第2回定例会 一般質問と答弁 2021.6.16 田中みち子

田中みち子 議員 質問通告に従って、順次質問してまいります。

まず初めに、子どもの権利擁護の推進についてです。

世田谷区の児童相談所が開設され一年、このことにより、一時保護から家族再統合までを世田谷区が一貫して行うことができるようになりました。全国的に見れば、一時保護され帰宅した後での虐待事故は後を絶ちません。虐待のおそれのある子どもからの丁寧な意見を聞く場の保障、保護した後の子どもと保護者双方へのフォローなど、信頼関係を築きながら対応する担当職員は相当のスキルが求められます。御苦労が多いと理解しています。区としても、児童福祉司等の負担軽減やスキルアップ研修、関係所管の連携などにより充実を図るなど取組を進めているものの、残念なことには、担当職員を変えてほしいといった声が届いていることも事実としてあります。

先般、一時保護所での外部評価が公表されましたが、子どもからの意見の回収率は一〇〇%ではありませんし、一時保護上限の二か月を超えた子どももいるとのことでした。また、家族再統合プログラムの実施数も乏しく、早急な改善が求められます。子どもの権利が保障された一時保護所も含めた児童相談所の課題と今後の展望を伺います。

社会的養護の必要な子どもへの権利擁護の取組の中でも重要な意見表明支援制度、アドボケイトの導入に向けては、アウトリーチ型の具体的な検討に着手していくことが示されました。里親や児童養護施設などの関係者に気兼ねなく自分の意見を表明し、権利救済機関に伝えられるよう、子どもの立場に立った相談しやすい環境など、丁寧な対応と工夫が必要です。見解を伺います。

また、アドボケイトの導入先としては、一時保護所などで措置された家庭はその対象外です。一時保護され、家庭に戻された際に起こる子どもの虐待死が問題視される中で、手厚い支援体制とは言えません。こうした子ども自身の意見を聞く場は何より必要であり、一時保護措置され、家庭に戻った子どもに対しても、アウトリーチ型のアドボケイトの導入対象に加えるべきと考えますが、いかがでしょうか、見解を伺います。

国では、虐待などで擁護が必要な子どもを施設で養育せず、里親の下で育てることを推進するために新たな社会的養育ビジョンを示しており、世田谷区としてもこの目標値を掲げていますが、新たな里親を増やすという取組はいま一歩です。

一時保護に加え、ショートステイを利用した短期間での委託制度を開始したと聞いていますが、既に登録されている里親向けのものです。これから里親を希望する方へ向けても検討を進めるべきと考えます。見解を伺います。

また、里親制度が広がるにつれ危惧されるのは、保育園や学校などにおける里親制度への無理解によって起こる差別や偏見です。先日、里親さんのお話を聞く機会がありました。約十六年間の里親経験の中で、学校からのねぎらいがあったのはたったの一校で、中には里親であることを口外しないでほしいと言われたり、実親でないことをからかうなど、心ない言葉が子どもへ向けられていたなどあったそうです。

こうした偏見が起きないように、保育園、学校などの関係機関の職員に対する里親制度への理解を深めるための研修などの取組も必要だと考えます。見解を伺います。

次に、HPVワクチンの情報提供の在り方と子宮頸がんの予防の推進についてです。

HPVワクチンは、今から八年前の平成二十五年から、全国の小学校六年生から高校一年生相当の女子を対象として公費での定期接種が開始されました。しかし、定期接種開始からたった二か月でワクチン接種との因果関係が否定できない副反応が全国で相次ぎ、国は積極的勧奨を中止しました。しかし、昨年、国は、これまでの対応を一転させ、定期接種の対応についての勧告を基礎自治体に対して出しました。

このことにより、区は、昨年の十月には、ワクチンの接種対象とされる年齢の女子約一万七千人に向けて、厚労省のリーフレットを個別送付しています。これがその送られた国のリーフレットです。小学校六年生から高校一年生の女の子と保護者へ大切なお知らせですよと、あなたと関係のあるがんがありますよと、こういった形で送られていますけれども、このリーフレットには問題があります。深刻な副反応の危険性が伝わりませんし、何より厚労省が積極的な勧奨を中止していることが削除されています。さらに、ワクチン接種後に気になる症状が出たときへの対応として協力医療機関が設置されていると示されていますが、実際には被害者が安心して受診できる医療機関は乏しく、医療者によっては、ワクチン接種後の反応を否定的に捉え、子どもを傷つけ、悪影響を与えているとの指摘さえあります。

HPVワクチンによって重い副反応に苦しむ被害者は全国各地に多くいらっしゃいます。訴訟の原告だけでも百三十人にも達する中、ワクチンリーフレットが送付されたことで全国でもワクチンの接種率は上がり、世田谷区では六倍以上になっています。

世田谷区では、先ほどのリーフレットと併せ、区独自の手紙を添付して、積極的な勧奨は控えていますよということを明記したことは評価します。しかし、ワクチンの有効性とリスクを十分御理解いただいた上で、接種について御検討いただきますようにお願いいたしますと記されており、さらに、ワクチン接種スケジュールを図解し、定期接種期間中は無料です、その期間を外せば有料という具合に、まるで区が接種を推奨しているかのように見てとれ、区民の誤解を招くと考えます。

一方、武蔵野市や杉並区などは、国のリーフレットの活用を避け、独自のはがきでホームページに誘導し、対応しています。杉並区のホームページでは、現在、HPV感染症予防ワクチンは定期予防接種ですが、積極的な接種勧奨を差し控えているため、予診票の個別送付をしていません。接種に当たっては、有効性とリスクを理解した上で予防接種を受けるかどうかの判断をしてくださいと赤字で記されています。

こうした自治体の取組を参考に、世田谷区のこれまでの情報提供の在り方そのものの見直しを求めます。区の見解を伺います。

HPVワクチンの副反応被害者は、一人にいろいろな症状が重なって現れてしまいます。副反応の症状を知らせるために、この被害者たちは声を上げ続けています。しかし、被害者は増え続けており、直近の副反応検討部会での報告を見れば、令和二年十月一日から十二月三十一日の三か月間で、医療機関などがワクチンとの因果関係を認めた上で重篤だと判断した症例が十五件あります。時間がないので、そのうちの二つ申し上げたいと思います。十三歳の女の子で、三回目を接種した翌日に手足の痛みと歩行障害で回復なし。十六歳の女子で、一回目の接種で、眼球上転、目の球が上を向いたということですよね。そして、意識がはっきりせず、顔面蒼白で脈が取れなくなり、その後の状態は不明など、このような深刻な被害が出ていることは看過できません。

このように新たな被害者が出ていることを区はどう受け止めているのでしょうか。接種を不安視する問合せへの対応も含めて、見解を伺います。

HPVワクチンは性感染症の一つであって、正しい性教育と定期検診で予防できます。国の勧告に従い、小学六年からワクチン接種の対象として周知を図らなければならない以上は、対象年齢への正しい性教育は必須であり、区としてできる最善の方法です。保健所が行う助産師の命の授業への予算も増やし、全校生徒が正しい知識を身につけられるよう対策を急ぐべきです。また、定期検診の受診率の向上も欠かせません。取組の強化を求めて、以上で壇上からの質問を終わります。

 

児童相談所長 私からは、児童相談所や一時保護所の運営、親子の支援の現状と課題についてお答えいたします。

区が児童相談所を開設し、子ども家庭支援センターとの一元的運用により、虐待が深刻化、重篤化する前に、必要に応じ早期の一時保護を行い、その後、地域と連携しながら子育て支援メニューを提供する等、区が一貫して行うメリットを生かした相談援助活動を行っております。一時保護した子どもの約八割は二か月以内に一時保護を解除し、在宅による支援につなげております。また、家庭復帰が困難な場合も、なるべく早期に児童養護施設や里親への委託などを行い、子どもの意思や権利を尊重した支援を実施しております。

児童相談所では、子どもや保護者に対し、児童福祉司が丁寧に話を聞き、家庭の中で起きている問題をアセスメントした上で、個々のケースに合わせて、定期的な通所により児童心理司の心理ケアや親子間調整を行っております。また、親子支援を専門に担当する児童福祉司等を配置し、再統合が円滑に進むよう親子関係の評価を行いながら、一時保護解除後等に子どもが家庭に戻った後も、安全に暮らせるような虐待の再発予防の支援プランを作成する等、地区担当の児童福祉司をバックアップする体制を整えております。

子どもや家庭を取り巻く問題は複雑、多様化しており、そうしたケースに適切に対応するには職員のスキルアップが課題であり、研修等を積極的に活用し、親子の支援に効果的なプログラムの技法の習得を進める等、今後、職員の育成により一層取り組んでまいります。

以上でございます。

 

子ども・若者部長 私からは、社会的養護に関して、順次お答えいたします。

まず、意見表明支援について、二点併せてお答えいたします。

現在、区におけるアウトリーチ型の意見表明支援の取組といたしまして、一時保護所において第三者委員制度を導入しております。一方、児童養護施設への入所や里親への委託をする子どもについては、担当の児童福祉司が児童の意見を聞き対応を図っているものの、現時点において第三者によるアウトリーチ型の意見表明支援の仕組みはございません。児童養護施設への入所、里親への委託などを実施する場合においては、当事者である子どもの意見が尊重され、権利が守られ、適切な養育環境を提供することを基本的な考え方としており、第三者による意見表明支援は大切な取組であると考えております。

国より示されたアドボカシーに関するガイドライン案においても、意見表明支援に当たっての基本的な考え方として、子どもの意見に基づいて行動し、子どもの権利を守ることの確実な履行、子どものものではない意見や優先順位によって活動してはならないなどと示されており、区としては、こうした考え方を踏まえて検討を進めてまいります。

措置解除後の子どもについても対象とすべきとの御指摘については、今後、具体的な制度内容検討の中で参考とさせていただきます。

次に、里親制度について、二点併せてお答えいたします。里親委託を推進するためには、里親制度の周知啓発の取組が大変重要だと認識しており、区では、これまでより多くの方に里親に関心を持っていただけるよう、専用ホームページの開設やPR動画の作成などに取り組んでまいりました。

区では、子どものショートステイ事業の中で、里親さんに協力家庭として実際にお子さんを預かっていただく取組も開始したところです。これから里親を希望する方も対象とするかどうかについては、今後の実施状況を踏まえながら検討してまいります。

また、御指摘のとおり、養育委託されるお子さんと里親に関わる関係機関や地域の理解と協力が不可欠であると認識しております。例えば、養育委託されるお子さんが学校生活の中で戸籍名とは異なる通称名、例えば養育家庭の姓でございますが、そういったことを使う場合の呼び方などについての配慮や、養育家庭への支援に向けた地域の関係機関との連携について各学校に協力依頼を行っております。そのほか、保育園や児童館などの関係機関の職員を対象とした虐待基礎講座の中で、里親制度をテーマとして取り扱っていくことなどを検討しております。今後も地域や関係機関での里親の認知度を深め、より多くの方に里親に登録していただけるよう、着実に取組を進めてまいります。

以上でございます。

 

世田谷保健所長 私からは、HPV、すなわち子宮頸がんワクチンについてお答えします。

まず、ワクチンの副反応、区民の御不安への対応です。子宮頸がんワクチン、いわゆるHPVワクチンにつきましては、平成二十五年度に小学六年生から高校一年生相当年齢の女子を対象として無料の定期接種が全国で始まりましたが、接種後に因果関係を否定できない持続的な痛み等の副反応が報告されたことから、当該年度中に積極的な接種の勧奨を控えるように国から勧告があり、現在は区においても積極的な勧奨を見合わせております。

また、接種対象者からの副反応の御相談への対応でございますが、今までの経緯から接種に不安を抱いていらっしゃる方もいらっしゃるため、医師会や教育委員会と連携の上、御相談の際には、お気持ちに寄り添いながら、国のリーフレットやQ&Aに基づいた情報を提供し、御自身の考えによって選択できるように努めております。

御指摘の令和三年四月三十日の国の審議会の報告では、令和二年十月から十二月における四価子宮頸がんワクチンの推定接種者数は約三万人で、このうち製造販売業者から報告された重篤症例は十例、医療機関から報告された重篤症例は五例の合計十五例となっております。国は、安全性を継続的に評価し、今後の当該ワクチンの取扱いについては同審議会等で検討を進めていると認識をしておりまして、区といたしましても、国の評価を引き続き注視してまいります。

次に、国のリーフレットと区からの情報提供についてです。令和二年十月に当該定期接種の対象者及びその保護者に向けまして、当該ワクチンの有効性及び安全性等の情報提供に取り組むことが国から勧告されました。区では、国の勧告に基づき、接種対象者及び保護者宛てに国が作成したリーフレットを送付しておりますが、その際に、区では、積極的な接種勧奨を差し控えている旨も記載した区からのお知らせも添付をしております。

国の作成したリーフレットにつきまして、積極的に接種を進めていると受け取られる内容であるとの議員からの御指摘を踏まえまして、頂戴した御意見を特別区保健予防課長会や都予防接種担当等に提供し、共有をしてまいります。また、御提案の区からの情報提供につきましては、他自治体の取組を情報収集し、接種を自ら選択いただく際に必要な情報を提供できるように努めてまいります。

最後に、検診や正しい性教育の周知啓発についてです。御指摘のように、HPVワクチンは全てのヒトパピローマウイルス感染、いわゆるHPV感染を予防できませんので、子宮頸がん検診も受けていただき、子宮頸がんに対する予防効果を高めることが大切であると認識をしております。加えて、HPVは一度でも性的接触の経験があれば感染する可能性があることから、性教育を通して、子宮頸がんや性感染症の正しい知識を得ることの大切さも指摘をされております。

なお、保健所が教育委員会等と連携して、主に区立中学校で実施しています命と性の健康教育では、HPVが性的接触で感染する可能性があることや、子宮頸がん検診に関する情報は提供をしておりますが、HPVワクチンに関する情報には触れておらず、当該授業の実施学校数が限られている点も含めて課題だと認識をしております。

今後は、検診や性教育に加えまして、HPVワクチンの有効性や副反応を含む包括的な視点を当該授業に盛り込んでまいります。また、教育委員会等、関係所管と連携し、子宮頸がんの予防に向けた啓発に引き続き努めてまいります。

以上です。

 

田中みち子 議員 区長に再質問させてください。

積極的な勧奨を中止しているこのHPVワクチンの課題についてどう認識されていらっしゃるのか、ここは自治体の長にぜひ聞かせていただきたいんですが、いかがでしょうか。

 

副区長 子宮頸がんワクチンについて、再質問にお答えさせていただきます。

御指摘がありました子宮頸がん予防のワクチンの健康被害については課題だと考えておりました。八年前に国が法定接種として開始してから間もなく問題となって、健康を守るべき予防接種が逆に子どもたちに害を及ぼしてしまった事例が生じたと、こういうことは記憶に新しいところです。

国が法定予防接種を実施するに当たって、自治体には、実施主体として、ワクチン接種の予防効果や無料で接種を受けられることなどのメリットとともに、副反応による重篤な健康被害が起こるリスクもあるということ双方を公平な立場で区民の方々に情報発信する責務があると考えています。この点、子宮頸がん予防ワクチンの国のリーフレットを配付する際には、先ほど保健所長が答弁いたしましたが、区独自に保護者宛てにお手紙を添えまして、区は積極的な勧奨を行っていないということをきちんと説明して、リーフレットに足りない情報を補っているところです。

接種対象のお子さんがメリットとリスクを理解した上で、保護者の方やかかりつけ医と相談し、最終的に御自分で接種を受けるかどうか決めることができるように、様々な工夫をしながら引き続き努めてまいります。

以上です。