区議会 第2回定例会 高岡じゅん子が一般質問を行いました。質問全文をご覧いただけます。

2021年6月16日

高岡じゅん子

令和3年第2回定例会一般質問

初めに、世田谷区のDX推進と個人情報保護の重要性について質問します。

先月、国会においてデジタル改革関連の6法案が成立し私たちは皆、この大きな社会変化の波にいやおうなく巻き込まれようとしています。政府も地方自治体も、国民や住民の個人としての権利を守り、安心・安全・幸福の追求の基盤を提供することがその使命です。デジタル・トランスフォーメーションもまた、誰ひとり取り残されない社会づくりのツールの一つにすぎません。

自分の権利を行使し、行政からサービスを受けるための申請手続きが、自宅のPCや手元のスマートホンから時間と場所にとらわれずできる便利さを、先日来のワクチン予約を通じて多くの区民が実感する一方、この基盤に乗り切れない場合の不便さ、格差についても痛感することとなりました。今後も電子申請は可能なところから着々と進んでいくと考えられます。

電子申請を行う時、申請者を特定する個人認証の全国的基盤として、マイナンバー制度があります。自分が自分であることを公的にデジタル認証するための、デジタルの実印のような12桁の番号です。私自身はこのような実印に相当するようなものをカードの形にして常時携帯することに違和感を覚えています。今、マイナンバーカード取得促進のためのマイナポイントの付与やマイナンバーカードに様々な機能を加えることなどでカードの普及を図っていますが、本来の機能である、個人認証や自己情報の利用状況確認(マイナポータル)としての信頼性こそがDXの基盤としては重要です。

そもそも個人カードの設計思想は、サービス提供も個人単位が基本です。しかし番号の通知カードの郵送時点から世帯単位で通知が行われるなど、本当に「個人」を大切にできるしくみになるのか、行政サービスの実務で上手く使われていくのか疑問がありました。昨年の定額給付金支給の場合も、申請はこの番号を使って可能でも支給は世帯単位であるなど、実務とミスマッチがあり大変な混乱が起こりました。生活者ネットワークは、世帯主代表者とした世帯単位ではなく、個人単位での権利保障の必要性を長年訴えてきています。支援を必要としている人が声を上げやすく、その人自身に必要な支援が迅速に届くために役立ってこその、個人認証です。

国のマイナンバーの取り扱いやシステム構築がちぐはぐなため、区役所など基礎自治体の現場が苦労しています。この実態を踏まえ、区から国に対して声を上げ、区民目線、現場目線でのシステム再構築(ReDesign)を促していく必要があるのではないでしょうか。区の見解を伺います。

「ご近所には知られたくないのだけど、区の担当の方だからお話します」そんな言葉で相談を受ける区の職員が沢山いると思います。住民との接点の多い現場は、個人情報にあふれています。今後、こういった様々な個人情報が、データー化され、事務処理の外部委託なども進んでいきます。世田谷区においては独自の個人情報保護条例によって、一つ一つの業務が個人情報保護の視点から妥当であるかどうか審議会の意見を聞くしくみが機能してきました。昨年は、コロナ禍における異例の業務などもあったと聞いています。「世田谷区情報公開・個人情報保護審議会」の活動の現状と意義について伺います。

従来からの丁寧な個人情報取り扱い、個人情報保護に関する区のしくみが、区政への信頼を形作ってきました。今回の個人情報保護法の改正では、個人情報保護の様々な規制を原則的には国の基準に統一することが求められている一方で、自治体独自のしくみに関して必要のものは認めると言われています。世田谷区は今まで大切にしてきた、独自の制度に自信を持ち、区民のためこのしくみを堅持することを求めます。区の見解を伺います。

 

次に差別や人権侵害の無い世田谷を目指して質問します。

「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」が施行され3年が経過しました。近隣の川崎市では「差別のない人権尊重のまちづくり条例」が1年半前の令和元年12月に成立しました。深刻なヘイトスピーチ・デモなどが行われてきた川崎では、公共の場所でのヘイトスピーチをなくすため、勧告、命令、公表、罰則までを書き入れた実効性の高い条例が作られています。いくつかの点に注目し、世田谷区の人権保護のしくみの更なる向上を求めます。

川崎市の条例には、インターネットを利用した人権侵害全体に対して、被害の救済を図るための支援を市が行うことが書き入れられています。これは、デジタル社会の進展に伴う弊害への対策を先取りしたものです。昨年の5月、女子プロレスラー木村花さんが、ネット上の誹謗中傷により追い詰められ自殺に至った事件をきっかけに、総務省も相談体制を強化しようとしています。誰が悪意ある書き込みをしたのか分からなくても、プロバイダなどを通じて削除依頼ができることなど、被害にあったら泣き寝入りしない啓発もまだまだ必要です。世田谷区としても、今後インターネット上の人権侵害や誹謗中傷から区民を守るための支援を強化していく必要があると考えます。見解を伺います。

ヘイトスピーチ対策に関して、川崎と世田谷では状況は異なっています。しかし、昨年の東京都知事選において、ヘイトスピーチを繰り返してきたことで有名な団体の代表が世田谷区において1万1千票以上を獲得していることを見ますと、必ずしも対岸の火事と考えているわけにはいきません。川崎市では条例の制定以前から、ヘイトスピーチ解消法に基づき、公園の使用不許可など出来る対応を積みかさね、川崎の実状に合わせ、このような厳しい条例を作りました。ヘイトスピーチ解消法が施工されて5年、あからさまなヘイトデモの回数は全国で見て法成立以前の十分の一に減っている一方、インターネット上の誹謗中傷は歯止めがかかっていないと昨日NHKニュースでも報道されました。世田谷区においてもヘイトスピーチを無くすため、実効性のある取り組みを求めます。区の見解を伺います。

今定例会の私の一般質問では、デジタル社会の大きな流れの中、世田谷区としてどのように個人の尊厳を守り、世田谷区らしい特色を生かした新たな行政の価値を創造していくかということをめぐって質問を組み立てました。自分についての情報はその人自身のものです。デジタル化によって、その情報が本人の知らないうちに使われたり、移動や行動の記録が監視やストーカー被害に繋がったりするような社会を招いてはなりません。

皆さまは、デジタル・タトゥーという言葉をご存知でしょうか。例えば恋人に送ったプライベートな写真であっても、一度インターネット上に流出したデジタル情報は、まるで一生消えない入れ墨のように、残ってしまうことを意味する言葉です。映像によるもの以外にも、言葉でもインターネット上に文字として残り、発言した人自身の将来に影を落とすことも起こっています。人違いでインターネット上の悪意ある書き込みの被害を受けたような事例であっても、流出した誤情報を消しきることは非常に難しいのです。

SNSなどの匿名性に隠れて、自分が絶対正義であると勘違いし、人を断罪し「死ね」とか「出ていけ」などの言葉を発信する危うさ。最近の小中学生が受けているような当たり前のネット・リテラシー教育を受けていない大人たちにこそ、デジタル社会のルールを周知していく必要があります。

デジタル社会が進む中、新たな課題が見えだした言葉による人権侵害の防止に対する、区長の見解を求め、

壇上からの質問を終わります。