第1回定例会 一般質問と答弁 2021.2.26 田中みち子

田中みち子 議員 質問通告に従って、順次質問してまいります。

まず初めに、都市農地の多様な活用の推進についてです。

農地は新鮮な野菜が供給されるだけでなく、緑の保全や災害時の防災空間、地域コミュニティーの形成など多面的な機能を有しています。多くの生産緑地がその指定から三十年を過ぎる二〇二二年問題は目の前に来ており、都市に残る貴重な農地の保全に向け新たな取組が必要とされています。

農作業と言えば土起こしなどの力仕事を連想されるかもしれませんが、収穫や選別など細やかな作業もあり、その人の能力や特徴に合わせた仕事を割り振ることができれば、障害のある方々も生産性の高い働き方が可能です。

世田谷区は、ユニバーサル就労による農地の活用を進めるために、農福連携事業を今議会に提案しています。私たち生活者ネットワークとしても、農地の福祉的活用を進めることを求めており、この提案は大変評価をしています。障害理解を進めるとともに、関係所管と連携し、農地の保全に向け、万全な体制で取り組むことを期待します。

とはいえ、提案によれば、農福連携事業にノウハウを持つ民間事業者に運営を委託し、農地の活用から管理、指導、販売全てを民間事業者が担います。そして、最終目標としては、令和五年度までに区内の障害者就労継続支援事業者から委託先の運営事業者への就労は二名程度とされています。この事業を成功させるためには、障害者の就労の場として、安定的に運営するための工賃の向上や販路の確保、充実などが重要になってきます。今後どのように取り組もうとしているのか、見解を伺います。

コロナ禍で屋内活動の自粛が進む中、農地を活用した市民団体のニーズも出ています。区民農園は、子ども食堂や食育推進団体などの福祉的活用団体も、団体利用枠として認定されていますが、あまり知られていません。このような団体利用枠への周知を工夫する必要があります。見解を伺います。

次に、生活困窮世帯等の子ども支援についてです。

生まれ育った環境で、その子の将来が左右されることがあってはなりません。来年度八月より、上北沢の遺贈物件を利用し、家庭や地域で安心して過ごせる居場所がない中学生を対象に、学習や生活支援、保護者も含めた相談支援を行う場所が整備されることが報告されました。登録人数は四十名で、一日の利用人数は約二十名程度とされ、大学生も含めたスタッフやボランティアの見守りの下、子どもたちがいつでも自由に利用することができる拠点となりますが、一定の所得制限を設けた家庭など、子どもの生活や学習面に課題を抱えた子どもたちが利用することになります。

地域の中で貧困のレッテルづけなどの差別や分断を生まず、温かく迎え入れられるよう工夫を凝らし、周知活動を進める必要があります。先行して取組を行う江戸川区の場合は場所を公開していますが、足立区では非公開です。世田谷区で行うこの事業は、あらゆる負のレッテルを生じさせないような事業運営が求められます。見解を伺います。

この事業は、夜一人で過ごす子どもやほっとできる場所が家庭にない子どもたちが安心して過ごすことができる場所として必要な事業です。できるだけ早期に他地区へも展開していただきたいと考えます。

一方で、本当に来てほしい子どもたちをどのように地域で見つけ出していくのか、貧困はとても見えにくく、受皿ができても、困難を抱えた本人や保護者はつながらないことも課題です。子ども・若者部として、生活に困窮する一歩手前の家庭も含めて、その子どもをどう見つけ出し、どのようにつないでいくのでしょうか。

また、本当に支援を必要としている子どもを見つけ出すことが必要です。子どもたちと過ごす時間が長い学校の役割は重要です。子どもの様子から、その子に向き合う一つの窓口でもあるスクールカウンセラーや教員など、地域で活動する支援団体との顔の見える関係性を構築することも必要です。孤食になりがちな子どもを地域の活動団体につなげる際に副校長が同行することで、その後の双方の安心感につながった好事例もあります。このような、子ども一人一人に寄り添った学校と地域との丁寧なつなぎが必要です。見解を伺います。

最後に、性教育の充実についてです。

二月三日のオリンピック委員会、JOC評議委員会での元会長の女性がたくさん入っている理事会は時間のかかる等の一連の発言は、女性を一くくりにした差別であり、多くの女性が怒りの声を上げました。女性の社会参加、政治参加を訴え実践してきた私たち生活者ネットワークとしては、今回の発言は、多様な意見表明の機会を奪うという意味で、民主主義の否定にもつながりかねず、到底見過ごすことのできない重大な問題として緊急表明を出して、性暴力を根絶するためのフラワーデモに合わせて、街頭での抗議活動を東京全体でも行ってきました。

例えば男性は外で働き妻子を食べさせるのが当たり前、女性は家事をこなし子どもを育てて親の介護をするのがその役目とか、女性は社会性に乏しく、すぐ感情的になって理性的ではない、女性は生産性のない仕事に従事しているから低賃金でも当然など挙げたらきりがありませんが、こうしたことはジェンダーによる差別になるのです。

ジェンダー差別を取り除くには、小さい頃からの人権教育、誰もが平等で、誰もが自分の意思を表明できる力が持てるようになることが重要です。そういう意味で、日本の性教育は、ノーと言える権利の保障、男女は平等であるという理念を押し出している世界の潮流から後れを取っている現状は問題であり、互いの体の違いを理解して、互いを尊重する関係性の中で生きる権利であるリプロダクティブ・ヘルス・ライツの啓発は進んでいません。子どもの頃から性に関する平等と命を大切にする包括的性教育をしっかり行うことは、ジェンダー差別をなくすことにつながります。教育委員会の見解を伺います。

コロナ禍で十代の妊娠相談が急増しているとの報道も見逃せません。知識がないまま性行為を行い、予期しない妊娠に至るケースなど痛ましい結果が起きています。学校の性教育は、性行為や避妊はほとんど取り扱われていません。性行為に関する知識は親にも聞きづらく、友人やインターネット上にあふれる情報に頼らざるを得ないのが現状であり、保護者や教師への性教育も必要です。

先日、区内で包括的性教育を五十年以上実施しているアーニ出版で、子どもたちや看護学生に実際に行っている性教育を体験してきました。妊娠に至る過程を正しい知識として身につけさせることは、自分の身を守ることにとどまらず、相手を思いやる気持ちと責任感が生まれます。お互いの体の違いを理解し、よりよく生きるリプロダクティブ・ヘルス・ライツの観点での性教育の重要性を改めて認識しました。

コロナ禍で、外部講師による性教育はどのようになっているのでしょうか、現状を伺います。

また、教育所管と保健所、人権・男女共同参画担当課など、関係所管と連携し、長引くことが想定されるコロナ禍でも性教育の充実が図れるよう、ICTを活用した性教育の推進とリプロダクティブ・ヘルス・ライツの観点でのリーフレットの進捗状況についても答弁を求めて、壇上からの質問を終わります。(拍手)

 

障害福祉部長 私からは、農福連携事業の取組についてお答えいたします。

農福連携事業の実施に当たって、障害当事者の工賃の確保や、広く区民に事業を浸透させていくためには、収穫された農作物の販路の確保や活用事例の充実が重要であると認識しております。

これまで区では、就労支援施設内で水耕栽培で育てたサラダ菜やレタスを区内の飲食店やスーパーに卸したり、区内農家で収穫された農作物をジャムや乾燥野菜に加工し、福祉ショップ等で販売するなどの事例がございます。販路の確保に向けては、希少野菜の栽培やオリジナリティーのある企画商品によるブランド化を図り、商品価値の向上に取り組むとともに、障害者施設での自主生産品の開発、区内の飲食店等での活用の働きかけなども検討してまいります。

また、運営事業者からのノウハウや提案のほか、他自治体での取組なども参考にしながら、都市における農福連携事業の充実に向けて取り組んでまいります。

以上です。

 

経済産業部長 私からは区民農園関連、御答弁いたします。

区民農園は、区民のほか保育園や幼稚園など教育や福祉を目的とする団体が利用でき、お話しの食育や子ども食堂などもこれらに含まれ、使用料は全額免除となっています。現在、区民農園については大変好評なため、なかなか空きが出ない状況にありますが、利用期間の満了時や空き区画が出た場合は、「区のおしらせ」やホームページで募集を行っているところです。

今後も様々な教育や福祉の団体が活用できるよう、教育や福祉の関係者向けの広報媒体なども活用するなど、より一層周知が図られるよう検討してまいります。

私からは以上です。

 

子ども・若者部長 私からは、生活困窮世帯等の子ども支援について二点お答えいたします。

まず、必要な支援をどのようにつなげるかについてです。

昨年度策定した子どもの貧困対策計画では、支援が必要な家庭ほど支援につながりにくいことや、貧困が見えにくく潜在化しているという課題を踏まえ、支援につながる仕組みづくりを柱の一つに位置づけております。

その一環として、支援を必要としている子どもを早期に把握し、支援につなげるための気づきのシート、学校や児童館など区立の関係機関やお出かけひろば、私立保育園、主任児童委員など民間も含め広く配布し、地域全体の気づきの感度を高め、連携を強化する取組を行っております。また、今年度末には子どもにも分かりやすい生活困窮支援やサービスの周知用冊子を作成し配布する予定です。

これらの取組を連動させることで必要な支援につながる仕組みの充実を図っていき、来年度実施する新たな子どもの拠点事業にも、地域の関係機関や支援の担い手と連携しながら、必要な子どもをつないでまいります。

次に、負のレッテルがつかないようどのようにするかについてです。

本事業を利用する子どもに負のレッテルがつかないようにするためには、地域の中で温かく継続的に見守っていただけるよう、地域住民の方々の理解が不可欠です。そのためには支援拠点の近隣住民の方々をはじめ、町会・自治会や主任児童委員、民生児童委員、青少年委員、子ども食堂など地域の子ども支援団体等への丁寧な説明を行いながら、調理などで本事業に御協力いただける地域人材の発掘も含めて行い、一緒に子どもを見守る機運を高めてまいりたいと考えております。

あわせて、親しみやすい事業の名称を検討し、事業説明のチラシについて利用者や支援者に正しく理解していただけるよう十分に配慮し作成します。また、区のホームページでは、支援拠点の所在地は明かさずに配慮した形で事業を紹介してまいります。

以上です。

 

教育政策部長 私からは、四点御答弁いたします。

まず、福祉サービスなどとの接続における学校の役割についてでございます。

福祉サービスなど各種の支援サービスに子どもたちをつなげていくためには、日々子どもたちと接している教員やスクールカウンセラーなどが積極的に関与していくことが重要であると考えております。教育委員会では、教員が子どもたちの困り事や悩みに気づく力や支援へとつなげるための力を高める研修を行っております。学校が支援サービスの内容を的確に把握し、教員やスクールカウンセラーなどによる組織的な対応により必要な支援へとつなげていくことができるよう、学校の取組を支援してまいります。

次に、学校における性教育についてです。

区内小中学校では、特別の教科道徳を中心として、全教育活動を通じて人権教育に取り組んでおり、あらゆる差別やいじめなどが認められるべきでないことを伝えております。性に関する教育としては、体育や保健体育科の授業を中心に、特別の教科道徳、特別活動等で取り組むとともに、学校活動全般における取組としては、男女混合名簿を使用するなどしております。また、標準服では区内中学校全校で、性別に関係なく本人の希望で選択できるようになっております。

教育委員会では、全ての人々の人権が尊重される社会を目指した人権教育を推進していく一環として、今後も引き続き、性に関する教育に取り組んでまいります。

次に、東京都の性教育の手引を踏まえた授業の実施状況についてでございます。

今年度は区内中学校二校において、東京都の性教育の手引を踏まえ、産婦人科医等を招いた性教育の授業を実施することを予定しておりました。新型コロナウイルス感染症の影響により今年度の実施は見送りとなりましたが、令和三年度につきましても、引き続き取組を進めてまいります。

次に、ICTを活用した性教育についてです。

今後、人権教育、性教育の分野においてもICTを活用していくことは有用であると考えております。例えば外部講師による性教育の授業等のオンライン配信や受講できなかった生徒への動画の提供などにより、より広範囲の生徒に学ぶ機会を提供することができると考えております。講師の意向や学校の状況などを踏まえながら、今後の可能性を検討してまいります。

以上でございます。

 

世田谷保健所長 私からは性教育について二点、まず助産師による命の授業についてお答えいたします。

世田谷保健所では、これまで主に区内の中学、高校生の生徒を対象に、専門知識を有し経験豊かな助産師を、要望する学校に派遣して、命の大切さ、性の健康等をテーマにしたいのちと性の健康教育を実施しております。

例年、中学校長会を通じ、希望校を募って五校から七校に実施をしておりますが、令和元年度は依頼希望の多い三学期の時期に新型コロナウイルス感染症の流行により令和二年三月二日から二十五日の間、区立小中学校の臨時休校が決定され、休校期間に五つの区立中学校で予定されていた当該授業も中止となりました。その結果、令和元年度実施の当該授業は一校のみで、参加生徒数は百五名となっております。

現在、昨年末からの感染状況を受け、各学校での授業も感染対策を講じながら行われているところですが、今後も学校や関係所管と連携しながら、思春期の生徒たちの成長過程に有益な授業を提供してまいります。

次に、リーフレットの進捗状況についてです。

リプロダクティブ・ヘルス・ライツのリーフレット作成につきましては、令和二年十一月に、人権・男女共同参画担当課、健康推進課、感染症対策課並びに教育指導課で庁内横断の検討会を開催し、意見交換を行いました。その中では、掲載する項目として、性教育に加え、子どもたちが自分の健康を守る知識や技術、性的マイノリティーや多様な家族、性に関する自己認識などが挙げられ、加えて保護者等の理解の重要性についても共有いたしました。

一方、令和二年九月に十五歳から二十九歳の思春期世代に実施した調査では、八割がリプロダクティブ・ヘルス・ライツの言葉も意味も知らないと答えております。これら課題等を踏まえ、令和三年度中には当該検討会を通じ、構成、内容、活用方法や保護者への周知啓発に至るまでの整理に取り組んでまいります。

以上です。

 

田中みち子 議員 今の答弁でも分かったように、性教育がこのコロナ禍で全く頓挫してしまったんですね。そういった中でも子どもたちの予期せぬ妊娠という相談件数が本当に増えていますので、ぜひとも教育委員会と連携して、しっかりとICTを活用した授業というのができるように、ぜひ速やかに取り組んでいただきたいことを改めて要望いたしまして、質問を終わります。