第3回定例会 一般質問と答弁 2021.9.16 田中みち子

田中みち子 議員 質問通告に従って、順次質問してまいります。

子どもたちの健やかな育ちと学びを保障する体制整備についてです。

新型コロナウイルスの緊急事態宣言が延長になった十三日から、東京二十三区内全ての小中学校での一斉登校が始まりました。世田谷区としては、当初の分散登校から学校での対面授業か自宅でのオンライン授業か、各家庭の判断で選択できる対応に切り替えるなど、走りながら考える対応に追われている現状です。この間、学校も家庭も、どんなに大変だっただろうと察しています。しかし、どんな家庭環境にあっても、学ぶ権利、食べる権利など、一人一人の子どもの育ちを保障する十分な支援体制が求められます。

長引くコロナ禍では、学校現場でもこれまで以上にICTを推進することが必要となっていますが、自宅でのオンライン授業一つとっても、画像の問題や聞き取りにくさに加え、教師の指導上の格差など、様々な声が届いています。こうした課題を保護者や子どもから直接拾い上げる仕組みの検討、ICTサポート窓口の周知徹底や、ICT支援員の強化など、学校におけるICT環境の格差が教育格差につながることがないよう、迅速で丁寧な対応を求めます。見解を伺います。

自宅でのオンライン授業が困難であるといった特別な事情がある子どもたちには、登校日以外でも学校へ行くことができ、給食も提供できる体制にはなりました。しかし、こうした各家庭の配慮がかえって差別などのいじめにつながるおそれがあることは、誰もが危惧するところです。

夏休み中に食を提供する子ども食堂では、困難を抱えた子どもとつながるケースがあります。実例として、私が関わっている子ども食堂では、今日食べるものがないといった相談があり、対応しました。給食が一日の栄養源になっている子どもは存在していますが、大変見えにくいものとなっています。長引くコロナ禍の影響で、食事の回数や一回の量を減らすといった家庭があることが指摘されている中、市民力だけでカバーできるものではありません。学校給食は、子どもたちの健やかな成長に重要な役割があります。

感染防止対策として、学校運営に影響が出る場合であっても、学校に通う全ての子どもに対して栄養バランスの取れた食事が取れるよう、学校給食の体制について工夫を凝らし、食の提供を維持すべきです。見解を伺います。

また、教育委員会としての学校給食の役割や、今回の分散登校での食材納入業者への影響や、余った食材の対応についても、併せて答弁願います。

次に、人権教育としての性教育の推進についてです。

コロナ禍の影響で格差が拡大しています。非正規雇用者の解雇や減収が激しい状況下で、その多くを占める女性、特にシングルマザーの生活は困難な状況にあります。子どもに対する性的搾取は、家庭に居場所をなくし、夜の町に出ていく子どもたちばかりではなく、家庭内でも子どもの人権が無視されている場合が多々あります。だからこそ、構造的暴力や性別による差別、固定的性別役割分業など、あらゆる施策をジェンダーの視点で見直し、性暴力防止に向け効果的に対応できる相談・自立支援体制の構築やジェンダー・人権教育を幼児期、学童期、思春期と生涯にわたり行うことを求めてきました。

現在策定中の世田谷区第二次男女共同参画プラン後期計画では、性犯罪、性暴力の防止の被害者支援の充実を新たな課題とし、誰一人として性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないための取組を進めるために位置づけたことを評価します。残念ながら、まだまだ私たちの日常生活には、ジェンダーに基づく差別があります。全ての施策をジェンダーの視点で見直し、反映させるジェンダー主流化を定着させ、世田谷区から性犯罪、性暴力が根絶されるよう、実効性のある取組を進める必要があります。見解を伺います。

また、ジェンダー差別を取り除くには、幼い頃からの人権教育、誰もが平等で、誰もが自分の意思を表明できる力が持てるようになることが重要であり、互いの体の違いを理解し、互いを尊重する関係の中で生きる権利であるリプロダクティブ・ヘルス・ライツの啓発を進める必要があることは、これまでも何度も申し上げてきました。

世田谷区内には学校向けの図書や教材を制作、出版し、人権教育としての性教育を推進してきたアーニ出版があります。共同代表の北沢杏子さんは、日本で初めて性教育の絵本を出版された方で、ジェンダー平等など、人権教育としての包括的性教育を五十年以上実施するなど、現在もその一翼を担っていらっしゃいます。

先般、こちらの出版会社から世田谷区へ書籍や教材の寄附の申出がありました。コロナ禍で、外部講師による性教育が進まない中、大変喜ばしいことです。ただ単に寄附を受け取るだけでなく、イベントでの活用や、専用コーナーの設置、教育委員会と連携した有効的な活用を求めます。見解を伺います。

また、これまで求めてきたリプロダクティブ・ヘルス・ライツのリーフレットの検討状況についても、併せて答弁願います。

最後に、在宅みとりのできる地域福祉と医療との連携強化についてです。

私ごとではありますが、去る八月七日、父が他界いたしました。長くてもオリンピック開会式までとの主治医の見立てではありましたが、その閉会式前日まで命を全うしてくれました。今日、明日をも知れぬ状態の中、父の意思と悔いのない介護をしたいという家族の思いで在宅でみとることに決めたのですが、おかげさまで親孝行できる機会をいただき、子どもとして感謝の気持ちでその時を迎えることができました。元気な頃は、家族以外の方々の御迷惑にはなりたくないというかたくなな父ではありましたが、在宅訪問の医師や看護師、ケアマネや介護福祉士など、多くの皆様に温かく支えられ、日々感謝しながら眠るように最期を迎える姿に多くを学びました。

人生の最期は自宅で迎えたいという区民の割合は六割を超えていますが、そのときに自分が受けたい治療やケアなど、自ら決定できるプロセスの重要性への理解はなかなか進んでいません。

東京都医師会では、アドバンス・ケア・プランニング、ACPという、自分の最期の医療やケアを、自分の希望に沿って意思決定できるように、家族や親しい人と医療、ケアなどについてきちんと話し合い、自分の人生観や価値観を最後まで貫くことを目標にすることを提案しています。

世田谷区では、今年の三月に在宅療養・ACPガイドブックを発行していますが、専門職への周知にとどまっている現状です。一般区民へもその対象を広げて、講習会を設けるなど、効果的な活用を求めます。見解を伺います。

また、コロナ禍では施設や入院先から遺骨で御自宅に帰る場合も少なくないと聞いています。御遺族の複雑で深刻な心の状態を理解して寄り添うことで、回復のサポートをするグリーフケアへの理解を進める取組が求められます。訪問介護など、家族への支援者に対しては、グリーフケア研修を行うなど、支援者への対応力の強化も必要です。見解を伺います。

コロナ禍で、子ども、大人、高齢者も外出を自粛する中で、弱い高齢者や子どもはより弱くなっている事例があちこちで見られます。特にお元気だった高齢者でも、日頃の運動や社会的交流がなくなることで、明らかに身体や認知機能などの低下が見てとれるものの、中には、自分の状況を知ることさえ拒む例が少なくありません。誰もが安心して地域に住み続けられるために必要なサービスを受けられるよう、介護認定への効果的なアプローチを進める必要があります。見解を伺います。

以上で壇上からの質問を終わります。

 

教育総務部長 私からは三点、順次お答えいたします。

まず、分散登校による給食への影響についてです。

学校給食は、児童生徒の体力の向上や健康の保持増進を図るとともに、教育の一環として重要な役割を担っており、九月三日からの分散登校による教育活動に当たり、児童生徒が指定された登校日に給食の提供が受けられるよう、各学校にて準備を進めてまいりました。

今回の分散登校を行うに当たり、給食用食材については、食材廃棄等の無駄を少しでも減らすよう、各学校へは食材納入業者と調整し、可能な範囲で発注を変更するよう指示したところです。その結果、今回は正確な食数把握は時間的に難しかったこともあり、発注量の調整はしたものの、必要な食数より多く食材を用意することとなった際には、その日の給食として調理し、子どもたちへ提供したケースはありましたが、大規模校を含めて、おおむね順調に事業者と調整できたことを確認しております。

二つ目でございます。配慮を要する御家庭との給食についてです。

学校給食は、適切な栄養の摂取により、児童生徒の体力の向上や健康の保持増進を図るなど、成長期にある子どもにとっては重要な役割を担っていると認識しております。今回の分散登校の実施に当たっては、家庭での学習や生活等が困難であるなど、特別な事情のある児童生徒には、登校日の割り振りにかかわらず登校を認め、給食を提供することといたしました。今後も家庭の事情や子どもが置かれている環境に応じた配慮を行うとともに、学校での教育活動を通して、栄養バランスに優れた手づくりの給食提供に引き続き取り組んでまいります。

最後に、学校における食の保障についてです。教育委員会としましては、学習や食、居場所等での課題を抱える子どもたちへの支援は大変重要であると認識しております。九月三日から分散登校を実施いたしましたが、家庭での経済的負担を軽減するため、分散登校により給食が提供されない場合、就学援助対象者へその日数に応じた給食費相当額を支給することとしております。また、学校を長期間にわたり休業せざるを得ない場合の対応といたしましては、昨年度に子ども・若者部と連携し、子ども配食事業を、新型コロナウイルスの影響により生活に困窮した世帯も対象とする対策等を行ってきた実績もあることから、食の支援を含めて配慮が必要な児童生徒への支援については、福祉領域の関係所管とも連携し、必要な対応を実施してまいります。

以上でございます。

 

教育政策部長 私からは二点お答え申し上げます。

まずは、オンライン学習を実施してみての課題についての御答弁でございます。

二学期の開始に当たりましては、新型コロナウイルス感染症対策及び学習の保障の観点から、分散登校による通常の対面授業と家庭でのオンライン学習を併用して教育活動を進めたことで、一定の成果を上げることができました。

しかしながら、家庭でのオンライン学習におきましては、タブレット端末の操作が子ども一人では十分対応できない状況があったり、家庭での通信環境によって、配信された映像の不安定さや音声の途切れがあったり、様々な課題も明らかになってまいりました。

今後、教育委員会といたしましては、子どもや保護者の声を聞く仕組みを検討し、子どもや保護者から上げられた成果や課題を基に、学校と連携しながら、教育活動のさらなる充実に努めてまいります。

もう一点でございます。それではその課題に対し、どう対応していくかということでございます。

今回のオンライン学習で明らかになりましたその課題につきまして、子どもや保護者の声を聞きながら、学校現場と共有し、操作する上でのトラブルを解決するためのFAQを充実させるとともに、動画配信等を通じて、操作方法を丁寧に説明するなど、多くの子どもがつまずいている部分を解決できるように取り組んでまいります。

また、保護者からの問合せを受け付けるICTサポート窓口を五月に開設しまして、周知を行っておりますが、今回のオンライン学習を契機にしまして、学校緊急連絡情報配信サービス、すぐーる等によりまして再周知を行い、家庭でのタブレット端末の利用に際しての質問や懸案事項に丁寧に対応いたします。

教員へのサポートといたしましては、ICT支援員を活用いたしまして、授業のオンライン配信をスムーズに行えるように、迅速な支援を行うことで、自宅からであっても、全ての児童生徒に学びの保障ができるように取り組んでまいりたいと思います。

以上でございます。