第1回定例会 予算特別委員会 福祉保健の所管の質疑応答 2019.3.12 高岡じゅん子
平成三十年度は、障害者グループホームの整備に関し区の助成金を活用した事例がなかったことは残念でしたが、むしろ民設民営、補助金を使わない形での開設があり、運営費補助が当初予算よりふえたということで、補正予算を組むという想定外の事態になっています。障害者グループホーム整備の計画の進捗状況や、利用者数の現状、また、ことしのように民間資金での新たなグループホーム開設が来年度も見込めるのか、その場合の運営費補助の予算確保の状況について、あわせてお答えください。
障害者地域生活課長
地域における障害者の住まいとなるグループホームにつきましては、二〇二〇年度までに三百七十人分を確保する目標を掲げ、整備促進に取り組んでおります。平成三十年度は整備費補助を活用した整備がございませんでしたが、この補助を活用しない、民間事業者による自主整備が進み、現在、三百八人分を確保しております。
グループホームの運営助成でございますが、平成三十年度当初予算には、既存施設に加え新規開設見込みの三カ所、二十三人分を含めた四十カ所、二百八十二人分の運営助成費を計上しておりました。しかしながら、整備補助を活用しない整備については年間を通じて開設の動きがあることから、平成三十年度当初予算編成に間に合わなかった四カ所、二十六人分の運営助成費について、先般の第四次補正予算に計上させていただいております。
平成三十一年度の当初予算案におきましては、既存施設の運営助成費に加え、この間の相談状況等から、平成三十一年度中に新たに開設が見込まれる三カ所、二十四人分の運営助成費を計上しております。
そうしますと、今の数字を足し合わせていきますと、平成三十一年度の末で三百三十七人ということで、目標の三百七十人に対しては、かなり達していないという中で、民間でグループホームがつくられ、地域の中で自分らしい自立生活をできる障害者が一人でも多くなるということは、世田谷区にとってもありがたいことです。
一方、民間施設においては、経営を続けるためには収支バランスが不可欠で、必要な経費の運営費補助を確保できるということが経営継続に不可欠となっています。ことしの例ですが、障害児を受け入れる放課後の居場所、放課後デイに関しては、三年ほど前に民間の設置のブームが起こり、次々と事業者の参入がありました。
しかし、重症児の受け入れのための看護師の配置、また、人材確保の困難などが最終的な直接原因となり、昨年、一カ所が休止するというような事態にもなってしまいました。来年度、医療的ケア児の受け入れを行う放課後デイ施設に対して、区独自の補助金を新設することは、利用する子どもの安定した居場所確保のため必要な施策として評価します。
しかし、同じように民間主導で、障害者の住まいであるグループホームでも、何年かたつうちに、利用者の状況が重度化し、悪化するなどということが想定できます。実際の高齢福祉の分野のサービスつき高齢者住宅では、重度化することによって、住み続けることが難しくなるという事態が実際に起こっています。
このような重度化に伴い、住まいを失うという事態が障害者グループホームで起こらないために、来年度、放課後デイで始めるような区独自の上乗せも視野に入れ、民間施設グループホームでも重度化に対応できる、運営を支える仕組みをつくっていく必要があると考えます。区の見解を伺います。
障害者地域生活課長
重度障害者や高齢化にも対応しながらのグループホームの安定的な運営に向けましては、平成三十年度の報酬改定により、重度者の受け入れ状況に応じて報酬が高くなることになったほか、看護師配置加算等も設けられております。また、昨年四月から新たに重度化、高齢化に対応することを目的にした日中サービス支援型グループホームも創設をされております。
さらに、東京都では、平成三十一年度からグループホームの体制強化を支援する事業を新たに実施すると伺っております。
区としては、こうした新たな制度や支援策等について事業者へ丁寧に情報提供するとともに、制度活用に向けた手続等の支援などを通じ、既存事業者の運営支援に当たってまいりたいと考えております。
国や都も新たな支援の仕組みをつくるようですが、必ずしも使いやすいものになっていないことがあります。ぜひ区の独自の支援に関しても検討を続けていただきたいと要望いたします。
来年度検討を進める障害者施設整備等に係る基本方針において、障害者の高齢化、重度化への対応についても検討されていくと承知しています。特に、障害者の住まいの確保や、年をとっても、障害が重度化しても、住みなれた地域で住み続けられるための総合的な支援のあり方について、さらに掘り下げていく必要があると考えますが、区の見解を求めます。
障害者地域生活課長
区といたしましても、障害のある方が地域の一員として、住みなれた地域で安心して生活を継続できるよう支援することは大変重要であると考えております。お話しありました、現在議論を進めている障害者施設整備等に係る基本方針検討委員会におきましても、生活介護等の通所施設の整備とともに、グループホームの整備や重度化等への対応についても検討課題としておりまして、国や都の制度、支援策の活用状況なども把握しながら、今後の支援のあり方を整理してまいりたいと考えております。
住まいを中心とした支援が大変重要な課題です。高齢者福祉から始まった地域包括支援の考え方ですが、国の方針も、我がこと丸ごとという言い方で、障害者も、子どもも、高齢者も、安心して住み続けるための相談支援体制の充実を求めています。
世田谷区は、この政策を先取りし、福祉の縦割りを超えた世田谷型地域包括ケアシステムの構築を目指しているところですが、区民にとって本当に使いやすいものにするには、まだまだ課題があります。今、福祉の総合相談窓口の業務を担っているあんしんすこやかセンター自体が専門性を発揮でき、直接支援につなげられる、高齢者以外の、障害者や子育て世代の親子が適切な支援につながるためには、総合支所の福祉三課の、つなぐ力の強化が必要です。
新たな課題として、児童虐待防止における地域包括ケアシステムの力が求められています。目黒区、野田市などの例を見るまでもなく、児童虐待の死亡事例を聞くと、どうして周囲の人は気づけなかったのか、支援はなぜ届かなかったのかという疑問が湧いてきます。二〇二〇年四月の世田谷区児童相談所の開設に向けては、さらに総合支所の児童虐待を防ぐための、つなぐ力の強化が望まれます。来年度の取り組みについて伺います。
北沢総合支所保健福祉センター副参事
子ども家庭支援センターは、これまでも地域の身近な相談窓口として、また、要保護児童支援地域協議会の調整機関として児童虐待に対応してまいりました。さらに専門性を高めるため、平成三十一年度より、子ども家庭支援センターを課として設置いたします。
また、この機能を担うために担当係長、ケースワーカー、心理士等の増員を行い、人員体制についても強化してまいります。専門性を生かして、地域のネットワーク資源と連携した子育て支援を行い、その上で、さらなる支援や指導が必要となった場合には、児童相談所など、より高度な専門性を持つ機関と協働して問題の解決を目指します。
総合支所のほうがこれまで培ってきた顔の見える関係をもとに、地域の関係機関と連携をより強化して、この子どもへの見守り力、地域の見守り力の強化ということがとても大事だと思います。あと、専門性のあるバックアップ機関としての支所の力も大変重要になってきますので、人員の増強を図り、体制を強化し、やはり二〇二〇年の児童相談所開設時には機動的に動ける体制をつくっていただきたいと要望いたします。
今出ましたように、少し気にかかる親子を地域として受け入れて、緩やかに見守る、地域の誰でもできる活動が一次予防だとすれば、プロの支援者のほうから手を差し出し、今の子どもがいる、その地域の中で暮らしている親子の暮らしを尊重しながら、困り事の解決の糸口を見つける支援をするということが二次予防ではないかと考えます。
支所のつなぐ役割として、必要な場合には断固として児童相談所に通報し、虐待をとめるということも大切ですが、虐待に至る前の、二次予防の必要な親子を見落とさずに、適切な支援につなげることがさらに重要だと考えています。
一次予防として長年実施してきた、さんさんサポートを、来年度は、狙いを明確にした二次予防事業として実施するとのことですが、取りこぼしのない支援となるため、どのような工夫をしていくのかを伺います。
子ども家庭課長
さんさんサポートについては、この間の一次予防事業を充実してきたことを踏まえ、二次予防をより強化する観点から、より支援が必要な家庭を対象に、産前産後の体調不良や育児能力の低下等により、一時的に生活支援を必要とする家庭がその時期を乗り切り、養育困難家庭に陥らないようにするための支援として再構築いたします。
今後、妊娠期面接や乳児期家庭訪問、乳幼児健診等の母子保健事業や、地域のおでかけひろばや利用者支援事業、医療機関からの情報等をもとに把握した、一時的に生活支援が必要なケースについては、支援に拒否的な家庭も含め、利用の働きかけを行い、専門職による支援と、さんさんプラスサポートを有効に組み合わせ、養育困難に陥らないようにするための支援を届けてまいります。
なお、世田谷版ネウボラの一環として実施しております子育て利用券は、育児不安や育児負担の軽減を図る支援として、産前産後の訪問支援サービスを含め、さまざまな子育て支援サービスに利用できることから、さんさんサポートの無料券配布終了の通知とあわせ、子育て利用券の利用を積極的に案内してまいります。
一次予防、二次予防の連携がきちんととれ、本当に必要な支援が届くことを本当に求めていきます。
二年前に起こった烏山地域での乳児の死亡事例で、自分から支援を求めに出ていくことのできない赤ちゃんの育て方や、赤ちゃんとの暮らしに悩む家族があるということが浮き彫りになりました。こういった虐待の未然防止に、家庭に入って支援する、このさんさんプラスサポートを活用していくことを求めています。
この事業は、乳児を持つ家庭に特化した事業ですが、幼児期や学齢期の子どもの家庭に対しては、子どもの食の支援事業も始まります。こちらも二次予防の観点から、家庭に対し有効な寄り添い型の支援となるように要望いたします。
さらに、もっと声の上げにくい子どもの支援に関して、続いて質問します。
生活者ネットワークでは、学齢期や青年期に家族のケアを担い、子どもらしい生活を奪われてしまうヤングケアラーの問題を指摘し、研究してきました。成蹊大学の澁谷智子准教授の著書に挙げられていた特に印象的な事例が、メンタルの問題を抱える家族の問題に子どもが巻き込まれ、子どもらしい時間を奪われてしまうという事例です。
現在、世田谷区では、先ほど別の会派からもありましたが、八〇五〇問題で、本来だったら働き盛りの方のメンタルのトラブルと、その上の高齢者の介護という問題が注目されています。逆に働き盛りのはずの方のお子さん世代への波及というのか、そういったメンタルのトラブルと、下の世代への問題、しわ寄せも、今後、児童虐待や子ども支援に向けた施策づくりの中の視野に入れていく必要があるのではないかと考えます。
今年度、子どもの生活実態調査を行い、支援が必要と思われる家庭の支援利用率が逆に低くなっているという傾向も見られたということです。この傾向の裏に、家庭内に潜むメンタルの問題もあるのではないかと懸念します。来年度、さらに深く分析し、子ども計画後期に生かしていくということですが、区の見解を伺います。
子ども家庭課長
区が今年度実施しました子どもの生活実態調査のアンケート調査は、小学校五年生と中学校二年生の全ての子どもとその保護者を対象に行いました。このアンケート調査結果からは、生活困難を抱える小中学生が一割を超えて存在しており、子どもの食や体験、学び、自己肯定感、健康に少なからず影響を及ぼすなど、世田谷区においても貧困によって基礎的な生活が十分に保障されていない子どもが確実にいるということや、生活が困窮するほど、支援サービスの利用意向はあっても利用しない傾向が強くなるなどのさまざまな課題が見えてまいりました。
委員御指摘のとおり、来年度は保護者の抑鬱傾向の子どもへの影響を初め、貧困や暴力の連鎖の実態等、さまざまな子どもを取り巻く課題について、より詳細に分析し、実態を把握してまいります。それらの結果を踏まえ、子どもの貧困対策を総合的に検討し、子ども計画第二期後期計画に反映してまいります。
高岡じゅん子 委員
来年度は、児童相談所移管に向け、地域の下地をつくる大切なチャンスの年となります。今回の子どもの生活実態調査のデータなどを活用し、本当に子ども計画後期に生かして、どの子も自分らしく、愛されて育つことのできるような世田谷を実現するように要望いたします。
今、暴力ということがありましたが、やはりそれはDVの問題とも深く絡んでおります。ぜひ子どもたちの虐待の防止に関して全庁を挙げて取り組んでいただくことを重ねて要望し、生活者ネットワークからの質問を終わります。