

以前、生活者ネットワークでは、就学援助の申請率の低さの改善に向けた提案として、申請用紙をもっと手に入れやすくすることを提案しています。この四月から改定内容の周知とあわせ、就学援助制度のお知らせと申請書類を区立学校の全生徒に配布すると聞いています。見えないハードルの一つであった申請書類をとりに行くことがなくなり、今後の就学援助申請数や申請率の向上などを期待しています。申請書の全員配布など子どもの教育を受ける権利の保障に向けた支援が必要な子どもにきちんと届く仕組みを継続、充実させていくことを求めます。

 

特に多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を持つ世田谷区として、日本語以外の言語を母語とする保護者にもこの制度を周知し、必要な支援が適切に届く配慮をすべきと考えます。見解を伺います。

 

学務課長

就学援助の周知につきましては、「区のおしらせ」やホームページに掲載するほか、年に二回、学校を通じて全保護者へ御案内のチラシを配布しております。このたびの制度拡充も踏まえ、よりわかりやすい内容に工夫した御案内のチラシを作成し、周知に努めてまいります。また、日本語を母国語としない保護者の方には、英語、中国語、ハングルで表記した案内を適宜配布するなどしてまいります。

 

申請に当たりましては、申請される方の手間や心理的な負担を考慮し、今回から申請書を御案内のチラシに添付いたします。この点につきましては、来年度以降も継続して行ってまいりたいと考えております。

 

今後とも、次代を担う子どもたちのためにも援助を必要とされる方がより制度を利用していただけるよう取り組んでまいります。

 

現場である学校が目の前にいる子どもの抱える困難にきちんと向き合い、必要な支援に結びつけることを常に意識しつつ、でも、本来業務である教育活動を有意義に進められるよう、教育委員会がさらにバックアップの機能を高めていただくことを要望し、私たち生活者ネットワークの文教分野での質問を終わりたいと思います。