第1回定例会 一般質問と答弁 2019.2.21 田中みち子

第1回定例会 一般質問と答弁 2019.2.21 田中みち子

 

まず、女性の就労と子育て支援についてです。

 

昨年は、政治分野における男女共同参画推進法が成立し、女性の政治参画が進むことが期待される一方で、事務次官や自治体の首長らによるセクシャルハラスメント、医学部入試における女性差別問題など、日本の男女平等のおくれを露呈させるような事態が次々に起こりました。一人一人の人権が尊重され、ジェンダー主流化に向けた取り組みが求められます。

 

女性の就労については、専業主婦世帯と共働き世帯が逆転し、働く女性が大幅にふえるものの、その中身については非正規雇用が正規雇用の数を上回り、賃金は正規雇用だけで比較しても、女性は男性の七五%にとどまり、非正規雇用を入れると大きな賃金格差となっています。

 

さらに、二〇一八年の男女共同参画白書の調査結果では、六歳未満の子どもを持つ家庭における家事、育児の時間は、妻が一日七時間に対して、夫はわずか一時間です。

昨年、東京・生活者ネットワークが行った東京に住む女性約百人への聞き取り調査からも、男性は仕事、女性は家庭といった固定的性的役割分担意識が、男性だけでなく女性にも多くあることがわかりました。男女雇用機会均等法や女性活躍推進法、育児・介護休業法など法制度が整備されるものの、働き方改革なくして生活時間は取り戻せず、現実とのギャップを解消する必要があります。

 

そんな中、身近な地域で働きながら子育てができるコ・ワーキング・スペースについては、これまで関心を持ってきました。この一月にようやくオープンした子ワーキングスペースチャチャチャ、この利用状況や今後の展望について伺います。

世田谷の場合は、一旦仕事をやめて子育てに専念される方も多くいらっしゃいます。復職を希望しても、子育てと両立できる仕事がないといった声も聞いている一方で、企業からは、ポテンシャルの高い方が住むエリアであり、仕事を任せたい方が多くいるとも聞いています。

 

企業の人材確保が課題となる中で、区としてもそれぞれのニーズにマッチした対策を立てる必要があります。これまでの就職が中心の支援から、今後は時間や職場の制約がない仕事の切り出しを行うなど、多様な働き方を後押しする環境を整えることが求められます。見解を伺います。

 

また、女性全体の賃金アップや休暇取得を含めたワーク・ライフ・バランスの実現が進まない中、特にシングルマザーについては仕事をしないという選択肢がありません。シングルマザーへの聞き取り調査からも、子どもにとっての時間を優先すると、仕事選びの段階から非正規を選ばざるを得ない状況が見えてきました。みずからの能力を発揮し、子育てを続けながら安心して働ける環境を整えることが求められます。子育て問題が集約されるシングルマザーの対策を進めるべきです。見解を伺います。

 

次に、児童虐待防止に向けての質問です。

 

厚労省が毎年発表する、全国の児童相談所が対応した平成二十九年度の児童虐待相談件数は十三万件を超え、統計をとり始めた平成二年以降、過去最多を更新し続けています。

 

また、平成二十八年度中に虐待で死亡した子どもは、心中以外の虐待死が四十九人、心中による虐待死二十八人、合わせて七十七人、また、居住実態が把握できない児童が二十八人もいることが明らかになるなど、命の危険がある子どもたちの安全確保を早急に、確実に行うことが求められます。

 

特に虐待相談で一番多いのが、子どもの前で父親が母親に対して暴力を振るうなどの面前DVや、暴言を浴びせるといった心理的虐待であり、千葉県野田市の小学四年生の女子児童が父親から虐待され死亡するという痛ましい事件は、身体的虐待に加え、この心理的虐待にも該当します。さらに、今回の事件では、この父親の恫喝、おどしなど、威圧的な態度に職員が恐怖を感じ、強い要求に屈してしまっています。児童みずから勇気を出して学校にも助けを求めたにもかかわらず、その命を守ることができなかったことは残念でなりません。児童相談のあらゆる場面で子どもの権利が保障され、その最善の利益が優先される体制を整えることが重要です。

 

子どもを守るための児童相談所の機能として、適切なアセスメントに基づき、強力な法的権限を行使し、機を逸することなく、子どもの一時保護を行うなど、家庭へ介入していく一方で、頻発する虐待死の多くは、一時保護から帰宅後に起こる、こういった現状を指摘しておく必要があると考えます。

 

虐待は繰り返すと言われており、虐待をする親は自分も虐待を受けて育つという虐待の連鎖も課題です。こうした負の連鎖を断ち切るためには、親に対する更生プログラムや、地域を巻き込みながら家庭を支援する体制づくりも、児童相談所の重要な役割の一つではないでしょうか。

 

児童相談所の本来の目的である、問題を抱える家庭の課題を取り除き、家族再統合の機能をどう果たしていくのか、要保護児童支援協議会にとどまらず、子育て支援に取り組む市民団体など地域資源とも広く連携し、世田谷にふさわしいネットワークをどうつくっていくのか、その手腕が問われます。区長に見解を伺います。

 

これまでも児童相談所の職員不足については指摘していますが、児童福祉司一人が対応する相談内容も複雑化、多様化し、困難なケースを抱え、燃え尽き症候群になってしまう職員が多いことも問題です。職員が疲弊し適切な判断ができないことがないよう、職員の適正配置はもとより、相談行政にかかわる職員一人一人が子どもの最善の利益を保障すべく行動できる体制づくりが重要です。

 

そのためには人材育成も重要であり、効果的な職員研修の充実と質の向上が不可欠と考えます。区の見解を伺います。

 

さて、ことしは、子どもの権利条約を日本が批准して、二十五周年の節目の年に当たります。私はこれまで、虐待にとどまらず、いじめ、不登校、ひきこもり、性暴力、性的搾取、愛着障害など、子どもの権利侵害の問題を取り上げてきました。国連から是正するよう何度も勧告されているにもかかわらず、遅々として進まない日本の現状を変えていく必要があります。そんな中、世田谷区では、子どもの権利擁護機関「せたホッと」が開設され、第三者機関ができたことを評価していました。

 

今後、児童相談所と子ども権利擁護事業との連携も重要になってきます。どのように進めていくのか、区の見解を伺います。

 

そして、世田谷区は、今申し上げた子どもの権利条約にある子どもの生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利を理念に掲げ、平成十三年に世田谷区子ども条例を策定しています。子どもへの周知にとどまらず、条例が効果的に運用されていくことこそ大切であり、子どもを取り巻く全ての大人たちに対しても意識啓発や周知が必要です。

 

子どもの権利条約批准の記念の年でもある二〇一九年をチャンスと捉え、広く周知することを求めます。見解を伺います。

 

以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

保坂 区長

田中議員にお答えします。

 

児童相談所を支えていく地域ネットワーク、そして、家族再統合への道についてお尋ねをいただきました。

 

区ではこれまで、子どもを守るネットワークとして要保護児童支援協議会をDV防止ネットワーク代表者会議と共同で開催いたしまして、子どもにかかわる幅広い団体が参加し、情報共有や支援のための協議を行ってきております。

 

今後、児童虐待への的確な対応や未然防止の徹底を図る一方、これにとどまらず、課題を抱えている家族を、家庭を再び子どもが安心して過ごせる場所とするために、児童館、青少年交流センター、メルクマールせたがやなど、さまざまな機関のネットワークを強化し、地区の子ども相談機能や居場所を充実させて、地域の皆さんとともに身近な地区での見守りができるネットワークづくりを進めていきたいと考えています。

 

地域の民生児童委員、青少年委員、あるいはPTAなどとの連携も必要だと思いますし、幼稚園、保育園、こども園、学校などの、それぞれの子どもを育成する機関とのしっかりしたネットワークも築いていく必要がございます。個人情報の守秘義務の問題、各団体の持つ機能を踏まえた役割分担などについて仕組みづくりをしていく必要があります。

 

今後、関係団体と十分に意見交換を重ね、それぞれの役割を明確にしていく中で、児童相談所と地域、子ども家庭支援センターが一連となった、切れ目のない児童相談体制の構築を目指してまいります。

 

世田谷区において、まさに区が児童相談所を持つということの強みとしては、面としての子どもの情報、いわば子どもの暮らし全体に近いところでチェックが行われ、また、緊急介入の必要なタイミングを判断するという意味での基盤ができ上がること。また、お話しのように、それでは、一旦保護したお子さんを、もう一度保護者が変わることによって、つまり暴力等を用いないということにおいて、親子、家庭が再統合されていく、ここが非常に重要なわけで、このプログラム開発におきましては、地域資源をしっかり生かすということが肝要だろうと思っております。

 

また、社会的養護全体の仕組みづくりが、まだまだ昭和二十年代の仕組みを引きずってきておりますので、保護され、そして社会的養護の仕組みの中で育成されていくお子さんが十八歳になってまだまだフェアなスタートができない、ここも含めて社会的養護全体の刷新を図っていく世田谷の取り組みというのをつくっていきたいと考えています。

 

澁田 子ども・若者部長

私からは、四点お答えをいたします。

 

一点目でございます。子どもの最善の利益を保障する体制づくりは、職員研修の充実と質の向上が不可欠であることで、区の見解はという御質問にお答えいたします。

 

児童相談所は、法で定められた権限と役割に基づき、支援が必要な児童、保護者に対する適切なアセスメントの実施や、保護者との対話を重視したきめ細やかな支援、緊急時の迅速かつ的確な判断を組織として行っていく必要がございます。こうした組織運営は、それを支える職員の専門性とチームワークづくりが非常に重要であると考えておりまして、児童相談所設置・運営計画―第三次更新計画―においてお示ししました人材育成計画に基づき、相談業務に携わる職員に求められる能力、資質を備えた人材の確保育成が急務であると認識しております。

 

また、こうした人材育成を児童相談所開設後もたゆまず続けていくためには、研修の内容を常に最新の知見に基づくものとする必要があり、こうした研究チームも所内の役割分担で設けるなどの工夫をし、研修も関係部署の全ての職員が受けられるよう取り組んでまいります。

 

このように、児童の安全を最優先に確保するために、従事する職員の質の向上を図り、適切な運営体制を構築してまいります。

 

二点目でございます。「せたホッと」と児童相談所の今後の連携についてお答えいたします。

 

子どもの人権擁護機関「せたホッと」では、子どもの権利侵害に関する相談に対し助言や支援を行うとともに、必要に応じて調査、調整を行い、関係機関等に対し問題解決に向けた協力、改善を求めております。

 

「せたホッと」が子どもからの相談を受け、必要な調査や改善に向けた対応を行うに当たりましては、児童相談所との協力連携が必要な事例もあることから、あらかじめ区の児童相談所開設の準備段階より、両機関による十分な意見交換等を行っていく必要がございます。また、子どもの最善の利益が守られた児童相談行政の実現を目指します上では、措置された子どもや一時保護された子どもの権利擁護の観点から、当事者である子どもからの意見聴取や意見を酌み取る方策、子どもの権利を代弁する方策を組み立てることが不可欠であると考えております。

 

「せたホッと」が公正中立で独立性と専門性のある機関として、子どもの権利侵害に関する相談への助言や、支援を行ってきた経験や知見を十分に活用して、子どもの権利擁護のための第三者機関としての機能を果たすとともに、児童相談所開設後の連携方法についても検討を進めてまいります。

 

三点目の御質問でございます。子どもの権利条約の内容について、区として広く周知すべきという御質問に対してお答えいたします。

 

子どもの権利条約は、子どもを権利の主体と位置づけ、子どもの生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利を保障するなど、その精神は区における子ども・子育て支援施策の展開に当たりまして基本とすべき重要なものでございます。

 

区では、こうした理念を前文に置きました世田谷区子ども条例を平成十三年十二月に策定し、この間、この条例を基本として、さまざまな子ども・子育て支援施策の充実を図るとともに、子ども条例に掲げる内容等についても機会を捉え、周知を図ってまいりました。

 

例えば、小学校高学年、中学生向けには「みんなでいっしょに考えよう!」と題した、子ども条例に関するパンフレットを作成しており、この中では、御指摘がございました子どもの権利条約の内容なども含めましてわかりやすく解説をしているほか、あわせて保護者向けのリーフレットなども作成し、配付をしてきております。

 

現在、子ども計画(第二期)後期計画の策定に向けた検討を進めておりますが、御指摘の点も踏まえまして、今後、次期計画策定に係る情報発信の機会等も捉えながら、子どもの権利等に関して広く周知に努めてまいります。

 

最後の御質問でございます。シングルマザーへの対策を進めるべきという御質問にお答えいたします。

 

区では、子ども計画の策定に合わせ、五年ごとにひとり親家庭へのアンケート調査を実施し、現状を把握して、自立への支援を総合的に推進しているところでございます。特に経済的自立を支援するため、ハローワークと連携した自立支援プログラムの作成や、就業に有利な資格を取得するための高等職業訓練給付金等の給付、就労支援講座としてパソコンスキルの向上を目指す取り組みや、養育費相談会などを実施しております。また、子どもの自立に向けた支援としましては、学習支援事業、かるがもスタディルームを区内五カ所で実施しております。

 

子どもの相対的貧困率が高いと言われておりますシングルマザーの支援につきましては、就業、または就業のための資格やスキルの習得と子育てとの両立ができ、自立した生活を営んでいただけますよう、引き続き多面的な支援の展開を図ってまいります。

 

以上でございます。

 

久末 経済産業部長

私からは、女性の働き方と子育て支援について、二点お答えいたします。

 

初めに、コ・ワーキング・スペースの今後の展望についてです。

 

平成二十九年度に実施した世田谷区働き方改革の推進と子育て・介護と仕事の両立に向けた調査によりますと、子どもが小さいときは子どもと過ごす時間を多くするなど、子育てと仕事のバランスは人によってさまざまであるため、柔軟な働き方ができる環境の選択肢をふやしていく必要があります。

 

そのため、区では平成三十年度新規事業として、子どもの近くで働くことができるワークスペース補助事業のひろば型を昨年九月より実施しております。さらに、経済産業部では、一月末に子ワーキングスペースチャチャチャを三茶おしごとカフェに開設し、早速、近隣の一時保育施設利用の方数名が御利用されました。

 

今回の事業の中で、保育施設に子どもを預けてフルタイムで働く働き方以外の新しい働き方の検証を行ってまいります。利用者のアンケートで、このスペースができて、出産後も継続して仕事ができるようになったか、あるいは仕事の幅が広がったか等、どのような変化があったかについて、利用状況について保育事業者等との連絡会にて検証を行ってまいります。これら検証の結果を踏まえ、子育てしながら働きやすい環境づくりを進めてまいります。

二点目でございます。子育て・介護と仕事の両立に関する多様な働き方の環境づくりについて御答弁いたします。

 

子育てや介護をしながら働くためには、公的な施策はもとより、企業側にもライフスタイルに合わせた時短勤務やテレワークなど、多様な就業形態を実現することが求められます。平成二十九年度に区が実施した調査において、テレワークの例で見ると、区内企業の従業員のうち、テレワーク制度を利用したいが、事業所でテレワーク制度を導入していないため利用していないと答えた方が、子育て中の方で七五%、介護をしている方で七二%おり、働く人と企業のミスマッチが生じています。

 

そのため、来年度予算案に(仮称)区内中小企業の職場環境整備支援事業を計上いたしました。これは、区内中小企業三社をモデルに、業務内容の整理、洗い出しを行い、切り出しも視野にテレワークを進めていく事業であり、こうした取り組みにより、働く時間や場所等に制約のある方の雇用のマッチングにつながる可能性が期待されます。

 

ワークスペース事業とあわせ、子育てや介護等で働く方がやめずに働き続けられる環境と、多様な働き方を後押しする環境の整備を促進してまいります。

 

以上でございます。

 

田中みち子 議員

今回質問しました児童虐待防止に向けて、そして子どもの権利条約の内容についてもっと周知してほしいということで、答弁いただいたんですけれども、その中で、小学校高学年、中学生にパンフレットをつくって配付している、そして保護者向けのリーフレットもやっていますよというような答弁でした。

 

しかしながら、この世田谷区子ども条例、平成十三年にできているのに全然知らないなということで、今回、生徒手帳に書いていくことが有効なんじゃないでしょうかということで再質問を申し上げておりましたが、昨日、代表質問のほうで既にこのことについては答弁がありました。ぜひ前向きに取り組んでいただきたいということを改めて要望いたしまして、続きは予算特別委員会で行います。